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R「喪失」 8 (No.795 への返信) - お〜ちゃん








「ほら、淳平くん!こっちこっち!!」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ〜」

「アハハ!だらしないぞ〜 ほら、見て!すごい綺麗!!」

「はぁ はぁ はぁ・・・・何もいきなり走り出さなくても・・・」

つかさと淳平はとある海岸へ来ていた

あの事件から1週間ほどたった。

唯も落ち着きを取り戻し、もう普通に学校へと登校するようになった日の夜だった






プルルルルル〜・・・

「ったく、誰だよ!こんな夜中に!!」

相も変わらず淳平の部屋で寝ている唯を恨めしそうに見つめながら、淳平は一向に起きる気配のない母たちへの怒りと共に机の上の電話を取った

「はい、真中ですが!!」

やや怒り気味の口調。

「・・・もしもし・・・?」

受話器の向こうからか細い声が聞こえる

「・・・え!?・・・・に・・・西野!?」

「あ、淳平くん?良かった・・・」

「ど・・・ど・・・どうしたの!?こんな夜中に・・・」

「あ・・・うん・・・・」

時計を見ると夜中の1時を回っていた

「・・・・・・・・・・」

受話器の向こうからはただ、小さな息だけが聞こえてくる

「あ・・・あのさ・・・・」

淳平が口を開いた

「何かあったの?バイトとか・・・最近休んでるだろ?俺、たまに西野いないか覗いたりなんかしちゃったりして・・・あはは・・・」

(お、俺は何を言ってるんだ・・)

「あ・・・あのね・・・淳平くん・・・・」

つかさの声がやや重みを感じる

「あたしね・・・・ずっと頑張ってきたんだよ・・・」

「・・・!?に・・・西野??」

「でもね・・・・・・これ以上は・・・」

つかさが何かを求めてる

つかさが何かを言おうとしている

だが、淳平は自分からそれを聞き出すことがなかなかできない

「お願い・・・淳平くん・・・」

「な・・・何!?・・・」

つかさからの言葉でやや気持ちを楽にしながらも突然の出来事に心臓の鼓動が早まる

「3日間・・・・」

「3日間??」

「うん・・・・3日間だけでいいから・・・・・・あたしだけの淳平くんになって・・・」

「・・・・西野・・・それって・・・?!」

「お願い・・・・・・・・ねぇ・・・・2人だけで何処か行こ・・・・」

「ちょ、ちょっと待って・・・西野!何を突然・・・・・!?」

つかさの発言にアタマがパニック状態になる

つかさの受話器を握る手が汗で濡れる

「今日の朝5時・・・・・駅の改札で待ってるね・・・」

「え!?・・・・に・・・西野!?」

プツッ・・・・

「プーープーーー」

「な・・・西野・・・一体・・・・」

受話器を持ったまま固まる淳平。だが、つかさの言葉、そして口調から何か胸騒ぎがしてならない
今は・・・・1時半か・・・

4時に起きれば間に合うか・・・

淳平はバッグに着替えを詰め込み、財布の中身を確認してから唯にバレないようにそっと眠りについた




『明後日まで、友達の家に泊まります 大丈夫です』






「こらっ!淳平くん!何をぼ〜〜っとしてるのかな?」

不意につかさの顔が淳平の目の前に覗き込むように現れた

「わっわっわわわっ・・・!!」

「な、何だよ!その驚きようは!!」

「い、いや・・・その・・・あの・・・」

(まさか目の前に西野の顔に思わず照れたなんて言えないもんな〜)

「もう、はっきりしないな〜。あ、淳平くん、見て!あっちの砂浜に海の家があるよ!」

「あ、ホントだ・・・そうだ!西野!お腹減らない?焼きそばでも食べようよ!俺、おごってあげる!!」

たかだか焼きそばなのだが、淳平は得意げに胸を叩いて自慢して見せた

「うん!」

つかさはそんな淳平に満面の笑みで応えた

「さっ、行こうか!」

「あっ・・・ちょっと待って・・・よっ・・・とっ・・・」

淳平の後ろを歩くつかさの様子がちょっとおかしい

「どうしたの?西野?」

「あ・・あははは・・・」

つかさは歩くたびに左右にヨロヨロとよろけてしまう。

「ぷっ!西野!そのサンダルのせいじゃね〜の!?」

つかさが履いているサンダルはややヒールがあり、砂浜にヒールが刺さって歩きにくいのだ

「あっ笑うな!この〜〜!!」

「ごめんごめん!サンダル脱いだら?裸足の方が歩きやすいよ?」

淳平の言うことももっともだ

「そうなんだけど・・・ホラ・・・この砂浜、とっても熱くて・・・」

つかさは唇を尖らせながらチョコンと座り込み、手のひらに砂をとって淳平に見せる

「あ・・・そっか・・・・」

ちょっと困った様子の淳平をつかさはしゃがみ込んだままジッと見つめる

「あ・・・あのさ・・・淳平くん・・・・?!」

その言葉よりも早く、つかさの目の前に大きな淳平の手が伸びてくる

「に、西野!・・・よかったらその・・・俺が引っ張っていくよ・・・」

淳平はまともにつかさの顔を見ることはできず、海の方を見つめながら耳まで赤くなっていた

今、つかさがして欲しかったこと。
そう、淳平と一緒に手をつないで歩いて行きたい

それを淳平の方から誘ってくれた
つかさの気持ちがどんどん嬉しくなっていく

「うん!ありがと!!」


ギュッ


小さな手のひらが、これでもかと言わんばかりの強い力を淳平の手のひらに伝えていく

「な・・・なぁ、西野?ちょっと強くないか?」

「そ、そう?だって、このくらいギュって握ってなくちゃよろけちゃうんだもん!」

「アハハ・・・(そうなのか?・・・・)」


サクッ サクッ サクッ・・・・


軽い音を立てながら、二人の軌跡が砂浜へと刻まれていく

海から吹いてくる風が、この太陽と地面からの暑さとは違って冷たくて心地よい


「ふふふ・・・」

突然つかさは笑いだした

「な、何?どうしたの、西野・・?」

「え?ううん、な〜〜んでもない!」

「な、なんだよ、一体・・・」

「いいの!それより、淳平くんの手って大きいんだね!やっぱ男の子なんだな〜」

「い!?い、いきなり何を・・・」

「アハハ!なんか慌ててる〜〜」


はたから見たら、とても仲の良いカップルなのであろう

海の家でも、おばさんに間違われてアタフタした淳平の姿があったくらいだ

一方のつかさはそんな淳平を見て、クスクスと笑っていた


パッと見冴えないが、しっかりと彼女のことを見つめつづけている彼氏

誰が見てもかわいいと思う笑顔で、絶えず彼氏へ微笑み続けている彼女




西野つかさ 真中淳平




2人は恋人同士ではない

だが、そこら辺にいる恋人同士よりはお互いをよく理解しているといえる

どちらかが一歩前に出ればそれで済むことなのであろう

だが今はまだ2人ともその一歩の距離がとても長かった





この日の夜を迎えるまでは


[No.796] 2005/01/25(Tue) 18:34:04
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