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WINGBEAT COFFEE ROASTERS

all 『太陽の国と石の巨人』プロローグ - つね - 2009/07/25(Sat) 04:13:30 [No.1508]
〜第一章 “石の国フェイスタ”編〜第一話 - つね - 2009/07/25(Sat) 04:15:52 [No.1509]
〜第一章 “石の国フェイスタ”編〜第二話 - つね - 2009/08/02(Sun) 23:12:51 [No.1515]
〜第一章 “石の国フェイスタ”編〜第三話 - つね - 2009/08/31(Mon) 02:37:46 [No.1520]
〜第一章 “石の国フェイスタ”編〜第四話 - つね - 2009/10/21(Wed) 03:12:38 [No.1533]
〜第一章 “石の国フェイスタ”編〜第五話 - つね - 2011/05/15(Sun) 14:10:54 [No.1602]
〜第一章 “石の国フェイスタ”編〜第六話 - つね - 2011/05/26(Thu) 23:46:25 [No.1603]
〜第一章 “石の国フェイスタ”編〜第七話 - つね - 2011/06/14(Tue) 01:52:54 [No.1604]


〜第一章 “石の国フェイスタ”編〜第七話 (No.1603 への返信) - つね

上空から見ても立派な物である。


今日も広大な大地にそびえ立つ、“巨人”


堂々とした様子とは裏腹に、その内部は今、動揺に満ちていた。






「国王、城下の民衆の騒ぎが収まりませぬ」


「“騒ぎ”?わしには支えを失いうろたえる様子…騒ぎとは程遠くか弱いものに見えるが?」


慌ただしい兵士の口調とは対照的に支配者はいたって冷静だった。


「はっ、その通りでございます。しかし、一人として落ち着かず、収拾がつきませぬ」


「ふむ…まあ案ずることはあるまい。姫一人の不在により揺らぐような脆弱な国に育てた覚えはない。…しかし」


一息つき、堂々たる支配者は続ける。


「わしが出よう。放っておく訳にはいくまい」


そして長いマントを翻し、歩きはじめた。


「あ…、はっ!ありがとうございます!」


兵士は安堵の表情を見せた。


それで終わると思われたやりとりだが、安堵の所為か、兵士はさらに言葉を継いだ。


「王…、して、サンウェアですが…」


扉に手をかけた王は振り返り、威厳に溢れたその目を兵士に向けた。


「焦るでない。簡単に攻め落とせる相手ではない。…“化け物”相手に無駄な犠牲も払えぬからな」


「…しかし、牽制くらいはしておいてもよいか…」


そうつぶやき、フェイスタ国王は城下町へ足を向けた。











第一章〜第七話「仲間」














すっかり暗くなった風景。


日没からはずいぶんと時間が経っていた。


ジュンペイは城を出るとあてもなく暗闇をさまよった。


…混乱…


一端の村人である彼にはこうなることは無理もなかった。


整理の出来ない思考、考えを巡らす度に行き着く自己嫌悪。


気づけばヒロシの家の前にいた。


―――俺は、自分の過ちを許してもらいたいのだろうか。


浅はかな自分が情けなく、それでもその扉を叩かずにはいられなかった。


そして扉に近づいた瞬間…





バキィッ!






ジュンペイの顔を勢いよく吹っ飛んだ扉が捉えていた。










…遠のく意識の中…


「バカッ!えっち!いい加減にしてよね!」


―――この声は―――


自らの身体にのしかかっている扉を払いのけて、その姿を見ようとする…


が、扉が重くて払いのけることができない。


―――なんでだ……ああ、ヒロシの家も来る戦争に備えてより強固なものになって…









―――そんなわけねぇだろ!


と、叫ぼうにも押しつぶされて声が出ない。




―――ヒロシ、はやくそこを…どけ…




―――はやく…そこを…



「あっ…、ジュンペイッ!」



薄れていく意識の中聞こえる優しい声…



―――ああ、アヤ、すまない…俺はもう…だめ…だ…せめて最後に君を…







………




……………


























……………





………




……






「ようっ」


……


「気が付くと、そこにはこの世で一番憎い奴の顔があった」


「バカ野郎。冗談が過ぎるぞ、ジュンペイ君」


わざとらしくニヤニヤと笑いながら喋るヒロシ。


「ジュンペイ…大丈夫…?ごめんね、早く気付いてあげられればよかったのに…」


声のしたほうに顔を向けるとそこには天使の笑顔。


「アヤちゃんは悪くない。悪いのはそこの変態男。着替え見るなんて信じらんない」


そっぽを向いたままツカサが言う。


その姿はサンウェアまでの道中、ジュンペイが見ていたものとは大きく異なっていた。


「あ…、その服、よく似合ってるよ」


「ホント?」


「うん、ホントに。いい感じだよ」


「そっか。実はあたしも結構気に入ってるんだ。サイズもぴったりだし、なんだか自由な感じ」


―――自由な感じ、か。


かわいらしく微笑む姿がまぶしいほどだ。


「この服は…、アヤ、用意してくれたのか」


「うん、ちょうど出来合いの服があって持ってきたんだけど、結局私が普段着てる服になっちゃった」


そう言って照れくさそうに微笑む。


「だってアヤちゃんが最初に持って来たの、あれってどこかの貴族が着るようなものだったじゃん。あたしはもうこの国の村人になるんだから」


「ごめんなさい…。ヒロシから王女様だって聞いたからつい…」


「まあそうなんだが、結果的にツカサちゃんの言ってることは正しいな。身を隠すためにはあの服じゃ不自然すぎる」


横槍を入れたヒロシの視線の先には上等な仕立てのドレスが転がっていた。


「うう…」


追い打ちをかけられたよう、顔を真っ赤にしてうつむいてしまうアヤ。


こんな姿もアヤらしくていい。


「アヤ、ありがとうな」


ジュンペイのその一言でようやく、アヤは安心したように表情を崩した。


「あと、これ見てよ。ジュンペイくん!」


ツカサはそう言うと嬉しそうに首飾りを持ち上げた。


その先端部分には…


「それって…」


「うん、アヤちゃんに作ってもらったんだ。これであたしも三人の仲間だよね?」


ご機嫌に微笑むツカサ。


思わず、ジュンペイはアヤを見る。


「あまりいいものではないけど、ほら、私も。これから、いろんなことを乗り切っていかなきゃならないでしょ」


「ジュンペイとヒロシと…えっと…王じ…じゃなくて…ツカサさん、そして私。みんな一緒ならきっと大丈夫だよね」


ヒロシを見ると、彼もまた首飾りを持ち上げ、笑っていた。









四人の手には同じ首飾り。





形も色も少しずつ違った「太陽のかけら」を身に着けて。





お互いのかけらを見せ合いながら微笑む、狭い家の中。





そのつながりが、本当に優しく心強いものだと、そう思えた。


[No.1604] 2011/06/14(Tue) 01:52:54
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