[ リストに戻る ]
No.1296へ返信

all 車輪の唄&いちご165話 - Mr.名無し - 2006/05/15(Mon) 18:31:19 [No.1296]
the last of ICHIGO - Mr.名無し - 2006/05/22(Mon) 18:10:42 [No.1300]
感想待ち☆ - Mr.名無し - 2006/05/22(Mon) 18:28:19 [No.1301]
管理人から - たゆ - 2006/05/22(Mon) 21:46:23 [No.1302]


車輪の唄&いちご165話 - Mr.名無し

「ねぇ、淳平くん。私を空港まで連れていって…。」 
錆付いた車輪 悲鳴を上げ 
僕らの体を運んでゆく 
明け方の空港へと 
ペダルを漕ぐ僕の背中 寄り掛かる君から伝わるもの 
確かな温もり 
「さっき変な事思っただろー!もぅ、淳平君のえっち!」 
空港沿いの上り坂で
「もうちょっと、あとすこし!淳平くんファイト!」
後ろから楽しそうな声 街はとても静か過ぎて 
「世界中に二人だけみたいだね」 と小さくこぼした 
「わぁ…。」
同時に言葉を失した 坂を上り切った時 
迎えてくれた朝焼けが あまりに綺麗すぎて 
西野は笑っていたんだろう あの時 僕の後ろ側で 
でも振り返る事が出来なかった 僕は泣いていたから… 
発券機で一番端の 一番高いチケットがゆく街を 僕は良く知らない 
「西野、もう行くのか?」
「うん。ギリギリ乗車ってわけにはいかないからね。ヒコーキは。…君に見送られて出発出来る事、本当に幸せだと思う。バレンタインから今日までの間、本当に感謝してる。ありがとう。淳平くん。私、もう振り向かない。だから淳平くんもそのまま帰って…。

目にいっぱいの涙をたたえたまま改札に向かう西野の背中は…少し逞しかった 
ガンッ!
「あれ?」
一昨日買った大きな鞄 
改札に引っ掛けて通れずに 君は僕を見た 
「…」
「…」 
目は合わさないで頷いて 
頑なに引っ掛かる鞄の紐を 
僕の手が外した… 
響くアナウンスが最後を告げる
(am.9:00出発予定のフランス、パリ空港行き、間もなく出発します…) 
君だけのドアがあく 
何万歩より距離のある一歩 踏み出して君は言う
「約束だよ 必ずいつの日かもっと私をワクワクさせてくれる淳平くんになった時に…また会おうね」
応えられず 俯いたまま 僕は手を振ったよ 
だけど…だけど!
「つかさ!!」 
間違いじゃない あの時君は… 
空港沿いの下り坂を 風よりも早く飛ばしていく
君においつけと
錆付いた車輪 悲鳴を上げ 精一杯ヒコーキと並ぶけれど
ゆっくりはなされてく
「もう振り向かないって言ったケド…お願い!」
そういってギュッと僕らは抱き締めあった 
まるで最後の時間をこれでもかという位惜しむように…
泣いてたんだろう あの時 改札の向こう側で
顔見なくてもわかってたよ 声が震えてたから 
「いってきます。淳平くん。」
「約束だよ 必ずいつの日かまた会おう」
離れてゆく 君に見えるように 大きく手を振ったよ
「西野…俺、西野にふさわしい男になるよ…」 
街は賑わいだしたけれど 
「世界中に一人だけみたいだなぁ」 
と小さくこぼした 
錆付いた車輪 悲鳴を上げ 残された僕を運んでゆく 
消えてゆく 西野の微かな温もり…


[No.1296] 2006/05/15(Mon) 18:31:19
zaqd3874c22.zaq.ne.jp

Name
E-Mail
URL
Subject
Color
Cookie / Pass

- HOME - お知らせ(3/8) - 新着記事 - 記事検索 - 携帯用URL - フィード - ヘルプ - 環境設定 -

Rocket Board Type-T (Free) Rocket BBS