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第五話望むもの ──西野,どういうつもりなんだ・・・?いつもなら「なに言ってんだよ,バカー」とかって言って蹴りが飛んできたりするのに。・・・まさか西野も・・・・・・── そんなことを考えながら淳平は用意を終わらせた。 一歩,また一歩の風呂場に足を運んで行く。 近づくたびに鼓動が激しくなる。 とうとう脱衣所まで来てしまった。淳平はそこで服を脱ぎ,手ぬぐいを持ち風呂場へ。 風呂の戸は閉まっていたが,中の明かりはついていて人影が見える。 ──西野もう入ってたんだ。・・・いよいよだな。初めてだし緊張するな── 淳平は恐る恐るノブに手をかけ,戸を開けようとするが,開かない。つかさが中から押さえているようだった。 「西野?どうしたんだよ!?」 「・・・入る前に一つ約束してほしいの」 「えっ?」 「・・・淳平くん,今までにあたしのこと“つかさ”って呼んでくれたこと,ほとんど無いよね」 つかさは半ば泪声で話していた。いや,本当に泣いていたのかもしれない。 そして,その震えた声に淳平はとまどう。 「あたし達恋人なんだからさ,名前で呼んでよ,淳平くん・・・」 ・・・確かにそうだった。中学三年のときもつかさは淳平のことを“淳平くん”と呼んでいたが,淳平はつかさのことを“西野”と呼んでいた。 「わかってるよ,淳平くんがあたしだけを見てくれてること・・・。でも,あたしにとっては,名前だけでもすごく辛かった・・・。辛かったんだよぉ・・・・・・」 つかさはとうとう泣き出してしまった。 「そう・・・だよな。つかさは前から俺のこと名前で呼んでくれてたのに,俺は苗字で呼んでた。ゴメン・・・つかさ・・・」 淳平はこの程度のことでは許されないと思っていた。どうしたらつかさの傷を消せるだろう,そう考えていた。 そして,つかさの言葉・・・ 「・・・。ずっと,そう呼んでくれる?」 予想外の台詞だった。淳平が想像していた言葉のどれとも違っていた。 ──ずっと,そう呼んでくれる?──その優しくかけられた言葉に淳平も泣き出しそうになっていた。 ──淳平の返事──それは決まっている 「ああ・・・,約束する」 その言葉と同時に戸が開く。 扉の前に立っている二人の男女は,もう一度お互いの愛を確かめるかのように抱き合った。 第五話完 今回,短くてごめんなさい。 あと,二つのルートを書くのは今回じゃなくて次回にさせていただきます。たぶん次のAルートBルートは,それぞれが長くて時間がかかってしまうと思うので,気長にお待ちいただけたらなぁ,と思います。 それではまた次回にお会いしましょう。 [No.1284] 2006/03/25(Sat) 10:56:38 p8137-ip04sapodoori.hokkaido.ocn.ne.jp |