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all 扉の向こう側【全年齢】(はじめに) - スタンリー - 2010/09/18(Sat) 21:16:59 [No.1593]
第一部「WEST GATE」 プロローグ - スタンリー - 2010/09/18(Sat) 21:22:17 [No.1594]
第一部「WEST GATE」 第一話 - スタンリー - 2010/09/23(Thu) 12:32:08 [No.1595]
第一部「WEST GATE」 第二話 - スタンリー - 2010/10/06(Wed) 22:47:16 [No.1596]
第一部「WEST GATE」 第三話 - スタンリー - 2010/10/17(Sun) 17:04:32 [No.1597]
第一部「WEST GATE」 第四話 - スタンリー - 2010/11/21(Sun) 08:15:00 [No.1598]
第一部「WEST GATE」 第五話 - スタンリー - 2011/02/09(Wed) 20:54:22 [No.1599]
第一部「WEST GATE」 第六話 - スタンリー - 2011/05/05(Thu) 18:05:06 [No.1601]
第一部「WEST GATE」 第七話 - スタンリー - 2011/07/03(Sun) 11:31:56 [No.1605]
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第一部「WEST GATE」 プロローグ (No.1593 への返信) - スタンリー

タイトル「扉の向こう側」




第一部「WEST GATE」


「プロローグ」


つかさがフランスから帰ってきた年の翌年の夏、淳平が休暇を取得し、つかさ

の高校時代の親友であるトモコの夫の両親が所有している避暑地○○村に

ある別荘に向かって淳平が車を運転している。


助手席には、つかさが座っている。




2人が乗っている車は舗装された山道を走っている。


前日までの雨のせいで山道の側溝から溢れた水が道路に流れている箇所がある。

水が流れているところを車が通るたびに水しぶきができる。


つかさがカーナビの画面を見ながら。

つかさ「あと少しで、別荘に着くみたい。」



淳平「家を出て4時間かぁ。途中休憩もあったけど久しぶりのロングドライブ

になったなぁ。

昨日までここら辺は大雨が降ったみたいだけど、今日は晴れてくれて助かった

よ。」


つかさが笑顔で。


つかさ「そうね。本当、ラッキーよね。」



淳平「ただ、山の空って変わりやすいっていうから、今晴れていても、急に

土砂降りってこともあるから。」



つかさ「そうなの?今日、ここら辺にある神社でお祭りがあるらしいから

お祭りが終わるまでは、雨が降らなきゃいいけど・・・ねぇ、天気予報って

知ってる?」



淳平「夕方ころまでは晴れみたいだけど、夜は大気が不安定になるかもって

さ。」



つかさ「お祭りには夜に行きたかったけど、少し早めに出かけたほうがよさそ

うだね。」



淳平「そうだな。」



つかさ「ここのところ、ずぅっと忙しそうだったのに、よく休みが取れたわね。」


淳平「この日のために、たまってた企業のCMとか芸能人とかのPV(プロモ

ーションビデオ)撮りとかを殺人的なスケージュールをこなしてきたからな。

まぁ、実際できなかった分は営業が先方にお願いして帰ったらやるってことで

話をつけておいてくれたはずだから。」



つかさ「CMとかPVとかって・・・、映画の方は?」



淳平「そっちの方は、主に角倉さんがやってるから。それにまだ長編の経験が

ないからさ、こと映画に関してはお手伝い程度かな。」



つかさ「そう・・・。」



淳平「知ってる?最近映画で○○製作委員会ってのをテロップなんかで見ると

思うけど、あれって複数のスポンサーを募って投資リスクを分散させて映画を

作ってるんだけどさ、実際できてから、いざ映画を上映しようと思っても上映

してくれる映画館がなくてお蔵入りした映画が数え切れないくらいあるんだ

ぜ。

そこにきてこの不景気だろ、スポンサーがなかなか集まらなくてさ、映画の制

作本数自体が減ってて、なかなか撮るチャンスがないっていうのもあるから。」



つかさ「大変なんだね。」



淳平「だからさ、今はCMとかPVとかをしっかりやって認められるものを作

って実力をつけて名前が売れたら、映画のスポンサーがついて、映画の話がく

るようになると思う。」



つかさ「どれくらいかかりそうなの?」



淳平「まだ、分からないけど・・・。」



つかさ「何か、近道とかないの?」



淳平「近道?うーん、よっぽど力のある俳優とか作家の指名とかコネがあれ

ば・・・だけどやっぱり実力がないのにそんな話とかないからさ。今ある仕事

をきっちりやるしかないと思うんだ。」


つかさ(力のある作家・・・・。)


つかさが4日前、偶然街で東城綾に会い二人で喫茶店に入った時の事を

思い出す。


――――――つかさの回想の始まり。―――――――


喫茶店の中でつかさと綾が同じテーブルに相対で座っている。

つかさ「久しぶりだね、東城さん。最後に会ったのは、高校三年の冬だったは

ずだからもう5年振りになるわね。」



綾「そうね、確か、真中君の受験の日だったかな。」



つかさ「そうだったね・・・あっ、大林賞受賞おめでとう。もう1年近く経っ

ちゃったけどテレビとか雑誌の取材とかでよく見かけるから、ますます人気が

出てきて忙しそうだね。」



綾「ありがとう。西野さんだってパティスリー鶴屋2号店の店長兼パティシエ

としていろいろな雑誌で取り上げられて、私以上に忙しそう。」



つかさ「雑誌のおかげで、お店はそれなりに活気はあるんだけど、でもそれは

私の実力じゃなくて日暮さんのおかげだと思うから・・・。」



綾「そんなことないよ。2号店限定のお菓子って、あれ殆ど西野さんのオリジ

ナルでしょう。

何度も食べさせてもらってるけど、本当に美味しいもん。」



つかさ「買ってくれてたんだ・・・それに、美味しいって言ってもらえて・・・

嬉しいな。」



綾「将来、独立とかを考えてるの?」



つかさ 「すぐにってわけじゃないんだけどね、小さくてもいいから自分のお店

を出したいなぁって。」



綾「あの頃と変わってないなぁ、何に対しても前向きで積極的っていう感じが。」



つかさ「変わってないかなぁ。そういう東城さんも変わってないみたいだけど。」



綾「ううん、私は変わった・・・あの雪の日から。」



つかさ「えっ?」



綾「引っ込み思案で、自分の気持ちを出さないようにして、いろいろなことに

躊躇して損をしてたからね。だから、できる限り積極的になれるよう努めて生

きてきたから以前の私を知っている人から今の私をみたら相当図々しくなった

と思うわ。」



つかさ「図々しく・・・あの東城さんが?想像できないな。」



綾「うふふ、そう?あと少し年をとって、したたかなところがでてきたかも・・・。」



つかさ「年をとったって言ってもまだ23歳でしょ。同じ年なんだから。」



綾「うふふ、・・・ねぇ、そういえば真中君、元気にしてる?」



つかさ「う・・・うん。」



綾「気を使わないで、もう5年も前のことなんだし。

そうそう、今度ね、雑誌のTVコマーシャルに私が出演することになったんだけ

ど、それを角倉監督の事務所が撮ることになったみたいなの。もしかしたら、

真中君が撮る事になるかもしれないの。」


つかさ(淳平君が角倉さんの所で働いているのを知ってるんだ。)

つかさ「そう・・・淳平君は元気だよ。でも仕事で忙しくてなかなか会えない

んだけどね。

ところで、失礼なことを聞くかもしれないけどいい?」



綾「どうぞ。」



つかさ「今お付き合いしている方っているの?」



綾「ううん、仕事のせいにしちゃいけないけど、小説や講演が忙しくてね、な

かなか出会いとか縁がなくて。」



つかさ「変なことを聞いちゃったかな。」



綾「いいのよ、この年になって付き合っている人がいないのは他人から見た

ら、寂しそうに見えるだろうからね。

でも夢を実現するために今の小説の仕事を選んで頑張ってるんだから。」



つかさ「そう・・・夢って一体どんな?」


綾が笑顔で。

綾「笑わないでね。高校時代に真中君と約束したことなんだけどね。私の作品

で一緒に映画を作ることなの。」



つかさ「・・・・」


―――――――つかさの回想終わり。――――――――――




淳平「どうかした?急に無口になったりして。」



つかさ「えっ?ちょっと考え事をしちゃって・・・。」



淳平「そう・・・・。」



つかさ「ねえ、誰か有名人のCMとかPVとかは撮ったことってないの?」




淳平「有名人?ああ、ポルターガイアっていう音楽グループがあるんだけど

知ってる?

この前そこのグループのPVを作ったら、ボーカルのTAKUTOさんに気に入っ

てもらえてさ、また次も頼むって言われてるんだぜ。」



つかさ「あの人気ロックグループの?凄いじゃない。」



淳平「まあな。」



つかさ「他は?これから撮る予定とかも含めて。」



淳平「あまりまだ有名じゃないアイドル歌手とかなら他にもいるけど・・・。」



つかさ「有名な作家さんとかは?」



淳平「作家?うーん、ないなぁ。でも、何で?」



つかさ「特に意味はないけど・・・なんとなくね。」



別荘地に車が入り、カーナビの画面上にある自車位置が目的地付近に近づいて

いる。



淳平がカーナビの画面を見て。


淳平「目的地に近いみたいだけど、どれが目的の別荘なんだ、なんだか皆同じ

様な建物ばかりでわかんねぇよ。」



つかさ「少し車を横に寄せて、携帯でトモコにどこか聞いてみるから。」



つかさが携帯でトモコに電話をしてどの別荘なのかを聞いている。


つかさ「私、お掃除ご苦労様ぁ・・・うん、今××って言うところの辺にいる

んだけど・・・

そう・・・○○交差点を右に曲がって、3つ目の建物ね。駐車場のところに看

板があるんだ・・・・・外に出て待っててくれるの?助かるわ、ありがとう。」


つかさが携帯の通話を切る。



つさ「この先の・・・。」



淳平「○○交差点を右折して、三軒目の建物があって近くに看板があるんだろ

う?」



つかさ「うん、それでね、トモコが外に出て立っててくれるって。」


淳平が○○交差点を右折し、速度を遅めながら運転している。


「ようこそ○○村へ」と書いてある看板の前で手を振っている女性がいる。


つかさがその女性を見て。

つかさ「3っつめだから・・・。あっ、トモコだ。ねぇ、あの別荘だからね。」



淳平「分かった。」


淳平がウィンカーを出し、車を別荘の前の駐車場に停める。


つかさ「運転、お疲れ様。」

つかさがドアを開けて車から降りる。


トモコが笑顔でつかさに歩み寄って抱きつく。

トモコ「ひさしぶり。元気だった?」


つかさがトモコの腕を振り解きながら。

つかさ「久しぶりって、ほんの5日前にあんたの家で会ったったばかりじゃん。」



トモコ「そうだっけ?アハハ」



つかさ「旦那さんは?車が駐車場にないみたいだけど?」



ともこ「ちょっと、買い出しにね。」



つかさ「涼しいわねぇ、10度くらいは気温が違うんじゃない。半袖の服だと

少し寒いぐらい。」



トモコ「この季節にここに来ちゃうとムシムシした家には帰りたくなくなっち

ゃうわね。」


淳平が車のトランクを開けて、ビールや荷物が入ったバッグを取り出して、ト

ランクを閉める。


つかさ「こっちのバッグを持つよ。」


淳平「助かるよ。」


淳平とつかさが荷物をもち歩く。

トモコが別荘のドアを開ける。



淳平がトモコに対してどこかよそよそしく。


淳平「これ飲み物とビール。」



トモコ「運転お疲れ様、淳平君。」



トモコが淳平に近づき小声で。

トモコ「感心、感心、約束を忘れなかったみたいね。」



つかさ「約束?」



トモコ「何でもない、何でもない、こちらの話だから。」



つかさ「そう・・・、これ家で焼いてきたんだけどアップルパイ。」



トモコ「わぁ、自家製だよね。つかさが作ったのって美味しいから楽しみ。

それと、淳平君、飲み物は冷やしておくから、そこに置いておいて。」



淳平が飲み物とビールを指定された場所に置く。



つかさ「今日は誘ってくれてありがとね。でもお邪魔じゃなかった?」



トモコ「気にしなくてもいいって。ここに来るのも、もう3回目だしね。

夏は避暑地として使えるし、ゲレンデが近くにあるから冬になればスキー

とかボードができるからね、・・・いい所でしょ。」



つかさ「本当ね。いいひと、見つけたわね。」



トモコが満足げに。

トモコ「そう思う?」



つかさ「うん。」



別荘の裏側は木が茂ってい十数メートルさきは山を削った斜面になっている。

別荘のドアの上にお札が貼ってあるが誰も気が付かず全員別荘の中に入った。


[No.1594] 2010/09/18(Sat) 21:22:17
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