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No.935へ返信

all Thank you for your love - つね - 2005/03/12(Sat) 00:24:06 [No.933]
Thank you for your love 2 - つね - 2005/03/12(Sat) 00:38:15 [No.935]
Thank you for your love 3 - つね - 2005/03/23(Wed) 22:49:36 [No.968]
Thank you for your love 4 - つね - 2005/03/26(Sat) 21:27:19 [No.977]
Thank you for your love 5 - つね - 2005/03/26(Sat) 21:35:50 [No.978]
あとがき - つね - 2005/03/26(Sat) 21:57:24 [No.979]


Thank you for your love 2 (No.933 への返信) - つね

『ずっと一緒にいようね。』




あの日交わした、不安な約束から逃れて、




自由を掴んだのに、




こんなにも心が苦しくなるのは何故…








-Thank you for your love 2-









まだ残暑が残る九月のある日、


俺はいつものように大学から帰っていた。






「真中くん、真中くんが監督できるの、もうすぐだね。」


いつものように楽しそうに話す東城。


「ああ、ホントに楽しみなんだ。東城の脚本も完璧だしな。」




本当にここ数日の生活は充実している。




そんな俺も笑顔で話していた。


そのとき俺の目に一軒の店が目に入ってきた。





『パティスリー鶴屋』





最近西野に関するものが妙に目につく。




いっそのことすべて忘れてしまえればいいのに…



その度にいつもそう思う。








「真中くん?」


東城が心配そうに尋ねてきた。


「…ああ、なんでもないよ…」


「…それよりさあ、脚本の始まりの部分、俺ホントにすごいと思ってさ。ここを映像化するのスッゲェ楽しみにしてんだ。」


(過去なんか振り返らなくても俺にはこんなに楽しい今があるじゃないか)


俺は無理矢理自分にそう言い聞かせてまた歩き始めた。

















次の日、


日曜日で今日はサークルも休みだった。


久しぶりの休日、


朝から俺は家でごろごろしていた。


今日は親も出掛けていて家には俺だけしかいない。




ピンポーン


部屋の中にベルの音が鳴り響いた。


「誰だよ、ったく。」




面倒臭そうに起き上がりドアを開けると、




そこに立っていたのは…




外村だった。




「よう真中、久しぶりだな。」


「外村…。何しに来たんだよ。」


「何って、久しぶりの親友との再会にそれはねえだろ。とりあえず上がらせてもらうぜ。」


「おい、待てって、」


俺に有無を言わせないうちに外村は家の中に入っていった。













「で、何の用なんだ?」


俺はもう一度外村に聞いた


「特に用はねえよ。ただ久しぶりに話せれたらなって思ってな。」


そう言って床に座り込む外村はちっとも変わってなかった。


「で、どうなんだよ。真中。」


「どうって、何が…?」


突然の質問に少し戸惑う。


「バカ、大学生活に決まってんだろ。他に何があるんだよ。」


外村は昔と全く変わらない調子で話す。


「大学は本当に充実してるよ。そうだ、今度は俺が監督させてもらえるんだぜ。」


「そうなのか。良かったじゃん真中。」


「ああ。で、外村のほうはどうなんだよ。」


「うーん、俺はぼちぼちってとこかな。」



懐かしいテンポで会話が進んでいく





久しぶりに話した俺達はいろいろな話で盛り上がった。
















そして昼を過ぎた頃、





「あ、そうだ。そういや差し入れ持って来たんだよ。」


外村はそう言いながら袋から白い箱を取り出した。


「これって…ケーキ?」


「ああ、二人で食べようぜ。たぶんかなりおいしいと思うぜ。」


そんなこと言われなくてもそのケーキの味がいいことはすぐに分かった。


白い箱には小さく店名が書かれている。





『パティスリー鶴屋』





「ん?…真中どうした?」




固まってる俺を見て外村が声をかけた。


「…ああ、俺フォーク持ってくるな。」


俺はそう言って台所に向かった。






台所から帰ってくると箱から取り出されたケーキが二つ置いてあった。


俺は外村と向かい合わせに座った。






いちごのショートケーキ…付き合い始めたあの日、西野と一緒に食べたケーキだった…





「真中、早く食べろよ。うまいぜ、このケーキ。」


外村に急かされて一口のケーキを口に運んだ。




…懐かしい味がした。







『淳平くん、うまくできてるかな?』






『淳平くんのために愛情いっぱい込めて作ったから。』






西野の姿が、言葉が、鮮明に思い出された。














「真中…お前…」



俺は気付くと涙を流していた。


今まで自分の中でごまかし続けた気持ちが溢れた








−西野に…もう一度会いたい−








俺はしばらくの間泣き続けた。








そんな俺を見て外村が口を開く。


「つかさちゃんのことでも思い出したか…?」


俺は頷いた


「俺、大学の暮らしは本当に充実してて…でも何かが違ってた。」





今まで溜め続けていた想いが言葉に変わり、俺の口からこぼれていく。






「考えてみれば西野がいなくなってから、時々すごく虚しい気持ちになった。」






「西野がいなくなって、やっと気付いた。やっぱり西野がいないとダメなんだって。」





「…でも…西野に会いたくても、西野は今頃…」





「何言ってんだよ。」



外村の言葉が俺の口を止めた。


俺は驚き、外村の方を見る。




「そんなに会いたいなら会えばいいだろ。」


「だって…西野はパリに…」


「だからお前がパリに行けばいいんだよ。」



外村はそれは当然のことだとでも言うような態度だった。



「…パリって…でもお金が…」


外村の言葉と態度に俺は答えに詰まる。




「ほらよ。これ貸してやるから。」


外村の手には札束が握られていた。



20万はあるだろうか、



「ネットで稼いだ金だよ、返すのはいつになってもいいから。」



「でも悪いよ。」



「バーカ、つかさちゃんが必要なんだろ。いい加減に捕まえろよ。」




その一言で決心がついた。




「…ありがとう、外村。俺、パリ行くよ。」


















数日後…


「淳平、本当に行くのね。」


「ああ、向こうに着いたら連絡入れるからさ。心配いらないよ。」


少し不安な顔をする母さんに心配かけないように笑顔を向けた。


「母さん、じゃあ行くよ。」


「淳平、気をつけるのよ。」


「うん、それじゃあ。」


そして俺は家を出た。















空港に着いて、機内へ乗り込む。


手には昨日買った銀の指輪。


これを渡したら、君はどんな顔をするかな





笑顔になるかな、






驚くかな、





西野の喜ぶ顔を想像するだけで笑顔がこぼれた。







胸いっぱいの希望を抱いて俺はパリへと飛び立った。


[No.935] 2005/03/12(Sat) 00:38:15
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