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「ん・・・」 部屋が薄明るい。 (朝か・・・) 普段の目覚めとは景色が異なることに違和感を覚え、これが旅行先での目覚めだと気付くのに少しかかった。 そして自分の腕の中に感じる、暖かく心地よい感触。 「・・・」 一糸纏わぬ奈緒が静かな寝息を立てていた。 何も身に付けていないのは秀一郎も同じ。 奈緒を起こさぬようそっと静かに布団から出ると、簡単に衣服を身につけてカーテンを少し開けた。 よく晴れた朝だった。 快晴で波も穏やか。 絶好の海水浴日和になりそうだ。 (ん?) 下の庭で見覚えのある人影があった。 ふと時計を見る。 (6時半前。もうこんな時間に起きてるのか) 少し驚きを覚えた秀一郎は物音を立てぬよう簡単に身なりを整え、部屋を出た。 (やっぱり) 裏庭で軽い運動をしていたのは見慣れた小柄な女の子。 「真緒ちゃん」 「あ、センパイ、おはようございます」 Tシャツにショートパンツ姿の真緒の笑顔があった。 「おはよ。真緒ちゃん早いね」 「センパイもですよ。いつもこんなに早起きなんですか?」 「いや、なんか早く目が覚めてさ。旅行先ってそうならない?」 「あ、あたしもそうですね。でもセンパイはたぶん夜更かしだろうからここにいるのが意外です」 「なんで夜更かしなの?」 秀一郎は一言も言っていない。 奈緒は少し恥ずかしそうに、 「だって、奈緒とふたりきりの夜ですよね。どうなるのか誰だって予想つきますし、そうなるのが普通です」 ぽつりとそう漏らした。 思わず秀一郎も赤くなる。 「あ、あの、そりゃまあそうだけど、まあ実際そうなったし・・・けどちゃんと寝たよ」 否定はしなかった。 「じゃ、センパイ、軽く付き合ってもらっていいですか?」 「え?」 笑顔の真緒はミットを差し出した。 パアン! パン! パン! 広い裏庭にミットの音が響く。 真顔の真緒が秀一郎に鋭いキックを入れ、秀一郎は必死にそれをミットで受け止めていた。 真緒の不規則な動きは相変わらずで、気を抜くとキツい一発が来るのは必至だった。 ミットでキックを受けつつ、真緒の動きから次の軌道を予測しながらかわしていく。 何度も手を合わせた秀一郎だからなんとかなっていた。 だがキックを受けながら、これが真緒の本気でないことを感じていた。 「ふう、センパイもだいぶ動けるようになりましたね」 一息ついて、真緒が笑顔を見せる。 「真緒ちゃん、今ので何パーセント?」 「うーん、60パーセントくらいですね」 「やっぱりね。たぶん全開じゃないとは思ってたけど」 「あくまでリズム重視ですから。センパイを倒すのが目的ではないので」 「なるほどね。けど真緒ちゃんの全開に対応出来る奴ってどんな化け物なのかな。俺じゃ歯が立たんよ」 軽く息を付く秀一郎。 「じゃあ、試しに全開、受けてみます」 「えっ?」 「一発だけです。センパイ構えててもらえませんか?」 真緒は秀一郎にミットの位置を細かく指示した。 大体左の腰あたり、空手では中段の位置で、しかも片手用のミットにもうひとつの手を添えて構える。 少し離れた位置で真緒が腰を落とす。 「じゃ、センパイ、行きます」 凜とした真緒の声が届くと、秀一郎の身が引き締まった。 真緒が速い速度で向かってくる。 そして、 (消えた?) 一瞬、視界から消えたように感じた。 その直後、有り得ない位置まで真緒は接近していた。 まるでワープしたかのように。 自然と背筋が凍る。 本能が危機を察知する。 秀一郎はさらに気を引き締めて、両手で支えるミットに力を込めた。 ズドォン!! 今までの軽い音とは異なる、低く響く音が出た。 同時に秀一郎の両手から全身に強烈な衝撃が伝わる。 今まで真緒の蹴りは何度も受け止めてきたが、この一発は明らかに桁違いの威力だった。 「いったあい!やっぱこれはまだ無理だあ」 蹴りを入れた真緒が左膝を抱えてうずくまる。 「真緒ちゃん、今のは?」 「新しいタイプの蹴りです。あたしってどうしても一発の威力が弱いから、それをカバー出来る強さの一撃を考案中で今のはそのプロトタイプです。でも強すぎてあたしの身体が耐えられ ないんです」 この説明で真緒が軸足の左膝を押さえている理由がわかった。 「けどすげえよこれ。完全に男の蹴りと同等か、それ以上じゃない?しかも速さは今まで以上だし」 「今までのステップに加えてもう一回、もう一段強く踏み込むことで威力を出してます。あたしはダブルステップって呼んでます」 「なるほど、ダブルステップね」 真緒が一瞬消えてワープしたかのように感じた理由が何となくわかった気がした。 真緒はなんとか立ち上がったが、姿勢から左膝をかばっているのがわかる。 思わず手を貸したくなるが、真緒はこういうときに手を差し延べられるのを嫌うので敢えて言わない。 「じゃ、そろそろ戻ろうか。その足を休ませないと」 「はいっ」 真緒は元気な笑顔を見せた。 ふたり揃って玄関に戻ると、 「おおっ、これは朝から意外な組み合わせだね」 里津子がいた。 「なんだ御崎か」 「御崎先輩、おはようございます」 「おはよっ!いや〜佐伯くんやるねえ!」 「なんだよ?」 朝からやけにテンションが高い里津子の言葉がひっかかる。 「昨夜は妹とあっつ〜い夜を過ごして、朝は姉と登場なんて、なんかすごいプレイボーイみたいだよ」 「誤解を招くようなことを言うな。ただ真緒ちゃんが朝練やってるのが見えたから顔出しただけだ」 「だってえ、奈緒ちゃん」 (ん?) 里津子の後ろに奈緒が立っていた。 傍目にはかなり眠そうに見える。 「なんだもう起きたのか?でもまだ眠そうだな」 「目が覚めたら秀がいなかった。ちょっと寂しかった。秀がどっかにいっちゃうかと思って」 悲しそうな顔を見せる。 「なに言ってんだよ」 秀一郎は奈緒の頭にぽんと手を置いた。 「俺はどこにも行かない。ここにいる。奈緒の側に、な」 「うん・・・」 「まだ目がはっきりしてないな。シャワーでも浴びてこいよ」 「部屋にあるからそれ使う。秀も行こ」 奈緒が手を出してきた。 秀一郎は優しくその手を繋ぐ。 それでようやく奈緒は幸せそうな笑みをこぼした。 「じゃ、御崎に真緒ちゃん、後でな」 秀一郎と奈緒は手を繋いだまま自室に戻った。 「はあ〜。しっかし仲がいいって言うか、奈緒ちゃんベッタベタだね〜。あそこまでされるといやらしさなくて気分いいよ」 「奈緒ってセンパイと一緒だった翌日はいつもああです。ホント心の底から甘えてて。なんか羨ましいです。あたしには出来そうにないですから」 (ふふーん) 寂しそうな真緒の表情を見逃さない里津子だった。 陽が昇り、強い日差しが照り付ける。 砂浜には程よい感じで海水浴客が賑わっていた。 「いいねえいいねえこの感じ!海に来たって実感するよ!」 「は〜楽しみだなあ女子たちの水着姿!ウチの学校は水泳の授業ないもんなあ」 着替えの早い男たちは胸を高鳴らせている。 「なあ、佐伯は自分の彼女の水着姿見てんのか?」 「いや、姉妹揃って今年新しい水着を買ったとは聞いてたけど、どんなものかは全く知らん」 「そうか、佐伯も楽しみってわけだ!」 「でもよお、佐伯にゃ奈緒ちゃんの水着姿ってあんま価値ないような気がする」 「なんだよそれ?奈緒が聞いたらまたシバかれるぞ?」 また正弘が余計な一言を言わないように忠告しようとしたとき、 「お待たせ〜」 里津子の元気な声が届いた。 「おおっ!?」 普段は制服姿のクラスメイト3人の新鮮な姿だった。 カラフルな水着に身を包んで魅力度は5割増しのように感じる。 特に、 「桐山いいねえそのビキニ!スタイルいいし最高だよ!」 沙織の水色のチェック柄の水着はさほど目立たないが、沙織のスタイルの良さを引き立てていた。 「俺マジで来てよかった」 「桐山いいな〜」 他の男連中も沙織に見とれている。 正弘は少し暴走気味で、 「桐山、さあどこ行こうか?とにかくこのビーチで放っておいたらナンパの餌食になるから常に俺が側にいるよ、うん!」 どさくさ紛れに沙織の手を握り、さらに肩まで抱こうと手を延ばす。 沙織はただうろたえていた。 バコッ! そんな正弘に大きなイルカ型の浮輪が上から振り落とされた。 「イッテエな!」 「どさくさ紛れになにやってんのよこのエロ変態!あんたのほうがよっぽど危ないわ!」 黒ビキニに身を包んだ奈緒が目をつりあげていた。その傍らには真っ青な競泳用っぽい水着姿の真緒のスレンダーな姿があった。 「むう!」 正弘の目が血走る。 「な、なに?」 そんな正弘にひきつる奈緒。 「お前なあ、いくらなんでも黒ビキニはどうかと思うぞ」 ここに秀一郎が割って入ってきた。 「なによ、秀は不満?」 「そうじゃないけど、お前もっとファンシーなのが好みだろ?なんか背伸びしてるみたいだぞ」 「背伸びって失礼ね!あたしは大人っぽくしたかったのよ。かわいいのは好きだけどそれじゃお子様っぽくなるから、こーゆーシックなのにしたんだから」 「なるほどねえ」 奈緒の言いたいことがわからないわけではなかった。 「テッメエ!佐伯ぃ!」 今度は正弘が秀一郎の首に腕を絡めてきた。 「なんだよいきなり?」 「奈緒ちゃんって幼児体型だと思ってたがメッチャ着痩せするじゃねえか!出るとこはしっかり出てるしなんかエロいぞ!お前はあんな身体を独り占めしてんのか!」 正弘は殺気立っている。 「お前、ちょっと落ち着け」 「あんたって奴はホント煩悩まみれね・・・」 背後で奈緒も殺気を立てる。 ただ、今日はいつもの正弘とは違っていた。 普段なら奈緒に恐れを見せるが、今日は憤然と立ち向かう。 「ええい俺は負けんぞ!モテない男の怒りを今日こそぶつける!全員続けー!」 正弘の掛け声に応えた男4人が一斉に集まり、秀一郎を担ぎ上げた。 「行っけえええ!」 そのまま波打ち際に駆け込み、秀一郎の身体を海へ乱暴に放り込んだ。 ザッパーン! 「よ〜し、あたしらも行くぞ!」 ここで里津子が悪ノリし、女子4人集めて奈緒を持ち上げた。 「ちょ、ちょっと、お姉ちゃんまで!」 慌てる奈緒。 「そおっれえええ!!」 秀一郎の隣目掛けて投げ込まれた。 「きゃあああ!?」 ザッパーン! 「あははははは!!!」 若者の楽しい笑い声が天まで抜ける。 夏が始まった。 [No.1526] 2009/09/20(Sun) 08:04:03 p8ba69b.aicint01.ap.so-net.ne.jp |