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   はじめのコトバ - りゅうか - 2006/03/06(Mon) 02:09:59 [No.1270]
時を越えて・・・【プロローグ    in現在 〜始まり〜】 - りゅうか - 2006/03/06(Mon) 02:18:06 [No.1271]
【1章  in過去 〜妖精と仕事〜】 - りゅうか - 2006/03/07(Tue) 01:23:20 [No.1273]
【2章   2年前の・・・・】 - りゅうか - 2006/03/08(Wed) 00:44:06 [No.1274]
【3章    2度目の初めまして】 - りゅうか - 2006/03/11(Sat) 02:40:29 [No.1276]
【4章  映画鑑賞と夢の違い】 - りゅうか - 2006/03/14(Tue) 23:51:25 [No.1279]
Re: 【5章  望みとその世界】 - りゅうか - 2006/03/26(Sun) 23:05:17 [No.1285]
[削除] - - 2006/03/13(Mon) 23:13:20 [No.1278]



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はじめのコトバ (親記事) - りゅうか

ええっと、こんな風に改まって何か書くと言うことはないんですけ
れどとにかく、一応がんばっていますんで、お願いします。

分かりづらいですが、設定は、第125話の終わりあたりになって
おります。

私的には、長々と長編でやっていきたいと思ってますが、気力が続
くかどうか・・・・
でも、はじめ言った通り、一応がんばりますので、長い目で見てや
って下さい


[No.1270] 2006/03/06(Mon) 02:09:59
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時を越えて・・・【プロローグ    in現在 〜始まり〜】 (No.1270への返信 / 1階層) - りゅうか


    プロローグ    in現在 〜始まり〜

          


      

              2005年 夏。
  
 あり得ない、夢みたいな話。
  
 そんな彼女の考えていたことが現実になったのは、この日だっ     
 た・・・・














 日は、とうに暮れ、空には、星の瞬きが栄える夜の泉坂。
 
 家々の密集している、この、世に言う住宅地には、一人の少女の姿が 
 あった。

 その髪は、上から差す街灯の灯を、金色に反射して、美しく輝いてい 
 る。

 家路を急ぐ彼女の名は、西野つかさ。

 そう遅い時間でもないが、何せ、まるまる3日間、家を開けていたの 
 だ。

 必然的に、早足になってしまう。

 だが、そんな足の動きとは対照的に、彼女の思考は、全く違うところ 
 にあった。

 「あー、淳平君と三日間、楽しかったな〜」

 つい言葉となって、溢れ出てくるこの気持ち。

 その事からも、彼女の『淳平』に対する思いをはかることが出来るだ 
 ろう。

 彼女たちは、三日前より、秘密の旅行に行っていた。

 そして、今し方別れたばかり。

 幸せの余韻に浸りながらも、再度口を開く。

 「淳平君にも言われたし、明日から、お菓子作りがんば    
 
  ら・・・・・」

 大きく伸びをしながら、自らに言った、その言葉。

 それを言い終える前に、つかさは、あることを思い出す。

 (3回も特訓休んで、日暮さん怒ってるかな・・・・・)

 全部、自分のためにやってくれている事なのだ。

 元々、罪悪感はあったが、今のそれは、格別に大きい。

 「明日は、三日分の特訓、なんて言われたらどうしよう」

 半ば本気に考えたりする。

 (明日会ったらまず謝らないと)

 急に緊張し始めるが、まだそれは明日のことだ。

 今は、父と母のことを心配しよう。

 だが、そんなつかさの思考を余所に、自宅はもう目の前。

 いつもなら何も考えずに開く門も、今では地獄の門の様に感じる。

 言い訳、と言うより嘘はもう考えていた。

 訊かれれば、パティシエの特訓が辛くて三日間、一人で休んでいた、 
 と答えるつもりだ。

 調べればすぐ分かってしまうだろうが、それ以外、思いつかない。

 もう一度、その嘘を頭の中で繰り返してから、やっと決心したように 
 門に手をかけた。

 取っ手は、キーキー軋みながら、頭を垂れる。

 その瞬間だった。

 突如として、つかさを変化がおそう。

 周囲で空気が渦を巻き、気温が、上がり下がりを繰り返す。

 「なっ」

 声にならない叫びを上げ、きつく目を閉じ、その場にしゃがみ込ん  
 だ。

 そんな、渦中のつかさを余所に、周りの風景が消え去る。

 否、正しく言えば、流れていく。

 そんなあり得ない風景も、目を閉じていたつかさには、見えていな  
 い。

 その時、驚きで声も出ないつかさを残して、始まりと同じように、変 
 化は、突如として終わりを迎えた。

 (な、何だったの・・・・)

 ゆっくりと立ち上がり、目を開く。

 「っえ」

 前にあるのは、目を疑うような光景。

 つかさの立っていた場所。

 そこは・・・・・・



     家の前。



 もちろん、先程と同じ場所に居たことで、彼女が驚いている訳ではな 
 い。



 1秒前まで、星を宿していた夜空には、明るい日が、空高くに登り切 
 っている。

 1秒前まで、静かだった、住宅地はうるさいほどにセミの声が響いて 
 いる。

 1秒前まで、暗かった視界は、今や、これ以上無いほどに明るい。





 そう、時刻は、『昼』になっていた。


[No.1271] 2006/03/06(Mon) 02:18:06
61-21-203-112.rev.home.ne.jp
【1章  in過去 〜妖精と仕事〜】 (No.1271への返信 / 2階層) - りゅうか

 
  第1章     in過去 〜妖精と仕事〜



夜の闇の中に居たのが、急に、昼下がりの陽気の中にいたのだ。

当然、つかさには何が起こったのか全く分からない。

まさに、夜に見た白昼夢のよう。

その時、声も出ず、ただ呆然と立ちつくしていたつかさの背で,

聞き 覚えのある声が つかさの耳に届く。

「あら、つかさちゃん、何でこんな所にいるの?今日はトモコちゃん

と出かけるって、言ってたのに」

つかさが振り返るとそこにいたのは、自分と同じ色の髪をもつ女性、

母親の姿が目に飛び込んできた。

何故、昼なのかも気になるが、母親を前にして、それどころではな

い。

目が合った瞬間、つかさは、頭を下げた。

「お母さん・・・・・その・・ごめんなさい・・・」

言い訳も、頭から消え去ってしまっている。

母親からどんな事を言われるか・・・覚悟はしていたが、聞こえてき

た言葉は、覚悟していたそれと、全く異種なものだった。

「ん、何がごめんなさい、なの?・・あら、つかさちゃん、髪切っ

た?・・、って、だいぶ切ってるわね・・・」

彼女は、つかさの髪を軽く梳きながらそう言うと、足早に、家へと向

かっていく。

とうとう、つかさには、何がなんだか分からなくなっていた。

なぜ、急に空はこんな明るくなったのか

お母さんは、今回の旅行のことを暗黙のうちに許してくれたのか

(どうなってんだろう・・・)

そんな、爆発寸前の彼女の思考を、母の言葉が、更なる混沌へと誘

う。

「今日は、暑いわね・・・つかさちゃんも、明るいからって何時までも

遊ばないのよ。

・・・・・・・・・『受験生』なんだから・・・」

ため息と思えるような語尾を付け足すと、母は、家の中に入ってしま

った。

(じゅ、受験生って・・・・)

訳も分からず、立ちつくす。

否、彼女にはそれしか出来なかった。

「・・・・・どうなってるの・・・」

快晴の空の下、汗ばむ様な陽気の中で、呟いたその疑問。

もちろん、誰かの返答を求めてのことでは無い。

だが、そう呟くと、つかさの耳元から何者かの声が鼓膜を叩く。

「そんなの簡単じゃん」

声は小さいが、耳の近くだったので、十分伝わる。

きれいな、幼い女の子の声。

「きゃあ」

首を振るようにして、周りを見渡すが、何処にも音源の姿はない。

声は聞こえたのだ。きっと何処か近くにいるはず。だが・・・

(誰も居ない・・・・・もう、今日はどうなってんだよぉ)

心の中で、そう叫びながら、探すのを諦める。

「何処から聞こえたんだろう・・」

夏、特有の涼しい風に乗せ、言った言葉。返答は、先程と同様にすぐ

に訪れる。

「こっちだよぉ」

「っえ」

その澄んだ声は、やはり、耳元から聞こえてくる。

しかし、つかさの周りに人影は無い。

だが、次の、呆れたような音を含んだ言葉が、つかさの、謎を解いて

くれた。

「もぉ〜!肩の上!!いい加減気づいてよ!!!」

つかさの肩には、羽の生えた、高さ15センチほどの『小』女が腰掛

けていたのだった。


















「そ、そんなこと・・・・・・・信じられるわけ・・・・・・」

つかさの口から、息を吸うようにして出てきた言葉。

小女がその後を引き継ぐ様にして胸を張る。その胸には、大きな時計

が下がっていた。

「別に良いんだよ、無理に信じなくても。でも、あたしの姿見ても、

信じられない?」

首から、身長の3分の1程もある時計を下げた、手のひらサイズの小

さな小女、その背中から突き出す純白の柔らかな羽。

まさに天使とでも言うようなその風体を見ているうちに、つかさは、

この子の言っていることが、真実であることを悟る。


本当にそんなことがあるだろうか・・・・・


「でも、その・・・・何で、あたし・・『過去』に来ちゃったの?」


そう、目の前の小女は、つかさが、時間を越え、中学3年生の夏に来

ていると言い張っていた。

その質問を聞き、つかさの手の上に座っていた小女は、めんどくさそ

うに立ち上がると、つかさを、ゆっくりと見上げた。

「まず自己紹介させて。あたしの名前は、ララ。あなたをこの時間に

連れてきた、『時の妖精』。」

「『時の妖精』?・・・そんなことより、あたしをもとの時間に帰し

てよぉ」

つかさは、何を聞くよりもはやくララにそう頼む。

だが、ララの返事も、何を聞くより速かった。

「だぁめ。意味無く誰かを連れてくることなんて無いんだから。ちゃ

んと働いてもらわなくちゃ」

腰に手をあて、ララが言う。

(働くって・・・何するんだろ・・・・3年働いたら、その分、年取

るのかな・・・)

人は、最初の驚きを過ぎれば後は、すぐに慣れてしまう。

つかさも例外ではなく、こんな事を気にするほどになっていた。

そんな、恐ろしい将来を予想するつかさを余所に、仕事とは、比較的

軽いことだった

「仕事って何するの?」

手の上に佇むララへと、つかさは、尋ねる。

するとララは、その天使の様な羽をはばたかせ、つかさの顔近くまで

やって来た。

「自分で考えて・・って、無理か。ヒントはねぇ、つかさの大切な人

に、関係があるよ。」

『大切な人』・・そう訊かれて、つかさが思いつく人物はただ一人。

 『関係がある』とは、どういう意味だろう。

 その時、つかさは、あることに思い当たり、慌てて尋ねる。

 「淳平君がどうしたの?!」


  〜淳平君の命を助けるために連れてこられた〜


 そんな、恐ろしい事が、頭をよぎる。

 だが、それも、ララの言葉を聞くまでだった。

 「何?そんな慌てて・・・ああ、命がどうとかなんて無いから安心し

 て。そうだなぁ、第二ヒントはぁ・・・淳平で、思い浮かぶこと・・ 
 ・・かな」

 「思い浮かぶこと?」

 淳平君で思い浮かぶこと、と言えばやっぱり・・・・・・・

 「映画、かな・・・」

 自信なさげに呟き出された答えだったが、それは、的を射たもの。 

 ララは、待ってましたとばかりに空中で一回転して、つかさの肩に飛 
 び乗った。

 「そう!映画。つかさは今から、淳平に会って、映画を作る。それ  
 が、『仕事』」

 奇妙なほど飛び跳ねる、その言葉には、つかさのみが、感じる重さが

 加わっていた。


  

    

















  だってこの頃は、東城さんも・・・さつきちゃんも・・・





































          言い訳場所



 なんか、サッパリ淳平出てきません。  変だな・・・・・
 しかも何かオリキャラまで出現しちゃって・・・
 でも後のことを考えると  
 まあとにかく、次回は淳平出てきます。(たぶん)

  ほんとすいません
  


[No.1273] 2006/03/07(Tue) 01:23:20
61-22-217-59.rev.home.ne.jp
【2章   2年前の・・・・】 (No.1273への返信 / 3階層) - りゅうか

  




   【2章   2年前の・・・】



 



 今まで、何度と無く、歩いていた道。
 
 その道を、つかさは、肩に小女を乗せて歩いていく。
 
 小女が言うに、つかさ以外には、誰にもララの姿は見えないらしい。
 
 それでも、やはり緊張してしまう。
 
 だがそれも、ララのことだけでは無い。
 
 今つかさが向かっているのは、淳平の家なのだった。
 
 

 (映画の撮影って・・・どうやって頼めばいいのかな)
 
 淳平はまだこの時、つかさには、会ってすらいないのだ。
 
 赤の他人であるつかさを撮影するなんて事あるだろうか・・・
 
 (事情を話したって・・・)
 
 自分が過去に来たことを信じた、たった一つの証拠であるララの姿  
 
 は、淳平に見えないのだ。
  
 それよりつかさが心配なことは、淳平が彼女に対してとるであろう態  
 度。
  
 見知らぬ人から、一緒に映画を作ろうなんて言われて、本当に作る人

 なんていないだろう。
  
 いくら淳平君でも・・・・
  
 あれこれ心の中で考えているうちに、自然とうつむき加減になってい

 く。
  
 つまり、つかさは、ろくに前も向かずに歩くことになる。
  
 その事に対する結果は、すぐに訪れた。
  
 「つかさ!前!!」
  
 「っえ、きゃぁ!」
  
 ララの警告もむなしく、つかさは、前を歩いていた人物の背中へ、思  
 
 いっきり激突してしまった。
  
 「痛って!」
  
 「ご、ごめんなさ・・・・」
  
 つかさの目の前には、金髪の、恐そうな顔をした男が、彼女を見下ろ  
 
 していた・・・ 
 
 
 
 







 「あ〜もう、小宮山のやつどこいったんだぁ!」

 両手にDVD入りのビニール袋をぶら下げ、自宅へと向かう少年。

 彼、真中淳平は、中学3年の受験生だ。

 まあ、だからといって特に勉強に勤しんでいると言うわけでもなく、

 夏休みに入った今日も、小宮山と夏休みの宿題をやろうとしていたの

 がいつの間にか、親の居ない間に、DVDを借りに行っている始末。

 だが、突然小宮山が居なくなり、探してもなかなか見つからないの 

 で、淳平が帰ったと勘違いして、小宮山が先に戻ったのかもしれない

 と思い、淳平は家路を急いでいた。

 「まったく・・・俺らが行ってはいけない様なコーナーに行ったと思

 ったら、急に居なくなるんだもんなぁ」

 アスファルト塗装が剥がれかけの、見慣れた道路は、自宅がもうすぐ

 であることを淳平に伝えてくれる。

 ここまで来れば、あとは、目を閉じてでも歩ける、と淳平は、目を細

 めつつ空を見上げる。

 夏。この季節には、何かが起こりそうな気がしてくる。

 映画でも、何か特別なことが起こるのは夏だ。

 海を連想させるほどに真っ青な、雲一つ無い晴天。高い気温と湿度の

 中、優しく髪を揺らす静かな風。そして、うるさい程に歌う、セミの

 声。

 「痛って!」

 「ご、ごめんなさ・・・」

 その時だった。淳平の耳に、なにかがぶつかる音と何者かの声が聞こ

 えてくる。

 当然セミの声では無い。

 (こ、この声・・・・!)

 聞き覚えのある声を耳にし、淳平は、声のした方の道へ曲がると、そ

 の先にいたのは、つかさと、恐い顔の男。

 2年後の淳平ならば、迷わずつかさに声をかけるのだろうが、今の淳

 平は違っていた。

 淳平がまず声をかけたのは、男の方。

 だがそれは、つかさも同時だった。

 「小宮山!」

 「小宮山君!」

 二人に同時に呼ばれた小宮山だったが、その声は届いていない。

 淳平のものに限っては・・・

 「ああ!!つかさちゃんこんな所で会うなんて偶然だなぁ。あれ、つ

 かさちゃん髪切ったの、いいな〜その髪型もすっごく似合うな〜」

 つかさを前にして、それ以外のものは、目に入らないようだ。

 だがもちろん、つかさは、淳平の姿を捕らえていた。

 肩に乗るララも、すぐ淳平の存在に気が付き、つかさに尋ねる。

 「あれが、淳平だよね」

 その問いに、つかさは軽く頷いて、小宮山に、

 「ありがとう」

 と、だけ言い、軽くあしらってから、淳平の元へと歩み寄る。

 三十分ほど前に会った時よりも、10センチほど身長がちぢみ、顔も

 幼く見えるが、彼は、間違いなく淳平だった。





















 「・・・・・淳平君・・・・・・」
























 目一杯の愛情を込めて言った、彼の名。

 そして、それに対する返事は・・・・・ 


































  「っえ、・・・えっと・・・・誰、です・・・か?」















 いつもの様に頬を赤く染め、彼から発せられた言葉は、いつものそれ

 では無かった・・・
































































一日一章、三日で三章♪

最近、寝不足です・・・


[No.1274] 2006/03/08(Wed) 00:44:06
61-22-216-100.rev.home.ne.jp
【3章    2度目の初めまして】 (No.1274への返信 / 4階層) - りゅうか










「っえ、・・・えっと・・・・誰、です・・・か?」


そう言ったのは、彼女のよく知る、優しい彼。

 
 普段の彼からならば、出てくるはずもない、その言葉に対し、つかさ


 が言うべき言葉なら、分かり切っている。


 ただ、言いたい言葉では無かった。












  第3章     【2度目の初めまして】


 



 


 



 (なんなんだよ、この女・・・・)

 
 俺が、まず思ったことはそれだ。 


 見たことも、会ったこともない人間から、『淳平君』と下の名前で呼


 ばれて、そう思わない訳が無い。


 だが、それだけの理由で俺が、『誰ですか』と尋ねたわけでも無かっ


 た。


 さっきの言葉には、俺でさえ感じられる程の、暖かさがこもってて、


 どうしても他人とは思えない。
 

 故に言ったその言葉。


 ただ、今は、そう言ったことをしきりに後悔している。 


 (何で、あんなに・・・・)


 俺のことを見つめる、その眼には、先程の言葉と対照的に、悲しみが


 かげってて・・・。


 自分でもよく分からないけど、何故か『笑っていて欲しい』と思っ


 た。


 だけど、それもほんの数秒の事。


 後ろの小宮山が、こっちへ駆けつける頃には、消えていた。
 

 「お前、真中!学年1のアイドル、西野つかさちゃんに、誰ですか、


 は、ねぇ〜だろ!!!こんなヤツの事はほっといて!!!」


 その様に叫びだした小宮山が、俺の首もとをつかんだかと思うと、い


 きなり突き飛ばす。


 DVDを両手に抱えた俺は、それを死守するのが精一杯で、思いっき


 り、近くの塀に、頭から激突してしまった。


 「痛っ!」


 額に、割れるような痛みを感じながらも顔を上げるが、とうの小宮山


 は、こちらを向いてすらいない。


 「つ、つかさちゃん、あ、あの・・・・・実は・・俺・・・」


 俺から少し離れたそこでは、ただ今、告白シーンが繰り広げられてい


 た。


 赤面した小宮山の、その言葉を聞いて、やっと俺は、その女の正体を


 知る。


 『つかさちゃんは・・』『つかさちゃんなら・・・』『あの時のつか


 さちゃん・・』


 最近、このような種類の文が小宮山の口から出てこない日は、無かっ 

 た。


 (この女が、西野つかさ・・・マジで・・可愛い・・)


 俺の体は、西野に見つめられて、動かなくなっていた。


 こう言うのを、石化って言うのかもしれない。 


 そして意識が遠のいてきて・・・・・・・


 

 

 遠くから、何かが、倒れる音がしてくる。


 気が付いたら、なんと目の前に、西野つかさが居た。


 後ろには、瞬殺され、脱力した小宮山が転がっている。


 俺が、その様子を覗いていると、西野が俺に声をかけてきた。


 「は、初めまして、・・・真中君。あたしは、西野つかさ。同じ学校


 だと思うけど・・・」


 まただ。


 言いたくない言葉を無理に言っているように、何処か、寂しい。


 だがもちろん、そんな言葉に、俺が返事を返せるはずもなく。


 気まずい沈黙。


 目を合わさない様にするが、どうしても目が向こうへ行ってしまう。


 白くて、滑らかな肌。深く澄んだ、可憐な瞳。


 何度見ても思ってしまうが、かわいい。


 
 

 どれくらい時間が経っただろうか、ようやく、という時間をへて、


 西野が再度、口を開く。


 「・・・真中君って、DVD見るんだ・・。あ、これ知ってる!!


 ケアヌ=ルーブスが出てるんだよね?あたし、これ見たいなぁ〜


 真中君、今日ヒマ?だったら、今から見に行ってもいい?」


 きっと、俺の顔は、驚きの色に染まっているに違いない。


 だって、急に右手の袋を覗かれたと思ったら、映画の質問されて、


 次は、俺の家へ来ても良いかと・・・


 何も考えることが出来ず、俺は、とりあえず頷くだけ。


 すると、西野は、俺の手から袋をとって、家の方向へ歩き出した。


 「じゃぁ、行こ」


 肩越しにそう言い、手招きする。


 俺は、西野のマイペースぶりに唖然としてしまってて、出来るのは、


 その後を追いかけるだけ。


 (何で、俺の家が分かんだ)




 




















































































その場に残ったのは、放心状態の小宮山、ただ一人だった。


























 




















 





 一人称、無理・・・
つか、言わなきゃ、やってること分かんないヨゥ


[No.1276] 2006/03/11(Sat) 02:40:29
61-22-216-100.rev.home.ne.jp
[削除] (No.1276への返信 / 5階層) -

この記事は投稿者により削除されました

[No.1278] 2006/03/13(Mon) 23:13:20
61-22-217-59.rev.home.ne.jp
【4章  映画鑑賞と夢の違い】 (No.1276への返信 / 5階層) - りゅうか








 決して、広いとも言えない


 決して、新しいとも言えない、この部屋。



 その中は、今、足の踏み場もない状況だった。



 何時の物かも分からない、宿題のプリント、飲みかけのペットボトル


 その他、様々な物の散乱した部屋。



 二人の人間が座った時点で、超満員。



 そんな部屋で、良いところと言えば、日当たりが良く、洗濯物が速く



 乾く。


 そして、家庭用のサウナがあるかの如く、汗が噴き出してくる位。





 当然、この部屋に、エアコンなどと言う文明の利器は、


 
 無かった・・・・














 「何、このへや・・・アヅイ〜」


 あたしの肩の上で、そう声を上げたのはララ。



 白い羽を、自分の方へ、パタパタと仰いで風を起こしている。



 でも、あたしが喋ることは出来ない。



 (だって、すぐ隣のベッドには、淳平君が・・・)




 


  4章    【映画鑑賞と夢の違い】



    第4章   【















 (映画見てるときの淳平君、何か、・・・カッコイ・・・)



 あたしから、見ようと言ったDVDを本当に真剣な表情で見ている。



 まるで、先程の人物とは別人のよう。


 ちなみに、この映画は、受験が終わったときに、淳平君と見に行った

 
 
 映画の、前々作。
 


 もちろん、あたしは見たことあるし、だいたい、映画が見たくて、



 この家に来たわけでもない。




(さっきの演技、大丈夫だったかな・・・)




『さっきの演技』とは、先程言った、初めましてのこと。



 ララちゃんには、ここへ来る途中ずっと、



 『いつものつかさと違ってて、変』



 と、言われ続けていた。





 でも、あの口調も、『真中君』という呼び方も、とっさに出てきた。





 第一印象は、良かったと思う。







































 (だって、東城さんに似せたんだし・・・)


























 思い出すと悲しくなって、あたしは、大きいとは言えないテレビの



 画面に目を移した。







 画面の中には、一人の女性が立っている。




 何もない暗闇の中、逃げ場も、救いの手も無く、ただ泣いていた。




 (っえ、このシーンって・・・)





 一瞬、画面が黒く染まったかと思うと、エンディングが流れ始めた。




 気付かない間に、終わってしまったよう。







 すると、さっきまで、ベッドの上に座っていた淳平君が、弾かれたよ



 うに立ち上がり、テレビを消した。














 しばらくの間、淳平君はそのまま、何をして良いか分からないように



 立ったまま、口を開いたり閉じたりしてたけど、急に、諦めたのか、




 もとのベッドの上に、座り込んでしまう。




 (いつもの淳平君なら、映画の感想を言い始めるんだけどな・・・)



 いつもと違って、気軽に話しかけて来ることもない淳平君のことを、



 微笑ましく思う反面、多少の寂しさを覚えてしまう。




 だが、いつまでも、そうしている訳には、いかない。




 
 今や、この部屋は、静寂の支配下にあった。




 唯一、耳に入ってくる音と言えば、窓の外からの、セミの声ぐらい。




 そんな中、淳平君は、赤面した状態で、あり得ないほどの汗をかき、




 緊張に押しつぶされそうな顔をしていた。
 





 まず、この沈んだ空気をどうにかしないと・・・




 




 




        



























 「映画、良かったね。・・・・淳平君って、映画好きなの?」




 出来るだけ、軽く言ったつもりだったけど、それでも、淳平君は、驚


 
 いたみたいだった。




 「っえ、う、うん。嫌いって程じゃないけど、好きだよ。」





 そう言って、首を縦に振っている。




 自分の言った言葉が、日本語になっていなかった事に、気付いた様子




 は無い。




 ただ、言葉をつなげる。




 「そ、それで、に、西野は、何でわざわざ俺の家に来たんだ?」



 「っえ、・・・べ、別に言いじゃん。あ、あと、あたしのことは、




 『西野』じゃなくて、これからは、『つかさ』って呼んでね。




 あたしは、『淳平君』って言うから・・・」





 やっと、淳平君の口から紡ぎ出された日本語を、あたしは、とっさに




 誤魔化した。




 だが、目的は言わなければならないだろう。




 さっきから、宙にいるララの視線が気になって仕方がない。




 (分かってる。分かってるけど・・・)





 なんと言えば、映画の撮影を頼めるだろうか・・・




 だが、ララが言うに、淳平君と映画を撮らなければ、元の時間には、




 帰れない。




 なんとしてでも、撮影まで、もっていかなければ・・・・











 






 そんな間にも、淳平君は、あたしの事をずっと見てたみたいで、



 
 あたしが、顔を上げると、何がなんだか分からない、といった目で、



 こちらを覗いていた。
















 (まずは、映画のことに、話を近づけないと・・・)










 心の中で、そう呟き、あたしは、淳平君に質問をする。







 「淳平君の夢は、やっぱり、映画の監督になる事なのかな?」












































 こう言えば、きっと、簡単に映画撮影まで、行けると思ってた。




 だけど、話は、そうそう簡単では無くて・・・・




























































 あたしの質問に、きょとんした様子の淳平君は、おどおどしながら、




こう言った。












































 「い、いや、べつに、俺、映画見るのは好きだけど、撮るのは・・・




 ・・・やらない・・・かな」























































 


 


[No.1279] 2006/03/14(Tue) 23:51:25
61-21-203-249.rev.home.ne.jp
Re: 【5章  望みとその世界】 (No.1279への返信 / 6階層) - りゅうか

 







 


 「い、いや、べつに、俺、映画見るのは好きだけど、撮るのは・・・




 ・・・やらない・・・かな」

















 その声は、持ち主の部屋の中、溶けるように消え去った。













  5章   【望みとその世界】



 












 淳平の、その言葉を聞いた時、つかさの表情は、驚きに染まっていた



 
 淳平に、返す言葉も出てこない。




 いや、それどころか、声も出なかった。







 「ど、どうかした?」


 
 そう言ったのは、彼女より、さらに驚いている淳平。



 声も出ないつかさを心配して、何とか近づこうと奮闘している。




 足下を踏み分け、20秒も経っただろうか、ようやく、つかさの隣に



 たどり着くと、少し離れた場所に不安げな顔でしゃがみ込む。



 「お、俺なんか変なこと言った?」



 
 心配そうにそう言いながら、つかさの顔色を覗く。


 顔を赤く染めた淳平に目をのぞき込まれ、淳平ほどではないが、つか




 さの頬が、赤みを帯びた。



 「な、何でもないって!」




 
 慌てたように、そう叫ぶ。
 



 そして、窓のそばで寝ころんでいるララに、目で問いかけた。



 (何で、淳平君の夢が映画監督じゃないの?!)






 


 通常、目で何かを語りかけたとしても、それが通じることなど、まず




 無い。




 だが、今回のこれは、彼女にとって、予期していた質問事項のよう



 で、ほとんど即答と言った速さで返事が返ってきた。


 
 
 まあ、答えには、なっていないが・・・

 

 「そんなのあたし知らないよぉ。でも、映画は撮んなきゃ、帰れない



 よ」









 その、つかさにしか聞こえないその短い文章には、悪戯好きの子供の




 様な、皮肉めいた音が含まれていた。












 (ど、どうすればいいのぉ)








 そんな彼女の隣で、淳平は、先程から何もない窓を見つめ続けてい





 るつかさのことを不思議そうにみていた。








 「ほら、後つなげないと淳平が困ってるよ♪」






 ララが愉快げにそう言うが、当然何と言っていいか分からない。







 だいたい、何故、映画を撮る必要があるのだろう。







 



 未来に戻るため?











 















 今、冷静になって考えてみると、馬鹿げた事の様に思えてくる。







 きっとこれは夢か何かだろう。



 すぐに目が覚める。







 





















 でも、何でこんな夢を見るのだろう。















 それは・・・・・・それがあたしの今望んでいる事だから? 




 そう、今、あたしの一番望んでいること・・・・







 
 中学校3年生の夏。









 この頃は、悩みなんか無くて、進路のことも漠然としか考えてなかっ





 た・・・・・・・










 そして何より、もう一度、淳平君の彼女になりたい。












 あたしだけを見ていて欲しい。





 今のこれは、その願いを神様が聞き入れてくれた結果かも知れない。







 










 たとえそれが、すぐ覚める世界だとしても・・・









 たとえそれが、儚すぎる夢でも・・・・























 






 朝になるまで・・・・・・







 目が覚めるまで、この夢の中にいたい。






 ならば、映画を作るというのも良いかも知れない。




 
 


 淳平君と二人で・・・



























 






















































 「淳平君!あたしと一緒に映画作ってみない?」


































 


                           


[No.1285] 2006/03/26(Sun) 23:05:17
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