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『深まる絆』 「ハァ…ハァ…」 淳平は息を切らしながら病院へと向かった。 夏とはいえ、もう辺りは暗くなっており、病院からの明かりが目立って見える。 淳平は急いでその中へと入っていった。 「さっき運ばれてきた…、西野つかさの病室どこですか!!!…」 病院と分かっていても、心配でつい大声になってしまう。 「西野つかささんですね。152号室になります。」 病室を聞いた瞬間、淳平はダッシュで病室へ向かった。 病室のドアを恐る恐る空けた淳平の目には、 いつものつかさがいた。 「西野!」 「淳平くん!…ごめんねこんなところまで来てくれて。」 つかさはベッドに寝転び、上半身だけを起こした格好だった。 「西野、大丈夫なのか?」 「うん。ストレスが原因で倒れたみたい。大丈夫なんだけどしばらくは安静にしておくようにって。だからちょっとの間入院することになるかな…。」 「そっか。でも元気そうでよかったよ。ホントに。」 「うん。心配かけてごめんね。」 「別にいいって。でもさ、ストレスが原因なんだろ。あんまりいろいろ一人で抱え込まないほうがいいぜ。何でも話してくれよ。文句でも、愚痴でも、何でも聞くからさ。」 「うん、ありがと。……でもストレスの原因は他にあるのかもねー。」 つかさはそう言って悪戯っぽく笑った。 「西野?」 「ほら、その呼び方。淳平くんあたしのことずっとそう呼んでるよね。」 淳平はつかさの言いたいことがよく分からなかった。 「だからぁ……」 つかさには珍しく顔を赤くして、もじもじとしている。その姿がまたたまらなく可愛い。 (え…急に様子が変わったな。なんかこっちまでドキドキしてきた。) 「あたしのこと……、名前で呼んで…」 「えっ、名前でって…?」 「もうっ!とぼけるなよな。淳平くんはあたしの彼氏だろ。そんなの自然なことじゃん。」 つかさの言う通り、恋人同士の関係になった二人が名前で呼び合うのは、極自然なことである。 それでも、いざ名前で呼ぶとなると恥ずかしさが込み上げてくる。 (名前でって…。確かにそう考えれば自然なことだけど…。いざとなると照れるよな…あぁ、緊張してきた。) 「ねぇ。はーやーく」 急かすようにつかさが期待いっぱいの笑顔で言う。 (こんな顔で見られたら、誰だって言うこと聞くよ…) 淳平は顔を真っ赤にして口を開いた。 「えっと……、つかさ……大好きだよ。」 淳平の心臓は激しく動いている。 (やばい、メチャクチャドキドキしてるし。しかも言うこと無かったらって『大好き』なんて…あぁ、今になってまた恥ずかしくなってきた…) 淳平はさらに顔を赤くして下を向いた。 「淳平くん。」 つかさに呼ばれたので淳平は顔を上げた。 すると つかさの唇が淳平の唇にやさしくふれた。 「大好きだよ。淳平くん。」 つかさは淳平に満面の笑みを向けた。 淳平はその場に固まって動けない。 そして…、 ガチャッ 「面会時間もう終わりですよー。」 淳平は看護婦さんのその声でやっと立ち上がった。 「じゃ、じゃあ西…じゃなくて、つかさ、明日も来るから。」 「ははは、呼び方戻りそうだよ。…今日は心配かけてごめんね。」 「いいよ。そんなの気にしなくても、じゃあ、無理しないようにな。」 「ありがと。じゃあね。」 つかさがとりあえず無事だったことを確認して、淳平は安心した。 そして、今日つかさへの想いがまた強くなった。 つかさも淳平への想いがより強くなった。 二人の絆はまた深まっていく。 別れを告げた後、二人は恋人であること、お互いの想い、そして、一緒にいられる幸せをかみしめていた。 [No.832] 2005/02/03(Thu) 23:27:53 IP1A0225.oky.mesh.ad.jp |