はじめに - takaci - 2012/01/21(Sat) 19:59:37 [No.1628] |
└ 10years プロローグ - takaci - 2012/01/21(Sat) 20:05:34 [No.1629] |
└ 10years-01 - takaci - 2012/01/28(Sat) 19:28:38 [No.1630] |
└ 10years-02 - takaci - 2012/02/14(Tue) 19:58:46 [No.1632] |
└ 10years-03 - takaci - 2012/05/12(Sat) 22:15:27 [No.1638] |
└ 10years-04 - takaci - 2012/07/27(Fri) 19:52:06 [No.1641] |
201X年9月16日。 夜のレストラン。 西野つかさ26回目の誕生日。 「つかさ、誕生日おめでとう」 真中淳平は花束をつかさに差し出した。 「淳平くんありがとう」 満面の笑顔で受け取るつかさ。 そして花束に添えられているメッセージカードを手に取った。 封を開け、中身を取り出す。 「えっ?」 驚く。 そのまま向かいに座る淳平に目を向ける。 「ええっ!?」 さらに驚く。 淳平はリングケースを開け、指輪を差し出していた。 「あれから10年。節目ってわけじゃないけど、いい機会だと思うんだ」 少し緊張気味の笑顔を見せる淳平。 「もう・・・淳平くんの・・・バカ」 つかさの声は涙に詰まっていた。 「ダメ・・・かな?」 「ダメじゃないけど・・・けどこんなプロポーズってありなの?淳平くん卑怯だよ」 「それは自覚してる。けど口にすると緊張して噛みそうな気がしたから、それってかっこ悪いだろ?」 「まあ、淳平くんならそうなるかもね。ちょっと納得いかないところもあるけど・・・ありがとう」 幸せいっぱいの笑みを見せるつかさ。 メッセージカードには、 『結婚してください』 という淳平手書きのメッセージのみ記されていた。 「あれから10年かあ。もうそんなになるんだね。本当についこの間のような感じがするよ」 つかさは当時を懐かしむ。 「あれがきっかけで、俺もつかさも変わったよな」 「淳平くんは本当に変わったよね。あれが無かったら今頃は映画監督になれていたんじゃないかな?」 「そうかもしれない。でも後悔はしていない。あの時、俺はああしたかった。結果として高校中退して大検取ってって少し遠回りの人生になったけど、それはそれでよかったと思ってるよ」 「今は普通のサラリーマンでも満足?」 「映画監督の夢を諦めたことに未練が全くないと言えば嘘になる。でもそれ以上に優先したかったことがあるんだ」 「それってなに?」 「・・・つかさと幸せな人生を送ること」 「・・・もう、今日の淳平くん変だよ・・・なんか妙に男らしいよ・・・」 また涙声になるつかさ。 「全てが満たされた人生なんて、一般人には無理だと思う。たとえ夢を諦めても、それで得られる幸せがあるならそうするよ」 「淳平くん、本当にあたしでいいの?」 「つかさ以外はありえないよ。あの時は本当に辛い思いをさせた。悪かったと思ってる。こんな風にプロポーズなんて出来る立場じゃないかもしれない。でも、それでも俺はつかさと一緒にいたい」 「あれはもういいよ。あたし、東城さんには一生敵わないと思ってる。東城さんは淳平くんの中でとっても大きな存在。でも淳平くんはあたしを選んでくれた。それだけで・・・本当に幸せだよ」 「つかさ・・・ありがとう」 屈託の無い笑顔を見せる若いふたりの門出だった。 [No.1629] 2012/01/21(Sat) 20:05:34 pb6aa92a2.aicint01.ap.so-net.ne.jp |