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   どーもひさしぶりです - Joker - 2007/11/04(Sun) 16:04:25 [No.1388]
そして僕にできること プロローグ - Joker - 2007/11/04(Sun) 16:15:43 [No.1389]
そして僕にできること 第1部 第1話 - Joker - 2007/11/05(Mon) 17:52:27 [No.1392]



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どーもひさしぶりです (親記事) - Joker

以前ここやヒットカウンターで小説書いてたJokerです
初恋限定。始まっていちご100%読み返したらまたいちご熱が上がってしまいましたwww
ってことでまた復帰したいと思いますwww
とりあえず過去に書いたものはここやOverdriveさまの保管庫にあるので興味のある方は是非読んでください
結構ゲームにインスパイアされてるっぽいかもしれませんが、まあがんばって書いていきたいのでよろしくお願いします
学生の身なので更新頻度はどうなるかはわからないし、私のことを覚えている人なら覚えてるかも知れませんが、なにぶん海外生活が長いもんで文章におかしいところなどは大目に見てくださいw

今回の設定は自分でも不明っぽいところがありますがイメージとしては某鬱ゲーっぽい感じになりそうです(ちょ
プロローグは物語の本編の時間軸で、次の第一部は過去、そして第二部はプロローグからの時間軸って予定です
オリジナルキャラは今のところ考えていませんので、登場人物はイメージしやすいように多分いちごが主要になります
それではよろしくお願いします


[No.1388] 2007/11/04(Sun) 16:04:25
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そして僕にできること プロローグ (No.1388への返信 / 1階層) - Joker

-メールを受信しました-

件名:久しぶり(5月3日11時24分)

久しぶりだな真中
元気にしてるか?
俺はボチボチだよ
先週から夏休みに入って暇してるんだ
もしお前の都合がよければ久しぶりに集まって海に行かないか?
できれば来週辺りにしようと思ってるんだ
お前も都合が良かったら返事くれよな
俺の知り合いのかわいい子も呼ぶから期待してくれよ
そんじゃいい返事待ってるぜ

外村




1年ぶりに外村から送られてきたメール
正直あまり乗り気はしなかった
確かに先週から休みに入った俺は特にすることも無かった
でもここで気を緩めたらいけないんだ
がむしゃらにやってきてやっと仕事に集中できるようになったんだ

俺は今建設会社に就職して毎日汗水流しながら働いてる
建設会社と言っても小さな会社だ
実際のところ俺は現場での肉体労働ばかりだ
典型的なもやしっ子だった俺にとって肉体労働なんか始めのうちは地獄のようだった
でも3年もやってればいい加減慣れる
体格も以前とは比べ物にならないぐらいガッシリしている
今では現場でも結構位の高いポジションについている
実際に何人もの部下を率いて仕事をしている
入社当時からじゃ考えられないな

でもたまには息抜きも必要だと社長に言われているから少し考えてみることにした
あいつは今日本最高学府の大学に通っている
大学3年生
『将来アイドルビジネス界を牛耳るため』と冗談かと思ってたら本当に受かりやがった
2年の秋からはさすがに忙しくなったのかメールもご無沙汰になった
同じ街に住んでいるってのにやはり社会人と学生じゃスケジュールが会わなくもうかれこれ2年近くも会ってない
そもそも日本最高学府に通ってるやつとそこらの小さい建設会社に通ってる俺とじゃ釣り合わなくなってるな



俺は『考えておく』と書いて返信してよく利用している定食屋から出た
今日は久しぶりに街をぶらつこうと以前から予定していた
ぶらつくと言っても行くところは限られている

パチンコ、麻雀、立ち読み

実に無趣味な人間になったものだと自嘲してしまった
昔は映像という情熱を燃やせる趣味もあったが、今では思い出したくも無い忌まわしい記憶だ
その記憶から逃れるため酒やタバコを始めた
仕事場の上司に誘われてパチンコや麻雀などギャンブルも始めた
始めのうちはこんなことに逃げている自分に嫌気がしてたが、今では嫌気も感じなくなりそれも日常となった

休みができれば普段仕事場以外の人間とあまり関わりを持たないようにしている俺には、これ以外のことなんか滅多にしない
高校時代の仲間もみんな大学に通ってたりで休みも合わなくなった今、連絡すら取ってない疎遠状態だ
メールぐらいならできるけど、俺にはとてもじゃないとそんなことはできない状況に陥ってた
もっとも今でもしたいとは思えない
あの忌まわしき思い出がまた鮮明になってしまうのなら俺は独りになる方を選ぶと決めたんだ

なのにあいつは、外村だけは俺のこといつまでも気にかけていた
正直鬱陶しかった
あの全てが順調に行ってるあいつが憎かった
全てを失った俺をあいつはあざ笑っているように見えて耐えられなかった
あの悩みもなさそうなニヤケ面を殴り倒して腫れ顔にしてやりたいとすら思った時もあった
ある時あいつが俺の家に来たとき、実際に殴ったこともあった
工事現場で鍛えられた肉体で普段から鍛えてなんかいない学生を殴った
次来たら殴り倒してやろうと思っていたら本当に殴ってしまった
でも今となってはそのお節介と友達想いの馬鹿さがいつ折れるかもわからない俺の心を支えてくれてたんだと思える
俺がこんなになってしまった理由を知っているからか、自ら憎まれ役を買って俺に目標を持たせたんだと

次来たら追い返してやる
次来たら殴ってやる
次来たら・・・

日本最高学府の大学に入る頭脳を持ってるやつがプライドを捨ててこんな不器用な真似をして荒れてた俺を正してくれた
だから外村には感謝してる
俺がこうなった理由を知る当事者の中で唯一心を許せる存在だ



今はいつも立ち読みに来る書店の中にいる
いつも特に当ても無く適当に週刊誌を読んだりしている
しかし今日は特に読む雑誌もなかったから何か面白そうなものはないか探してみることにした
そしてある雑誌が映った
なんでこんなものに目が行ったのか不思議に思ったが合点が着いた

月刊ビデオワーク

その瞬間俺は激しい眩暈と吐き気に襲われた
涙も流れてきて止まらない
その雑誌の表紙



特集!高校映像コンクール界に衝撃を与えたあの作品を徹底解析!
第○回高校生映像コンクール最優秀賞作
泉坂高校映像研究部
『君と過ごしたあの夏』



トロフィーと賞状を持つ俺とみんなの写真
みんなが満面の笑顔で写っている
そこには当然彼女の姿も写っている

俺には彼女に会う資格が無い
勘違いから始まった恋
でも時が経つにつれ本当の恋に変わった
全てが順調に行ってた
しかしある日ささいな出来事の所為で全てが狂った
今日からちょうど3年前の5月3日
『俺と彼女』の時が止まった
『俺』の時間は今も動いてる
しかし『彼女』の時は今もまだ3年前のあの時のまま
全ては偶然だったと俺の周りの人間は言う
しかし俺は偶然ではなく俺が招いてしまった因果だとちゃんと理解している
きっと周りもみんな俺の所為だと思ってるだろうけどそうとは言わない
とてもつらかった
毎日夢でうなされた
何度も何度も何度も何度も
まるで俺が犯した罪を罰するかのように繰り返す悪夢
彼女の名を叫びながら夢から覚めると俺は泣いている
誰が押したわけでもない俺が一生背負わないといけない烙印
俺はその烙印がある限り悪夢からは開放されることはないのだろう
今では以前より頻度は少なくなった
しかし時々襲ってくる悪夢
そのたびに思い出してしまう
忘れようとした
犯した過ちから逃げるために酒やタバコに逃げた
でも忘れることなんかできない
彼女の笑顔は忘れるはずが無い
その彼女の笑顔が今目の前の雑誌に写っている
今でも鮮明に残ってる
俺の大好きな人



西野つかさ


[No.1389] 2007/11/04(Sun) 16:15:43
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そして僕にできること 第1部 第1話 (No.1389への返信 / 2階層) - Joker

慌しい朝の教室
昨日も映画の編集で忙しかった俺の耳に聴きなれた声が入ってきた


外村「おい真中、おまえ宿題やってきたか?」

真中「やってるわけないだろ、昨日だってこないだの映画の編集で忙しかったんだから」

外村「まあ確かに嵐泉祭まであと2週間切ってるからなぁ」

真中「だったらおまえも手伝えよ!」

外村「無理だって、俺ホームページの更新で忙しいし」

真中「もうだめだぁ・・・」

外村「まあそんな落ち込むなって」

真中「うるせー!来年はできるかどーかわからないんだぞ!だったら今回のに全てをかけるに決ってるだろ!あ〜もうダメだぁ〜」



9月上旬
俺は今年の夏休みに撮った映画の編集作業に追われていた
2週間後に迫った嵐泉祭で上映させるために毎日スケジュールを組んでやってるが、やはり思い通りには進まない
来年は受験で忙しくなるからもしかしたら今年が最後かもしれない
だから俺は高校生活の全てをつぎ込んだ最高の作品を作り上げたかった
今年は結成メンバーである俺、外村、小宮山、西野、東城、北大路に加えて新入部員に外村の妹も加わって映研は去年よりもレベルアップしている
主演を演じた俺と西野、そして助監督として期待以上に働いてくれた外村妹
俺が映像研究部を結成したときに描いていた画を撮ることができまさに最高の作品が生まれようとしてるんだ
それだってのに、時間があったことを理由に怠けたりしてた所為で今に至るわけだ



西野「ほら、淳平くん!しっかりしてよ!あたしでよかったら今日の放課後から手伝ってあげるからさ」

真中「え?ありがたいけど、西野バイトは?」

西野「うん、学祭で忙しくなるからって土日に出る代わりに休み貰っちゃった」

真中「マジで!?西野ありがとぉおおお!」

西野「でもあまり期待しないでよ。あたし編集とかやったこと無いからかえって邪魔するだけかもしれないよ?」

真中「そこで笑ってる美少女ホームページの更新で忙しくてなんも手伝わないバカよりはよっぽど頼りになるよ」

外村「HAHAHAHAHA」

小宮山「よぉ外村、宿題見せてくれ」

外村「おまえたまには自分の力でやってこいよ」

真中「あとそーいや小宮山も外村と一緒でいるだけで全然役に立たないから」

西野「あはははは・・・」

真中「東城も文芸部で忙しくてほとんど来れないから、北大路と外村妹だけじゃ結構つらかったんだよな。だからさ、すごく助かるよ」

西野「そんなに期待されてるんだったらがんばらないといけないね!」



いつもと変わらない日常
こんな生活が2年ちかくも続いてる
毎日バカみたいな会話をして、部活で作ってる自主制作映画のことを考えたりなど
友達のことや、人並みに異性のことなど
外村と小宮山とはバカをやったりしていることが多い、つまり俺がいつも一緒にいるやつら、親友だ
西野はバイト先が近いから結構一緒にいる時間が長い
東城は物語を書いたりしているからよく映画のシナリオの話で熱中してしまう
北大路にはよく振り回されているけどそれがまた心地よい
今年から知り合った外村の妹は何かと突っかかってくるが、映画に対する意見はものすごく参考になるやつだ
そんな仲間と一緒に日々を送りながら俺は映像研究部の上映映画を作っている真っ只中だ



そして迎えた放課後
俺はいつものように映研部の部室に向かってる
隣には西野と北大路、そして外村妹がいる
外村と小宮山は既に部室に行ってるが、目的は概ね自分のホームページの更新だろう



美鈴「先輩!今日もバカ兄貴に逃げられたんですか!?」

真中「一応部室には行ってるけど今日はHPの更新で忙しいとか・・・」

西野「ホントにチャイムと同時にだったもんねぇ・・・」

北大路「まったく映研部はあたしがいるってのに!」

美鈴「自分で言わないでください」

北大路「あはははは〜」

美鈴「東城先輩はやっぱり?」

真中「ああ、今日もまた文芸部に連れて行かれたよ」

西野「あはははは・・・なんかこの部、部として問題あるよねぇ・・・」

北大路「7人しか居ないってのに、そのうち4人はほとんど手伝えないってかそのうち2人は手伝わない」

真中「だから西野が着てくれるのホント助かるんだよぉ〜」

西野「そっか、そんなに頼りにされてるんだったらがんばらないとだね!」


そして部室に着いた俺たちは早速作業に取り掛かった
来る日も来る日も編集作業
さつきはコンピューターが苦手ということで嵐泉祭で着る衣装作りに専念している
同じく小宮山も機械は全くダメでさつきの手伝いや大道具の作成ばっかだ
つまり実質編集作業ができるのは5人だけなのだ
そのうち2人はバイトや掛け持ちの部でほとんど出れず、外村は気分次第
このようなペースで本当にやってけるのかと思ったりもするがなんとかなってるのが現状だ
今日からは西野も加わるから幾分か楽になるけど、相変わらず気を抜くことはできないだろう

そうこう話したり考えたりしているうちに、俺たちの部室へとたどり着いた
部室に入りパソコンの電源を入れる
ここからは俺はスイッチを入れ替え編集作業に入るのだ


真中「美鈴、ここはこんな感じでカットしようかと思うんだけどどー思う?」

美鈴「そうですね・・・・・・」

西野「あたしはさぁ・・・・・・・」

北大路「小宮山!ちょっとあの布とって!」

小宮山「俺今手が離せないって!」

外村「うっひょー!ランキングうなぎ昇りだぜ!」

・・・・・・






数日後
なんとか完成させることができた
といっても完成したのは嵐泉祭の2日前
正直ギリギリだった
祭の前日までに生徒会にチェックされないと上映ができない
去年もギリギリで生徒会の役員に怒られたっけ・・・
多分今年も怒られるんだろうなぁ
でもまあこれで一息入れられるだろう
しかし嵐泉祭が終わったら今度はコンクールだ
今回のコンクールには俺が目指す青都大学の映像科の偉い人がかかわっている
だからこそ俺は全力を尽くしたんだ
みんなも知っている
みんなも俺が青都大に行けることを望んでくれている
そんな全てをかけた映画が今映像研究部と生徒会の試写会で初めて上映される
生徒会の反応は思った以上に良かった
時折聞こえたすすり泣きがそれを証明してくれたんだと思う
去年役員で文句を言ってた現生徒会長でさえも皮肉を言いながらも褒めてくれてた

学園祭前日は打ち上げを行った
みんなでカラオケに行ったり久しぶりに羽を伸ばすことができた
文芸部で忙しい東城もこの日は着てくれてみんなでワイワイと騒ぎとても楽しかった
いつまでもこんな時間が続けばいいんだ
何も変わらず
このままで

そして迎えた嵐泉祭
不安と希望に満ち溢れていた
何かが始まる予感
そんなむず痒いに気持ちに胸を躍らせていた
今はまだ知らなかった
この日が俺の人生を大きく変える原点となるとも



俺たちの上映会は思ってた以上に好評のようだ
どんどん忙しくなる一方で時間は飛ぶように流れていった
1日目は無事に終わった
そして・・・



『まもなく泉坂高校第○回嵐泉祭を終了いたします。これからグラウンドにてフォークダンスを・・・』



嵐泉祭最終日
俺たちの映画は最後の上映を終えた
集客数はなんと学校一位
上映回数を重ねるにつれ観客の数はどんどん増えていき、最後の上映ではなんと立ち見でも入りきれなかったぐらいだ
どうやら口コミで広まったらしく、一般客も大勢観に来てくれた
中にはリピーターもいてまさに快進撃といえる出来だった
上映回数も当初予定していた回数よりも4回も増やしたほどだ
何かをやり遂げた達成感
心地よい疲労を感じながら俺たちは後片付けを行っている

西野「ねえ淳平くん」

真中「ん?」

西野「片付け終わったらさ、フォークダンス出ない?」

北大路「あっ!ちょっとあたしも混ぜなさいよ!」

真中「ダンスとか俺自信無いんだよなぁ・・・」

西野「大丈夫だって。他のみんなだって同じだよ」

北大路「なんならあたしが優しくリードしてあげようかぁ?」

真中「ちょ、さつき!あんまくっつくなって!」

北大路「何よ〜?あたしと真中の仲じゃない?」

真中「片付けが遅くなるだろ!ってかあたってるんだよ!」

北大路「あててるのよ」

西野「・・・淳平くん?」

真中「いや、西野!?これはさつきが!」

北大路「そうよ〜、わざとやってるんだもん」

真中「さつきっ!」

西野「もう!困ってるフリして結局鼻の下伸ばしてるじゃんか!」

美鈴「先輩達も漫才やってないで早く片付けましょうよ」

北大路「ほら、真中の所為で美鈴に怒られたじゃない」

真中「俺の所為かよ!?」

西野「淳平くんの所為だね」

真中「西野まで!?」

美鈴「先輩っ!!!」



文芸部とかけもちの東城はやはり文芸部に連れて行かれた
ただ上映するだけの映研部にいるんなら、発表とかしないといけない文芸部にと言われたのだ
こればかりは正論だったから逆らうことはできなかったが、最終上映にだけは顔を出してくれた
外村は常日頃からカメラを構えているからか、写真部と同じ扱いでそこら辺で写真を撮っているみたいだ
当然小宮山は外村についていった
外村は女子に人気があるからか、小宮山のやつは本能的にあいつにくっ付いている
だから今部室で片付けをしているのは俺と西野、そして北大路と外村妹だ



真中「ふぅ、やっと片付いた」

西野「よしっ!それじゃ淳平くん!いこうか!」

北大路「ほら、美鈴も来なさいよ!」

美鈴「全く・・・しょうがないですね」



グラウンドに出たとき、フォークダンスは既に始まっていた
燃え上がる炎の前で踊る生徒達
既に女の子と一緒に踊ってる外村
パートナーが見つからずOTL←こんな感じになってる小宮山
天地にリードされながらもあたふたしている東城
女子の黄色い声の中心には大草と高木がいるのだろう
俺達もみんなの中に入って踊り始めた
西野と
さつきと
渋々としていたが美鈴とも
隣のクラスの女子とも
映画を観に来てくれたと言ってた後輩の女子とも
みんなで楽しく踊ってた
みんなで笑いながら



フォークダンスも終わりに近づいたとき、俺は西野に呼ばれた

西野「ねえ淳平くん」

真中「ん?なに?」

西野「ちょっといいかな?」

真中「どーかしたのか?」

西野「うん・・・ちょっと来てもらいたいところがあるんだ」

真中「どこ?」

西野「着いてきてくれればわかるよ・・・」



そして俺達は向かった
学校の裏にある丘の上
この街を見渡せるこの街で一番の見晴らしスポット
そこには100年以上もの歴史のある大木がある
その大木は悩める学生が集まる憩いの場所だ
願いがかなうなどいろいろな伝説が語り継がれたりしている大木でもある
そこに俺達は向かっている



そして丘の頂にたどり着いた
その場所は学校のグラウンドとは打って変わって、物静かな場所だ
風のささやき
コオロギの鳴き声
丘から見えるグラウンドの炎と喧騒
満天に広がる夜空の大海に浮かぶ星達
平行線には光輝く俺達の住む街
まるでこの空間が世界から隔離されてるかのような感覚に陥った
そんな風に思ってしまうほど俺は景色に見入ってった



西野「淳平くん、今から変なこと聞くけどいいかな?」

真中「え?急に改まってどーしたんだよ?」

西野「んとね、淳平くんはあたしと別れたあとどー思ったのかな?」

真中「えっ!?」



俺達が築き上げてきた関係に亀裂が入った
そう、俺は昔、中学の頃西野と付き合ってた
ちょっとした勘違いで俺の方から告白した
よくある罰ゲームで告白というやつだ
それだってのにどういうわけか西野はOKをくれた
しかし付き合ってるうちに西野はその勘違いに気付いた
そして結果的に1年もしないうちに終わってしまった
結果的に俺は西野に酷いことをしただけだった
しかしどういうわけか西野は別れるのではなく、友達としてやり直すという道を選んだ
始めのうちはぎこちなかった
友達として普通に接することが出来るようになるまで、かなりの時間を使った
しかしその時間のおかげで俺達は今の関係を築き上げることが出来た

合格ラインに程遠かった俺を見事泉坂高校に合格までさせてくれたのは西野だった
高校で映像研究部を作ると言ったとき、真っ先に力になってくれたのは西野だった
1年目のコンクールの結果で落ち込んでいた俺を元気付けてくれたのは西野だった
落ち込んでいるとき、俺の背中を押してくれたのはいつも西野だった

俺は西野にどれほど支えられているのだろうか
西野はどうしてここまでしてくれるのだろうか

答えはもう決ってた
しかし俺にこの亀裂を壊す勇気があるのだろうか
やっとここまでこれた
しかし今この関係が変わろうとしているのかもしれない
変えようとしているのかもしれない
仮に西野の求めている答えが俺の答えと違っていたらどうなるのだろうか
この関係もここまでなのだろうか
明日からまたあのときのようにぎこちない会話しか出来なくなるのだろうか?



西野「淳平くん?」



目の前には俺の顔を覗き込んでいる西野がいる
学校のアイドルとも言われている容姿
みんなからはボーイッシュでつかみ所の無いミステリアスな性格と言われている彼女
しかし俺の知っている西野はそんなんじゃない
西野は誰よりもやさしくて、いつでも俺のこと応援してくれる
いつもストレートに自分の気持ちを伝えてくれ、俺も包み隠さずに接することが出来る女の子
一緒にいるとうれしくなり、会えないときはさびしくなる
この感情をなんと言うのだろうか?
俺はこの答えを知っているのだろうか?

答えを知るため、俺は一歩踏み出してみた



真中「俺、西野と別れたあとは正直罪の気持ちでいっぱいだった」

西野「・・・」

真中「どう接すればいいのかわからなかったんだ。けど西野はいつも俺に優しくしてくれた。こんな酷いことをした俺に」

西野「うん・・・」

真中「中学の頃罰ゲームで告白しただろ、あの時はまだ西野のことほとんど知らなかったんだ」

西野「・・・」

真中「でもさ、僅かな時間だったけど付き合ってる間に西野のこと少しだけど知ることが出来た。そして友達として接していてもっと知ることができた」

西野「あたしもだよ・・・」



止まらなかった
一歩のはずが止まらなく二歩三歩と
止まらない



真中「西野の新しい一面を知るたびに俺・・・西野のことが・・・どんどん好きになってた」



俺が捜し求めていた答え
どうやらこれが俺の答えのようだ
俺は西野のことが好き
もう自分に嘘がつけなかった
一度別れてしまったらもうお終いと勝手に決め付けていた
でもそれはちがうんだと今わかった
俺は西野のことが好きだ



真中「俺は西野のことが好きだ」

西野「淳平くん・・・」

真中「俺ともう一度付き合ってくれないか?」

西野「・・・」

真中「・・・」

西野「・・・プッ」

真中「へ?」

西野「あははははは!淳平くん話飛躍しすぎだよ!あははははは!」

真中「へ?え?えええええええええええ?」

西野「あたしはどう思ったかって聞いただけだよ。なのにまさか告白まで・・・あははははは!」



終わった
まさかこんなところで大ボカやってしまうなんて
まったく何をやってるんだか・・・
つくづく呆れてしまう



西野「あはは・・・あれ?おかしいのになんでだろ?あはっ・・・なんであたし泣いているんだろ?」



今回ばかりは自分のバカさ加減に呆れてしまった
でも俺は止まらなかった
せっかく踏み出せた一歩
この勇気を無駄にはしたくなかった
このつかみかけたチャンスを無駄にはしたくなかった



真中「西野・・・俺は西野のことが好きだ。中学の時とは違うんだ。西野と一緒にいることで西野の新しい一面とか発見していくうちにどんどん好きになったんだ」

西野「・・・」

真中「西野・・・俺と付き合ってくれ」

西野「・・・」

真中「・・・」

西野「淳平くんってさ、さつきちゃんのことは下の名前で呼ぶよね」

真中「へ?」

西野「あれってなんか意味あるの?」

真中「え〜っと・・・別に特に無いけど」

西野「本当?」

真中「ってかあいつが指定してきたんだよ。苗字だと長ったらしいから下の名前で呼べって。それにクラスの男子全員そうだろ」

西野「ふ〜ん・・・」

真中「西野?」

西野「だったらさ、あたしも今度から下の名前で呼ぶようにって言えば、淳平くんそうしてくれるのかな?」

真中「へ?」

西野「淳平くんってずっとあたしのこと苗字ばっかで名前で呼んでくれないじゃん」

真中「え?え?」

西野「はいそれじゃ早速言ってみよ〜。1、2、3、ハイ」

真中「にっ、西野?」

西野「1、2、3、ハイ」

真中「えっと・・・つ・・・つか・・・さ」

西野「ん〜?」

真中「・・・つかさ」

西野「もう一回」

真中「つかさ」

西野「もう一回」

真中「つかさ」

西野「もう一回」

真中「・・・つかさ」

西野「うんっ!合格!」

真中「え・・・合格ってどういう・・・」

西野「もうっ!淳平くんは鈍いなぁ」

真中「いや、そんなこと言われたって・・・」

西野「そもそもここに一緒に来てって言ってる時点でなんとなくわかってるだろ!」

真中「え・・・それって」

西野「まさか淳平くんが告白までしてくれるとは思ってもいなかったなぁ・・・」

真中「じゃあ・・・」

西野「うん、不束者ですが、またよろしくお願いします・・・って改まって言うと照れるなあ」



ヒュゥウウウウウウウウ・・・・・・・・・・・ドォオオオオオオオオオンッ!!!

次の瞬間、大空に花が舞った



真中「うおっ!?」

西野「きゃっ!?」



夜空に輝く花火
そういえば我が泉坂高校にはなにやら打ち上げ花火研究会と言う名の怪しげな部が存在していたことを思い出した
そして彼らの作った花火がグランドフィナーレを飾るということも思い出した



西野「きれい・・・」

真中「ホントすごいなぁ・・・」



そんなことを思いながら花火を見ていたら丘の下から北大路たちの声が聞こえてきた
花火の音にかき消されながらだがあいつらの馬鹿でかい声はどうやら爆音以上のようだ



北大路「まったく、真中と西野さんこんなところにいたの?」

外村「おまえらばっか絶好のスポット独り占めなんかさせないぞ」

天地「ほら綾さん、見てください!ここからなら花火が見やすいですよ」



結局いつものメンバー(+天地)
せっかく二人きりでいい雰囲気になれてたってのに
結局最後はみんな一緒になるんだな
だが、今はそれもいいような気がした
みんなで力をあわせて成功させた学園祭だ
だったら最後はみんなで一緒にお互いを称えるとするか



北大路「ねぇみんな、せっかくだからみんなで写真とらない?」

外村「おっ!いいねぇ!よしっ、それじゃ映研部嵐泉祭ご苦労様ってことで一枚いくか!」

小宮山「俺にも焼き増しくれよな!」

外村「よし、ってことで天地!」

天地「うん?なんだい?」

外村「撮ってくれ」

天地「は!?なんで僕が?」

外村「だっておまえ映研部じゃないじゃん」

天地「ふんっ!断るね!」

外村「そっか、じゃあ東城」

東城「えっ?」

外村「天地に頼んでくれ」

天地「外村きさまっ・・・」

外村「なんだよ?」

天地「綾さんを利用するなんて卑怯だ!」

東城「天地君、お願いできるかな?」

天地「綾さんの頼みなら喜んで!」

外村「おまえが単純でホントたすかるわ、そんじゃここ押すだけだから」

天地「僕に指図するな!」

外村「東城」

東城「天地君、お願い」

天地「ハイ!任せてください綾さん!」



そして俺たちは丘の上の大木の前に集まった
外村が俺たちをどんどん配置してくれる
真ん中には主演の俺と西野、いやつかさ
そして俺らの脇には東城と外村妹
そして後には小宮山、さつき、そして外村



外村「それじゃ泉坂映像研究部、嵐泉祭無事終了を記念して!ほら天地!」

天地「うるさい!僕に指図するな!」

東城「・・・嵐泉祭無事終了を記念してぇ!」

天地「いきますよ綾さん!ハイ、チーズ!」



カシャッ・・・


[No.1392] 2007/11/05(Mon) 17:52:27
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