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C-2 (No.1416 への返信) - takaci

キーンコーンカーンコーン・・・


放課後を告げるチャイムが鳴り響く。


ホームルームが終わり、教室全体がざわざわとした雰囲気に包まれる。


あるものは帰途につき、またあるものは部活に向かい、またあるものは集まっておしゃべりを始める。


そしてこの教室の一角で、美少女5人が集まって話し合いを始めていた。




「千倉ちゃん、収穫あった?」


あゆみは名央に向けて厳しい視線を送る。


「ゴメン、何も・・・」


申し訳なさそうに目を落とす名央。


「小宵は?」


「あたしもダメ。おにいちゃんにも聞いたけど分からないって・・・」


「江ノ本は?お姉ちゃんが物知りでしょ?」


「なんか有名なレーサーの名前が出てきたくらい。車のことは知らないってさ」


「どばっちゃん?」


「あたしも収穫なし。そもそもケーキバイキングにあまり惹かれないし」


サバサバとした表情で答えるりか。


「あ〜〜〜っもうっ!!」


あゆみは悔しそうな表情で頭を抱えてしまった。





事の発端は5日前に遡る。


クラスメートの佐藤が放った「R10TDI」という言葉と、それが『間違っていても正しい』ということを示す意味を1週間以内に提示するということだった。


それが出来れば、ここの5人は佐藤からケーキバイキングを奢ってもらえるという約束になっている。


これはあゆみが取り付けた約束だったが、あゆみ自身は楽観視していた。


「これだけ情報が溢れているんだもん。ネットで調べれば楽勝よ!」


そう言って他の面子に白い歯を見せていた。






ネットで調べて、正式名称が『アウディR10TDI』ということが分かった。


そしてそれが自動車レース用の車であり、あるレースで優勝したことまでも分かった。


この車がどんな形で、どんな色をしているのかも分かった。


http://mahoroba.s70.xrea.com/up/img/085.jpg


だが、そこから先に進まない。


文面を見る限りでは何か大きなことをしたようなことは伝わってくるのだが、専門用語のオンパレードで中2女子には理解不可能であった。


特に佐藤が提示した『間違っていても正しい』という回答には全く結びつかない。





そこで次に思いついた作戦は、『周りの人に聞きまくる』である。


あゆみ、小宵、名央、りかには兄がいて、慧には物知りの姉がいる。さらに親もいる。


そのようなネットワークを使って広げて行き、回答を見つけようというのがあゆみの立てた作戦だった。




そしてその情報収集の結果を今、この場で集めている所であるのだが、収穫はほぼゼロだった。


「なんか、何でもいいからキーワードになりそうなものは無いの?」


声を張り上げるあゆみ。


「お父さんから聞いたんだけど、アウディってドイツの自動車メーカーなんだって」


名央は小さな声でそう告げる。


「あと、あのメーカーのマークってオリンピックのマークに似てるよね?」


さらに慧が付け加える。


「あと自動車レースって言ったらF1だよね?これ重要だと思うんだよなあ」


あゆみは自信に満ちた笑みでそう言い放った。


「あ、あとこれ、佐藤くんから聞いたんだけど・・・」


小宵がおずおずと切り出した。


「なになに、佐藤から聞き出したの?どうやって?」


喰いつくあゆみ。


「うん、理化で分からない所があって、それを佐藤くんに聞いたんだ。その時教えてもらったのが・・・」


「うんうん!」


「その車が『ルマンで勝ったのは重要なことだけど、それじゃ答えにならない』って言われた」


「ルマン?ルマンってなに?」


「さあ・・・」


あゆみの問いかけに対して首を横に振る小宵。


「それ無視してもいいんじゃないの?何せ勝負の相手の言葉だし。あたし達混乱させる目的じゃないの?」


慧はそのの言葉をまるで信用していないような視線を小宵に向ける。


「そうかなあ・・・そうなのかもね・・・」


小宵は自信が無さそうな表情を見せた。


「じゃあじゃあキーワードはオリンピックとF1ね!オリンピックといったらどばっちゃん、なんか知ってるんじゃないの?」


あゆみはりかに視線を向けた。


「全然わかんない。全く意味不明」


サバサバとした表情でそう答える。


「ちょっとお、やる気あるの?ケーキバイキング掛かってるんだよっ!」


りかの表情を見てやや怒り気味のあゆみ。


「だからあたしケーキバイキングなんて興味ないもん。それよりそろそろ部活だからあたし行くよ」


りかはマイペースで荷物をまとめて、席を離れようとした。


「こらーっ、どばっちゃん!?」


慌てて止めようとするあゆみ。


「あたしケーキ要らないから。答え分かったら後で教えてよね」


りかは友人達に背を向けながらそう言い放ち、部活に向かうべく教室を後にした。





「もうっ!!」


あゆみはプンスカと怒りながら、改めて席に着く。


「こうなったらあたしたち4人でなんとしても答え見つけようよ!!タダでケーキ食べ放題が掛かってるんだからね!!あと2日だよ!!」


「「う・・・うん・・・」」


あゆみの勢いに押され気味の名央と小宵だった。


「正直ケーキバイキングはあまり惹かれないけど、佐藤なんかに見下されるのは癪だよね。もう少し調べてみるか」


慧の闘争心に少しばかり火が点いたようだ。


「よしっ!あと2日でなんとしても答えだしてケーキバイキング勝ち獲ろうっ!!」


4人をまとめて盛り上げるあゆみだった。









(くっくっく・・・しっかしまあ、なんでそんな考えに行くかねえ・・・)


そして佐藤は少し離れた自分の席に座りながら、聞き耳を立てて心の中で笑っていた。


「佐藤くん、なんか楽しそうだね?」


そこに衛がやってきた。


佐藤は衛に小声で、


「おい財津、ケーキ奢る話は完全チャラになりそうだぞ」


と嬉しそうに話した。


「そうなの?なんか一生懸命話し合いしてたみたいだけど・・・」


怪訝そうな表情を浮かべる衛。


「だって別所にヒントあげたにもかかわらず、完全無視してまったく別の考えしてんだから。R10TDIとF1が結びつくなんて、俺の中じゃありえないよ」


「ふうん、そうなんだ」


「けど俺が言うのもなんだけど、無知ってのはホント恐いよなあ・・・」


佐藤はそう呟きながら、鞄を持ってゆっくりと席を立った。









そしてさらに2日後。


小宵は名央とともに帰途についていた。


「結局期限以内に答え見つからなかったね・・・」


と小宵が呟く。


「ケーキバイキング獲り逃がしたって、あゆみちゃん悔しがってたなあ・・・」


名央もそう呟く。


やや落ち込んでいるふたり。


「でも佐藤くんも確か『自分で説明するのは難しい』って言ってたよ。だから難易度が高すぎる問題だったんじゃないかな?」


「そもそもあたしが佐藤くんの言葉に反応して『バカにされてる』って言っちゃったのがきっかけなんだよね・・・みんなに謝らなきゃ・・・」


名央の表情はさらに暗くなる。





会話なく歩くふたり。


そこに偶然、小宵の視界にあるものが飛び込んできた。


「あ・・・」


小宵は思わず立ち止まる。


「小宵ちゃん、どうしたの?」


「あのお店・・・」


小宵が指差すその先には、グレーの古ぼけた外壁の小さな商店があった。


薄汚れた看板には白と黒の市松模様が描かれており、英語で「Racing Sports」と表記されている。


「あのお店がどうしたの?」


「佐藤くんね、学校にあのお店のロゴが入っていた袋を持ってきていた気がするんだ・・・」


小宵は一週間前に見た、佐藤が鞄に入れるグリーンの袋を思い出していた。


「ホント?」


「うん、確か持っていたと思う」




しばらくふたりの美少女はその場で立ち止まり、


「入ってみようか?」


と名央が言った。


小宵はこくりと頷く。


そしてふたりは中2女子には全く縁の無いと思われる、未開の世界への扉に手をかけた。





ギイイイイイ・・・


木製の古い扉が軋み音をあげる。


カランカランカラン・・・


扉に取り付けられたベルが安っぽい音を鳴らす。




「・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・」


ふたりの美少女は圧倒されていた。


地味な外見とは異なり、店内はまさに『派手』の一言だった。


赤、黄色、青、白、銀・・・


派手な色使いの様々な商品と思われるものが目に飛び込んでくる。


そして、さらにカラフルなロゴマークの数々。


初めて見るものが大半だが、中には街で見かけたような気がするものもあった。


美しいステンドグラスに心奪われたかのような目の色の輝きを見せて、店内を見回すふたりの美少女。





(あ・・・)


ふと、小宵の目にある写真が飛び込んできた。


大きな写真だった。


一目見て、レーシングカーだと直感した。


そして写真の感じから、かなり昔のものであると感じていた。


http://mahoroba.s70.xrea.com/up/img/086.jpg




ただそれ以上に、


(この車・・・似てる・・・)


1週間調べ続けたR10TDIとどこか似た雰囲気をその写真の車から感じ取っていた。


[No.1417] 2007/12/25(Tue) 13:44:55
p57dd46.aicint01.ap.so-net.ne.jp

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