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No.1271へ返信

all はじめのコトバ - りゅうか - 2006/03/06(Mon) 02:09:59 [No.1270]
時を越えて・・・【プロローグ    in現在 〜始まり〜】 - りゅうか - 2006/03/06(Mon) 02:18:06 [No.1271]
【1章  in過去 〜妖精と仕事〜】 - りゅうか - 2006/03/07(Tue) 01:23:20 [No.1273]
【2章   2年前の・・・・】 - りゅうか - 2006/03/08(Wed) 00:44:06 [No.1274]
【3章    2度目の初めまして】 - りゅうか - 2006/03/11(Sat) 02:40:29 [No.1276]
【4章  映画鑑賞と夢の違い】 - りゅうか - 2006/03/14(Tue) 23:51:25 [No.1279]
Re: 【5章  望みとその世界】 - りゅうか - 2006/03/26(Sun) 23:05:17 [No.1285]
[削除] - - 2006/03/13(Mon) 23:13:20 [No.1278]


時を越えて・・・【プロローグ    in現在 〜始まり〜】 (No.1270 への返信) - りゅうか


    プロローグ    in現在 〜始まり〜

          


      

              2005年 夏。
  
 あり得ない、夢みたいな話。
  
 そんな彼女の考えていたことが現実になったのは、この日だっ     
 た・・・・














 日は、とうに暮れ、空には、星の瞬きが栄える夜の泉坂。
 
 家々の密集している、この、世に言う住宅地には、一人の少女の姿が 
 あった。

 その髪は、上から差す街灯の灯を、金色に反射して、美しく輝いてい 
 る。

 家路を急ぐ彼女の名は、西野つかさ。

 そう遅い時間でもないが、何せ、まるまる3日間、家を開けていたの 
 だ。

 必然的に、早足になってしまう。

 だが、そんな足の動きとは対照的に、彼女の思考は、全く違うところ 
 にあった。

 「あー、淳平君と三日間、楽しかったな〜」

 つい言葉となって、溢れ出てくるこの気持ち。

 その事からも、彼女の『淳平』に対する思いをはかることが出来るだ 
 ろう。

 彼女たちは、三日前より、秘密の旅行に行っていた。

 そして、今し方別れたばかり。

 幸せの余韻に浸りながらも、再度口を開く。

 「淳平君にも言われたし、明日から、お菓子作りがんば    
 
  ら・・・・・」

 大きく伸びをしながら、自らに言った、その言葉。

 それを言い終える前に、つかさは、あることを思い出す。

 (3回も特訓休んで、日暮さん怒ってるかな・・・・・)

 全部、自分のためにやってくれている事なのだ。

 元々、罪悪感はあったが、今のそれは、格別に大きい。

 「明日は、三日分の特訓、なんて言われたらどうしよう」

 半ば本気に考えたりする。

 (明日会ったらまず謝らないと)

 急に緊張し始めるが、まだそれは明日のことだ。

 今は、父と母のことを心配しよう。

 だが、そんなつかさの思考を余所に、自宅はもう目の前。

 いつもなら何も考えずに開く門も、今では地獄の門の様に感じる。

 言い訳、と言うより嘘はもう考えていた。

 訊かれれば、パティシエの特訓が辛くて三日間、一人で休んでいた、 
 と答えるつもりだ。

 調べればすぐ分かってしまうだろうが、それ以外、思いつかない。

 もう一度、その嘘を頭の中で繰り返してから、やっと決心したように 
 門に手をかけた。

 取っ手は、キーキー軋みながら、頭を垂れる。

 その瞬間だった。

 突如として、つかさを変化がおそう。

 周囲で空気が渦を巻き、気温が、上がり下がりを繰り返す。

 「なっ」

 声にならない叫びを上げ、きつく目を閉じ、その場にしゃがみ込ん  
 だ。

 そんな、渦中のつかさを余所に、周りの風景が消え去る。

 否、正しく言えば、流れていく。

 そんなあり得ない風景も、目を閉じていたつかさには、見えていな  
 い。

 その時、驚きで声も出ないつかさを残して、始まりと同じように、変 
 化は、突如として終わりを迎えた。

 (な、何だったの・・・・)

 ゆっくりと立ち上がり、目を開く。

 「っえ」

 前にあるのは、目を疑うような光景。

 つかさの立っていた場所。

 そこは・・・・・・



     家の前。



 もちろん、先程と同じ場所に居たことで、彼女が驚いている訳ではな 
 い。



 1秒前まで、星を宿していた夜空には、明るい日が、空高くに登り切 
 っている。

 1秒前まで、静かだった、住宅地はうるさいほどにセミの声が響いて 
 いる。

 1秒前まで、暗かった視界は、今や、これ以上無いほどに明るい。





 そう、時刻は、『昼』になっていた。


[No.1271] 2006/03/06(Mon) 02:18:06
61-21-203-112.rev.home.ne.jp

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