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WINGBEAT COFFEE ROASTERS

all はじめに - takaci - 2012/01/21(Sat) 19:59:37 [No.1628]
10years プロローグ - takaci - 2012/01/21(Sat) 20:05:34 [No.1629]
10years-01 - takaci - 2012/01/28(Sat) 19:28:38 [No.1630]
10years-02 - takaci - 2012/02/14(Tue) 19:58:46 [No.1632]
10years-03 - takaci - 2012/05/12(Sat) 22:15:27 [No.1638]
10years-04 - takaci - 2012/07/27(Fri) 19:52:06 [No.1641]


10years-01 (No.1629 への返信) - takaci

200X年4月中旬。





中上遼はクラスの扉を開けた。





「おーっす」





「よう中上、今朝も仲いいな。うらやましい限りだ」





親友の小野大樹が冷やかす。





「それを言うなら家事全般自分でやってみろ。ひとりだとマジで大変だぞ」





「でも西島が大半やってくれるんだろ?」





「共同作業だよ小野くん、でもまあ遼はいろいろ忙しいからね」





遼の隣で西島佳奈がフォローを入れた。











中上遼と西島佳奈は似たような境遇だった。





親同士が旧友で、幼馴染のふたり。





どちらも家庭が複雑で、遼は小さい頃に両親が離婚して父親に引き取られた。





佳奈の母親は未婚の母で、その母が去年に不慮の事故で他界。





身寄りの無い佳奈を遼の父親が引き取った。





そしてその父が仕事の関係で1月からアメリカに転勤。





結果的に中上の家で遼と佳奈の二人暮らしが始まった。





もともと仲が良く、年頃のふたり。





自然と付き合うようになった。





親が不在なのでいろいろ苦労はあるが、一緒に笑い、時には喧嘩し、同じ時を過ごしている。











「ところで中上よ、お前部活は決まったか?」





大樹が尋ねる。





「ああ、技術部の先輩からスカウトされてるんだ。なんかラジコンソーラーカーのレースに毎年参加してて、それに協力して欲しいんだとよ」






「そうか。中上のラジコンの腕はプロ級だもんなあ」





「それは過大評価だよ。俺以上に上手い奴はゴロゴロ居るよ」





「でも親父縛りが無ければもっと成績がいいんじゃないのか?」





「まあ・・・な」





遼は苦笑いを浮かべた。










父親の趣味の影響で、遼は幼い頃からラジコンのレースに参加していた。





特に父親ののめり込みは病気レベルで、市販車には満足せず、自ら設計、製作したラジコンカーを走らせていた。





父親は造るのがメインで、息子は走行担当。





だか一個人レベルでメーカーが作る高性能車を上回るのはほぼ不可能に近い。





それが分かっていても父親の情熱は一向に冷めず、日夜ラジコンの改良に勤しんでいる。





遼も子供の頃は走行オンリーだったが、中学の頃あたりからセッティングや技術製作レベルのスキルが上昇し、簡単な部品を作れるレベルにまでなっている。






現在は父親がアメリカで図面を引き、それを遼が製作して改良を続けている。





ラジコンレース活動には車が必要不可欠だが、近くに住む父親の友人が負けす劣らずラジコンバカで、遼と一緒にサーキットに足を運んでいる。












「お父さんの情熱は本物なんだよ。本当に熱い人だからね」





「佳奈、お前がそんな風に親父の見方をするから調子に乗るんだぞ。一個人がメーカーに敵うわけないだろ?」





呆れ気味の遼。





「でも遼だってなんだかんだでラジコン楽しんでるじゃん。自分のお金は使わずにさ」





「本音を言えば自分の金でメーカー品を買って活動したいよ。でもそんなことしたらあの親父は生活費ストップくらいしそうだから出来ん」






「まあ家計は安心してよ。あたしがしっかり管理するから」





笑顔の佳奈。





「なんかこうして見ると、お前ら新婚夫婦みたいだな」





大樹がからかう。





「それ近所のおばさんからも言われるよね」





笑顔の佳奈。





「まあ嬉しさ半分、情けなさ半分かな。そう言われるなら俺が生活費稼ぎたいよな」





遼は複雑な笑顔。





「それってある意味贅沢な悩みだよな。彼女居て一緒に生活してるから出てくる悩みだろ」





大樹は一転して不機嫌そうな顔を見せる。





「小野はハードルが高すぎるんだよ」





遼がそう漏らすと、大樹に小声で耳打ちした。





「お前はマジで外村狙ってんのか?」





「そりゃそうだ。ウチのクラスでは、いや、ウチの学年じゃトップの美人だぞ。狙ってる奴はうじゃうじゃ居るぞ」





目を光らせる大樹。





「でも外村って性格キツそうだよなあ。おまけに兄貴がしっかりガードしてるらしいぞ」





「それを何とか打ち破って見せるさ。聞いた話じゃ映研入るみたいだから俺も入る。それからだな」





4月はこんな会話をしていた。
















そして6月。





遼は大樹と机を並べて弁当箱を突いていた。





「毎日愛妻弁当ってわけじゃないんだよな?」





「弁当は交代。今日は俺が作った」





「ぶっちゃけ西島の料理の腕ってどうなん?」





「比較対象を知らないからなんとも言えんが、普通に喰える。レパートリーは佳奈のほうが多いし、手早いな」





「その辺はさすが女の子か」





「ところでお前って外村狙ってたんじゃなかったっけ?映研入るんじゃないのか?」





「それがよお、兄貴のガードがキツくてよお、男の進入部員は入れないって断られたよ」





「やっぱりガードが固いか」





「それに外村本人もなあ。思ってた以上に性格キツい」





「クラスの女子とは仲良く喋ってるけど、男に対しては厳しいよな」





「けどよお、俺の目から見ると、中上に対しては少し優しそうに見えるんだよなあ」





「佳奈が外村と仲いいからな。その影響だろう」





「なあ、西島から外村と一緒に遊ぶように持ち掛けられないかな?俺とお前を含めて4人でさ」





「ちょっと聞いてみるよ」





昼休みはこんな会話をしていた。










そして放課後、





佳奈が遼のところにやってきた。





「遼、帰るよ」





「ああ」





「あと美鈴ちゃんをウチに遊びに連れてきたいんだけど、いいかな?」





「ああ、俺は構わんよ」





(早速チャンスが向こうから来てくれたな)





遼は心の中で微笑んだ。










そして遼、佳奈、美鈴の3人で帰途に着く。





「外村って確か映研だったよな?」





遼が話題を振る。





「そうだよ。でも部長兼監督がだらしなくてさ。もうそろそろ夏休みに撮る映画の準備しなきゃならないのに、ヒロインが決まらないって理由つけてさっさと帰っちゃうんだよ。やる気あるように感じられない」






「ヒロイン、お前がやれば?美人だからカメラ栄えするんじゃないか?」





「あのへタレ監督と同じこと言うなよ。あたしは製作専門で演技に興味は無い」





「ふうん、なんかもったいないな」





「あたしより佳奈ちゃんのほうが適任のような気がする。中上も説得してよ」





「えっ、佳奈、お前映画に出るの?」





驚いた遼は佳奈に話を振る。





「あ、あたしは演技なんて絶対無理。美鈴ちゃんみたいに美人じゃないし、カメラ栄えもしないからさ」





顔を赤くして否定する佳奈。





「そんなこと無いって。佳奈ちゃんも充分に可愛いよ。中上だってそう思うだろ?」





「お、おい、答えに困るような質問ぶつけるな」





今度は遼の顔が赤くなる。





「なんだよお、彼氏なら彼女のフォローくらいしろよ。中上も佳奈ちゃん可愛いって思ってるんだろ?」





調子ずく美鈴。





「た、たとえそう思ってても、軽々しく口にするもんじゃねえよ」





「ふうん、まあもっともらしい照れ隠しと受け取っておくよ」





とりあえず美鈴は引き下がった。










そんな会話をしながら中上の家に着いた3人。





見た目は普通の2階建て一軒家。





中も取り立てて変わったところは無い。





「ふうん、思ったより普通だね。綺麗に片付いてるし」





美鈴の第一印象。





「佳奈が掃除をマメにするからな」





「遼もそんなに散らかさないからね。作業場以外は」





「作業場?」





この言葉に美鈴は反応した。





「んじゃ見せてやるよ」










遼は1階のとある部屋に美鈴を案内した。





扉を開けて中を見せる。





「うわ、なにこれ・・・」





部屋の光景に驚く。










8畳間の洋室には旋盤や各種工作機械、工具が並んでいる。





そして使い込まれた作業台。





部屋の片隅にはジャンクパーツや素材の山。





パソコンまで鎮座している。





部屋は色んな切り屑が飛び散っていて、かなり汚い感じに見える。





「なんかウチの技術室より設備整ってない?この部屋で何やってるの?」





「あれだよ」





遼は部屋の片隅にある棚を指差した。





「ラジコン?車の?」





「親父の趣味の影響さ。親父がアメリカで図面引いて、それを俺がここで作ってる」





「自分で作ってるの?」





「ああ。しかも設計から製作までオリジナル。普通の人の何倍も手間が掛かってる」





「そういや中上って技術部だったよね。これの影響?」





「まあな。技術部でソーラーカーのラジコン造ってる。学校の設備じゃ物足りないからここで作る場合も多いけどな」





「ふうん、なるほどね」





「なるほどって、なにがだよ?」





「佳奈ちゃんが中上に惚れた理由。どんな男でも光るものがあれば惹かれるんだよ。中上ってこういう部分では輝いてるよ」





「そ、そうか?なんか外村に褒められると照れるな・・・」





「佳奈ちゃんってとてもいい娘なんだから、悲しませたり泣かせたりするなよ」





「ああ、努力はするよ」





「なんだよその返事は?悲しませたり泣かせたりしてるのか?」





「ひとつ屋根の下で一緒に暮らしてればいろいろ出てくるよ。まあいろいろ大変だけど、楽しいことは事実だな」





「そういや佳奈ちゃんもそんなこと言ってたっけ」





「そう言う外村はどうなんだよ?言い寄る男が多いんじゃないのか?」





「下らない男ばっかだからうっとおしいだけ。彼氏が欲しくないって言えば嘘になるけど、だからって妥協した男とは付き合いたくない」






「やっぱハードル高いな。あと兄貴もガードしてるんだよな」





「そうなんだよ。ホントにシスコンでうっとおしい。しかも女好きでだらしないし。最悪の兄貴だよ」





美鈴の機嫌が悪くなる。





「じゃあどんなのがいいんだ?」





「理想は東城先輩かな。文芸部と掛け持ちで映画の脚本書いてるんだけど。ホント素晴らしいんだよ」





一気に美鈴の顔色が良くなる。





「あれ、東城先輩って2年の東城先輩だろ?確か6組で、美人で有名だよな?」





「そうだよ!」





「外村って・・・そっち系なのか?」





一気にドン引きした遼。





「ちょっ・・・ヘンな誤解するなあ!ただ尊敬できる先輩ってだけだよっ!」





引いた理由を感付いた美鈴は一気に怒り、全力で全否定した。


[No.1630] 2012/01/28(Sat) 19:28:38
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