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別れの悲しみ、目的地への期待と希望、出掛け先での思い出。空港にはそんな思いとそれを持つ人々が、今日も集まりすれ違い、忙しなく動いている。 たった今ゲートをくぐった彼女も、そんな大勢の一人。キャスターのついた旅行用のかばんを引き、こころなしか他人よりも早足で出てきた。ロビーに着くや否や、彼女はキョロキョロと辺りを見回し、次いで自分の小さな腕時計に目をやった。 不安が焦りへと変わり、彼女は何度も周囲に目を走らせた。急に、彼女の首が動きを止める。見つめる先には、壁に寄りかかっている一人の男。男性も彼女の視線に気が付いたらしく、何の気なしに見つめていた爪先から、彼女の方へと視線を移す。 視線がぶつかり合う。永遠ともとれる一瞬、互いに何の反応も示さない。我に返った男性は、見開きがちになっていた目を細め、口の端を少し持ち上げた。彼女も嬉しそうに表情をほころばせる。 気が付けば、走り出していた。走るのには決して向いているとは言えない靴で、彼女なりに精一杯、渾身の力で彼の元へ向かった。 焦る気持ちが肉体を追い抜き、先に彼の胸に飛び込み体がそれに従った。もう久しく感じていない彼の温もりを、彼女は全身で受け止め、彼の方も彼女を優しく抱きしめ、そっと髪を撫でてやってた。 再会の喜びを充分に噛み締めながら、どちらからともなく、囁くように言葉を交わした。 「ただいま、淳平君」 「おかえり、西野」 [No.1261] 2006/02/22(Wed) 11:15:48 23.net059086147.t-com.ne.jp |