![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]() ![]() |
淳平が見たもの。それは撮影について良いと思ったこと、改善点などなどとにかく来た人がどう思ったか自由に書いてもらうアンケート用紙だった。 「ちょっとフィリップさん。素人なんかに意見仰いでどうするんですか?」 淳平は少し怒りを覚えていた。素人の意見のなどアテにならない、と。フィリップは少し呆れ気味に言った。 「それじゃ、ジュンペイはここにいる全ての素人が気付いた物全てを気付いているのかい?」 「そりゃ全部は気付かないですけど。」 「それだよ。その素人だからこそ見える物と言うのもある。それに素人の中にも目の肥えた人がいる。そういう人とのコミュニケーションで映画はさらによくなると思うんだ。」 フィリップの言葉に淳平はサッカー選手として欧州で活躍してる大草が話していた事を思い出した。 「なぁ真中、こっちのサポーターってすごいんだぜ。」 「なにが?」 「練習を見に来るサポーターっているじゃん。そのサポーターの人にな、前の試合のあのプレーはよかったとか、もっとこうするべきだとか言われんの。それがまた的確でさ。」 (あのとき大草が言ってたのと同じ・・・) 淳平はフィリップの言った事を理解し、同時に尊敬の念を抱いていた。 「そうですよね。あと、自分が玄人みたいな気になってたのに気付きました。俺なんか全然素人同然なのに。」 「その謙虚さが君の腕を上げるよ。」 これで淳平はフィリップという、明確な目標ができた。 『パリで、フィリップのもとで映画の勉強をしたい。』 パリから帰国した淳平は、日に日にパリへの想いが強くなっていた。今も外村と2人でいるにも関わらず淳平はうわの空で話を全く聞いていない。 「・・・おい、真中!!」 外村が怒鳴って淳平は気付く。外村は少し怒っている。 「どうしたんだよ?」 「どうしたんだよじゃないって。オマエが何言っても反応しないからだよ。」 「ああ、悪い。」 「どうしたんだよ?パリから帰ってきてからずっとそんなんじゃないか。つかさちゃんと何かあったのか?」 淳平はぼそっと呟く。 「いや、そんなんじゃなくて・・・パリに行きたいなぁ、って。」 「映画の勉強か?」 「ああ。俺の目指すべき人が見つかったんだ。けど、大学も卒業しときたいし・・・」 「まぁそんなすぐに決める事でもないんじゃねーの?どのみち金ためたりフランス語もある程度覚えてからだろ?」 「っま、そうなんだけどさ・・・。」 淳平の様子から、外村は何かを悟ったような表情を浮かべた。 「じゃ、そろそろ帰りますか。」 2人は家路についた。淳平と別れたあと、外村はどこかへ電話をかけていた。 (日本にいるか、パリに行くか。そりゃパリに行きたいけど、でも・・・) 淳平は家に帰ってからも相変わらず悩み続けていた。その時、淳平の携帯が鳴った。 (電話・・・東城からだ。) 「もしもし?」 「あ、真中君、こんにちわ。」 「どうしたの?」 「あ、いや、パリでの勉強どうだったのかな、って。」 「うん。監督がすごい人でさ、俺の目標になったよ。」 「それってもしかしてパリに留学とかしたり・・・?」 「いや、その予定はないけど。」 「そっか。でも真中君は行った方がいいと思うよ。大学だってパリの大学でも単位は取れるし、言葉さえ覚えれば大丈夫じゃないかな。その真中君の目標の人の元で勉強するのが真中君のためになると思うよ。」 「・・・でもさ、それじゃ東城が・・・」 「私のことは気にしないで。昔言ってたよね。夢最優先で生きてい くって。私はそんな真中君が・・・好きに・・・なったんだから。」 「ありがとう東城。決心ついたよ。」 「じゃ、今日からフランス語の勉強ね。がんばってね真中君。」 「ああ。ホントにありがとう東城!」 (これで、よかったんだよね?真中君の夢の邪魔を私なんかがしちゃいけないよね・・・) 1年後の夏、フランス語の勉強と貯金をある程度終えた淳平は、パリへと飛び立った。 [No.1121] 2005/05/10(Tue) 23:04:21 zaqd37cca5a.zaq.ne.jp |