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ミス泉坂の集計はネットで行われる。 全校生徒及び教職員ひとりずつ、また外からの来場者には入場券に個別IDが記載され渡されている。 それを委員会が立ち上げた専用サイトで入力すれば投票完了となる。 投票は校内各所に設置されたパソコン及びネットに繋がる携帯でも可能になっている。 受付は午後2時から4時までの2時間。 最後の戦いが始まった。 午後2時半。 秀一郎は実行委員会の主要メンバーと一緒に生徒会室を出た。 「センパイ」 そこにセーラー服の小柄な子が表れた。 「小崎真緒、こんなところでなにをしている?」 会長も他の面々も怪訝な顔を浮かべる。 その中で秀一郎は、 「ちょっとちょっと、こいつ奈緒。真緒ちゃんじゃない」 正体に気付いていた。 「そうなのか?」 「そもそも髪型違うだろ。真緒ちゃんこんなに長くない。顔と制服だけで騙されるなよ」 呆れる秀一郎。 「ということは、それは姉の制服か?」 「そうだよ。お姉ちゃんいま和服だから」 「真緒ちゃんの服よく着れたなあ。そっちのほうが驚きだ」 「ちょっと秀、みんなの前でそんなこと言わないでよ!」 怒る奈緒。 「なんだ、双子の姉と妹でそんなに体型違うのか?」 会長が尋ねると、 「あたしは普通。お姉ちゃんが異様に細いのよ。ウエスト55なんてモデル並なんだから」 「55?そんなに細いのか?」 驚く会長。 「まあ真緒ちゃんの細さも驚きだが、そのスカートを履いてるお前にも驚きだ」 「へへっ、これでも体型管理してるんだからね。正直胸とお腹きついけど」 奈緒は自慢げな笑顔を見せた。 「で、お前はなんで無理して真緒ちゃんの制服着てここにいるんだ?」 「秀はこれから審査で廻るんでしょ?だからあたしも着いてく」 「おいおい、遊びで廻るんじゃないぞ」 「あたしは秀のガード役。秀こそ女子の誘惑舐めてない?みんな審査員が50票持ってるって知ってるんだから必死にアピールしてくるよ」 一般生徒はひとり1票だが、5人の審査員はそれぞれ50票持っている。 割り振りは自由だが、力が大きいので投票には慎重さが要求される。 そのためこれから本戦に残った6人の状況を視察してから投票することになっている。 「確かに一理あるな。ガード役がいたほうが都合がいい。それに芯愛の制服ではないからさほど目立たないだろう」 会長も奈緒の立案に同意した。 「なら秀、行こ!」 奈緒が手を握り、スタスタと歩き出す。 「お、おいおい慌てるな。もっとゆっくり歩け」 少しうろたえながら引っ張られる秀一郎。 結局、ふたりで廻ることになった。 「で、どっから行く?」 奈緒が尋ねてきた。 「なあ、ぶっちゃけ個人的な思惑なしで、本戦の6人どう思った?」 「う〜ん、上位3人と下位3人ではレベル違うよね」 「俺もそう思ってる。槙田と真緒ちゃん、あと桐山の三つ巴だな」 「秀は桐山さんがお気に入りでしょ?」 図星を突かれた。 「なんでわかる?」 「そりゃ2年半以上付き合ってんだから、秀の好みとかわかるよ。あと異表突かれると弱いもん」 「ま、まあな。桐山のドレス姿はインパクトあったな」 素直に認めた。 「でも文芸部と茶道部は後にしたほうがいいよ。いま混んでるから」 「そっか。んじゃ映研行くか」 映研の代表が予選5位で本戦に出場していた。 視聴覚室に入ると、カメラを抱えた人だかりが出来ていた。 「なんだありゃ?」 「写真撮影タイムじゃないかな。あんな奇抜な衣装ならそりゃ男が群がるでしょ」 映研代表の子はレースクイーンのコスチュームのような奇抜で露出度の高い衣装で本戦のステージに上がっていた。 「おっ、佐伯、よく来てくれた。それに真緒ちゃんまで敵情視察か?」 正弘が声をかけてきた。 「お前まで騙されるなよ」 再び呆れる秀一郎。 「この制服でお姉ちゃんいないと結構ステルス性高いのかな?」 「えっ?ああ、奈緒ちゃんか」 ようやく気付いた正弘。 「髪型違うんだからそれで気付けよな」 「で、佐伯はもちろんウチに投票してくれるよな?」 「それを決めるためにいま廻ってるんだよ。でも盛況そうだな」 「ああ。1年生じゃピカ一の子だ。しかもいい演技するんだ」 「で、あのコスチュームは映画と関係あるのか?」 「そんなのねえよ。衣装係に派手なの造ってもらったんだ。結構金掛かったんだぞ」 「映画と関係ないならマイナスだね」 奈緒がバッサリ切り捨てた。 「おいおいなんでだよ?」 文句をつける正弘。 「だって少なくとも上位3人は関連性あるもん。ライブ衣装とか部活の正装とか先輩の服とかね。インパクト狙いだけの奇抜な衣装じゃダメだよ。まあそれで映画に出てるならまだいいけどね」 「映画撮ったの夏休みだぞ。その頃はミスコンやるなんて決まってないからしゃあないだろ」 「じゃあ映画の衣装にすべきだったね。審査員票はそっちのほうが稼げたと思うよ」 「でもそれじゃインパクトが足らん」 「別にあんな派手でエロい衣装でなくてもインパクト狙いは出来るよ。お姉ちゃんの和服なんてみんな予想の範囲内だったはずだけどインパクトあったもん。素材活かさなきゃ代表の子がかわいそうだよ」 奈緒は手厳しかった。 「佐伯、お前はウチの子いいと思うよな?」 「とにかく出来れば話しさせてくれないか?それから判断するから」 そう告げると、正弘は群集の中から女の子を引っ張ってきた。 その子はにこやかな笑みを見せ、 「よろしくお願いします」 と、笑顔で手を握ってきた。 (明らかな、いわゆる営業用スマイルだな) そう感じていると、手の中に違和感を覚えた。 「ん?」 握られていた手に小さなメモ。 「はい、これは没収ね」 奈緒が素早くメモを取り上げた。 「やっぱり携帯番号とメアドだ。こーゆー色仕掛け紛いの誘惑は許さないからね」 奈緒の目は鋭かった。 その後も下位通過の代表を廻ったが、同じような誘惑をかけてきた。 その度に奈緒がバッサリと切り捨てていた。 そして文芸部に。 去年とは異なり、盛況だった。 (ミスコン効果か。凄いな) そう感じていると、 「あ、佐伯くん、それに奈緒ちゃんもいらっしゃい」 私服姿の沙織が笑顔で声をかけてきた。 「よっ桐山、お疲れ。盛況だな。これもミスコン効果か?」 「ううん。今年は綾先輩が協力してくれることになって、わざわざ短編の新作書いてくれたの。もちろん未発表だから今日が初公開。だからファンの人がたくさん来てるの。綾先輩の学生時代の作品もあるから結構喜ばれてるよ」 「そっか、東城先輩効果か」 「で、あの綺麗なドレスは着ないの?」 奈緒が尋ねると、 「あれはステージ限定。汚したり傷つけたりしたら大変だから。だってすごく高価なドレスだもん。そんなの着れただけで幸せだな」 自然な笑みを見せる沙織。 「でも桐山さん、ぶっちゃけ聞くけどドレスの下は矯正下着でしょ?」 (おいおい) 奈緒の発言に慌てる秀一郎。 だが沙織は、 「そうだよ。背とウエストはちょうどよかったけど、バストとヒップが足らないから寄せ上げブラとガードルで上げてる。それでもバストはまだ足らないの」 包み隠さず正直に話した。 「東城綾ってそんなに大きいの?」 「うん。だってEだもん。あたしCだからかなりぶかぶかだよ。逆に奈緒ちゃんはキツそうだね」 沙織は奈緒の胸を見る。 「うん。お姉ちゃんBだけどあたしCだから。秀に育ててもらってるもん」 「お、おい、そんなこと言うなよ」 赤くなる秀一郎。 「佐伯くん、いまさら隠すことでもないんじゃない?」 沙織まで悪戯っぽい目を向ける。 秀一郎は居心地が悪く感じたので、 「じゃ、じゃあ後が支えてるから行くよ。頑張れよ」 奈緒の手を引っ張り、逃げるように文芸部をあとにした。 「まったく、大勢の前で際どい発言はやめてくれよな」 奈緒に文句を言うと、 「あたしはもっと言いたかったんだけどなあ。でも桐山さんもCかあ」 全く聞いていなかった。 (はあ・・・) 心の中で大きなため息をつきながら、茶道部に向かった。 「ただいま〜」 笑顔で茶道部に入る奈緒。 「ちょっと奈緒、あんまり無茶しないでよ」 和服姿の真緒がクレームをつけてきた。 「へっ、無茶って?」 「他の部の代表の子にいろいろ邪魔したでしょ」 「あれは邪魔じゃなくて秀のガード。色目遣いはルール違反だもん」 「そうかもしれないけど、でも目立ちすぎ。それに奈緒じゃなくてあたしがセンパイと一緒に廻って妨害してるって思ってる人もいるんだからね」 「おいおい、そんなに騙されてるっつーか、違いわからないのか?無理矢理真緒ちゃんの制服着てるだけだぞ」 「センパイはあたしたちのちょっとした違いがわかりますからね。けど他の生徒はわからないみたいです。あたしはずっとここで来場者対応してましたけど、奈緒をあたしと勘違いして驚いてる人が結構いました」 「あちゃー、それまずいかも。お姉ちゃんのイメージダウンになっちゃう」 気まずい顔を浮かべる奈緒。 「だから奈緒はここにいて。センパイとのデートはおしまい」 「うん。でもあと一ヶ所残ってるんだよね」 「いや、軽音は行かない。どうせライブの真っ最中だから話しするの無理だろうしな」 「ならお茶起てます。一服していってください」 真緒が茶室に案内して、抹茶を起てる。 しかも一連の動きは素人には見えない。 「真緒ちゃんってひょっとして茶道の経験あるの?」 「中学のときに少しだけです。あと今回茶道部の子にちょっと教わっただけですよ」 「でも素人には見えないよ」 「ありがとうございます。どうぞ」 茶碗を秀一郎の前に差し出す。 そのお茶はとても美味しかった。 午後4時半。 講堂に多くの生徒が集まった。 ステージ上にはミスコン代表の6人が並んでいる。 『ではこれより、ミス泉坂の発表です!』 生徒会長がゆっくりとステージ中央のマイクスタンドに向かう。 そこで一礼し、胸ポケットから紙を取り出した。 『発表します。今年のミス泉坂は・・・』 スポットライトがステージを駆け巡る。 『・・・文芸部代表、桐山沙織さんです!』 大きな歓声が沸き上がる。 沙織は両手を口に当て、驚いていた。 その横で涼と真緒が笑顔で祝福の言葉を贈っている。 沙織は導かれてステージ中央へ。 そこに花束を持った秀一郎が向かう。 「桐山、おめでとう」 「佐伯くん・・・ありがとう・・・」 花束を受け取った沙織の頬を涙が伝った。 [No.1584] 2010/07/30(Fri) 20:52:05 p57ddf1.aicint01.ap.so-net.ne.jp |