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R「喪失」 9 (No.796 への返信) - お〜ちゃん












はぁっはぁっ・・・・

突然の土砂降りに、つかさと淳平は急いで目的の場所へと走り込んできた




「ご、ゴメンね、淳平くん!海で遊び過ぎちゃったね」

「い、いや、そんなことないよ!凄く楽しかったし!!」

「・・・うん!あたしも!」




2人がたどり着いたのは、とある一軒家

見たところ、かなりの年代の家ではあるが、誰も住んでいる気配はない





ガラガラガラ・・・・





いきなりつかさがドアを開けた


「ちょ、西野!?」


「平気 今は誰も住んでないの・・・」


「え!?」


「ここね・・・あたしのおばあちゃんち・・・」


「おばあちゃん・・・?!」


「うん・・・小さい頃、よく来てたんだ・・・あたしも住んでたことあって・・・」




ポツリポツリと下を向いて話す

よほどおばあちゃんのことが好きだったのであろう



「に、西野!早く着替えた方がいいよ!!ほら、風邪引いちゃうぜ!!」


淳平は手を上げて大声で話した


「あっ・・!?」


「あ・・あれ・・・・あ、あははは・・・」


淳平が上げた手は、しっかりとつかさの手を握っていた

先ほどの大雨で走り出す時に、淳平は無意識につかさの手を取って走り出していたのだ

慌ててパッと手を離す二人



「じゅ、淳平くん!そこの部屋が居間になってるからそこで先に着替えてくれる?あたしはお風呂の準備をしてくるから・・・」




「う、うん・・・・」





(って、お風呂―――?!  ってことは、アレか・・・もしかしてもしかするちと・・・)






淳平の妄想モードがONになる


『ねぇ、淳平くん。背中流してあげよっか?』


『な、何を言ってるんだよ、つかさ。服が濡れちゃうからいいよ』


『ううん、濡れないよ。だってホラ、タオルなら濡れても平気でしょ?』


『あ、アハハ〜参ったな〜じゃあ俺もつかさの背中を流しちゃおうかな〜』


『いやん♪淳平くんったら〜』


『ぬははは〜〜〜・・・・・』


(ぬははは〜〜・・・)



「ぬははは〜〜・・・・」






「・・・・・・・どうしたの?淳平くん・・・・」


ヨダレを垂らしてニヘラ笑う淳平の姿を、シャツだけ着替えて風呂の準備を終えたつかさが軽蔑な眼差しで佇んでいた









チャプン・・・・


「ふぃ〜〜〜・・・・」


肩まで浸かると、思わず声が漏れてしまう


チェッ、結局西野だけ先に入っちゃうんだもんな・・・って当たり前か・・・


でも風呂上りの西野、かわいかったなぁ〜


な〜んかこう濡れた髪が色っぽいっていうの?


また妄想がチラホラと動き出す





「しかし大きなうちだな〜」





淳平はこの家の居間や廊下などを思い返す


「だって、この風呂だけで俺の部屋くらいあるぜ・・・」





西野、一体どういうつもりなんだろう


電話の時は凄く思いつめたような感じがしたんだけど・・・


でも、今日会ってみるとそうでもないみたいだし


俺の取り越し苦労なのかな・・・


でも、学校休んでまでってことは・・・やっぱ何かあったんだろうな



普段は鈍感な淳平だが、こういうことになると脳が働き出す



ま、まさか俺と一緒になりたいってことか?!


な〜〜んてな・・・そんなわけないか・・・


でも2人だけだし・・・そんな雰囲気になったら俺、たぶん・・・






「淳平く〜ん、ココに浴衣置いておくからね!」


ビック〜〜〜!!!


ドブン!!


思わず湯船に顔を沈めてしまった


「な、何!?大丈夫!どうしたの?淳平くん!!」


ガラガラ!!


「ぶはぁっ!な、何でもないよ、西野!だいじょ・・・・・ぶ・・・・」


湯船から顔を出した淳平は、勢い余って立ち上がってしまっていた



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



扉に手をかけたまま、固まってしまっているつかさ



「ア・・・・・・・・・・・・・・・・」



隠すことも忘れ、同じく固まってしまっている淳平



「キャーーーーーーっ!!」



「ち、違うんだ西野!こ、これはその・・」



「バカっ!変態!!」



「違うんだってーーー!」



「もう知らない!!」




ピシャッ




「西野〜〜〜〜〜・・・」


湯船から上半身だけを前に突き出して、半ケツを湯から浮かべた姿は見るに耐えない姿であった








そ〜〜〜〜〜・・・・


居間のふすまをそろりと開ける


「あ、あの・・・お風呂ありがとうございました・・・」


ガチャン!!


ちゃぶ台の上に並べている茶碗を置く音がやや大きい


(うぁ・・・怒ってるよ・・・・)


そろそろと中に入り、隅の方に置いてある座布団の上にチョコンと座る


「・・・・・・・・・」


(あちゃ〜怒ってる・・・・・)


つかさの横顔だけで、膨れている様子がよくわかる

だが、その膨れている顔とは裏腹に、並べられていく料理はとてもおいしそうだ




ぎゅ・・・ぎゅるるるるるる〜〜〜〜・・・

淳平の腹の虫が鳴った


「なっ、コラっ、何を鳴いてるんだ!この!!」


淳平は慌ててお腹を押さえた


「・・・プッ・・・クスクス・・・・」


「あ・・西野・・・・?」


「もう、ホラ!早くこっちに来てよ!一緒に食べよ!!」


「あ・・・う、うん!!」


淳平は四つんばいで這いながら料理の目の前に移動した


「うっは〜〜うまそう!!これ、ぜ〜んぶ西野が作ったの??」


「うん、さっき売ってた野菜と、あとは残ってた缶詰なんだけどね・・・」


「いやいや、すっげ〜よ、西野!」


「うん、それよりも早く食べてみてくれないかな〜」


「いただきま〜す」




パクッ




淳平は一口運んだ


「どう?」


不安そうに覗き込むつかさの顔


「う、うめぇ!とても缶詰とはおもえねえ!!」


「そう?良かった!」


次々と口に運ぶ淳平

その姿を嬉しそうに見つめるつかさ





毎日、こうして過ごしたいな・・・





「ん?にしふぉ(西野)、ふぁみかいっふぁ?(何か言った?)」


「え?ううん、何も!明日はちゃんとしたの作ってあげるからね!」


「なんか悪いな!でも、マジうまいよ!」


「ありがとう!」



ニコっと笑うつかさ




やがて食事も終わり、静寂の時間が訪れる



「ふぁ〜〜・・・・」


淳平は大きく手を伸ばしてあくびをした


「あ、淳平くん。疲れた?もう今日は寝る?」


「え?いや、あははは・・・ちょっと早起きだったから・・・」


「ふふ・・そうだね!実は・・・あたしも」


ペロっと舌を出して笑うつかさの姿に一瞬ドキっとする


「じゃあ、寝ようか!・・・・ってところで布団とか・・・・は?」


「え?・・・・あ・・・・えっとね・・・」


つかさはそう言うとそそくさと部屋を出て行った




(な、何なんだよ今の間は!?も、もしかして・・・・・)




またまた妄想のスイッチが入る


『ねぇ、淳平くん』


『なんだい?つかさ』


『お願い、一緒に寝てくれなきゃ嫌!』


『ったく、しょうがないな〜つかさは』


『だって、だって!ずっと淳平くんと一緒にいたいんだもん♪』


『ぬぁっはっはっはっ!つかさは子供だな〜』


(つかさは子供だな〜)


「つかさは子供だな〜」





「誰が子供ですって?」



両手に布団を抱えたつかさが、淳平のすぐ目の前で軽蔑の眼差しを向けていた


「いぃ!?西野!?い、いつからそこに??」


「いつからじゃないわよ!何であたしが子供なのよ!!」



バフッ!!



つかさは淳平に布団を投げつけた


「だ〜〜ち、違うんだよ!西野、これには深〜〜い訳が・・・」




ピシャッ!!




力強く閉まったふすまに、つかさの怒りを感じた淳平はしょぼしょぼと大人しく布団を敷いて寝床に着いた
















リ〜ン・・・・・リ〜〜〜ン・・・・・・




静かな部屋の中に、外から虫の声が鳴り入ってくる


持ってきた腕時計の音が、微かにカバンの中から聞こえてくる



少しシミがついた天井を見つめる

西野・・・大丈夫なのかな・・・

結局、今日は西野何も言ってこなかったし・・・

逆に、俺、なんか怒らせてばっかだし

でも、凄く喜んでくれたりもしたし・・・・

う〜〜ん・・・・・

難しい・・・








明日はどうするんだろ・・・

また何処かに行くのかな?

それとも、ここら辺を案内とかしてくれるとか・・・

しかし・・・

この広い居間に俺1人って・・・・

しかも、なんかこの布団、大きくね〜か?


でも、まぁいいや・・・




今日は・・・・寝よう・・・














す〜っ・・・・






ゆっくりと、そして静かにふすまが開く


「・・・ん?あれ?西野!?」



寝巻き姿のつかさがやや真剣な表情で立っている



「どうしたの?」



淳平は、つかさがきっと話をしに来たのだと思い、起き上がって明かりをつけようとした





「明かりはつけないで・・・」





「・・え!?」



「お願い・・・・このままで・・・・」



つかさがゆっくりと近づいてくる



「西野?ちょ、ちょっとどうしたの??」



「淳平くん・・・」



上半身だけ起こした淳平のやや斜め前に座り込む

その表情に先ほどの怒った様子もなければ、あのかわいらしい笑顔もない




「・・・・・にし・・・・の・・・」




「・・・・・・・・・・・・・・」




視線を落とさず、ただ淳平の眼だけを見つめる








り〜〜ん・・・・リリリ・・・・





虫の音が鳴り響く






ど、どうしたんだろ・・・もしかしてやっぱ・・・その・・・・



「あのさ・・・一緒に寝てもいい?」



「え・・・えぇぇぇぇーーーーー!!!!」



つかさの発言に驚き焦る



「・・・・・・・」



「だ、だってほら、その・・・に、西野と俺って・・・その・・・」


自分でも何を言っているのかわからない

妄想で望んでいたこととはいえ、実際に目の前にすると何も出来ないいつもの自分がいる

淳平のその様子にやや眼を丸くして・・・そして顔を伏せ




「・・・・・ご・・・ごめんなさい・・・・」




つかさはゆっくりと立ち上がろうとした




「ま、待ってよ、西野!!」


思わず伸ばした左手がつかさんの腕を掴む


ビクッ!


「・・・!?」


左腕をつかまれ、顔を上に上げて驚き固まるつかさ



「あ・・・そのさ・・・・」



淳平も言葉につまる



「その・・・・この布団、俺も大きいかな〜なんて思ってたんだ・・・端っこ同士なら・・・大丈夫だよ・・・」



その言葉に眼を瞑るつかさ



「ありがと・・・」



そっと右手を淳平の左手に沿え、ゆっくりと布団の中に入る

淳平の左手は、もうつかさに左腕を離してはいたが、つかさの右手はまだ淳平の手の上の乗ったまま





ドク ドク ドク ドク



心臓の音だけが耳に響く



(に、西野・・・どうしたんだろ・・・・・ってか、俺、だいじょうぶなのかな・・・)



天井を見つめたまま、自分の中の理性と戦い始めていた




(い、いいじゃないか・・・そうだよ。だって西野の方から言ってきたんだし・・・)




チラっとつかさの方へ顔を向ける



「!?」



横を向いた状態で、つかさが淳平のことを見つめている


(西野・・・!?さっきからずっと見てた?!)




「やっと・・・こっち向いてくれた・・・」


「あ・・・・」


「淳平くん・・・・」


「・・・・・あ・・・・うん・・・」



つかさの小さなくちびるが微かに動く



「あのね・・・あたし・・・」




淳平の手に重なったつかさの冷たい手に力が篭る




「あたし・・・・・」



「西野!!」



つかさの言葉を遮るように淳平が口を開く



「?!・・・」


眼を丸くするつかさ


「あ・・・あのさ・・・その・・・・・・西野・・・俺さ・・・」


淳平の手がつかさの手と重なり、そして指がしっかりと絡みあう


ピクン・・・


「・・・・・・・」



「俺・・・・」



淳平の手が、半ば強引につかさを引き寄せる




「あ・・・」



ギュッ




しっかりと淳平に抱きしめられるつかさ



「じゅ・・・淳平くん・・・・」



「西野・・」



(はぁ・・はぁ・・・・・やっちまった・・・・西野の身体、柔らかくていい匂いがして気持ちいい〜〜)



淳平の右手に力が入る



「ん・・・」



つかさの顔が淳平の首の辺りに埋まり込む



髪の毛からの甘い匂いが淳平の煩悩を溶かし始める



「に・・・西野・・・そのさ・・・・」



「うん・・・・」



抱きしめた少女から小さな声が胸に響く



「ま、前保健室でもさ・・・こんなことあったけどさ・・・・」



「・・・・・・あったね・・・」



「お、俺、あの時・・・・電話がなかったらって・・・・」



「・・・・・・・バカ・・・」



淳平の浴衣をつかさの小さな手がギュっと掴む



「西野・・・あの時もし、鳴らなかったら・・・俺と・・・」



「・・・・・・・・・・」



淳平はつかさの顔を見た

つかさは照れた様子で淳平の胸に顔を埋めている



「その・・・・・一緒に・・・・・」



つかさは眼をゆっくりと開き、目の前に愛しい淳平の瞳を見つめる



「あ・・・・」



間近で見るとますますかわいい

あの西野つかさという美少女を今、抱きしめているのだ

淳平の中の男も、自然と目覚め始める



「・・・・・・・うん・・・・」



眼を潤ませながら、やや紅潮した頬のまま、つかさは頷いた



「西野・・・」



淳平の手が優しくつかさの頭をなで、そして頬へとゆっくり移動する



「あ・・・淳平くん・・・・」



そっと親指で頬をなぞられると、自然と瞳を閉じてしまった



「西野・・・・・・・・」



小さく頷く少女の唇に、淳平の唇がゆっくりと重なり合った


[No.797] 2005/01/25(Tue) 18:46:51
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