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WINGBEAT COFFEE ROASTERS

all はじめに - takaci - 2012/01/21(Sat) 19:59:37 [No.1628]
10years プロローグ - takaci - 2012/01/21(Sat) 20:05:34 [No.1629]
10years-01 - takaci - 2012/01/28(Sat) 19:28:38 [No.1630]
10years-02 - takaci - 2012/02/14(Tue) 19:58:46 [No.1632]
10years-03 - takaci - 2012/05/12(Sat) 22:15:27 [No.1638]
10years-04 - takaci - 2012/07/27(Fri) 19:52:06 [No.1641]


10years-04 (No.1638 への返信) - takaci

あれから数日後、





トモコは中上家を訪れていた。





遼と佳奈にとって、トモコは幼馴染の頼れる姉的な存在だった。





佳奈の母親が亡くなったときは誰よりも佳奈のことを心配し、





遼と同居生活が始まると知ったときは心から応援してくれた。





遼と佳奈が付き合うようになったのも、トモコの後押しがあったからである。










夕刻、





トモコは佳奈と一緒にキッチンで夕食の準備をしていた。





「佳奈、ところで遼は?」





「作業場に閉じこもっているよ。今朝アメリカから図面が届いたから、それを造ってるんじゃないかな?」





「遼のお父さんもホントに病気だけど、それに付き合う遼も病気じゃないかな?好きなだけじゃそんな面倒なことはやってられないよ」






「遼もお父さんのことはいつも不平不満言ってるけど、結構楽しんでると思うよ。しかも好きなことをして自分のお金はほとんど使ってないし」






「でも佳奈は寂しくない?遼があんなだとあんまり構ってもらえてないでしょ?」





「あたしは一緒に暮らしてるだけで幸せだよ。朝起きて、朝ごはん作って一緒に食べて、一緒に学校行って、学校帰りにふたりで夕飯の買出しして・・・そんな今がとっても楽しい」






佳奈は満面の笑みを見せる。





「そっかあ。まあ遼も成長してるし、頼れる感じも出てきたからねえ」





そんな会話をしていると、遼がキッチンに姿を現した。





その表情は固い。





「遼、どうしたの?」





「親父が設計ミスった」





「えっ、うそ?」





「マジだよ。なんか軸受けがしっくり組めないなあと思って図面にらめっこしてたら、そこの寸法がコンマ02ミリズレてた。あれじゃ使えん」






ふうとため息をつき、ダイニングの椅子に腰を下ろした。





「遼、ウーロン茶でいい?」





「ああ、ありがとう・・・ってあれ?トモコ姉さん来てたんだ」





遼はようやくトモコの存在に気付いた。





「あんたも大変だねえ。ってか凄いね。コンマ02ミリってことは20ミクロンでしょ?そんなの普通の人じゃ気付かないよ」





「まあ、プラスチックの成型品なら誤差の範囲内ですね。でも削り出しの部品で、しかも軸受けです。許される誤差じゃないですね」






「ラジコンの世界もシビアだねえ。一昔前に流行ったあの・・・ミニ4駆だっけ?あっちのほうが気楽じゃないの?」





「ミニ4駆ですって?なにを言ってるんですかトモコ姉さんは?」





遼の顔つきが呆れ顔に変わった。





「えっ?」





「ミニ4駆ってラジコン以上にシビアな世界ですよ。もともとのサイズか小さいから求められる精度もワンランクシビアになるんです。ラジコンの世界だと0.1ミリ単位の調整ですが、ミニ4駆はさらに0がもう一つ増えます」






「うそ?あんな子供のおもちゃにそんな調整するの?」





「以前は子供が主体の遊びでしたが、それじゃ売れないので大人が参加できるようになったんです。そうなってから一気にシビアでカツカツな世界になりました。俺はラジコンなら組めますが、ミニ4駆は組めません」






「うわあ、遼からそう言われるとなんか引くなあ。大の大人があんなおもちゃにそんなことやってんの?」





「普通の人なら引きますよね。俺も引きました。しかも本気になるとラジコン並みに金が掛かりますよ」





「遼も立派なオタクだと思ってたけど、上には上が居るんだねえ」





「オタクってことは否定しませんけど、俺なんか軽いほうですよ。普通にラジコン走らせてるだけですから」





「でも走らせてるシャーシが普通じゃないじゃん」





佳奈が突っ込みを入れる。





「そうなんだよなあ。だから俺も結構なオタクだと思われてんだよ。それ心外なんだけどなあ」





「でも遼はオタクでもいいんじゃないの?普通の男ならそんな称号嫌がるけど、あんたには佳奈が居るんだからさ。オタクに理解のあるいい娘がね」






「それは言えますね。でも理解が良すぎて困ることもちらほらです。親父の暴走止められないんで」





「まあそれは諦めなよ」





「トモコ姉さんにそう言われると諦めざるを得ない気分になるから不思議ですね」





この一言でキッチンが穏やかな笑みに包まれた。











そして3人で食卓を囲む。





「ねえ遼、例の事件の捜査進んでる?」





トモコが真面目な顔で尋ねてきた。





「ぼちぼち、ですかね。ある程度は証言が集まりましたけど、有力な手がかりはまだです」





「どんな証言が集まったの?」





「失踪する1週間前くらい、期末テスト明けに東城先輩が体調不良で休んでるんです」





「それってテスト疲れみたいなものでしょ?」





「まあそう考えるのが自然ですが、その休み明けから東城先輩の様子がおかしくなってたみたいです」





「それ本当?」





「と言っても普通なら気付かないレベルです。いざ失踪事件が起きて、改めて振り返ってみたらそういえば・・・って感じですね」





「どんな感じに変わってたの?」





「いつもより元気が無く、落ち込み気味の表情を見せていたそうです。ただそれも微妙な変化ですよ」





「でも変化はあった。と言うことは、体調不良で休んだ日に何かがあった」





「まあそう考えるのが普通ですね。でもそれを調べるには家族から聞かないとダメです」





「東城さんの弟と友達なんでしょ?」





「正太郎から聞けないこともないと思います。でもまだ材料が足らないですね」





「なんで?」





「現在得ている情報は、家族側も知っているはずです。学校休んだ日に何かがあったと推測されるわけですから。だからその件について教えてくれって言っても、先日のあの対応では無理でしょ」






「じゃあ諦めるの?」





「まだ諦めませんよ。けど家族側も知らない、学校側での有力な情報が出てからです。それからギブアンドテイクですよ。今はまだその状況じゃないです」






「そっかあ・・・」





トモコは落ち込んでしまった。





「トモコお姉ちゃんは西野先輩と仲が良いんだよね?」





佳奈が尋ねる。





「うん、1年のときから同じクラスで仲が良くってね。親友のひとり」





「どんな性格なんです?」





先日の錯乱の様子ではそこまでは掴めない。





「基本的には明るい娘。みんなを引っ張るムードメーカー的な存在だね。頭も良いし、悪い評判は聞かない」





「そんな人があんなに取り乱すんですか?」





遼には信じられない。





「うーん、よく知らないから軽々しくは言えないけど、恋愛絡みになるとちょっと性格変わるかもね。あの元カレのことは本当に好きみたいでかなり執着していたような感じだったね。付き合っていた時もほとんど放ったらかしにされてたんだけどずっと我慢して待ってたし、去年の冬に振られてしばらくは明らかに落ち込んでいたから」






「えっ、振られた?西野先輩が?」





「それ本当ですか?」





遼、佳奈が揃ってトモコに尋ねる。





「うん、去年の冬に振られたって本人から聞いたよ。あの時は本当に辛そうだった」





そう語るトモコの表情も辛そうに見える。





「それが本当なら、こっちの情報とは異なるな」





「うん」





「えっ、どういうこと?」





今度は逆にトモコが尋ねる。





「こっちの情報では、去年の冬に真中先輩と西野先輩が別れたことまでは共通です。でも真中先輩が振られたって聞きました」





「ちょっとちょっと、振られたのはつかさだよ。振ったのは真中って元カレ。つかさそう言ってたもん」





「俺も外村の兄貴や北大路先輩からその辺りのことは聞きました。真中先輩は西野先輩に振られたって言ってたそうです」





「なによそれ?どっちも振られたって・・・」





意味が分からない佳奈。





「これってつまり何か行き違いがあったってこと?お互いが振られたって思ってたってことは・・・」





「お互いがまだ好きだった可能性がある、ってことですね」





「それで再会してからずっと仲が良かったわけだ。なんかのすれ違いがあって別れたけど、お互いまだ好きだった。それで再会してからさらに惹かれていった。つかさ本当に嬉しそうだったもん」





「西野先輩としては、真中先輩との再会をきっかけにして仲を深めよう、よりを戻そうとした。そう思ってたら真中先輩が失踪した。原因は東城先輩、ってことですか。それが事実なら許せないでしょうね」






遼も先日のつかさの錯乱の理由に納得がいった。





「でもそれならなんで真中って男は失踪したの?つかさが好きなら東城って女の誘いなんて断るのが普通じゃない?」





「真中先輩の中で、3人の女子がどんな位置付けだったかですね。俺の推測では、東城先輩も西野先輩もほとんど同じくらいだったんじゃないですか?北大路先輩はちょっと低い感じに見受けられましたね」






「それで東城先輩から誘われて、東城先輩を選んで一緒に失踪した」





佳奈がそう結論付けた。






「あたし、真中って男が一方的に悪いと思ってたけど、そんな簡単な話じゃなさそうだね」





「この件は複雑ですよ。根本はなぜ真中先輩までもが一緒に失踪したかです。いろいろ調べましたが、簡単な誘惑でほいほい動く人じゃなさそうです。根は真面目な人です。そんな人が失踪するなんてよほどのことです」






「そんなよほどのことってどんなのがあるわけ?」





「それが分かれば苦労しませんよ。いまそれをみんなで懸命になって探しているわけですから」





「そっか、そうだよねえ・・・」





「あと、その『よほどのこと』がどのタイミングで東城先輩から真中先輩に伝わったかですね。いきなり聞かされてその衝動で動くような人じゃないみたいです。1〜2日は考えてからの行動でしょう。だから失踪する前に誰かにそれらしきニュアンスを匂わせるメッセージを残している可能性も捨てきれないですね」






「えっ?もしそうなら、つかさにも何らかのメッセージがあったってこと?」





「その可能性はあります。西野先輩が気付いていない可能性も高いです。先日の様子じゃ冷静になって振り返る余裕があるかどうか・・・」






「あたし、つかさに聞いてみる!」





遼の推理を受けて、トモコは携帯を取り出した。


[No.1641] 2012/07/27(Fri) 19:52:06
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