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No.1593に関するツリー

   扉の向こう側【全年齢】(はじめに) - スタンリー - 2010/09/18(Sat) 21:16:59 [No.1593]
第一部「WEST GATE」 プロローグ - スタンリー - 2010/09/18(Sat) 21:22:17 [No.1594]
第一部「WEST GATE」 第一話 - スタンリー - 2010/09/23(Thu) 12:32:08 [No.1595]
第一部「WEST GATE」 第二話 - スタンリー - 2010/10/06(Wed) 22:47:16 [No.1596]
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第二部「EAST GATE」 第一話 - スタンリー - 2011/09/04(Sun) 23:40:46 [No.1607]



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扉の向こう側【全年齢】(はじめに) (親記事) - スタンリー

はじめまして、スタンリーと申します。


よろしくお願いします。


[No.1593] 2010/09/18(Sat) 21:16:59
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第一部「WEST GATE」 プロローグ (No.1593への返信 / 1階層) - スタンリー

タイトル「扉の向こう側」




第一部「WEST GATE」


「プロローグ」


つかさがフランスから帰ってきた年の翌年の夏、淳平が休暇を取得し、つかさ

の高校時代の親友であるトモコの夫の両親が所有している避暑地○○村に

ある別荘に向かって淳平が車を運転している。


助手席には、つかさが座っている。




2人が乗っている車は舗装された山道を走っている。


前日までの雨のせいで山道の側溝から溢れた水が道路に流れている箇所がある。

水が流れているところを車が通るたびに水しぶきができる。


つかさがカーナビの画面を見ながら。

つかさ「あと少しで、別荘に着くみたい。」



淳平「家を出て4時間かぁ。途中休憩もあったけど久しぶりのロングドライブ

になったなぁ。

昨日までここら辺は大雨が降ったみたいだけど、今日は晴れてくれて助かった

よ。」


つかさが笑顔で。


つかさ「そうね。本当、ラッキーよね。」



淳平「ただ、山の空って変わりやすいっていうから、今晴れていても、急に

土砂降りってこともあるから。」



つかさ「そうなの?今日、ここら辺にある神社でお祭りがあるらしいから

お祭りが終わるまでは、雨が降らなきゃいいけど・・・ねぇ、天気予報って

知ってる?」



淳平「夕方ころまでは晴れみたいだけど、夜は大気が不安定になるかもって

さ。」



つかさ「お祭りには夜に行きたかったけど、少し早めに出かけたほうがよさそ

うだね。」



淳平「そうだな。」



つかさ「ここのところ、ずぅっと忙しそうだったのに、よく休みが取れたわね。」


淳平「この日のために、たまってた企業のCMとか芸能人とかのPV(プロモ

ーションビデオ)撮りとかを殺人的なスケージュールをこなしてきたからな。

まぁ、実際できなかった分は営業が先方にお願いして帰ったらやるってことで

話をつけておいてくれたはずだから。」



つかさ「CMとかPVとかって・・・、映画の方は?」



淳平「そっちの方は、主に角倉さんがやってるから。それにまだ長編の経験が

ないからさ、こと映画に関してはお手伝い程度かな。」



つかさ「そう・・・。」



淳平「知ってる?最近映画で○○製作委員会ってのをテロップなんかで見ると

思うけど、あれって複数のスポンサーを募って投資リスクを分散させて映画を

作ってるんだけどさ、実際できてから、いざ映画を上映しようと思っても上映

してくれる映画館がなくてお蔵入りした映画が数え切れないくらいあるんだ

ぜ。

そこにきてこの不景気だろ、スポンサーがなかなか集まらなくてさ、映画の制

作本数自体が減ってて、なかなか撮るチャンスがないっていうのもあるから。」



つかさ「大変なんだね。」



淳平「だからさ、今はCMとかPVとかをしっかりやって認められるものを作

って実力をつけて名前が売れたら、映画のスポンサーがついて、映画の話がく

るようになると思う。」



つかさ「どれくらいかかりそうなの?」



淳平「まだ、分からないけど・・・。」



つかさ「何か、近道とかないの?」



淳平「近道?うーん、よっぽど力のある俳優とか作家の指名とかコネがあれ

ば・・・だけどやっぱり実力がないのにそんな話とかないからさ。今ある仕事

をきっちりやるしかないと思うんだ。」


つかさ(力のある作家・・・・。)


つかさが4日前、偶然街で東城綾に会い二人で喫茶店に入った時の事を

思い出す。


――――――つかさの回想の始まり。―――――――


喫茶店の中でつかさと綾が同じテーブルに相対で座っている。

つかさ「久しぶりだね、東城さん。最後に会ったのは、高校三年の冬だったは

ずだからもう5年振りになるわね。」



綾「そうね、確か、真中君の受験の日だったかな。」



つかさ「そうだったね・・・あっ、大林賞受賞おめでとう。もう1年近く経っ

ちゃったけどテレビとか雑誌の取材とかでよく見かけるから、ますます人気が

出てきて忙しそうだね。」



綾「ありがとう。西野さんだってパティスリー鶴屋2号店の店長兼パティシエ

としていろいろな雑誌で取り上げられて、私以上に忙しそう。」



つかさ「雑誌のおかげで、お店はそれなりに活気はあるんだけど、でもそれは

私の実力じゃなくて日暮さんのおかげだと思うから・・・。」



綾「そんなことないよ。2号店限定のお菓子って、あれ殆ど西野さんのオリジ

ナルでしょう。

何度も食べさせてもらってるけど、本当に美味しいもん。」



つかさ「買ってくれてたんだ・・・それに、美味しいって言ってもらえて・・・

嬉しいな。」



綾「将来、独立とかを考えてるの?」



つかさ 「すぐにってわけじゃないんだけどね、小さくてもいいから自分のお店

を出したいなぁって。」



綾「あの頃と変わってないなぁ、何に対しても前向きで積極的っていう感じが。」



つかさ「変わってないかなぁ。そういう東城さんも変わってないみたいだけど。」



綾「ううん、私は変わった・・・あの雪の日から。」



つかさ「えっ?」



綾「引っ込み思案で、自分の気持ちを出さないようにして、いろいろなことに

躊躇して損をしてたからね。だから、できる限り積極的になれるよう努めて生

きてきたから以前の私を知っている人から今の私をみたら相当図々しくなった

と思うわ。」



つかさ「図々しく・・・あの東城さんが?想像できないな。」



綾「うふふ、そう?あと少し年をとって、したたかなところがでてきたかも・・・。」



つかさ「年をとったって言ってもまだ23歳でしょ。同じ年なんだから。」



綾「うふふ、・・・ねぇ、そういえば真中君、元気にしてる?」



つかさ「う・・・うん。」



綾「気を使わないで、もう5年も前のことなんだし。

そうそう、今度ね、雑誌のTVコマーシャルに私が出演することになったんだけ

ど、それを角倉監督の事務所が撮ることになったみたいなの。もしかしたら、

真中君が撮る事になるかもしれないの。」


つかさ(淳平君が角倉さんの所で働いているのを知ってるんだ。)

つかさ「そう・・・淳平君は元気だよ。でも仕事で忙しくてなかなか会えない

んだけどね。

ところで、失礼なことを聞くかもしれないけどいい?」



綾「どうぞ。」



つかさ「今お付き合いしている方っているの?」



綾「ううん、仕事のせいにしちゃいけないけど、小説や講演が忙しくてね、な

かなか出会いとか縁がなくて。」



つかさ「変なことを聞いちゃったかな。」



綾「いいのよ、この年になって付き合っている人がいないのは他人から見た

ら、寂しそうに見えるだろうからね。

でも夢を実現するために今の小説の仕事を選んで頑張ってるんだから。」



つかさ「そう・・・夢って一体どんな?」


綾が笑顔で。

綾「笑わないでね。高校時代に真中君と約束したことなんだけどね。私の作品

で一緒に映画を作ることなの。」



つかさ「・・・・」


―――――――つかさの回想終わり。――――――――――




淳平「どうかした?急に無口になったりして。」



つかさ「えっ?ちょっと考え事をしちゃって・・・。」



淳平「そう・・・・。」



つかさ「ねえ、誰か有名人のCMとかPVとかは撮ったことってないの?」




淳平「有名人?ああ、ポルターガイアっていう音楽グループがあるんだけど

知ってる?

この前そこのグループのPVを作ったら、ボーカルのTAKUTOさんに気に入っ

てもらえてさ、また次も頼むって言われてるんだぜ。」



つかさ「あの人気ロックグループの?凄いじゃない。」



淳平「まあな。」



つかさ「他は?これから撮る予定とかも含めて。」



淳平「あまりまだ有名じゃないアイドル歌手とかなら他にもいるけど・・・。」



つかさ「有名な作家さんとかは?」



淳平「作家?うーん、ないなぁ。でも、何で?」



つかさ「特に意味はないけど・・・なんとなくね。」



別荘地に車が入り、カーナビの画面上にある自車位置が目的地付近に近づいて

いる。



淳平がカーナビの画面を見て。


淳平「目的地に近いみたいだけど、どれが目的の別荘なんだ、なんだか皆同じ

様な建物ばかりでわかんねぇよ。」



つかさ「少し車を横に寄せて、携帯でトモコにどこか聞いてみるから。」



つかさが携帯でトモコに電話をしてどの別荘なのかを聞いている。


つかさ「私、お掃除ご苦労様ぁ・・・うん、今××って言うところの辺にいる

んだけど・・・

そう・・・○○交差点を右に曲がって、3つ目の建物ね。駐車場のところに看

板があるんだ・・・・・外に出て待っててくれるの?助かるわ、ありがとう。」


つかさが携帯の通話を切る。



つさ「この先の・・・。」



淳平「○○交差点を右折して、三軒目の建物があって近くに看板があるんだろ

う?」



つかさ「うん、それでね、トモコが外に出て立っててくれるって。」


淳平が○○交差点を右折し、速度を遅めながら運転している。


「ようこそ○○村へ」と書いてある看板の前で手を振っている女性がいる。


つかさがその女性を見て。

つかさ「3っつめだから・・・。あっ、トモコだ。ねぇ、あの別荘だからね。」



淳平「分かった。」


淳平がウィンカーを出し、車を別荘の前の駐車場に停める。


つかさ「運転、お疲れ様。」

つかさがドアを開けて車から降りる。


トモコが笑顔でつかさに歩み寄って抱きつく。

トモコ「ひさしぶり。元気だった?」


つかさがトモコの腕を振り解きながら。

つかさ「久しぶりって、ほんの5日前にあんたの家で会ったったばかりじゃん。」



トモコ「そうだっけ?アハハ」



つかさ「旦那さんは?車が駐車場にないみたいだけど?」



ともこ「ちょっと、買い出しにね。」



つかさ「涼しいわねぇ、10度くらいは気温が違うんじゃない。半袖の服だと

少し寒いぐらい。」



トモコ「この季節にここに来ちゃうとムシムシした家には帰りたくなくなっち

ゃうわね。」


淳平が車のトランクを開けて、ビールや荷物が入ったバッグを取り出して、ト

ランクを閉める。


つかさ「こっちのバッグを持つよ。」


淳平「助かるよ。」


淳平とつかさが荷物をもち歩く。

トモコが別荘のドアを開ける。



淳平がトモコに対してどこかよそよそしく。


淳平「これ飲み物とビール。」



トモコ「運転お疲れ様、淳平君。」



トモコが淳平に近づき小声で。

トモコ「感心、感心、約束を忘れなかったみたいね。」



つかさ「約束?」



トモコ「何でもない、何でもない、こちらの話だから。」



つかさ「そう・・・、これ家で焼いてきたんだけどアップルパイ。」



トモコ「わぁ、自家製だよね。つかさが作ったのって美味しいから楽しみ。

それと、淳平君、飲み物は冷やしておくから、そこに置いておいて。」



淳平が飲み物とビールを指定された場所に置く。



つかさ「今日は誘ってくれてありがとね。でもお邪魔じゃなかった?」



トモコ「気にしなくてもいいって。ここに来るのも、もう3回目だしね。

夏は避暑地として使えるし、ゲレンデが近くにあるから冬になればスキー

とかボードができるからね、・・・いい所でしょ。」



つかさ「本当ね。いいひと、見つけたわね。」



トモコが満足げに。

トモコ「そう思う?」



つかさ「うん。」



別荘の裏側は木が茂ってい十数メートルさきは山を削った斜面になっている。

別荘のドアの上にお札が貼ってあるが誰も気が付かず全員別荘の中に入った。


[No.1594] 2010/09/18(Sat) 21:22:17
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第一部「WEST GATE」 第一話 (No.1594への返信 / 2階層) - スタンリー

第一話



ともこが別荘内を説明している。


ともこ「部屋は私と隆志(トモコの夫の名前)で掃除しておいたから。」


三人で二階へ行ったとき隆志の車が駐車場に入る。

ともこ「あっ、帰ってきたみたい。」


少しして、隆志が別荘に入って二階に上がって来る。


つかさ「隆志さん、ご無沙汰してます。」


隆志「やぁ、つかさちゃん久しぶり・・・と・・・。」



淳平「あっ、真中、真中淳平って言います。」



隆志「そうそう、真中淳平君だね。話はトモコとつかさちゃんから聞いている

から。

僕は、加藤隆志です。」



淳平「隆志さん、お世話になります。」


隆志が寝室のドアを開ける。

隆志「ここが寝室。一応親が使ってる部屋だけど、中にある物は使っても

らっていいから。」


ベッドが二つならんでいる。

つかさ「わぁ、広い部屋だねぇ。本当にいいの?」



隆志「ほとんど使ってないからね。クローゼットに布団とシーツがあると

思うから寝る前にセッティングして使ってね。」



つかさ「うん。」



トモコ「今晩近くの神社で祭りがあるけど、夕方から天気がどうなるか分か

らないから、4時になったら、行くことにしよ。」



つかさ「さっき車の中で話してたのよ、楽しみだね、淳平君」



淳平「・・・そうだな。」



つかさ「どうしたの?」



淳平「運転でちょっと疲れてるから、行くまですこし横になっていてもいい

かな?」



トモコ「そうね、じゃぁ、ここで寝てたら、私達は居間にいるから。」


隆志とトモコが寝室から出て行く。


つかさ「大丈夫?」



淳平「ちょっと横になっていれば大丈夫だと思うから。」



つかさ「ねぇ、昨日ってお仕事終わるのって遅かったんじゃないの?」



淳平「えっ!?ああ、別に・・・普通だったけど。」



つかさ「こらっ、嘘はつかないで、正直に話して。」



淳平「仕事が終わったのが今日の午前3時で、寝たのが4時だったんだ。」



つかさ「じゃぁ、今日家を出たのが8時だったから・・・もしかしてあまり

寝てないの?」


淳平「2時間くらいかな、実際に寝たのは。」



つかさ「もう、無理してぇ。」



淳平「最近ゆっくり会えなかったし、このお泊りすっごく楽しみにして

たろう。だから、どうしても一緒にきたかったからさぁ。」



つかさ「ありがとう、我儘をきいてくれて。」



淳平「いいって。」



つかさ「仕事が忙しいのも、私が我儘なのも分かってるの。それに時々

理不尽な事を言って貴方を不快な思いにさせていることも・・・。」


淳平「気にすんなって、なんとも思ってないから。」


つかさ「うん、この3日間だけは、仕事のことは忘れてね。じゃぁ、呼び

にくるまで寝てて、あっ、ベッドメイキングをしようか?」



淳平「自分でやるからいいよ。」



つかさ「そう?いつもお互いに忙しくてゆっくりできないから、ここにいる

間はゆっくりしようね。」



淳平「そうだな。」

つかさが部屋を出て階段を降り居間に行った。



居間では、トモコと隆志がソファに座って話している。



トモコ「どう?」


つかさがトモコの隣に座る。

つかさ「うん、朝の3時まで仕事をしてたって。」



トモコ「二人とも仕事が大変みたいだね。ちゃんと会えてるの?」



つかさ「お互い休みもほとんど取れないし、取れても私の仕事柄土日祝日は

基本的にお店があるからね。平日は仕事が終わっても翌日の準備やら、帳簿

とか忙しくてほとんど会えないかな。でも電話とかメールで連絡は毎日し

てるのよ。」



トモコ「そう・・・、喧嘩とかしないの?」



つかさ「喧嘩?う〜ん、私がどんなに変な理由で怒っても、言い返すわけで

もなく淳平君から直ぐに謝っちゃうから・・・喧嘩ってしたことがないかも

・・・。」



トモコ「それって相手が我慢してるって事じゃないの、ストレスがたま

るよ、きっと。」



つかさ「うん・・・・。私たちのことはいいからさ。今何の話をしてたの?」



トモコ「えっ、ああ、話ね。今日ここの神社のお祭りでしょ。それにまつわる

話をね。この祭りの日位にね、死んだ恋人の霊が残された彼女の所に帰ってく

るって話があるらしいの。」



つかさ「それって怖い話なの?」



隆志「死者の話だから一応怪談になるのかなぁ。でも恋人の話とかにもなる

からなぁ・・・。」



つかさ「面白そうね、私も聞きたいな。」


隆志「じゃぁ、最初から話すよ。この家の玄関の扉にお札が貼ってあるの

に気づいたかな。」



つかさ「気がつかなかったけど。」



隆志「あのお札ってさ、死者の世界とこちらの世界を遮断する効果がある

んだって、それを踏まえての話だから。」


隆志が、静かに話はじめた。


[No.1595] 2010/09/23(Thu) 12:32:08
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第一部「WEST GATE」 第二話 (No.1595への返信 / 3階層) - スタンリー

第2話


隆志「昔、このあたりに仲がいい恋人達がいて、二人は互いに好きあ

ってて結婚の約束をしていた。だから婚約者同士になるかな。名前は

・・えぇっと、忘れちゃったから・・・、トシとヒロコってことで。」


隆志「ある日、トシが結婚準備のため一人で町へ行く途中に、不幸にも

土砂崩れがあって、それに巻き込まれて死亡してその日のうちに死体も

見つかったらしい。」



隆志「残されたヒロコの方は、婚約者の死をとても悲しんだ。自分も彼

の後を追って死のうとまで考えたけど、友人や両親の説得でなんとか思

いとどまった。」



隆志「それから数日たって、ここの神社のお祭り夜、ヒロコの両親は祭りで

近所の家に行ってて、彼女と友人一人が一緒に家にいたんだ。そこに彼氏の

声で・・・・」



「ドン、ドン、ドン」(ドアをたたく音)




トシ「俺、俺だよ、トシだ、ドアを開けてくれ。」

「ドン、ドン、ドン」

ヒロコと友人が驚き、玄関のドアに近づく。


ヒロコが泣きながら尋ねる。


ヒロコ「トシ君、トシ君なの。」


ヒロコとが玄関のドア近くに行った時、友人が、ドアが施錠されてない

のに気づく。


ヒロコがドアノブに手を掛けたとき友人が開けるのを制止して、友人

が恐る恐るトシに尋ねる。


友人「ねぇ、トシ君、トシ君って土砂崩れがあって・・・この世には

いないんだよね。」



トシ「俺が、この世にいないって・・・死んでるかって?何言ってるんだ

ピンピンしてるぜ。現に今ここで、話してるだろう。」



友人「だって、鍵をかけてないから、勝手に開けて入れるはずだよ。」



トシ「えっ、開いてる?おかしいなぁ、開かないぜ。建てつけが悪いん

じゃないかなぁ。内側からなら開けれるかもしれないから開けてくれよ。」


友人がドアを見るが、特に建付けが悪いようには見えない。


友人が小声でヒロコに。

友人「もしかしてお札があるから開けられないのかも。」


ヒロコ「・・・・。」



友人「ヒロコ、私2階の窓から本当にトシ君が玄関にいるのかを見てくる

から待ってて、でも絶対にドアを開けちゃ駄目だからね、いい?」


ヒロコが涙を流しながら頷く。

友人が2階へ行き、二階の部屋の出窓から玄関を確認するが、トシの

姿がない。







隆志「少しして友人が窓から玄関を見たけど誰もいないことをヒロコに

伝えようと2階から戻ってみたら、ドアが開けっ放しになってて・・・。」




つかさ「ヒロコさんはいなかったの?」

隆志が頷く。


隆志「おそらくヒロコがトシに説得されてドアを開けちゃったんだろうな。」


トモコ「それって、ヒロコさんがあっちの世界に行っちゃったってこと?」



隆志「おそらくね。」



つかさ「きっとヒロコさんにとって彼が全てだったんじゃないかなぁ。

それと、彼が亡くなってから余り時間が経ってないし。」



隆志「ヒロシが亡くなってまだあまり経ってなかったから、そうかもし

れないね。

もし同じ状況でヒロコの立場だったらドアを開ける、開けない?」



トモコ「私なら絶対に開けないなぁ。」



つかさ「いいの、旦那さんの前でそんなことを言って。」



トモコ「だって親とか友達とかが悲しむもん。」



隆志「構わないよ。ただ、ちょっと寂しいけど・・・好きな人には

生きていてほしいからね。」



トモコ「つかさは?」



つかさ「うーん・・・・・開け・・・ないかな、私も。」



トモコ「つかさだってじゃん。」



つかさ「私のせいで彼の人生を終わらせて欲しくないしね。」


トモコ「彼ならどう言うかなぁ?」



つかさ「彼って、淳平君のこと?どうかなぁ・・・・開けるって

いうかも。」


トモコ「それはつかさが開けて欲しいって思ってるからじゃないの?」



つかさが頬を少し赤らめて。


つかさ「・・・うん。」



トモコ「アハハ、やっぱりそうなんだ?あんたって本当に我がままだね。自分は


開けないのに、彼には開けて欲しいなんて。」



つかさ「だって、向こうの世界なんて、どんなんだか分からないし、もし独りぼっち

になっちゃったら寂しいじゃない、だからね。」



隆志・トモコ「ハハハ。」


[No.1596] 2010/10/06(Wed) 22:47:16
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第一部「WEST GATE」 第三話 (No.1596への返信 / 4階層) - スタンリー

第3話



午後五時ころ淳平とつかさ二人で神社でお参りをしている。

空は次第に曇ってきて、少し遠くの方で雷が鳴っている音が聞こえる。


つかさ「もう少しで降り出しそう。」



淳平「少し早いけど、別荘にもどろうか?」



つかさ「そうね。」



淳平「でも二人はどこにいるんだ?戻ってもドアが開かないんじゃぁな。」



つかさ「安心して、合鍵を借りてあるから。」



二人が腕を組んで、別荘に向かって歩き出す。



つかさ「ねぇ、淳平君が寝ていた時にね、隆志さんがここら辺の怪談話をして

くれたの。」



淳平「怪談話・・・、で、どんな?」



つかさ「えぇっとね。昔・・・・

つかさが先程別荘で隆志から聞いた話を淳平に話す。


・・・・というわけで、ヒロコさんがいなくなってたんだって。」




淳平「ふぅん、祭りの夜にねぇ。」



つかさ「淳平君がヒロコさんの立場だったら、どうする?」



淳平「俺は・・・つかさはすっげぇ寂しがり屋だから開けちゃうかな。」



つかさが嬉しそうに。


つかさ「確かに寂しがり屋でトモコ達にもそう言ったけど・・・開け

ちゃダメだよ。」



淳平「どうして?」



つかさ「だって、今まで育ててくれた両親とか、知人とか友人たちに

迷惑がかかるし、第一悲しむじゃない。」



淳平「そうかぁ。あまり深く考えなかったけど・・・。」



つかさ「でも開けてくれるって信じてた。」



淳平「じゃぁつかさは?」



つかさ「もちろん開けないわよ。」



淳平「ひっでぇなぁ、ハハハ。」



つかさ「アハハ。でもね本当に開けちゃぁダメよ。親とか知人が

悲しむからっていうのもあるけど、何より私のせいで貴方の大切

な夢・・・映画をとることをあきらめて欲しくないの。」



淳平「・・・・。」



つかさ「それにね、私がこの世からいなくなったら私の事は早く

忘れて素敵な人をみつけて幸せになって欲しい。」




淳平「・・・早くって・・・できるわけないだろう。それに相手

だってそんな簡単に見つかるわけないじゃんか。」




つかさ「そうかなぁ。背も伸びて、格好良くなってるから。モテる

と思うんだけどなぁ。」




淳平「格好かよ。大人になっても、いつも空想ばかりしてて、お金も

ねぇ俺なんか誰が好き好んで。」



つかさ「何よ、私がもの好きみたいじゃないの、いいわそんな


淳平君がすきなのは確かだから、そうねぇ・・・東城さんな

んてどう?」




淳平が驚き声を荒げて。



淳平「な、なんで、東城の名前をここで出すんだよ。」



つかさ「ここに来る数日前に彼女に会う機会があって、少しお

しゃべりしたの。その時、あなたと一緒に映画を創るっていう

夢のために頑張ってるっていってたし。彼女なら貴方のことを誰

よりも理解してくれそうだからね。それに、学生時代好きだった

じゃない。」



淳平「確かにそんな時期があって、不安な気持ちにさせたことが

あるかもしれないけど・・・そんな、昔のこと言うなよ。

・・・俺の恋人はつかさなんだから。」



つかさが頬を赤らめながら。


つかさ「嬉しいな。」



淳平「それに、卒業して5年だぜ、東城だって誰か付き合ってる彼氏

とかいるだろうから。」



つかさ(今、誰とも付き合っていないこと知らないんだ。)



つかさ「でも、相手が東城さんじゃなくてもいいから、いい人を見つ

けてね。」



淳平「しつこいなぁ・・・分かったよ。たとえ死んだはずの君が来て何

を言ってもドアを開けないし、早く新しい彼女も見つけるように努力する。

これで満足か?」



つかさが組んでる腕に少し力を入れる。


つかさ「うん、でも生きている限り私が淳平くんの彼女だからね。」



淳平「いてて、そんなの当り前だろう。もう、こんな話やめようぜ。あの世

とか、新しい彼女とかさ、縁起でもねぇよ。」




つかさ「そうだね。ここにいる間たっぷり甘えちゃうんだから、覚悟しててね。」




淳平「それは俺のセリフだって。ここずうっと会ってなかったんだから。」



つかさ「ごめんね、お店が忙しかったから。もう少ししたら、お店の方も要領

よくできると思うから、そうすればもっと会える時間ができると思うし。」




淳平「いいって、俺の方だって不況だって割にここ数カ月急に仕事が増えてき

てるから。今はお互いの夢のために頑張んなきゃいけない時期だからな。

でも無理だけはすんなよ、人一倍責任感が強い君のことだから、体を壊さないか

心配してんだぜ。」




つかさ「うん、淳平君もこわなさいようにね。」



淳平「ああ。」


淳平とつかさが別荘に戻ったと同時に小雨が降り始めた。


[No.1597] 2010/10/17(Sun) 17:04:32
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第一部「WEST GATE」 第四話 (No.1597への返信 / 5階層) - スタンリー

第4話



つかさと淳平とトモコと隆志がテーブルで夕食を終え、話をしている。

外は雨が降っており、時々雷の音が聞こえる。

隆志が席を立って。

隆志「そろそろ、行く準備をして来る。」



つかさ「 どこかへ行くの?」


隆志「毎年この祭りの日に、この辺の別荘のオーナーの集まりが

あって、それで行かないといけないんだよ。」


隆志が二階の部屋へ行く。



つかさ「トモコは?」



トモコ「今年は友達と一緒だからってパスしたの。」



つかさ「一緒に行かなくていいの?」



トモコ「気にしないで、本当の事を言うとね、少し苦手な人がいて

行くのが億劫だったから。」


隆志が準備を終え二階から降りてくると、外で車のクラクションの音

がする。



隆志「じゃぁ、行ってくるから。」



トモコ「私も、迎えに来てくれ人に挨拶してくるから。」



トモコと隆志が外に出ていく。


つかさがテーブルの上に置いてある、食器類を流し台の方へ持って

行き洗う。



少しして、トモコが隆志の見送りから帰ってくる。



トモコ「ごめん、後片付けをさせちゃって。」



つかさ「いいって、これくらいのこと。無料で泊めてさせてもら

うんだから。」



トモコ「つかさ、今日はお母さんになんて言ってここに来たの?」



つかさ「別に、彼氏といっしょにトモコの別荘に泊まりにいくって。」



トモコ「じゃぁ、淳平君とは親公認で付き合ってるんだ。」



淳平「家に行った時に一緒に食事をしたりしてるから自然にって

いうか、流れでっていったらいいのかな。」



つかさ「もう高校生じゃないんだから。何処に誰といるかってことを

きちんと知らせておけば外泊くらいで特に何かを言う親じゃない

からね。」



トモコ「ふぅん。じゃぁ、心配してないんだ。」



つかさ「だって4年間海外にいたのよ。今更お泊りくらいで心配

なんかしないわよ。」


トモコ「でも、本当は、つかさの事を心配してるかもしれないよ。」



つかさ「それはない。だってお母さんたち、3日間旅行に出かけ

るって。」



淳平「 えっ!?じゃぁ今家に誰もいないのか?」


トモコが淳平の顔を見て。


トモコ「今わざわざこんな所にこないで、つかさの家で二人きりで

いたほうが良かったって思ってたでしょう。」



淳平「そんなこと思ってないって。」



トモコ「冗談よ。そうだ淳平君先にお風呂に入ったら。」



淳平「そうさせてもらうよ。」



トモコ「つかさは?一緒に入る?」



つかさ「何言ってるのよ、もう。」


トモコ「アハハ、ごめん、ごめん」



つかさ「後で着替えを風呂場へ置いておくから、入ってて。」


淳平「ああ、じゃぁ先に入らせてもらうな。」


トモコ「ゆっくりね。」

淳平が風呂場へ行き、つかさは淳平の着替えを取りに二階へ行った。


[No.1598] 2010/11/21(Sun) 08:15:00
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第一部「WEST GATE」 第五話 (No.1598への返信 / 6階層) - スタンリー

第5話


トモコとつかさが居間へ移動しソファに腰掛けて談笑している。


トモコ「淳平君にあの話をしたんだ。で、なんて答えたの?」



つかさ「ドアを開けるって。」


トモコ「やっぱりね。そう言うんじゃないかって思った。
    
嬉しかったでしょう?」



つかさ「そうね。でも、開けちゃぁダメって言っておいた。

だって、私のせいで夢をあきらめて欲しくなかったしね。」



トモコ「そうね。」


つかさ「それともし、この世からいなくなったら、直に

私のことは忘れて新しい彼女を見つけて欲しいって。」



トモコ「優しいんだね。」



つかさ「その時にね、高校時代に彼が好きだった人の

名前を出したら、怒られちゃった。」


トモコ「あの淳平君が怒ったの?」



つかさ「うん。」


トモコ「そう・・・それで好きだったって女の人って?」



つかさ「・・・東城さん。」



トモコ「東城・・・って・・・・あの小説家の東城綾のこと?」



つかさが頷く。

つかさ「彼女なら、彼と同じ高校へ通ってたし、部活も一緒で

よく知ってるから、夢の手助けしてくれると思うの。」



トモコ「でも凄い有名人でしょう?どうして分かるの?」




つかさ「実はねここに来るまえにね、東城さんに5年ぶり

に会ったときに教えてくれたの、淳平くんに自分の書いた

作品を映画化してもらうのが夢だって。」



トモコ「そう・・・・、ねぇ、もしかしてその東城さんって

淳平君のことが好きだったの?」


つかさが頷く。

つかさ「お互いの気持ちを知ってて、高校一年のとき一度

彼と別れてるから。」



トモコ「 ・・・。ねぇ彼って今でも東城さんと会ってるの?」



つかさ「どうかなぁ。一応同級生で同じ部活だから、集まりが

あれば会っているって思うけど。」



トモコ「集まりって意味じゃなくって、2人っきりでって意味

でよ。」



つかさ「私がフランスにいた時、一度も会ったことがないって

言ってたから、会ってないと思うけど。」



トモコ「感心感心、あんた達真面目に遠距離恋愛してたんだ。」



つかさ「あれっ、話してなかったっけ。向こうに行っている4年

間、彼との関係は白紙になったって。」



トモコ「うそっ・・・初耳よ。確かフランスに行くとき彼氏が見送

りに来るから空港へは来ないでって。」


つかさ「空港で別れるまでは恋人同士って約束だったから。」



トモコ「じゃあ、あんたが去年戻ってくるまで2人ともフリー

でお互いに連絡はとってなかったの?」


つかさが頷く。



トモコ「寂しがり屋のあんたが?」



つかさ「寂しかったけど、信じてたから。」     



トモコ「そう・・・・ねぇ、浮気の境界線ってどこだと思う?」


つかさ「浮気?」


トモコ「そう、どこまでだったら淳平君のことを許せる?」


つかさ「急に何を聞いてくるのよ、もう。もしかして

隆志さんが浮気をしたんじゃないの?」



トモコ「・・・・。」


つかさ「本当なの?」



トモコ「うん、でも結婚する前だけどね。最初、隆志は

会社の同僚と仕事のことで合ってたって認めなかったけ

どね。」



つかさ「それって、思い過ごしじゃないの?」



トモコ「隆志にもそう言われたの。でもね、私見ちゃったの、

携帯電話でのメールでのやり取りを。」



つかさ「あやしいメールのやりとりがあったんだ。」



トモコ「そう。」



つかさ「でも、結婚してるっていうことは、仲直りしたって

事よね。」



トモコ「隆志が謝って、もう会わないって約束したからね。」


つかさ「そんなことがあったんだ。」



トモコ「私のことはいいから、つかさは?」


つかさ「私?」


トモコ「とぼけちゃってぇ。どこまでなら許せるかってこと。」



つかさ「考えたことないなぁ。」



トモコ「じゃぁ、2人っきりで会うっていうのは?」



つかさ「お仕事とか、そこに感情がなければ・・・問題

ないと思うけど。」



トモコ「そう・・・、もし、その相手が東城さんだったら?」



つかさ「えっ!?」



浴室のドアの開閉の音がする。



居間へ髪の毛をバスタオルで拭きながら淳平が短パンとTシャツ

姿で風呂場から出てくる。


つかさとトモコが会話を止める。



淳平「お先に。いい風呂だったなぁ。あっ、なんか会話の邪魔をしちゃった

かな?続けてよ。」



つかさ「ううん、今終わったとこだから。」


トモコがビール(缶)を淳平に手渡す。

淳平がビールを受け取る。


淳平「サンキュウ。」


淳平がつかさの隣のソファに腰掛け、ビールの缶のプルトップ

を開けようとした時、突然淳平の携帯の呼び出し音が鳴る。


淳平がビールとバスタオルをソファの上に置き、短パンのポケットから

携帯電話を取り出し電話に出る。



淳平「はい、真中です・・・・角倉さん・・・・はい・・・こんば

んは、お疲れ様です・・・・えっ!?」


淳平が一瞬つかさの顔を見る。


淳平「はい。・・・・でも、・・・・・・・・・はい、そうですね・・・。

いえ大丈夫です。・・・今からだと、3時間いや2時間半もあれば・・。

分かりました。はい、・・・・気にしないで下さい。・・・・・・・

直ぐに向かいますから。」


淳平が携帯電話をきる。



つかさが怪訝そうに。



つかさ「もしかして、お仕事?」



淳平が申し訳なさそうに。

淳平「うん、営業がちょっとミスをしちゃって、映像を大至急

手直しする必要があるから、今から事務所へ行かないといけない。」



つかさ「今から?これから暗くなるし、雨が降ってるのに?」



淳平「ああ。」



つかさ「何か理由を言って断れないの?」



淳平「勝手に決めちゃって悪いけど、もう行くって言っ

ちゃったから。ホンッと、ごめん。」



つかさ「ただの我がままでいってるんじゃんないのよ。

来るとき、道の側溝から所々で水が溢れてたし、帰り

道土砂崩れなんかあると危ないと思うから心配なの。」




淳平「心配してくれるのはありがたいけど、今度の仕事は

俺に任されてた事だから。」



つかさの頭の中で隆志の怪談話が浮かんでくる。



つかさ「なんとなくだけど・・・嫌な感じがするの、だから。」


淳平がつかさの表情を見て。

淳平「もしかして、さっきの怪談話が頭に浮かんだんじゃないのか?」


つかさが頷く。



淳平「大丈夫だって。そんなにスピードも出さないし、安全運転で

帰るからさ。もし心配だったら一緒に帰るか?」



つかさ「いやよ。せっかく来たのに。・・・・いいわ、あんたなんて

土砂崩に巻き込まれちゃえばいいのよ。」



淳平「おいおい、ひっでぇ言い方だなぁ。」



トモコ「そうよ、ちょっと酷いよ、つかさ。」


つかさ「トモコはちょっと黙ってて、これは私達の会話だから。」



トモコ「・・・。」



淳平「分かった、一人で帰るけど、仕事が終わったらすぐに戻る

から。」



つかさ「いい。焦って仕事をして失敗したら嫌だし、帰りはトモコ

に送ってもらうから。」



淳平「それでも、必ず戻るから。」



つかさ「さっき言ったでしょ。私は扉を開けないって。」



淳平「おいおい、それは俺が死んで霊になった時の話だろぅ。」



つかさ「ふん。私、お風呂に入るから。大切な仕事なんで

しょ、早く帰れば?」


つかさが風呂場へ行った。




淳平が困惑気味な顔をしながら2階へ自分の荷物をとりに行った。


[No.1599] 2011/02/09(Wed) 20:54:22
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第一部「WEST GATE」 第六話 (No.1599への返信 / 7階層) - スタンリー

第6話

つかさがお風呂から出て、Tシャツ・短パン姿で、居間へ行く。

居間のソファにトモコが座っている。


つかさ「お先に。」



トモコが無言でつかさを見て。

トモコ「・・・・。」



つかさ「怖い顔して、もしかして怒ってる?」



トモコ「いくら帰んあきゃいけないからって、あの態度は

ないんじゃない?それに土砂崩れに巻き込まれちゃえって。

見送りに行ったとき、彼、シュンとしてたよ。」



つかさ「あれは言い過ぎたって思って、お風呂で反省してた。」



トモコの顔が和らぐ。

つかさがトモコの隣に座る。


つかさ「久しぶりのお泊りで、ゆっくりできると思ってたし

色々な事を話せるとおもってたから・・・つい。」




トモコ「4年間も会ってなかったのにねぇ。」



つかさ「あの時は、そのぅ、私たちって恋人同士じゃなかった

から。」



トモコ「何言ってんのよ、あんた、淳平くんのこと恋人だって

メールとかチャットとかで書いてたじゃん。まぁ、本当は白紙

になってったってことは、ついさっき知ったんだけど・・・。」



つかさ「あれは、勝手にそう思ってただけで、彼がそう思って

たかどうかなんて分かんないし。」



トモコ「さっき信じてたって言ってたじゃん、彼のこと。」



つかさ「・・・・。」



トモコ「最近、ゆっくり会えなかったから寂しかったんだよね。」



つかさ「・・・うん。きっと・・そう。」


突然、ものすごい雷が鳴りふたりが驚く。

つかさ「大きな雷だったね。」


トモコ「雨も土砂降りだけど、淳平くん大丈夫かな。」


つかさ「本当に酷いこと言っちゃたんだね。」



トモコ「心配?」


つかさが携帯電話をポケットから出す。

つかさ「電話してみようかな。」



トモコ「運転中よ。もし電話に出ようとして運転を

誤ったりなんかしたら危ないよ。」



つかさ「じゃぁ、メールにしようかな。」



トモコ「メールなんか送ったら気にしちゃうかもしれないし

今は運転に集中してもらってたほうがいいって。」


つかさがテーブルに携帯電話を置く。

つかさ「そうだよね。じゃぁ、3時間たったら電話

してみる。それと、トモコに頼みがあるんだけど・・・。」



トモコ「もしかして、あんたも帰る気になった?」



つかさ「どうして分かったの?」



トモコ「女の友情なんかより、オトコだからね。」



つかさ「ひっどぉいい。なんでそんな風に言うのよ。」



トモコ「アハハ、高2の時の修学旅行のことを思い出

しちゃったから。」



つかさ「あの時は・・・、なんて言ったらいいのか。」



トモコ「ハイハイ、一途なつかさちゃんっていうこと

にしておきましょう。じゃぁ、麓にある駅まで明日の

朝の始発に乗れるように送ってあげるから。」



つかさ「始発って・・・何時よ?」



トモコ「5時半だったかな。」



つかさ「早すぎよ。」


トモコがにやけながら。

トモコ「少しでも早く彼に会いたいんじゃないかなぁ

って思って。」


つかさが軽くトモコの頭を小突く。

つかさ「調子乗りすぎだって。第一あんた朝超

苦手だったじゃん。」



トモコ「アハハ、5時半に起きること事態、無理がある

よね。でも午前中に駅までは送ってってあげるから。」



つかさ「ありがと。」



トモコの携帯電話の呼び出しが鳴り電話にでる。


トモコ「もしもし・・・、ああヒデコちゃん、久しぶり。

・ ・・うん・・・だよねぇ。・・・えっ、今から?

・ ちょっと待って。」



トモコが電話の通話口をおさえて。

トモコ「ねぇ、今から知り合いのコが来たいって言ってるけど

いいかなぁ。ほんの1、2時間くらいだけど。」



つかさ「いいよ。」



トモコ「いいよ。・・・・うん、10分後にね。雨が降ってるから

気おつけてね。じゃあね。」


トモコが電話を切る。



トモコ「ごめんね。今の子ねヒデコって言ってね。年は2コ下で、

ここから5分くらいのところにある別荘にいて、親についてきて

るんだけど例の集まりがあるから暇してるみたいなの。」



つかさ「邪魔しちゃ悪し、少し疲れたみたいだから部屋で休んでて

いい?」


トモコ「気にすることないのに・・・じゃぁヒデコが帰ったら呼び

にいくね」


つかさ「うん。」

つかさが立ち上がって、二階の寝室へ入ったときに、1階のドアの開閉の

音がする。


つかさがベッドの上で横になる。

つかさ(3時間したら電話しないと・・・あっ、携帯電話、居間に置

いてきちゃった。1,2時間くらいで帰るって言ってたし、取りにいくの

はトモコが呼びにきてからでいいよね。)


つかさが窓をみて。


つかさ(雨、まだ激しく降っているみたいだけど、大丈夫よねぇ。

電話をしたら素直に謝らないと・・・・。)

つかさがくしゃみをする。

「クシュン」


つかさ(ちょっと湯冷めしたかも。)


つかさが上布団を体に掛けるとしばらくして軽い眠りについた。




























ともこ「つかさ、ねぇ、つかさったら、起きてよ、ねぇ。」



つかさ「・・・うぅ・・ん。トモコ・・・帰ったの?」


つかさがゆっくり目を開けるとベッドの横でトモコが

青白い顔をして、涙を流しながら立っていた。


[No.1601] 2011/05/05(Thu) 18:05:06
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第一部「WEST GATE」 第七話 (No.1601への返信 / 8階層) - スタンリー

第7話


トモコ「・・・淳平くんが・・、淳平くんが・・・・。」


つかさがベッドから起き上がる。

つかさ「じゅんぺいくんがどうかしたの?」


トモコ「さっき、ラジオで・・・土砂崩れがあって・・・

数台の車が巻き込まれたって。地元の消防や救急車が来て


・ ・・・何人か救出して麓の町にある救急病院に運んだって

・ ・・・それでその中に」



つかさ「もしかして・・・その中に?。」



トモコがゆっくりとうなずく。


トモコ「運ばれた中の1人の所持品・・・運転免許証から

淳平君の名前が流れて・・・。」



つかさ「それで、じゅんぺいくんは大丈夫なの?」



トモコが横に首をふる。

トモコ「運ばれたことだけしか分からないの。あと病院の連絡先も

分からないし、落雷のせいか携帯の通話ができないみたいなの。

ここ別荘で固定電話がないから電話帳もないし。」




つかさ「私のせいだ・・・私が土砂崩に巻き込まれちゃえばいい

なんて言ったから・・・だから・・・。」



トモコ「そんなの関係ない。これは天災であって事故なの。あんた

のせいなんかじゃないんだから、自分を責めちゃ駄目。」


つかさがラジオを聴くために寝室を出て居間へ行く。


トモコもつかさを追いかけて下の階に行く。


居間ではラジオの番組で雑音が混じりながら音楽が流れている。


一階の居間に着いたとき一瞬つかさの脳裏に救急の手術室と外科

医や看護士たちのビジョンが写る。


つかさ(今のって・・・・もしかしたらじゅんぺいくんがER

で緊急手術を受けてるような映像ってこと?)


少しして突然ラジオの音楽が止まり、ニュースのアナウンスが流れる。



二人がラジオの側に近づきそのアナウンスを聴く。


ラジオ「・・・先程、・土砂崩れに巻き込まれ・・病院に運ばれた・・・

・・真中淳平さんが・・・たった今病院で亡くなられました。これで

この土砂崩れの死者は3人で・・・・」


つかさの目から涙が流れる。



つかさ「嘘・・・・。信じない・・・信じられるわけない・・・

だって、さっきまでここに一緒にいたんだよ。神社にだって行ったし

仕事が終わったら、ここに迎えにくるって・・・・。」



つかさが軽い錯乱状態になる。


つかさ「そうだ、じゅんぺいくんに連絡・・・メールを送らないと・・・

通話は無理でもメールなら・・・明日電車でそっちに向かうって、

だから迎えに来なくていいって伝えないと・・・携帯・・・・携帯。」



つかさがテーブルやソファの辺りを探すが見つからない。



つかさ「ねぇ、私の携帯って見なかった?ストラップにツカサ&

ジュンペイってロゴがついているのだけど。早くメールを送って

知らせないと。」



トモコが携帯電話を必死に探しているつかさの姿を見ている。


ツカサ「どこに置いたのかなぁ、おかしいなぁ、テーブルの上に置い

といたはずなのに・・・もしかして寝室かなぁ。早く伝えないといけ

ないのに。」


トモコがつかさを後ろから抱きしめ囁く。


トモコ「淳平君はもうこっちの世界にいないんだよ。だからメール

を送っても受け取れないんだよ。」


つかさがその場でしゃがみこむと同時に目から涙がこぼれおちてくる。



つかさ「こっちの世界いないって・・・・・嫌ぁぁぁぁぁぁ。

だって・・・・じゅんぺいくんは・・・じゅんぺいくんは必ず迎え

に来るって・・・。」



トモコがツカサを少し強く抱きしめ頭をなでながら。

トモコ「ずぅっとこうしてあげるから、今は泣いていいから。」







しばらくして、つかさの涙もとまり少し落ち着きがもどってくる。



つかさ「ありがとう、少し落ち着いたから。」


二人が立ち上がり離れる。



つかさ「ちょっと顔を洗ってくるね。」



つかさが洗面所で顔を洗ってから居間にもどりソファに腰掛ける。


その横にトモコが座る。



トモコ「あんなことがあって、どうやって励ましていいか

わからないけど・・・、彼のことは・・その・・言いにくい

けど・・・早く忘れたほうがいい。さっきも言ったけど、事故なの

・・だからあんたは悪くないんだから自分を責めちゃ駄目よ。」



つかさ「忘れるって・・・そんなの無理・・・無理に決まって

るじゃない。だって・・好きなの・・・卒業してから4年間

フランスにいたときだって、ずぅっと。それに帰ってきてから

だって、好きなの・・・好きで好きでしょうがないの・・・

すごく愛してるんだから。」



トモコ「好きでしょうがないの分かってる、忘れるのが無理なの

も分かってる・・・でも、もうあんたの淳平くんはいないんだよ。

そんなに彼のこと思ってると、きっと成仏できないよ。」



つかさ「成仏って・・・しなくてもいい。霊になってもいい

ずぅっと一緒にいてくれるんなら。」



トモコ「何を言ってるの。さっきの話じゃ、扉を開けないって

言ってたじゃない。淳平君にだって開けちゃ駄目だって言った

んでしょう。」




つかさ「言ったけど・・・・。」



トモコ「今は突然のことで気が動転してると思うから・・・仕方が

ないけど、幽霊でもいいなんて、親友としてそんな心が病んでる

みたいで放って置けないよ。」



つかさ「だって、苦しいの・・・胸が痛いの。」


トモコが少しためらいながら・・・。

トモコ「・・・こんな時に言うのは、いけないかもしれないけど

・ ・・ここに来た少し前に・・・女の人と二人きりでで親

密そうに食事をしていたの目撃したの。」



つかさ「二人きりでレストラン?誰よその女の人って?」


トモコ「教えてくれなかったから誰かは分からない。でも

今日あんたと話してて思ったけど、あれはきっと東城っていう

作家に間違いないわ。」



つかさ「東城・・・さん?」



トモコがうなずいた。


[No.1605] 2011/07/03(Sun) 11:31:56
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第一部「WEST GATE」 第八話 (No.1605への返信 / 9階層) - スタンリー

第八話

外は雨が降っており、時折雷の音が聞こえる。



トモコ「雑誌とかテレビで見たことあるから、きっとそう。」



つかさ「うそ、二人が会ってたなんて・・・そんな、嘘よ。ねぇ

さっき教えてくれなかったからって言ってたけど、じゅんぺい

くんと話したの?」



トモコ「その女の人が化粧室へ行ったとき、彼のテーブルに

行って聞いたら、仕事で・・・・・・二人で映画の試写会へ

行った帰りだって、確か映画のパンフレットがテーブル上に

置いてあった記憶がある。」



つかさ「試写会?そんな話聞いてない。この旅行のために仕事を

しなきゃいけないから忙しかったって言ってたし・・・・ねぇ

知ってるんだったらどうして教えてくれなかったの?」



トモコ「それは本当に仕事の話だったかもしれないから、あと私

の告げ口のせいであんた達の関係がギクシャクしたらいやだった

し・・・。あと口止め料を・・・・ゴニョ、ゴニョ」



つかさ「口止め料?」



トモコ「ほら彼ビール持ってきたでしょう。あれ私が冗談で口

止め料として1ケース持ってきてって言ったら、じゃぁ持って

行くから内緒にしてくれって頼まれたの。」



つかさ「うそ・・うそよ。そんな話、信じない。じゅんぺいくん

のことを忘れさせたいから嘘を言ってるんでしょう。」




トモコ「うそじゃない事実よ・・・。そりゃぁ本人はもうこっち

の世界にいないからどんな気持ちで会ってたかって確認はできな

いけど、傍から見たら二人は恋人同士のように見えたと思うわ。」



つかさ「東城さんと会ってたなんて・・・それも親密そうにって・・。」



トモコ「黙ってて、ごめんなさい。」



つかさ「・・・トモコは悪くないから気にしないで。」



トモコ「さっきは、天災と事故のせいって言ったけど、つかさを裏切る

ような真似をしたから淳平君にばちがあったたのよ。」



つかさ「もうこの話はやめて、お願い。」



トモコ「うん、分かった、もうしない。」


つかさ「・・・・。」



トモコ「私、いつでもつかさに側にいてあげるから、だから

そんなに悲しまないで。」



つかさ「うん。」


突然稲妻が光ったとほぼ同時に大きな雷鳴が聞こえる。

数秒後にすべての照明器具の電源が切れて真っ暗になる。




トモコ「びっくりしたぁ。近くに落ちたみたいね。」



つかさ「そうみたい。」



トモコ「今日はもう寝たほうがいいよ。」


つかさ「そうする。」


つかさとトモコが立ち上がろうとしたとき、別荘の玄関の

ドアを叩く音がした。


二人が玄関のほうを見ると真っ暗なはずのドアが少し青白く光っている。


そして・・・。


「ドン、ドン、ドン」



ドアを叩く音が聞こえた後、雨音と聞きなれた声が聞こえてくる・・・


「俺だよ、淳平だよ、つかさ、ドアを開けてくれ。」


[No.1606] 2011/07/09(Sat) 19:17:25
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第二部「EAST GATE」 第一話 (No.1606への返信 / 10階層) - スタンリー

第二部「EAST GATE」 


第一話



京都での祝賀会から2月後、綾と外村が泉坂にある喫茶店にいる。



外村「・・・・とまぁ、これがこちらの条件だからさぁ考えといて

よ。」



綾「うん、それで返事はいつまでにすればいいの。」



外村「そんなに急がないから、ゆっくりでいいから。」



綾「検討するね。」



外村「今、何時だ・・・次の予定まで時間があるから・・・

この後予定ってあるの?」



綾「すぐっていうのはないけど。」



外村「じゃぁビジネスの話はおしまいってことで、少しだけ

ここで世間話に付き合ってもらっていいかな。」



綾「いいわよ。」



外村「サンキュウ。ところでさぁ、最近は小説の他にも作曲の

仕事もやってるらしいじゃん。」



綾「作曲?そんなことやったことないけど。」



外村「おいおい、とぼけるなって、ポルターガイアっていうグル

ープに曲を提供してるって話を聞いたぜ。」



綾「どうして知ってるの?これって秘密のはずなのに。」



外村「ちょっとな。」



綾「そのグループの人が弟の友達で頼まれて私の名前を出さないって

いう約束で歌詞だけね。」



外村「でもすごいよなぁ、高校時代にカラオケとか嫌っていたのに

ヒット曲とかを簡単につくっちゃうんだもんなぁ。」



綾「あれは歌詞のせいじゃなくってあの人達に人気があったからであって

わたし歌とか曲のことなんか全然分かんないもん。」




外村「それだったら尚更すげぇや。じゃぁそこのグループとのコネ

とかあるわけだな。」



綾「コネっていうほどのものじゃないけど・・・弟の友達だし連絡

くらいは取れるかな。」



外村「機会があったらさぁ、ウチの事務所のタレントをPVとかに

使ってもらえるよう頼んでくれよ。」



綾「ねぇ、これって仕事の話なんじゃないの?」



外村「えっ?あっ、そうなるか。ハハハハ。」



綾「いいわ、使ってもらえるかは保障できないけど頼んでみるね。

でも歌のことは秘密よ。他の人に迷惑がかかるかといけないしね。」



外村「助かるよ。それと曲のことは絶対言わないから。

それで今度はちゃんとした世間話だけどさぁ。

先々週、携帯に電話いれたら連絡とれなかったけど、何処か行っ

てた?」



綾「先々週?家族で海外に旅行で行っていたから。仕事用の携帯は持っ

て行ったのにプライベート用のを持っていくのを忘れちゃってて。

それで何か重要な用事だったの?」




外村「別にたいした話じゃないんだ。真中のやつが角倉さんの事務所で働

く事が決まったから、地元にいる奴で集まって祝おうってことで電話した

んだけど海外にいたんだったら無理だよな。」



綾「そう、真中君、角倉さんの所に就職したんだ。それで参加者は?」



外村「小宮山だろ、ちなみちゃん・・・あと唯ちゃんと俺くらいかな。」



綾「北大路さんや美鈴ちゃんは・・・京都だから・・・・じゃぁ

・・・・西野さんは?」



外村「あの洋菓子屋の2号店の店長を任されたらしくて、準備が忙しくて

無理だった。」



綾「そう・・・それで真中君元気そうだった?」



外村「あいつは元気さ。映画を撮る仕事につくのが夢だったって言って

からな。

ただ、東城と連絡が取れないって言ったらすっげぇ寂しげな顔してたぜ。」



綾「本当に?」



外村「嘘じゃないって。なんでも中学生の時にその夢のことを東城に一

番最初に話したから、祝ってもらいたかったって。」


綾が淳平と中学の屋上でお互いの夢について話していた時のことを

思いだす。


綾「中学生の時の話ね。懐かしいなぁ。あの時の真中君と屋上で会

えたから小説家としての今の私がいるの。感謝しないと。」



外村「あいつも今の真中がいるのは東城のおかげだって言ってた。」


外村「それでさ、終わったあと、真中と2人で違う店で二次会を

やったんだけど・・・あっ、ところで今付き合ってる彼氏とかいる?」



綾「 えっ?どうして急にそんなことを聞くの?」


外村「こう言ったら語弊があるかもしれないけど

高校時代、真中のこと好きだったろう?」


綾「それがこの話と関係あるの?」


外村「ん〜関係ないっていったら関係ないかも

知れないけど、ただなんとなく付き合ってる相手

がいたほうが話しやすいかなって。」



綾「一応・・・いるかな。」



外村「いるんだ。」



綾「先月叔母さんの紹介で、お見合いをしてね。」



外村「お見合い?その歳で?」



綾「最初に話を聞いたときは、断ろうと思ったんだけどね

お会いしたらとてもいい人で週末にお食事に行ったりしてる

の。」



外村「歳はどれくらいで職業は何してるの?」



綾「28歳で不動産賃貸業って言ってた。なんでも親が

土地をあちこちにもっててマンションを数棟持ってるって。」


外村「不動産賃貸業?資産家の息子かぁ。じゃぁボンボン

だなぁ。」



綾「何かバカにしてない?」



外村「してない、してない。お見合いでお付き合いって

ことは結婚を前提ってことだな。」



綾「まだ正式に回答はしてないけど、特に不満はないわ。」



外村「そうか、じゃぁこの話をしても大丈夫だな。高校時代の

真中のことだけど。」



綾「高校時代の真中君?確かに失恋はしたけど、あれから

4年以上も経ってるのよ。」


外村「そう、4年以上も前の話だけど・・」

外村が二次会の時の淳平とのやりとりを話し始めた。


[No.1607] 2011/09/04(Sun) 23:40:46
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