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WINGBEAT COFFEE ROASTERS

   「Some Kind of Wonderful  【reviced edition】」 - スタンリー - 2011/09/25(Sun) 22:46:50 [No.1609]
第1話 「届いてはいけない想い」 - スタンリー - 2011/09/25(Sun) 22:47:47 [No.1610]
第2話  「壊れた時計」 - スタンリー - 2011/09/25(Sun) 23:06:11 [No.1611]
第3話 「天使からの招待状」 - スタンリー - 2011/09/25(Sun) 23:46:10 [No.1612]
第4話「Reunion 前編」 - スタンリー - 2011/10/02(Sun) 16:05:31 [No.1613]
第5話「Reunion後編」 - スタンリー - 2011/10/02(Sun) 16:13:46 [No.1614]
第6話「天使の憂鬱」 - スタンリー - 2011/10/09(Sun) 20:51:42 [No.1615]
第7話「Do you see the light?」 - スタンリー - 2011/10/09(Sun) 21:17:14 [No.1616]
第8話「一人ぼっちじゃない。」 - スタンリー - 2011/10/10(Mon) 07:18:40 [No.1617]
第9話「Who’s that girl?」 - スタンリー - 2011/10/10(Mon) 07:40:56 [No.1618]
第10話「Another Angel」 - スタンリー - 2011/10/10(Mon) 19:04:51 [No.1619]
第11話「変わらないもの」 - スタンリー - 2011/10/10(Mon) 19:13:25 [No.1620]
第12話 「ギャンブル」 - スタンリー - 2011/10/30(Sun) 21:13:32 [No.1621]
第13話 「懺悔」 - スタンリー - 2011/11/03(Thu) 23:15:00 [No.1622]
第14話 「告白」 - スタンリー - 2011/11/05(Sat) 21:42:46 [No.1623]
第15話 「White Light」 - スタンリー - 2011/11/13(Sun) 20:37:11 [No.1624]
第16話「あの日の果実」 - スタンリー - 2011/12/03(Sat) 20:35:07 [No.1625]
第17話 「Forgiveness」 - スタンリー - 2011/12/03(Sat) 21:19:08 [No.1626]
第18話 「Silent  Jealousy」 - スタンリー - 2012/01/15(Sun) 20:53:36 [No.1627]
第19話「幸福な時間」 - スタンリー - 2012/01/29(Sun) 20:40:44 [No.1631]
第20話 「北からの風」 - スタンリー - 2012/02/19(Sun) 21:06:15 [No.1633]
第21話 「親友」 - スタンリー - 2012/02/26(Sun) 00:10:17 [No.1634]
第22話 「遅すぎたヒロイン」 - スタンリー - 2012/03/18(Sun) 23:06:28 [No.1635]
第23話 「西高東低?」 - スタンリー - 2012/03/21(Wed) 21:12:24 [No.1636]
第24話 「愛しき人」 - スタンリー - 2012/04/14(Sat) 20:33:04 [No.1637]
第25話 「悲しい決断」」 - スタンリー - 2012/05/19(Sat) 23:10:33 [No.1639]
第26話 「優しい嘘」 - スタンリー - 2012/05/20(Sun) 20:48:06 [No.1640]
第27話 「嵐のあとに・・・」 - スタンリー - 2013/01/06(Sun) 21:14:47 [No.1642]
第28話 「Love Drive」 - スタンリー - 2013/01/12(Sat) 19:06:45 [No.1643]
第29話 「夢のグランド」 - スタンリー - 2014/08/03(Sun) 21:01:31 [No.1645]



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「Some Kind of Wonderful  【reviced edition】」 (親記事) - スタンリー

【扉の向こう側】を投稿しているスタンリーと申します。

このSome Kind of Wonderfulは以前他のサイトで投稿して

いた未東城純愛物の未完の作品でした。


投稿していた時は話を続けるのに夢中になり新キャラクター

を作ったり、余計な話を作ったりして支離滅裂になって、結

果収集がつかなくなってしまったため投稿するのを断念しま

した。


また、投稿した量も多かった(108話)であったため手直しする

にも相当な手間を要するため【reviced edition】としてこちらの

サイトで投稿したいと思います。


それでは、よろしくお願いします。


[No.1609] 2011/09/25(Sun) 22:46:50
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第1話 「届いてはいけない想い」 (No.1609への返信 / 1階層) - スタンリー

タイトル「Some Kind of Wonderful  【reviced edition】」



私、東城綾は高校三年の冬に、一つの恋を終わらせた・・・・はずだった。



第1話 「届いてはいけない想い」
 
 

真中淳平の大学受験の日、綾は自分の犯した過ちを悔いて、これ以上彼を

想うことは辞めようと真中から完全に身を引くことを決意し、その胸のうちを

真中に伝えた。

綾は、これで淳平への想いを全てを忘れて前に進むことができると思っていた

が3年以上恋焦がれ続けた想いは、そう簡単には消すことはできなかった。



高校卒業直後、自室に一人でいると、いつも淳平の事を考えている自分がいた。



綾(どうして私じゃダメなの?どうして西野さんなの?

・・・彼女は陽気な性格だし、男子からも人気があるし恋愛にも積極的だし

容姿もそこいらのアイドルよりも綺麗だし、私が彼女に勝る点といえば

小説を書く事くらいしかないじゃない。)


女性としての魅力という点では全く相手にならないことを再認識させられて

みじめな気持ちになった。



綾(真中くん、どうしてあなたじゃないとダメなの?

どうしてあの時、あの場所で、あなたに出会ってしまったの。

こんなにつらいなら恋なんかしなければよかったのに。

彼と同じ高校へなんか行かなければよかったのに。)


淳平との運命の出会いや淳平と一緒にいたいがために自分のとった行動を

悔いたこともあった。



綾(いっそのこと、真中君のことを嫌いになれたら楽になれるかも。)


淳平の欠点を思い出してみたが、会えない寂しさから、その思い出した

欠点ですら今ではとても愛しくてならない。



綾(真中君、あなたは運命の人じゃなかったの?

息もできないくらいのこの苦しさは何?

この胸の痛みは何?

あの日、恋人のいる人に無断でキスをしたことに対する神様が私へ下した

罰なの?

とても苦しいよう、助けて、真中くん。)


せつなくて苦い気持ちが、込みあげてくる。



そんな自虐的な思い、声が聞きたくても聞けない寂しさ、自分の気持ちを

伝えられない伝えてはいけないせつなさとがあいまって、葛藤の日々が続いた。

そして、常に胸(心)に痛みを感じるようになり、これ以上彼を思い続けると

自分を見失いさらなる過ちを犯してしまいかねないと思い、心の中にある真中

への未練を西野という決して自分から破ることのできない封印をし、心の奥深

くへと隠した。



そして、大学進学を機に淳平のことを忘れようと、一流の小説家を目指して

学業と執筆活動に専念することを決意した。



綾(夢だった一流の小説家に成るために学業と執筆に専念する。それがこの

つらい恋を忘れるのに最善の方法だと思うから。

一流作家になるのに何年かかるか分からないけれど、なれた時は、恋愛感情

なしで真中くんに私の作品で映画を作ってもらおう。

それが、私と真中くんとの共通の夢だから。今はとてもつらい気持ちで一杯

だけどこの夢の為に一生懸命頑張って、このつらい想いを乗り越えてみせる。)


[No.1610] 2011/09/25(Sun) 22:47:47
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第2話  「壊れた時計」 (No.1610への返信 / 2階層) - スタンリー

第2話  「壊れた時計」



大学進学後、新しくできた友人との付きあい、学業、小説の執筆活動等で

忙しくなり、淳平への想いが、時が経つにつれ次第に薄らいでいった。


大学生活を送っていたある日、大学の近くの喫茶店で、綾が同じゼミの

学生である加藤から告白を受けてその返答をしていた。



綾「加藤君、こんな私に好意を持ってくれているのは、嬉しいけど、私と

加藤君は・・・・・はっきり言うね・・・・・合わないと思うの、それに

今は、恋よりも小説の方を優先したいから・・・・

だから・・・このまま友達の関係でいましょう。」



加藤「分かった。この告白は迷惑みたいだったな。ごめんな。」



綾「私のほうこそ・・・ゴメンなさい。」



加藤「ここの代金払っとくから。」



綾「悪いは、私の分は、私が払うから。」



加藤「いいよ、払っとくから、じゃぁ。」と言って席を立った。



綾「そう?じゃぁ、・・・・・。」



(あー、また告白を断っちゃった。加藤君っていい人なんだけど、

私の思い描いてた、理想の恋人とは、違うのよねぇ。私の心をキュッ

と掴んでくれる人じゃないとね。

好きになってくれる人を好きになれれば楽なのは分かっているんだ

けど、告白してくれる人を、いつもフってばかりで、私に恋人なんて

できるのかなぁ。)


といったように完全に真中の事を忘れた訳ではなく、交際に関しては

告白してきた男性を理想の恋人(真中淳平)というフィルターを通して

見てしまい、なかなか付き合うまでには至らない。



そのうち、さらに綾の作品に人気が出てきて、小説を書くのが楽しくなり

また編集者や読者の期待にこたえようと良い作品を作るため執筆活動に

集中していたため、次第に恋愛に気をかけることなく学生生活を送り、

気が付けば一度も恋愛らしい恋愛をすることもなく卒業していた。



その執筆活動の甲斐もあり、綾自身の才能と今までの努力とで生み

出した作品が認められて直林賞を受賞することができた。

綾が、この賞を受賞することで一流作家の仲間入りを果たしたことよる

達成感は大きかった。

これからの執筆や講演の依頼等により、今まで以上に忙しくなるのは予想

できるし、収入の面でも不安になることもないだろう。しかし何かが足り

ないと気づく。



受賞後、仕事関係者、親戚、友人達、綾の読者らからメール、電話、手紙

等で賛辞が贈られてきたが、その中に淳平からの電話も手紙もなかった。



綾が小説家になろうとしたきっかけは、中学3年生の時、淳平に創作中の

小説を褒められて、小説家になることを薦められたためであり、その時は

淳平と一緒に映画を作るという淡いなからも夢があった。

しかし、その淳平は高校3年の卒業式の日に、また一緒に映画を作ろうと

言ってくれたが、綾の大学進学後約4年もの間、会ったこともないし電話

連絡の一本もない状況である。

もっとも、綾の方から高校3年生の時の淳平の志望校の受験日に個人的に

会う事はないと言ってあったため、連絡がない事を理由に真中を責めること

はできない。

また、淳平には西野という恋人がいるため、例え約束していたとはいえ

映画製作のみの話がしたくても綾の方からは連絡をすることもできない

状況であった。



(真中くん、私は一生懸命頑張って、あの頃の夢が叶って一人前の小説家

になれたよ。真中くんは今何をしているの?

映画監督になって私の作品で映画を撮ってくれるはずじゃなかったの?

真中君に会いたい・・・・。真中くんに会って、あの声で、私が立派な

小説家になったことを褒めてもらいたい。そして真中くんとまた・・・・

私って、何を考えているの。どうして今頃になって真中くんのことを思い

出したの?私は4年間真中くんなしで、ここまででこれたんだし、一人で

強くなれたのだから、私はあの頃の私とは違うはずだから・・・、

じゃぁ、どうして私は今一人ぼっちなの?大学4年間で恋人の一人もでき

なかったの?

まだ真中くんに未練があるからじゃないの?まだ真中くんのことが好・・・

・・!って違う、

真中くんには西野さんがいるんだから。)



大学進学時、一流の小説家を目指すことを決意して執筆活動に専念していたが、

その目的を果たした喜びを心から分かちあえることができる恋人のいない寂し

さからか、学生時代忘れていた淳平に会いたいという気持ちがよみがえってきた。

また、失恋から来る胸の痛みこそは無くなっていたものの、淳平への想いは、

高校時代に恋をしていたあの頃と変わってはいなかった。喩えるなら、綾の淳

平に対する想いを刻む時計の針はあの高校卒業時から止まったままであった。



(私はこの後、何をすればいいの。何を目的に生きていけばいいの。教えて

・・・真中くん。)


[No.1611] 2011/09/25(Sun) 23:06:11
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第3話 「天使からの招待状」 (No.1611への返信 / 3階層) - スタンリー

第3話 「天使からの招待状」



直林賞を受賞して、一ヶ月が過ぎ、取材やテレビ主演の依頼数も減り、綾の

周りも少し落ち着いてきた。


綾は、自室で雑誌の担当者から送られてきたファンレターを読んでいた。


(今月も本内さんから、ファンレターがきてる。この人の手紙っていつも励

まされるし、何故か癒やされるのよね。

まるで、真中くんに、温かく見守られているような・・・。本内さんって

一体どんな人なのかしら。)



本内とは、綾が小説の連載が始まった頃から、どんな雑誌にでも綾の小説が

載ると欠かすことなく、小説の感想や綾への激励の手紙を送ってくる熱心な

読者のことである。

ただ、ファンレターには、名前があるだけで住所がないため、何処の誰かも

正確な年齢さえも分からないが、書かれた文章からほぼ同年代の男性である

と推測できる。



(本内さんのような、熱心な読者の期待にこたえるためにも、今は良い小説を

作るのに集中しなくちゃね。

もしかして、本内というのは偽名で、実は真中くんが手紙を書いてくれているの

かも・・・・って、いくら本内さんの手紙に癒やされるからって言っても、そん

な訳無いのに。

真中くんには西野さんがいるし、私のことなんか忘れちゃっているはずだし・・・。

私って、最近どうしちゃったのかなぁ。大学時代は、そんなに真中くんのことは

考えなかったのに。)


綾がファンレターを読み終えたとき、綾の自宅に一本の電話が入った。



? 「もしもし、東城さんのお宅ですか?」



綾 「はい東城ですが。」



? 「その声は東城先輩ですよね、私、泉坂高校映研部後輩の美鈴です。

東城先輩、お久しぶりです。あのぉ、少し遅くなりましたが先日の直林

賞受賞おめでとうございます。」



綾 「ありがとう、美鈴ちゃん、ほんと、久しぶりねぇ。」



美鈴「東城先輩は、いつかは、こんな大きな賞を絶対とると思って

ましたから、とても嬉しいです。」


美鈴「突然ですが、月末の土曜日ですけど、予定はあいていますか?」



綾 「えっ、ちょっと待って、今、スケジュールを見て確認するから・・

・・えーと、月末の土曜日は、大丈夫みたいだけど、どうして?」



美鈴 「実は、黒川先生と映像研究部OBで東城先輩の直林賞受賞の

祝賀会を、昔バイトしてた映画館の館長さんが経営している料亭で

やろうかと思いまして、そのお誘いなんですが、参加できそうですか?」



綾「美鈴ちゃんって今、京都の大学に通っているんじゃないの?」



美鈴「ちょうど、その頃、実家に帰る予定なんです。

それで、そのついでにって言うのは失礼ですけど、良い機会かなぁ

と思いまして、ダメですか?」



綾「その日は特に予定もないし、久しぶりにみんなにも会いたいから

お言葉に甘えて参加させていただこうかしら。

みんな参加できそうなの?」(真中くんは?)



美鈴「えーっと、黒川先生、うちの兄に、小宮山先輩、端本は参加が確定

してるんですけど、北大路先輩は、ちょっと大事なお座敷があって無理っ

ぽいみたいです。あと、真中先輩だけ、今海外へ行っているらしくて

連絡が取れないんですよ。」



綾「海外に?」



美鈴「真中先輩のお母さんが言うには今アメリカへ1人で行っている

らしくて、3日後には帰国するそうなので、その時真中先輩から電話

をもらう事になってるんですけどね。」



綾「・・・。」(真中くん、西野さんの所へ行ったわけではないみたいね。)


ちょっとした綾の沈黙に美鈴が気が付き、不安げに、尋ねた。



美鈴「まだ、真中先輩のこと・・・・・。あのぉ、もしあれだったら、真中

先輩を誘うのは遠慮しましょうか?」



綾「えっ、ううん、もう4年以上も前の事だし、今は全然そんな気持ちは

ないから、気にしないで。」

(美鈴ちゃんに、変な気をつかわしちゃ悪いしね。それに久しぶりに会っ

てみたいし・・・・。)


綾「それに映像研究部で祝ってくれるのに初代部長がいないのはおかしく

ない?」


美鈴「そうですよねぇ。あぁ、よかったぁ。私も卒業後に真中先輩が何を

やっているのかちょっと気になってましたから、会えるなら、ちょうど

いい機会かなぁって思ってました。じゃぁ、詳しい時間と料亭までの地図

と私の携帯電話の番号は後日、お手紙をお送りしますから、もし都合が悪

くなったら早目に連絡くださいね。それじゃぁ、久し振りに会えるのを楽

しみにしてますから。それと執筆の方、頑張ってくださいね。

それでは失礼します。」



綾「うん、じゃぁ、連絡ありがとうね、美鈴ちゃん、さようなら。」

綾が受話器を置く。



綾(みんなに会うのも久しぶりね。みんな、今何をしているのかなぁ。


外村君、小宮山君、端本さんは一緒に仕事をしているって聞いたことが

あるし、美鈴ちゃんは大学生でしょ、黒川先生はまだ独身かなぁ。


真中くんは・・・・って今、美鈴ちゃんも言ってたけど何をしているの

かな。

きっと遠距離恋愛になっちゃうけど、西野さんと幸せに付き合っている

よね。


それとも、西野さんは、もう帰国していているのかも。


送ったノートのことや映画を一緒に作る約束のことなんか忘れているかも。


そうだ、この祝賀会をいい機会にして真中くんのことは、きれいさっぱり

忘れよう。


これからは小説一本に絞って生きていこう。あと、新しい恋も・・・・・。


でも、この時期にアメリカって・・・何をしに行っているの?)


[No.1612] 2011/09/25(Sun) 23:46:10
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第4話「Reunion 前編」 (No.1612への返信 / 4階層) - スタンリー

第4話「Reunion 前編」


祝賀会当日、綾は駅から料亭の途中で道に迷っていた。



綾(あーぁ、どうして私って、こうも方向音痴なんだろう。

夜になると全然、景色がかわっちゃってて場所が分かり

づらいわ。これじゃぁ、約束の時間に間に合いそうに無いわ。

これならタクシーを使って行けば良かったのに。美鈴ちゃん

に電話で遅くなる事を伝えておかないと。)


綾が携帯電話で美鈴に電話をかけた。



綾「もしもし、美鈴ちゃん」



美鈴「あっ、東城先輩ですね。どうしたんですか?」



綾「ちょっと、道に迷っちゃって、少し遅れそうなの。」



美鈴「えっ、今どの辺にいるんですか?もし分からない

なら、向かえに行きますけど。」



綾「ううん、もう料亭の場所はだいたい分かったから、あと

少しでつけると思うし、あまり心配しないで。本当に少し遅

れるだけだから。」



美鈴「そうですか。じゃぁ、みんなに少し遅れるって言って

おきますね。」



綾「うん、お願いね。」



美鈴「東城先輩、お待ちしてます。」


二人が電話をきる。


綾(もうみんな、集まってるみたい。じゃぁ、真中くんも

待ってるよね、急がないと。)



それから15分程が経ち、ようやく綾が料亭に入ると

料亭の従業員が祝賀会のお座敷へと案内をした。



ふすまを開けて、みんなに挨拶をしお座敷にはいる。

綾「ちょっと道に迷っちゃって、遅くなってごめんな

さい。」



お座敷内を見渡すと、美鈴、小宮山、端本が一緒に

話している。既に黒川先生と外村はお酒を飲んで

いる。

綾が淳平がいない事に気付く。



綾(あれっ、真中くんがいないけど、ひょっとして

来ないの?折角会えると思ったのに・・・って何

ガッカリしているの、今日は完全に真中くんのこと

をあきらめるつもりだったでしょ。ここにいない

のは、いい機会じゃない。)



外村「そんなに気にするなよ。今日は東城が主役

なんだから。それと、おめでとう。」



端本「東城先輩、オメデトウですぅ。」



小宮山「あやちゃん、おめでとう、ますます綺麗に

なっちゃったねぇ。」



黒川先生「東城、受賞おめでとう。」



綾「先生、ありがとうございます。それとみんなも

私の為に、祝賀会をしてくれてありがとうござい

ます。」



美鈴「あのぉ、東城先輩、私の書いた地図が分かり

づらくてごめんなさい。

駅まで先輩を迎えにいけばよかったですね」



綾「ううん、美鈴ちゃんが描いてくれた地図は

とても分かりやすかったよ。ただ私がドジなだ

けなんだから、気にしないで。」



美鈴「あっ、それと北大路先輩から、東城先輩

におめでとうって伝えておいてって頼まれました。」



綾「北大路さんから?うん、ありがとう」



小宮山「さぁ、主役が来たことだし、そろそろ

料理を持ってきてもらおうか。」



美鈴「待ってよ。まだ一人来てない人がいる

でしょう。」



小宮山「えーっと、あと一人って誰だっけ?・・・・

あぁ、真中かぁ。」



美鈴「もう、薄情なんだから。あれでも、私達映

像研究部の監督兼部長よ。」



綾 (真中くん、来るんだ。そういえばあの頃も、合宿とか

部の集まりがあるとよく遅刻していたし。

真中くんって、あのころと全然変わっていないんだ。)


綾の心に懐かしさと久しぶりに会えるという嬉しさがこみ上げ

てくる。



外村「でも、真中のヤツ、主役の東城より遅いってどういう

つもりだよぉ。

美鈴、真中の携帯に電話してみたら。」



美鈴「えっ、真中先輩の携帯電話の番号って、私、知らないよ。」



外村「じゃぁ、どうやって、この祝賀会の連絡をとったんだ?」



美鈴「お誘いの連絡をした時は、真中先輩の自宅の電話にだった

し向こうから連絡があったときの着信の電話番号も確か先輩の自宅

だったから・・・。アニキたちこそ、地元にいるんだから、真中

先輩たちと普段、遊んでるんじゃないの?」



外村「いやぁ、卒業後は、会ってないし・・・最後に、電話で話し

たのも、この前俺が芸能プロダクションを立ち上げたことを教えた

だけだったし、それも真中の自宅の電話だったから。小宮山は?」



小宮山「高校卒業した直後は、たまには会ってたけど、最近は全然

・・。そういえば、俺もあいつの携帯の番号知らねぇや。えぇっと

綾ちゃんは?」



綾「私?ううん、私も高校卒業後に真中くんとは一度も会ってない

から。携帯電話を持っているのかも知らないよ。」



黒川先生「みんな、冷たいなぁ、お前ら、あの時はみんなで仲良

く一緒につるんでただろうに。」



美鈴「そういえば、真中先輩って、一体何をしているんだろうね。

ついこの前はアメリカに行っていたみたいだけど・・・謎よねぇ。」



黒川先生「なんだ、なんだ、みんな、真中が、今何をやっているの

か知らないのか?」



みんなが、酒で顔を少し赤らめた黒川先生に注目する。


綾(黒川先生、何をしているか知ってるんだ。何だろう?)



黒川先生「じゃぁ、教えてやろう・・・・・・・・・・かと

思ったが、もう少ししたら、真中も来るだろう。その時、本人

に聞けばいい。」


一同肩透かしをくらった。



黒川先生の発言後、15分程して座敷のふすまが開く音がする。

一同がその音の方に注目し、黒川先生以外の全員が高校卒業時

から変わった真中の成長した体型と顔を見て驚く。


淳平が悪びれたそぶりもみぜずに、笑顔で。


真中「いやぁ、遅くなってゴメン。あれっ、みんな食事をしな

いで、待っててくれたの?俺なんか待たずに先に始めてくれり

ゃぁ良かったのに。」



綾「・・・・ 」(えっ、これがあの真中・・・くん?)



美鈴「・・・・」(あれが、高校生時代、優柔不断で頼り

なかった真中先輩?)



端本「やだぁ、真中先輩ったら、めちゃくちゃ格好よく

なってるぅ。」



小宮山「なんか、体がしまったって言うか、がっしり

したって言うか、成長したって感じだなぁ。

微妙に背も伸びた感じがするし。顔もちょっと・・・・。」



外村「何をやればそんな体に成れるんだよっ、ほとんど

別人じゃないかぁ。」



真中「えっ、俺って、そんなに変わったかぁ。」

淳平が笑いながら、袖をまくり、腕を曲げ、力こぶを

つくり筋肉を自慢げに見せる。



美鈴「なっ何、馬鹿なことをやっているんですか、みんな

真中先輩の事を待ってたんですよ。」



真中「ああっ、ゴメン、ちょっと調子にのり過ぎたみたい

だな。」


淳平が綾の隣の空いている座布団に座る。



外村「じゃぁ、真中も来たことだし、料理を運んで

もらおうぜ。」



追加の酒類とお膳が運ばれてくる。



綾「久しぶりねぇ、真中くん。」

綾が真中のグラスにビールを注ぐ。



淳平「おっ、ありがとう、東城とは高校の卒業式以来だから

ホント久しぶりだなぁ。そういえば、今回も凄い賞をとったな。

ほんと東城はスゲェやぁ。あっ、遅くなってごめん、受賞おめ

でとう。」


真中が綾のグラスにビールを注いで軽く乾杯をする。



綾「あ、ありがとう。」

綾(真中君に祝ってもらえた。)『トクン・・・』



淳平「これで東城も、名実ともに一流作家の仲間入りだな。

ホント東城には、叶わねぇな。」

綾(真中君に一流作家だと認められた。)『トクン・・・』



淳平「東城の小説は、ハードカバーの本で全部持っているんだぜ

っていってもまだ文庫本になってないから当たり前だけどな。」



綾「本当に?私の作品を読んでくれてるんだ。ありがとう。」


綾(じゃぁ、あのファンレターの本内さんって

もしかして・・・・。)


綾「じゃぁ、今連載中の作品でね、主人公が・・・・。」



淳平「ゴメン、本は持っているんだけど・・・。その・・・

東城の作品が掲載中の雑誌までは、読んでいるわけじゃない

んだ。ホント、本になってしか読んでなくて、ごめんな。」


綾から目を逸らしながら申し訳なさそうに言った。



綾「ううん、私こそ、勝手に、思い込んだだけだから。」


綾(本内さんが真中くんのはずないじゃない、ホント私って

勝手に都合の良いように勘違いをして、バカなんだから。)



綾「ところでね、真中くん・・・」

話の途中でビールを持ってきた小宮山が会話を遮る。



小宮山「おい、真中、お前が来る前にみんなで話してたけど

お前、今何をやってるんだ?」



美鈴「ここにいるみんなが真中先輩の謎について興味がある

みたい。黒川先生は知っているみたいだけど、先輩本人に聞

けって教えてくれないし・・・。

今何をやっているんですか?」

美鈴が真中の近くへ寄って来る。



淳平「オイ、オイ、今日は東城のお祝いのための会だろう。

だから俺のことなんかどうでもいいだろう。

折角忙しいなか、東城綾先生に来てもらったんだから

みんなで東城の話を聞こうぜ。」



美鈴「いいえ、話してもらいます。」



綾「うん、実は私も興味があるの。」



小宮山「もったいぶるなよ、真中。」


みんなが淳平に注目する。



淳平「・・・。」


少し顔を赤らめながら、恥ずかしそうに


淳平「分かったよ、みんなでそう俺を睨むなって。

それじゃぁ言うよ。でも、笑うなよ。実は・・・

日雇いの仕事や色々なバイトをしながら、映画を

撮り続けてるんだ。」



小宮山「えっ、映画って、私費で?じゃぁ、真中っ

て今プーなのか?」


苦笑しながら

美鈴「なぁんだぁ、まだ就職してなかったのかぁ。じゃぁ

仕事でアメリカへ行ってたわけじゃないんだね。」



淳平の席から離れた所にいる黒川先生が会話に割って入って。



黒川「でも、真中は、その撮った映画をコンクールとかに

応募して、この前、結構な賞をとったんだよなぁ。

それで今、角倉や他の映画関係の事務所からお誘いがかかっ

ているらしいぞ。」



淳平「あっ、先生、それまだ内緒だったのに。」



黒川「あっ、えっ、そうだったのか?それは、悪い事をしたな。

みんな、私は今、酔っ払っているから、今言ったことは酔っ払い

のたわごとだと思って、忘れてくれ。」



淳平「もう、遅いですって。」



美鈴「どんな賞かわからないですけど、とりあえず受賞

おめでとうございます。私、真中先輩の撮った映画を見

てみたいから、私の実家に受賞作品のコピーを送ってく

ださい。」

美鈴が、ビールを注ぎに真中の隣へきた。


淳平が少しきつい顔をして。

淳平「美鈴、ついさっき俺のことを無職だってバカにしていな

かったか?」



美鈴「えっ、あぁぁ、それは・・・、すみません。」



淳平「ハハハ、冗談だよ美鈴、家に帰ったら早速送るよ。」



美鈴「じゃあ楽しみにしていますからね。」

美鈴が淳平のグラスにビールを注ぐ。



淳平「俺も、久しぶりに美鈴の辛口の批評が聞けるのを

楽しみにしているよ。」



美鈴「覚悟しておいてくださいね。」



淳平「ああ、でも、お手柔らかにな。」



小宮山は端本の所へ、美鈴は、黒川先生の所へビールを

注ぎに行った。



綾「あのね、真中くん。」



淳平「何?」



綾「私も真中くんの撮った映画を見てみたいんだけど・・・

もし良かったら私にも、そのコピーを送ってくれる?」



淳平「ああ、東城の所にも送っとくよ。自宅でいい?」



綾「うん、ありがとう。ところでね、この時期に何を

しにアメリカへ行っていたの?」



淳平「実は、東城からもらったあのノートのロケーション

を探しに行っていたんだ。昨年はヨーロッパへも行って

みた。それで、良さそうな風景や建物をカメラに収めて

使えそうな所を・・・・・。

だって、あのストーリーは、どう考えても、日本を舞台で

撮るのには、無理があるからな。」



綾の顔を見て、淳平が語りだした。



淳平「ヨーロッパの城の中−

その城の若くて美しい王女は普段家来や民衆の前では

毅然とした態度でいるのに、夜、城の自室で一人でい

るときは、今旅をしている愛しい勇者の帰りを健気に

待っているんだ。そして時には城の窓から夜空を見上げ

無事であることを涙して星に祈ってる。

街の石畳の道−

勇者と仲間たちが馬や馬車に乗り、沿道にいる大勢の

観衆に見送られて、街を後にしようとしている。

馬の蹄の音、沿道からの歓声、甲冑の擦れる音

馬車の車輪の音。勇者たちを見送るその観衆の

なかで、機織の少女が勇者たちの後を追いながら

大きな声で涙を流しながら、幼馴染の勇者の名前

を必死で呼ぶ。

けれども観衆の熱狂的な歓声にかき消されて、幼馴

染の勇者にはその声が聞こえない・・・

って・・・・ごめん勝手に1人で熱くなって。

でも東城なら見えるよな・・・・って言っても、

その外国の景色とか見てないから無理だよな。ハハハ。」



綾「ううん、真中君の見た外国の景色は見て無いけど

なんとなく見えた気がするよ。」



綾(真中くん、私の思いを込めて書き込んだあのノート

を読んでいてくれてたんた。あのノートのために

こんな事までしてくれてたんだ。私との約束を忘れて

いたわけじゃないんだ。また私の心をキュッと掴まれた

気がする。そう中学3年生の時の屋上で真中くんの夢を

聞いたときのような・・・。)


『トクン・・・、トクン・・・』


淳平「できれば、また東城の原作・脚本で映画を作って

みたいなぁ。まぁ、あのノートの話はスケールがでか

すぎるから、あと何年いや何十年かかるか分からないけ

どな。」



綾「うん、私も、また真中くんに私の作品で映画を作っ

て欲しい。」



突然、少し酒で顔を赤くした小宮山がまたやってきて。


小宮山「おい、真中、さっきから綾ちゃんを独り占めして

ずるいぞ。みんな綾ちゃんの話を聞きたいんだからな。」



美鈴「小宮山先輩の言うとおりですよ。私も色々話しを

したいんですから。」

美鈴も綾の近くに寄ってくる。



淳平「わりい、小宮山、美鈴。ちょっと映画の話に夢中に

なりすぎたみたいだ。

そういえば、外村に用があるんだった。俺のくだらない話

に長い間つき合わせちゃって悪かったな、東城。」


淳平が座布団からグラスとビールを持って立つ。



綾「ううん、全然くだらなくなんて無かったよ、むしろ嬉

しかったくらい。」



淳平「ならいいけど。じゃぁ、また後でな。」

淳平が外村のほうへ行った。



綾「うん、後でね。」


綾(もっと真中君と色々なことを話したかったのになぁ。

でもまた後でもっとたくさん話せるよね。)


[No.1613] 2011/10/02(Sun) 16:05:31
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第5話「Reunion後編」 (No.1613への返信 / 5階層) - スタンリー

第5話「Reunion後編」


    
美鈴と小宮山が綾を囲んで話をしている間、少し離れた

ところで外村と淳平がビールを飲みながら話しをしている。

とぎれとぎれだが、二人(淳平と外村)の会話が綾の耳に

入ってくる。



外村「真中・・・・、頑張ってる・・・だな。」



淳平「ああ、やっと・・・・映画・・・足がかり・・たいだ。

それで、友人に・・・・いるん・・・・誰か・・・プロダク

ション・・・・女優・・・・。」



外村「分かった。・・・の写真・・・・プロフィール・・・をくれ。」



淳平「わりいな。早速・・・・するよ。」



外村「ところで、・・・野とはどうなってるんだ?」



綾(えっ!・・・野って西野さんのこと?でも聞こえにくいなぁ。)



淳平「・・・・・とは、・・・・・ネンのバレンタインに・・・白紙


に・・・。

・・・・・空港で・・・・・たんだ。・・・・・・・・・・・。

それで、賞を・・・・ビデオ・・・・西野の所・・・・・・・

・・・・・・たんだ。」



綾(かんじんな所がよく聞こえないなぁ。西野さんの話なことは

確かなんだけど・・・。)



外村「えぇ・・・・・・・・、今は・・・・いるの?」



淳平「いや、・・・だけど。・・うぜ、こんな・・・

それより他の・・・・ようぜ。」



綾が真中たちの会話に聞き耳を立てていると、美鈴が綾に話し

かける。



美鈴「ちょっと、東城先輩、ぼぉーっとして大丈夫ですか?

私達の話って聞いてました?」



綾「えっ、ごめんなさい、私ってば、ホント、どうしたんだろう。

ちょっとお酒に酔っちゃったみたい。」



小宮山「綾ちゃん、ちょっと顔が赤いよね。」



美鈴「大丈夫ですか?」



綾「うん、大丈夫だと思うけど・・・・、ちょっと失礼して

お化粧を直してくるね。」



美鈴「私も、付き合います。」



綾「じゃぁ、一緒にね。」といって二人で、お座敷をでた。



美鈴が化粧室の鏡を見ながらお化粧直しをしている綾に話しかけた。



美鈴「この祝賀会どうですか。」



綾「先生やみんなに会えて、とても嬉しかったよ。それと、みんなの

近況を知ることができたしね。

でも、真中くんが、あんなに格好良くなっていたのと、まだ私費で映画

を撮り続けていたのには、ちょっとビックリだったけどね。ああ、そうだ

私も、さっき真中君にコピーを送ってもらうように頼んだから、その映画

を見るのが、楽しみかな。」



美鈴「実は私もなんです。でも賞を取ったと言ってもあの真中先輩が撮っ

た映画ですから。見た後で思いっきり辛口の批評をするつもりですよ。」



美鈴「今日、楽しんでもらえて、この祝賀会を企画した甲斐がありました。」



綾「うん、美鈴ちゃんの帰郷の“ついで”にだけどね。」



美鈴「もぉっ、先輩ってそんなキャラでしたっけ?」



綾「ごめんなさい、私も黒川先生と一緒で、少し酔っている

から・・・・意地悪になっちゃっているかも。アハハ」



美鈴「でも、本当に喜んでもらえて嬉しいです。」



綾「うん、ありがとうね、美鈴ちゃん。」



二人で他愛もない会話を10分くらいして、

美鈴「長い時間、お座敷を離れてて、みんなが、心配すると

いけないから、もう戻りましょうか?」


綾「そうね。」

綾(真中くんと早くもっと色々な事を話したいし。

それと、さっきの外村君との会話も気になるし・・・。)



綾がお座敷のふすまをあけてお座敷内を見渡す。


綾(えぇっと、真中くんはどこに、・・・あれ、いない。)


美鈴も淳平がいないのに気づいた。

美鈴「あれっ、真中先輩は?」



外村「あー、真中のヤツは、電話があってさ。明日朝早く

角倉さんの撮影の手伝いがあるらしくて、家に帰って準備

があるからって、5分くらい前に帰ったよ。」



美鈴「なんで、私達が来るまで止めなかったの?」



外村「真中が、俺が途中で帰ることをみんなに言って

折角の祝賀会の場をシラケさせるのは悪いって

言ってたし、急いでいたみたいだから、俺もそうかと

思って、あえて止めなかったけど。

あれだったら、呼びもどそうか、俺さっき真中の携帯

の番号とメアドをもらったから。」



美鈴「今頃遅いわよ。」



綾(真中くん、先に帰っちゃったんだ。まだ話し足りない

ことがいろいろあったのに。

真中くんには西野さんがいるから、話したくても、こちら

から連絡はとれないし・・・。)


これからまた会えないと思うと、綾の心に寂しさとせつなさとが

込み上げてくる。そして無意識に目が潤んでいることを自覚する。



綾(やだ、私ったら、勝手に目に涙が・・・・。みんなに悟られ

たらダメ。特に美鈴ちゃんには、

折角祝賀会を開いてくれたんだから、余計な心配をかけさせちゃ駄目。)


綾「美鈴ちゃん、私、お化粧室に化粧品を忘れたみたいだから

ちょっと取ってくるね。」

そう言うと、綾は振り返って化粧室のほうへ走っていった。



美鈴(東城先輩・・・、化粧品って、化粧ポーチを右手に持っている

のに・・・・。

もしかして、まだ真中先輩のことを・・・・。)




綾は化粧室の鏡の前で、目に涙を貯めていた。


綾(ダメじゃない、今日は、真中くんのことをサッパリ忘れるはず

だったのに・・・・。


でも立派になった真中君に会って、真中くんに賞のことを褒められて、


真中くんに一流作家になれたことを認められて、


真中くんの私の書いたノートへの思いの話を聞いてたら、


あの頃の想いが込み上げてきて、


また私の心をキュッとされて


・・・・私、真中くんを忘れることなんてできない。


あと、いつか映画を一緒に撮りたいとも言ってたけど、


映画と小説だけの関係だけなら、西野さんは許してくれるのかなぁ。


ううん、たとえ許してくれたとしても、私はその関係だけで我慢が

できるとは思えない。


私、どうしたらいいの・・・・教えて・・・・真中くん。)


[No.1614] 2011/10/02(Sun) 16:13:46
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第6話「天使の憂鬱」 (No.1614への返信 / 6階層) - スタンリー

第6話「天使の憂鬱」



淳平が途中で帰ったあと、それから2時間程で、祝賀会はお開き

となった。

料亭の外でみんなが集まり、(何故か)外村が、締めの挨拶をし

ている。



外村「今日は、黒川先生、皆さんお疲れ様でした。家に帰るまでが

祝賀会ですから寄り道などせず、各自気を付けて帰ってください。

じゃぁ、解散。」



美鈴「何、バカなことを言ってんのよ。小学校の遠足じゃないんだ

からね。」



黒川先生、端本、小宮山は、料亭の前でタクシーを拾い、それぞれ

の自宅へと帰っていった。

その次に来たタクシーに、綾が1人乗り込む。



美鈴「先輩、今日は忙しい中、おこし頂いてありがとうござい

ました、気をつけて帰ってくださいね。」



綾「外村君、美鈴ちゃん、今日は、ありがとうね。じゃぁ

お先にね。」



外村「じゃあな、東城。」



美鈴「お疲れ様でした。」


綾が乗ったタクシーが出た後にすぐ次のタクシーが来たので

外村と美鈴は一緒にタクシーに乗り帰路についた。



車内で、外村が美鈴に話しかけた。



外村「美鈴、今日、俺と真中とで話してだろう。」



美鈴「確か、私と小宮山先輩が東城先輩と話してた時だよ

ねぇ。真中先輩がアニキに用があるって言っていたけど

何の話?」



外村「あいつの言っていた用っていうのは、真中の通ってた

専門学校の後輩に女優志望の子がいるらしくて、俺の所か

どこかいい芸能関係の事務所を紹介してほしいってことだっ

たんだけど・・・・。」


美鈴「専門学校の後輩?学校に行ってたんだ。」 



外村「そうらしい、そこで仲良くなった奴らで撮影をしてた

らしいけど・・・それはいいとして。実は、他にも話があって

西野のことなんだけどな。」



美鈴「二人はずぅっと遠距離だけど付き合っているんでしょう?

詳しい話は知らないけど、確か海外へお菓子の修行のために留学

をしていて・・・。」



外村「それが、高校3年のバレンタインの時、真剣に映画の道に

進みたいからって理由で真中の方から西野に関係を白紙に戻した

いって言ったらしいんだ。」



美鈴「嘘ぉ、真中先輩の方から?西野先輩の方から振ることがあ

っても真中先輩の方からだなんて、そんなの絶対考えられない。」



外村「俺も、最初真中の口から聞いたときは驚いたさ。」



美鈴「でも、確かバレンタインデー後も二人って付き合って

なかったっけ?」



外村「どうも西野が海外に旅立つまでは、恋人の関係でいたいって

言ったみたいで、空港での見送りまでは、二人は恋人同士だっ

たらしい。」



美鈴「そうなんだ。」



外村「それで、数ヶ月前、コンクールで賞を撮ったビデオを西野へ送っ

たらしい。もちろんまた付き合って欲しいって意味もこめてだけどな。

ただ、どうなったか詳しいことは、真中も言葉を濁してて、分からない

んだけど・・・。

ただ、一つ確かなのは・・・今、真中に恋人はいないみたいなんだ。」



美鈴「ということは、真中先輩って西野先輩にフられたんだね。ふぅん

そんな話があったんだ。遠距離で、会わずに4年も経って、生活の環境

が変われば、人って変わるからしょうがないかもね。」



美鈴(東城先輩に伝えた方がいいのかな。だって今日の東城先輩ってど

う見ても、まだ真中先輩を意識していたみたいだったから・・・。

でも以前高校の合宿の時や学園祭前に、余計なことを言って東城先輩と

真中先輩に迷惑をかけたことがあるし・・・。

あと北大路先輩にも教えた方が良いのかなぁ。あぁ、どうしよう。)

と伝えるべきか否か一人悩んでいた。


[No.1615] 2011/10/09(Sun) 20:51:42
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第7話「Do you see the light?」 (No.1615への返信 / 7階層) - スタンリー

第7話「Do you see the light?」


祝賀会の3日後、綾の自宅に淳平から小包が届いた。


早速、包みを開けると、メモとDVDが入っていた。



メモには「東城へ約束したDVDを送ります。

今まで俺が撮ったベストな作品だと思うんで、観て下さい。

今度、機会があったら、映画の感想を聞かせてください。

真中。」と書かれてある。


メモを読んだ後、早速、自室でDVDを見る。


映画を見ていて、出演している女優の中に淳平の幼馴染の

南戸唯がいる。

綾(唯ちゃん、真中君の映画に出てるんだね。)
     ・
     
     ・
   
   
     ・



     ・




  
映画が終わって、スタッフロールが流れ始めようとしたので

綾がDVDを停止し電源を切る。


映画はコンクールで賞を取っただけあり、高校3年生の時に

淳平が角倉に依頼されて撮った映画と比べて映像の技術・構成・

ストーリーどれをとっても、素晴らしい出来であった。


綾(真中くん、卒業してから一生懸命頑張って、認められたん

だね。)


ディスクをDVDデッキから取り出してケースに入れる。

綾(真中くんに会って、頑張ったねって言ってあげたい。

いい作品だったねって褒めてあげたい。

メモに「機会があったら」って書いてあったけど、会える

機会なんてそうあるわけじゃないし・・・。

私の脚本がなくったって、こんなに良い作品ができるんだ

から、真中くんにとって、もう私は必要ないのかも・・・。


でも、祝賀会の時、私の作品で映画を作りたいって言ってく

れたし・・・。でも、真中君には、西野さんがいるし・・・。)



突然、綾の携帯に美鈴からの着信がある。


綾が受信する。


美鈴「もしもし、東城先輩ですか」



綾「美鈴ちゃん、どうしたの?」



美鈴「東城先輩、先日話していた真中先輩の作品って

もう観られましたか?」



綾「うん、丁度、観終わったところだけど。」



美鈴「凄くいい作品でビックリしちゃいました。

見る前はコンクールで受賞したといっても、あの真中先輩

が撮った作品だからってことで、ちょっと舐めてましたから。」



綾「本当に、良い作品だよね。私なんか、感動しちゃった。

良い映画を撮るために頑張ってたんだなって。」



美鈴「黒川先生が複数の事務所から誘われているって話を

聞いた時は、最初は冗談かと思いましたけど、納得しちゃ

いますよね。」



綾「業界の人たちに認められたってことだよね。」



美鈴「・・・。」(どうしよう、あの事を東城先輩に教えた

ほうがいいのかな。)



綾「どうしたの、急に黙り込んじゃって。」



美鈴「あのぉ、実は、真中先輩のことで、東城先輩に話して

いいかどうか、悩んだんですけど・・・・。」



綾「真中君のことで私に?この映画の話じゃなくって?」



美鈴「祝賀会の時、ちょうど私と小宮山先輩が東城先輩と

話をしていたとき、うちのアニキと真中先輩が話しをして

いたのを覚えていますか?」



綾が、祝賀会の時、二人の会話に聞き耳を立てていた事を

思い出す。



綾(外村「ところで、・・・野とはどうなってるんだ。」

淳平「・・・・・とは、・・・・・ネンのバレンタインに・・・

白紙に・・・。・・・・・空港で・・・・・たんだ。・・・・・・

・ ・・・・。それで、賞を・・・・ビデオ・・・・西野の所・・

・ ・・・・・・・・・・・たんだ。」


外村「えぇ・・・・・・・・、今は・・・・いるの?」



淳平「いや、・・・だけど。・・うぜ、こんな・・・、それより他の

・・・・ようぜ。」)



綾「何か特別な話でもあったの?」 



美鈴「アニキが言うには、真中先輩の方から高校3年のバレンタイ

ンデーに西野先輩に別れ話をしたらしいんです。それで、西野先輩

が外国へ行くまでは恋人の関係だったらしいですけどそれからは

全く連絡もとってなかったそうなんですよ。数ヶ月前にこのDVDを

西野先輩に送ったらしいんですけど、・・・何かがあったみたいです。

それで、真中先輩本人もアニキに言ったそうですが、今現在付き合

っている恋人がいないってことから、真中先輩は、西野先輩と完全

に別かれたみたいですよ。」



綾「・・・。」(美鈴ちゃん、何を言ってるの?真中君は、西野

さんと幸せに付き合ってて・・・、そんな二人が別れるなんてが

あるわけ無いじゃない。)


突然の事で、美鈴の言った事を、綾はにわかには信じられない。



美鈴「生活環境が変わって、時間が経つと人間って変わっちゃうん

ですかねぇ。」



綾「それって本当の話なの?」



美鈴「真中先輩本人が今は恋人がいないって言ってたらしい

ですから。」



綾「・・・」(じゃあ卒業後は、ずぅっと1人だったの?)



美鈴「あのぉ、祝賀会でお化粧直しからお座敷に帰った時

真中先輩が帰ったって知った東城先輩の顔や行動をみて、

どこかとても悲しそうだったから、ひょっとして東城先輩

ってもしかしてまだ真中先輩のことを意識しているのかな

って思いまして・・・・。

また余計なことを言っちゃいましたか?」



綾「えっ、ううん、余計な事なんて、そんなことないよ・・・。

やっぱり、あの時、美鈴ちゃんには隠せなかったみたいね。

美鈴ちゃんの言うとおり、まだ真中くんのことが好きだった

みたい。」



美鈴「やっぱり、そうでしたか。真中先輩って、あの頃と

比べると、格好良くなってたし、頼れそうだし、何よりも

いい作品を作れるようになっていましたからね。

今は定職にはついてないみたいですけど、将来はいい監督

さんになるような気がしますから・・・。

今の真中先輩なら東城先輩の彼にいいかなって思えてきま

した。

実は、私、この事を北大路先輩に言おうかも悩んでいたん

ですけど、北大路先輩には悪いですけど、言わないことに

します。ですから、東城先輩も私から聞いたという事は

誰にも言わないで下さいね。」



綾「うん、誰にも言わないよ。私にだけ、この事を教えて

くれてありがとう。」



美鈴「明日、京都に帰りますけど、先輩、小説も恋も頑張って

下さいね。」



綾「うん、美鈴ちゃんもね。」と言って電話を切り、携帯を閉じた。



(今、西野さんと別れて恋人はいないんだ。ということは、真中

くんに連絡をとってもいいんだ。

そうだ、早速この映画の感想を伝えないと・・・・。)


綾は西野という封印が解かれたことを自覚し、これで誰に遠慮する

ことなく淳平と話せると思うと嬉しさが込みあげてきた・・・が

美鈴の言った一言が気になる。



(あれっ、でも、さっき高3の時のバレンタインの日に別れ話をって

言ってたよね。


それって確か真中君の第一志望の大学の受験日、そう、別れを告げた日

の翌日じゃない。


あと、確か私の想いを込めて書いたノートを送った日だ。


ひょっとして、私の我儘な行動のために、大学受験を失敗させただけ

なく、彼の選んだ恋人とも別れさせたっていうことじゃ・・・。


それに、二人が分かれたことを喜んでいる今の私って、真中くんに

とって悪い女なんじゃないの?


ううん、それは思い過ごしよ。でも、もしそうだとしたら、・・・・

私、真中くんに謝らないと・・・。)



綾(今はそんなことを考えるのをやめて、とりあえず、この映画の

感想を真中くんに伝えないと。)

そう決心して、早速、淳平の自宅へ電話をかけた。


[No.1616] 2011/10/09(Sun) 21:17:14
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第8話「一人ぼっちじゃない。」 (No.1616への返信 / 8階層) - スタンリー

第8話「一人ぼっちじゃない。」


綾「もしもし、真中淳平さんのお宅ですか?」



淳平の母「ハイ、そうですけど、どちら様ですか?」



綾「ご無沙汰しております、私は淳平さんの高校時代

の友人で東城と申します。」



淳平の母「あら、淳平が高校生の時、たまに家に来て

くれてた、あの東城さん。まぁ、久しぶりねぇ。ところ

で凄い賞を取って、立派になられたわねぇ。淳平、とても

喜んでたわよ。そうそう、淳平ったら、東城さんの書いた

本はみんな持ってるし、東城さんの連載がある雑誌は発売

日に欠かさず買ってきて読んでるわよ。」



綾「そ、そうですか。」

綾(真中君、あの祝賀会では、私の連載が載っている雑誌は

読んでないって言ってたのに・・・。)



淳平の母「ごめんなさい、勝手に話し込んじゃって。私ったら

有名人と話せて、ちょっと舞い上がっちゃったみたい。

今、あの子、アルバイトに行っていて、ここにはいないの。

帰るのも遅くなりそうだから・・・。

もし夜遅くでもよければ、淳平に電話をかけさせるけど?」



綾「いいえ、また、後日こちらから、電話をかけなおします

から。」



淳平の母「そう?折角電話をしてもらったのに悪いわね。

じゃぁ、電話があったことは伝えておくわね。」



東城「ありがとうございます。それでは失礼します。」

二人が受話器を置いた。


綾(平日は、アルバイトとかで夜遅くまで忙しそうだから

今週の土曜日頃に電話をしたほうがいいみたね。

それにしても真中くん、どうして、祝賀会の時に私に嘘なんか

ついたのかしら。

私の小説が連載されている雑誌を買うのを、隠す理由なんてある

のかなぁ。

そういえば、雑誌は買ってないって言ってたとき、私から目を逸

らしてたし・・・。

私になにか隠し事って・・・ひょっとして、本内さんは、真中くん

なのかも・・・。

そうだ、真中君のくれたDVDのメモと本内さんのファンレターを

比べれば、何か分かるかも。)


早速、メモと過去本内から受け取った全てのファンレターを持って

きて比べてみた。


綾(同じ便箋だ。それに、文字だって、とても似てる。あっ、よく見

るとメモに前のページを書くときの筆圧でできた文字の跡があるわ。)


綾がメモにある筆圧できた跡の箇所を鉛筆でなぞる。

浮き出た文章の一部が表れる。

今月送られてきた本内からのファンレターの文章の一部とぴったり

合致する。



綾(最初は私のただの願望だと思ってたけど、やっぱり、本内さんと

真中くんは同一人物だったんだ・・・ということは・・・・。)


綾が本内さんからもらったファンレターを抱きしめ、目を閉じる。

綾(真中くん、いつも私を励ましてくれてたんだ。

応援してくれてたんだ。私、この手紙のおかげでがんばれたよ

ありがとう、真中くん。

・・・でも、本内って名前って一体何なの?)


[No.1617] 2011/10/10(Mon) 07:18:40
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第9話「Who’s that girl?」 (No.1617への返信 / 9階層) - スタンリー

第9話「Who’s that girl?」



綾が淳平の家に電話をした週の土曜日、綾は講演で着る服を注文しに

繁華街にあるデパート内にあるブティックにいた。


店員「それでは、お直しがありますから、来週水曜日のお昼以降の

ご来店でお願いします。」


綾「はい、分かりました。じゃあ来週水曜日の午後に来ます。」


店員「お待ちしております。ありがとうございました。」


綾(予定より早く買う服を決めちゃったなぁ。なんとなく、今は

帰って小説を書く気分じゃないし・・・。

折角久しぶりに繁華街へきただし、どこかでお茶でもしていこう。

その後で、家に帰ったら真中くんに映画の感想を伝えよう。)



そう思い、綾がデパートを出ようとした時、綾の前を二人の男女

が横切った。



綾(あれ、真中くんじゃない?隣で一緒に歩いているのって帽子と

サングラスをしてジーンズを履いているけど、女の子みたいだけど。

・・すごく気になるから少し後をつけてみようかな・・・ってこ

れじゃストーカーじゃない。)


そう思いながらも、綾は少し距離をおいて後ろを歩くことにした。



綾(真中くんって恋人がいないはずじゃなかったの?ひょっとして

あの祝賀会後にできた新しい彼女?

もしそうだとしたら、また付き合っている女性がいる男性を想うこと

になるちゃうの?それだけは絶対嫌。)


綾がいろいろな事を考えながら歩いていたら、ふと、淳平を見失った

ことに気付く。

綾(あれっ、真中くんがいない。)

そう思ったとき、突然だれかが腕を掴み、そして叫んだ。



?「危ない、東城!」

綾のすぐ目の前を車が横切る。



綾「えっ?あっ。」(真中くんの声?)



綾は考えながら歩いていたため、横断歩道の歩行者用が赤になってい

るのに気付かず、いつの間にか信号待ちをしている淳平達の横を通り

すぎて、道路を渡ろうとしていたのだった。



淳平「大丈夫か、東城?」



淳平の横にいた女性が綾を見て、

?「えっ、東城って、じゅんぺいの同級生だった東城さん?」


綾は淳平に腕を掴まれて、ドキドキしながら、女性の声の主が誰か

考えている。


綾(真中くんに触れたのは、あの家庭教師をしていた日以来よね。

何か、私の体を電流が走ったみたい。

この女の人、私のことを知ってるみたいね。それに、この人の声って

以前、聞いた事があるわ。)



?「あっ、本当に東城さんだ。私のことを覚えていますか?」

淳平の隣にいる女性がサングラスを下に少しずらして、綾の顔を見る。



綾「あれっ、もしかして、唯ちゃん?」

綾(唯ちゃん、真中君と・・・・)



唯「わぁ東城さんだぁ。そういえば、この前、凄い賞を取ったみたい

ですね。おめでとうございます。」



綾「ありがとう、唯ちゃん。ところで、唯ちゃんは・・・その

真中くんとつきあってるの?」

綾(わっ、私ってバカ、そのまま真っ直ぐに聞いちゃった。)



唯「えぇっ、そんな訳ないじゃないですかぁ、こんな泣き虫で

格好悪いやつと。」



淳平「おい、俺はそんなに泣き虫なんかじゃないぞ。それに

言うほど格好悪いなんて思わないし。」



唯「だってね、東城さん聞いてよ、ほんの数ヶ月前にじゅんぺい

ったら西野先輩にフられて泣いたんだよ。」



淳平「今、唯が言ったのは、嘘だからな、聞き流してくれよ。」

淳平が唯の口を押さえようとする。



唯「何よぉ、じゅんぺいったら。東城さん、本当なんだからっ。

ねっ、じゅんぺい?」



淳平「ハハハ、はい、そのとおりです。」



綾「・・・。」

綾(唯ちゃんと付き合ってないんだ。それと西野さんと別れたのは

やっぱり本当だったみたいね。)



淳平「俺の話はいいとして、さっき、ぼぉっとして歩いていたみたい

だけど、本当に大丈夫か?」



綾「うん、ちょっと今、次の小説の事とか考えて歩いていたら、信号が

赤に変わっていたのを見落としちゃったみたい。」



淳平「オイ、オイ、良い小説を書くのは大変だろうけど、一歩間違ってい

たら死んでたんだぜ、気をつけないと。」



唯「ほんとうよ、じゅんぺいが腕を掴んでなければ今頃、大変なことに

なっていたと思うわよ。」



綾「ごめんなさい。私にとって、真中くんは命の恩人だね。」

綾が微笑む。



淳平「バカ、俺は冗談で言っている訳じゃないんだ。俺は

真剣に心配して言っているんだからな。」



綾が少しシュンとして。

綾「本当にごめんなさい。私ったらこんな時に変な事言っ

ちゃって・・・。」



淳平「おっ俺こそ、言いすぎたみたいだな。ゴメン。」



唯「ところで、これから何処に行くつもりだったの?」



綾(真中くんの後を尾行していたなんて言えないし・・・そうだ

この先に有名な喫茶店があったはず。確か、お店の名前は・・・。)


綾「この通りにある、セレブリティーっていう喫茶店でお茶をしようか

と思ってたの。」



唯「えっ、東城さんも?偶然だね、私達もじゅんぺいのおごりでそこに

行くつもりだったんだよ。

そうだ、東城さんさえ良かったら、一緒にどう?ねぇ、いいわよね、

じゅんぺい?」



淳平「ああ、俺は構わないよ。お茶を飲むぐらいの金はあるからな。」



綾「そう?じゃぁ、お言葉に甘えさせていただこうかしら。」


3人は一緒に歩き出した。



綾「ところで唯ちゃん、今日は、二人で街へ何をしにきてたの?」



唯「東城さんは、じゅんぺいがこの前映画のコンクールで受賞したのは

知ってる?」



綾「うん、知ってるよ。その映画に女優として唯ちゃんも出てたよね?」



唯「なぁんだぁ、あの映画を見てるんだ。それでね、前にじゅんぺいが

コンクールで賞をとったら、お礼に私の欲しい服を買ってくれるという

約束をしてたの。受賞してから、少し経つけど、今日、その服を一緒に

買いにきてたの。」


唯が右手に持っている、海外有名ブランドのロゴが入った袋を綾に見せる。



綾「そうなんだぁ。」

綾(いいなぁ、唯ちゃん。私も、こんな風に真中くんと二人っきりで

ショッピングができたらいいのに。)



淳平「ただブランドってだけで、ただの服が7万円もしたんだぜ。

まいっちゃうよなぁ。本当は俺の服も買うつもりだったけど・・・

おかげで、すっからかんだよ。

バイト代がもうすぐでるから、それから、また買いにくるからいい

んだけどさ。」



唯「あれは、じゅんぺいが服の値段を1桁間違えたからでしょう。

だいたいこのブランドの服がフェイクじゃない限り7千円なんかで

買えるわけがないじゃない。

それと誰のおかげで、コンクールで賞が取れたと思っているのよ。

私の演技のおかげでしょ。」



淳平「ハイ、ハイ、大女優、唯様のおかげです。」



店に入り、席につき、飲み物を注文し店員がオーダーの確認した直後

に淳平の携帯が鳴った。



淳平「あっ、角倉さんからだ。」


淳平「ハイ、もしもし、真中です。いつもお世話になってます。・・・

はいちょっと待ってくださいね。」



淳平「唯、なんか書くもの持ってないか?」



唯「えっ、書くものって、メモとペンの事?持ってないよ。」



綾「私、小説のネタ帳があるから。」

綾がバッグからノートとペンを取り出して淳平に手渡す。



淳平「悪いな。電話がちょっと長引きそうだし、店の中で他の客

に迷惑かけちゃ悪いんで外で話してくるから。悪いけど、唯の

相手を頼む。」



淳平「あ、待たせちゃってすみません。ハイ・・・・」

淳平が携帯で話しながら、席を立ち、店の外へ出た。



唯「突然だけど、今付き合っている彼氏とかいるの?ほら昔

片思いの人がいるって言ってたから。」



綾「えっ、いないよ。」


綾(本当に突然ね・・・。唯ちゃんは、私が真中くんに振られ

たことを知らないいんだ。)


綾「私、小説を書くのが忙しくて、男の人と付き合ってる暇が

無かったの。」



唯「えっ、それって大学の4年間すぅっと、いなかったってこと?

あっ、ごめんなさい、私って、あの・・・変な事を聞いちゃって。

東城さん、あの時よりも更に素敵になってるから、てっきり誰かいる

と思ったんだけど・・・。」


ちょっと、気まずい雰囲気になる。


綾「そうやって言われると、ある意味寂しい学生生活だったわね。

ところで、唯ちゃん、さっきの話だけど、真中くんってそんなに何度も

唯ちゃんに涙を見せたの?」(空気が重いから、話をかえないと・・・・。)



唯「私が泉坂に来てから、・・・・3回かな。一回目は、じゅんぺいが

高1で西野先輩にフられたときでしょ、2回目は、高3の志望校の受験日

の夜、相当試験のできが悪かったからでしょ。

3回目はさっき言った西野先輩にフられたのを知った時、たまたまじゅんぺい

の家に行ってて・・・って、あいつ2回も西野先輩にふられているんだよね。

やっぱり、格好悪いや。」



唯「ただね、じゅんぺいの大学受験失敗は私にもちょっと責任があるから

・・・・。

東城さんの記憶にあるか分からないけど、私の勘違いから、ひどい事を言って

迷惑かけちゃってるしね。それで、その罪滅ぼしじゃないけど、じゅんぺいの

映画には出来るだけ協力してあげているんだ。あと、じゅんぺいにはいろいろ

と助けてもらったしね。」



綾(あの日のこと、まだ気にしているんだ。本当に悪いのは私なのに・・・。

ごめんね、唯ちゃん。)


綾「そうなんだぁ。でもさっき二人が一緒に歩いているのを見てたら

凄く仲がよさそうだったし、真中くんって高校時代と比べて格好良く

なってなから、ひょっとして二人は付き合っているのかと思って。」



唯「じゅんぺいって、確かに高校時代と比べて少しは格好は良くなって

るけど、ただの仲の良い幼馴染だよ。

受験の失敗は悪いことしたなって思うけど、同情だけじゃ恋人としては

付き合えないしね。

それに私、今、付き合っている彼氏がいるし。ちょっと待ってね。」


唯が携帯電話の待ちうけ画面を綾に見せる。



唯「ほら、この人だよ。じゅんぺいの親友でね、じゅんぺいの紹介で

付き合っているんだ。

名前は本内君って言うんだけどね。今年就職して映画とかのキャメラマン

をやっているの。

そうだ、コンクールの映画観たんだよねぇ。映画の最後のスタッフロールに

本内って名前が出ているはずだから、暇があったら見てみてよ。」



綾「この画像でみると本内さんってなかなかハンサムだね。スタッフロールは

一度見てみるね。」

綾(本内さんの名前って唯ちゃんの恋人・・・真中くんの友達の名前だったのね。)


[No.1618] 2011/10/10(Mon) 07:40:56
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第10話「Another Angel」 (No.1618への返信 / 10階層) - スタンリー

第10話「Another Angel」


淳平が角倉との電話が終わり、店の外から綾たちのところに戻ってくる。



淳平「悪いな、待たせて。メモとペンありがとな。ところで、このノート

破っちゃってもいいかな。」



綾「気にしないでそのページごと取っちゃっていいから。」



淳平「じゃぁ、遠慮なく破らせてもらうな。ところで、唯、俺が外にいる間

何を話していたんだ?」



唯「じゅんぺいって、格好悪いんだよって、東城さんに悪口を言っていたの。」



淳平「格好悪いって、これでも、高校卒業してから5人の女の子から告られ

てるんだからな。」



綾「えっ、5人も?」

綾(真中くんって、もてるんだ・・・・、確かにあの頃と較べて格好も良くなって

るし、女の子の心を私の時みたいにキュッと掴む事ができたなら・・・。)



唯「なぁに、格好つけているのよ。ほとんどがみんなお店の娘達でしょ。」




綾「お店の娘たち?」



淳平「あぁ、バレちゃったかぁ。祝賀会のとき色々なバイトって言った

よな。その内の1つが、キャバクラのボーイみたいな事をやっててさぁ。

ほら、工事現場の仕事って凄くハードな肉体労働でさ、体力的に毎日って

ワケには行かなくて、たまたま俺の映画に出演してくれてたコが、その店

で働いていて、そのコの紹介でもう2年くらい勤めてるんだ。」



唯「でもね告白してきたコの写真を見せてもらったけど、みんな綺麗だった

からビックリしたの。でも西野先輩ほどじゃなかったけどね。それに西野先輩

とまだ付き合ってるって勝手に思っていたから、みんな断っちゃったんだよね。

でも、本当は勿体無いことしたと思ってるんじゃない?」



淳平「今にして思えば、そうかもな。みんないいコたちだったし・・・。

ああいう店で働いてるコたちって、楽してお金を稼いでたりしているように

見えるけど、みんな色々な理由で働いてるみたいで結構大変なんだぜ。

あと、店内でイジメとかあったりして・・・・。

そういうの俺、我慢できないから、つい口を挟んだりして、気まずくなったり

したこともあったけど、でもみんな俺の言いたい事を理解してくれたみたいで、

今はみんな仲良くやってるんだ。」



唯「なに、自慢してるのよ。東城さん、じゅんぺいったら、そんな店のコ達に

言われて生理用品とか買いに行かされたりしてるんだからね。」



淳平「おい、唯それは言うなって。東城の俺へのイメージがガタガタじゃん。

・・・・でもこの話は、角倉さんの事務所ではメチャクチャ受けたんだけどな。

仕事なんだから、今は恥ずかしくはないけど・・・・でも、最初買いに言った時は

コンビニのレジの店員の顔は流石に見れなかったな。」



唯「今じゃ、余裕みたいだけどね。ハハハ。」



淳平「そういえば、この前、俺が留守の時電話をもらったみたいだけど何か

用でもあったのか?」



綾「えっ、うん、あの映画の感想を言いたかったから。」



唯「あっ、私も聞きたい。」



淳平「で、どうだった、俺の映画。」



綾「唯ちゃんの演技、とても良かったよ。あと真中くんの映画も高3の頃の

とは比べ物にならないくらい出来が良くなっててね私感動しちゃった。

真中くん、この4年間一生懸命頑張ったんだなって。」



唯「でしょう。まぁ、賞がとれた最大の理由は私の演技力のおかげだからね。」



淳平「ハイハイ、唯様のおかげです。そうか、俺って単純だから褒められると

マジで嬉しいよ。自分で言うのもなんだけど4年間頑張ったもんな。」



綾「それでね、この映画のほかにも真中くんが撮った映画があると思うから

もし良かったら、全部見てみたいなって思ったの。」



淳平「えっ、いいのか。確か、他に十本近くあるけど・・・・、でも、小説の

方が大変なんじゃないのか?さっき、小説の事を考えながら歩いてた位だから。」



綾「えっ、そうね、ちょっと忙しいかも。それと真中くんの映画は、じっくり

見てみたいから、感想をすぐにって訳にはいかないけど・・・、でもとても

興味があるから。」



淳平「わかった、じゃぁ、また送るよ。」



綾「いつも送ってもらってて悪いから、私のほうから取りにいこうか?」



淳平「そんなに、気にするなよ。俺、東城に作品を観てもらうのは、本当

に嬉しいいんだぜ。感想も楽しみだしな。だから送るよ。」



綾「楽しみにしてるね。」



唯「そろそろ、いい時間ね。東城さんは、このあとはどうするの?」



綾「わたしは、家に帰るだけだけど。」



唯「じゃぁ、みんなで帰ろうよ。」



綾「じゃぁ、タクシーでね。」



唯「ちがうよ、今日はじゅんぺいの車で来ているから。ねぇ

東城さんの家まで遅れるよね?」



淳平「もちろんだよ、帰る方向もほとんど一緒だしな。」



綾「車を運転できるんだ。」



淳平「ロケ地まで機材とかを運ぶのにさすがに電車やバスとかじゃ

きついしな。

あと、例のバイトで店の子たちを、夜遅くに家まで送ることもあるし。」


淳平が会計を済ませて、店を出た。


[No.1619] 2011/10/10(Mon) 19:04:51
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第11話「変わらないもの」 (No.1619への返信 / 11階層) - スタンリー

第11話「変わらないもの」




淳平の車の置いてある、デパートの駐車場へ向かい3人で歩いている。

駐車場に着いて、白のコンパクトワゴン車のドアをアンロックする。



淳平「これが俺の車。店のコが乗ってた車だけど、新しく車を

買うからって、格安で譲ってくれたんだ。」



綾「可愛い車だね。」



唯がリアドアを開けて、

唯「もっと東城さんと話したいから、東城さんと後ろに座るね。」



東城「じゃぁ、お邪魔します。」

綾(本当は真中くんの隣がいいんだけど、さすがにね・・・って、

なにこれって・・・。)


車内は、男の車とは思えないような、ぬいぐるみが多数置いてある。


綾「このたくさんのぬいぐるみは、ひょっとして唯ちゃんの趣味?」



唯「違うよ。」



淳平「さっき、店のコ達を送っていくって言ったよな。そのコたち

が勝手にこんなグッズを買ってきては置いてってさ。

最初は、恥ずかしいから、みんな車から降ろしてたんだけど。

そうしたら、みんな面白がって、次から次へと買ってきては

置きだしたもんだから、きりがないんで今はあきらめて

そのままにしているんだ。」



唯「こんな車を見せたら、彼女なんていつまで経っても出来

ないよ。」



淳平「なんか、マーキングされてるみたいだしな。ハハハ」
           ・


           ・


           ・

淳平は車を運転している。



唯が小声で綾に話しかける。


唯「東城さん、これ見てもらえますか。」

唯が綾に携帯の画像を見せる。

綾(真中君の写真だ。)


綾「これがどうしたの?」



唯「ほら、じゅんぺいのやつ、西野先輩にフられて

ちょっと落ち込んでるみたいだから、私の友達を紹介

してあげようかと思って、とりあえずじゅんぺいの

良さそうなところを撮ってみんなに見せてるの。」



唯「だって、あの時までは恋人がいたから、断って

たけど、今は、西野先輩がいない寂しさから、変なコ

とつきあっちゃうかもしれないしね。」



綾「それで、真中くんに興味があるっていう友達は

いたの?」



唯「まだ、じゅんぺいには言ってないけど、3人位

会ってみてもいいって言うコがいたの。」



綾(唯ちゃんが勧める女子だときっといいコたち

だと思うから・・・。)


綾「そうなんだ。」



淳平「後ろで、何か小さい声で話してるようだけど

また俺の悪口でも話しているのか?」


淳平が運転しながら尋ねた。



唯「ちょっとぉ、女の子の会話なんだから、じゅんぺい

は入ってこないでよ。もう。」



唯「そうだ、もし良かったら、携帯番号とメアドを交換

しませんか?」


綾が携帯をだして、操作する。

綾「えっ、いいわよ。これが私の番号だから、送信するね。」



唯「ありがとう、じゃぁ私からも送るね。」



綾「あのぉ、真中くん、もし良かったら、番号とメールアド

レスを教えてくれる?」



淳平「今は運転中だから、無理。唯、お前の携帯からメール

で教えてやってくれよ。俺も後で、東城のを唯から教えて

もらうから。」



唯「うん、分かった。じゃぁ、送るね。じゅんぺいに東城

さんの番号送るけど、じゅんぺい後で東城さんにイタ電

なんかするなよな。」



淳平「しねぇって。」



車が、綾の家に前に到着する。



綾「送ってくれてありがとね、真中くん。久しぶりに会えて

楽しかったよ、唯ちゃん。」



淳平「じゃぁ、またな、東城。」

綾(「またな」って・・・・・・また会ってもいいってことだよね。

ちょっと前までは、二度と会えないかも、とか絶対会ってはいけないっ

て思っていたのに・・・。)『トクン・・・』


綾「うん、またね真中くん、唯ちゃんもね。」


唯「バイバイ、東城さん。」



綾が淳平の車が出るのを見送る。


綾(今日はとても楽しい1日だったなぁ。また会えるっていうがいいよね。

あと携帯電話の番号とメールアドレスも交換できたし、それに西野さんと

別れたのも真中くん本人からも確認できたし・・・。

再会してまだ少ししか経ってないけど、真中くんは、私のことをどう思って

くれているのかな・・・。

あっ、今なんか次の小説の主人公像がひらめいちゃった。真中くんに会う前は

家に帰って小説を書くのが億劫だったのに、私って、相変わらず真中くんに

助けられているんだね、ホント感謝しないと。)


綾は幸せな気分で、自室に戻り、次の小説に取組んだ。


[No.1620] 2011/10/10(Mon) 19:13:25
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第12話 「ギャンブル」 (No.1620への返信 / 12階層) - スタンリー

第12話 「ギャンブル」



綾の家の前に淳平がいる。

淳平は表札に書いてある文字を読んでいる。

淳平がのインターホンのボタンを押す。


綾が内側からドアを開ける


綾「いらっしゃい、真中くん。」



淳平「おはよう。」


綾「さあ、中に入って。」



淳平「じゃぁ、おじゃまします。そういえば、家の表札に

東城の名前の下に活サ企画ってあったけど、あれって何?」



綾「あれね。実は、節税対策も兼ねて法人化したの。この前の

法律の改正で簡単に株式会社が出来るようになったのを機にね。」



淳平「へーぇ、なんか難しくて俺には分かんねーや。」



綾「うふふ、そうね、私も詳しいことは分からないけどね。

まだ小説家に成ったばかりのころは未成年だったし、原稿料

とか契約が難しそうだということで、父が心配して会社の

顧問弁護士の先生に相談してくれてね。その先生が代理人

になって交渉事とかをやってくれることになったの。

その先生は今は綾企画の顧問弁護士なんだけど、その先生の

薦めもあって会社形式にしたの。」



淳平「顧問弁護士がいるのかぁ、すげぇなぁ。」




綾「ご、ごめんなさい、私ったら、その、下らない話を・・・。」

綾(真中くん、ちょっと引いちゃってるかも。)



淳平「いや、いいんだ、そうか今、東城は社長さんなんだな。」



玄関で靴を脱ぎ、東城の後を淳平が廊下を歩いている。



淳平「静かだけど、家の人は?」



綾「今みんな外出しているけど、どうして?」



淳平「いや、なんでもないけど・・・。」



応接間の前で綾が立ち止まり、ドアを開ける。



部屋には高級そうなソファー、テーブル、置時計、絵画等があり

綾の父のものだと思われるトロフィー等が飾ってある。



綾「何か飲みたいものとかある?」



淳平「特にないから、お茶でいいよ。」



綾「じゃぁ、すぐにもって来るね。まだほんの少ししか書いて

ないけど机の上に置いてある連載前の小説を読んでてくれる?」



淳平 「えっ、いいのか、そんな大切なものを。」



綾「うん、この前映画を見せてくれたお礼よ。それに前みたいに

意見とか聞きたいしね。」



淳平「喜んで読ましてもらうよ。」


少しして、綾がお茶を持ってくる。


淳平は真剣に綾の小説を読んでいる。



綾「真中くん、お茶ここに置くね。」


淳平が小説を読むのを止めて。


淳平「ありがとう。あっ、これ例のDVDだけど、ここに

置いておくから、後でゆっくり見てくれよな。」



綾「うん、ありがとう。それで、もしよかったらだけど、この前

送ってもらったDVDを一緒に観ない?」



淳平「今?」



綾「そうだけど、駄目?」



淳平「かまわないけど。」


綾がDVDをセッティングして再生する。


淳平が作品の説明をしながら説明をしている。



綾「唯ちゃんと一緒にでているサブヒロインの役を演じている

ひとって綺麗なコね。」



淳平「ああ沙織のことね。学校の2年後輩でさぁ。」



綾「学校の後輩?」



淳平「俺、高校卒業後に映像系の専門学校に行ってたから

そこの俳優コースにいたコだよ。」



綾「専門学校に行ってたんだ。」



淳平「映画雑誌に広告が載ってて、3月の申し込みで4月から入学

出来る所があったから親に頼みこんで通わせてもらったんだ。」



綾「じゃぁこの映画って学校のコ達で作った作品なの?」



淳平「主だったスタッフはそうなるかなぁ。この作品には出てないけ

ど他で・・・覚えてるかなぁ予備校時代の右島、佐竹、こずえちゃん

とか・・・あと浦沢・・・それと天地とかも手伝ってくれたりしたん

だぜ。」



綾「浦沢さんたちと天地君も・・・そうなの。懐かしいなぁ。」


映画が終わって綾がDVDの再生を止める。



綾「この作品ってオリジナルのストーリーだよね。」


淳平「同級生の荒木が作ってそれを脚本化したはずだからな。」


綾「荒木さんって...。」



淳平「脚本家のコースにいてさぁ。

地方からこっちにきてて一人暮らしだったから、よく学校

の仲間達と荒木のマンションに入り浸って映画のことで熱く

語り合ったりした。この作品の脚本を作るときもみんな

でそこに行って作ってたなぁ。」


綾が高校時代に淳平にオリジナルの小説を読んでもらい

脚本作りを一緒にしていた頃のことを思い出す



綾「じゃぁ荒木さんって男性なんだ。」



淳平「いや、女だけど・・・どうして?」


綾「・・・・女性なの?みんなで入り浸ってって言った

からてっきり私・・・。」



淳平「ハハハ、荒木ってお嬢だったから結構広くて防音が

しっかりしてたところだったから、よく演技の練習とかし

てたし、あいつ料理が得意でさぁ、みんなでご馳走になった

りしてたから。」



綾「そうなんだ。」


淳平「まぁ、たとえて言うなら、料理が得意な東城って感じ

かな、ハハハ。

料理といえば、高2の合宿の時の東城の料理は凄かったなぁ。」



綾が下をうつむいて。


綾「料理ってあまりしたことなかったから・・・。」


淳平が綾の表情の変化に気がついて。


淳平「ごめん。」



綾「うぅん、気にしないで。」



淳平「・・・。」



少し重苦しい空気になる。


淳平が時計を見ている。


淳平「もう11時半かぁ。じゃぁ、そろそろ・・・」


綾が淳平の話を遮って。


綾「まだいいじゃない。ちょっと話題を変えて、私の

質問に答えてもらって良い?」



淳平「えっ、質問?何の?」



綾「私って、大学4年間恋人がいなかったの、でも流石にこの

歳になってね、付き合っている人がいないと、親とか心配してい

るみたいだからね。それで、真中くんからみて、高校時代の私っ

てどうだったのかなって、思ってね。もし私の欠点があったら

それをなおして、新しい恋をしようと思ってね。それと小説の

ネタにも使いたいし・・・。」



淳平「それって・・・そのぅ・・・俺が・・・フッたことの理由

を知りたいってことじゃないのか?」



綾「そんなに、真剣にとらないで。あれがらもう四年以上も経っ

てるからあの時のことは全然気にしてないし。

ただ、新しい恋をするのと小説の参考にしたいだけなんだから

なにを言われても平気よ。」



淳平「本当にいいのか?また傷つける事にならないのか?」



綾 「ううん、むしろ、それを知ることによって、新しい恋ができ

れば幸せになれると思うの。」



淳平「・・・。」



綾「ごめんなさい、ひょっとしたら迷惑だったかもしれないね。そりゃぁ

そうよねぇ。いくら昔とはいえ、フった相手にその理由を教えろって言わ

れてるんだもんね。

うん、いいわ、今言ったことは忘れてね、真中くん。」



淳平「いや、東城がそれを知りたいというなら、そしてそれを知ることで

いい方向にむかえるんなら、俺・・・・話すよ。ただ、その、昔の話だから

ちょっと記憶があいまいな所があるかもしれないけど、そこは勘弁な。」


そう言って、淳平が重い口を開けて話し始めた。


[No.1621] 2011/10/30(Sun) 21:13:32
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第13話 「懺悔」 (No.1621への返信 / 13階層) - スタンリー

第13話 「懺悔」


綾は淳平の話を聞いている。



淳平「高校に入ってから東城に文化祭で告白されるまでの間

周りからは、東城は俺に気があるって言われてたけど、俺には

東城の俺への気持ちが告白されるまで確信が持てなかったんだ。

高校時代の俺ってさ、優柔不断で自分に自信がないもんだから

恋愛に妙に臆病になっててさ、それで迷っちゃって・・・。」



淳平「えーと、何から話せばいいのかな。」



綾「真中くんの話しやすい順番でいいからね。」



淳平「最初は、そうだな、高1の時、映像研究部に東城を誘った時

文学部に入ったから、無理って断られて、その理由を尋ねたら、初

めて怒られて1学期の間、ほとんど口を聞かずにいたことかな。

あの時は、てっきり東城は、俺と一緒に映画を作るつもりで同じ高校

に入ってくれたと思ってたから、凄く悲しかったな。

あん時はなんか、理由が分からないまま、俺って謝ってたような記憶

があるんだけど、何故あの時俺に怒っていたかは未だにわかんねぇだ。」



綾「・・・・・。」

綾(あれは確か北大路さんに嫉妬して、あんな態度をとったんだわ。)



淳平「次は・・・、こずえちゃんとデートするように勧めたことかな。」



綾「・・・・・。」


綾(確か、浦沢さんに頼まれて、嫌々勧めたんじゃなかったかな。

あの時真中くんを好きなことを、あの子たちに知られたくなかった

から・・・。)



淳平「大丈夫か。やっぱり話すのをやめようか?気分があまり良い

もんじゃないだろうから。」



綾「ううん、ちょっとその頃のことを思い出していただけだから。

それに、今ではみんな良い思い出だし・・・。お願い、続けてくれる?」



淳平「ああ、そう言うなら・・・。」



淳平「次は、高3の合宿の時に、志望校を俺の行きたかった大学から

他の大学に変えたのを聞いた時かな。もちろん、それが東城のために

なるってことは分かってたけど、その前に同じ大学に行きたいって

言ってくれたのがとても嬉しかったのと、あの合宿中、それを聞くまでは

俺たち良い雰囲気になってたと思ってたから・・・。

実はさ、告白されるかもっていう期待があってさ、その真逆の話をきかさ

れて、その反動がとても大きかったと思うんだ。」




綾「・・・・・」

綾(あれは両親と美鈴ちゃんに言われて、思いつめちゃって、

あんな事を言っちゃったんだわ。)



淳平「最後は、やはり文化祭のカップルイベントに、他の男と

一緒に出るって言ったときかな。あとその日以来、俺のこと避け

てたろう。あれが、決定的だったかも。実は、あの文化祭の前

に西野に告白されてたから・・・。

あの件は、俺の勘違いもあったけど、その男が弟だっていうの

を知ったのは西野と付き合ってからだから。」



綾「・・・・・」

綾(イベントは弟にせがまれてだし、それと避けてたのは部室で

下着をなくしたのがみんなにバレたと思って恥ずかしくて、真中

くんの顔が見れなかったのよね。)



綾「そうだったんだ。あの頃の私って自分の気持ちに素直じゃなかっ

たんだね。うん、真中くん、教えてくれてありがとう。

そこを直せば今度こそ恋人が出来るような気がする。」



淳平「そうか、なら、良かったけど。」


綾(今までの話だと特に私のことが嫌いっていう理由でフられたので

はなくて、消極的な性格とタイミング・・・それと誤解があって

それで・・・。だって高校三年生の時の合宿の時、私からの告白

を期待してたって言ってたし。・・・・もしあの時に好きって言って

たら、もしかしたら私達って・・・。)


淳平「こんな時に言うのもなんだけど、謝りたい事があるんだ。」



綾「えっ、何のこと?私をフったこと?今の話を聞いたからって言うわけ

じゃないけど、気にしてないから。」


綾(あんな、態度をとられたら、私が好きって気付いてくれるわけ

ないし。)



淳平「ちがう、それじゃないんだ。その、俺が西野を選んだのは、その

悪いけど、謝るつもりは無いんだ。

あれは18歳の真中淳平が、あの状況で未熟なりに一生懸命、必死になっ

て選んだ結果だから、あの頃の俺の選択は今でも間違ってたとは思わない。

まぁ、最近になって結局西野にはフラれたんだが・・・。

ちょっと話がそれたけど、俺が謝りたいのは、・・・、あの文化祭の日

告白されて東城の気持ちを知りながら、俺が撮った映画をみてもらうのを

理由に未練がましく会いに行ったり、受験勉強の家庭教師みたいなことを

してもらったことなんだ。

二股をかけたつもりはないんだけど、結果的に気付かないで東城を傷つけ

ちゃったみたいで・・・。ホントごめんな。」



綾「ううん、それは好きでしてあげた事だし、私にとっては、その時、嬉しかった

ことだから、謝る必要なんて全然無いよ。それより、謝るのは私の方なの。」


淳平「謝るって、何を言っているんだ。東城はあの日、俺に謝ったじゃないか。

あれで十分だよ。」



綾「違うの、あれは、あの日までのことを謝ったのであって、あの日以降に

起こったことについては、私謝ってなかったから。」



淳平「あの日以降?東城が何を言っているのか全然分からないよ。」



綾'「あの日の翌日のバレンタインデーに、真中君が西野さんに別れ話を

して、それで、西野さんと空港で別れたのって、ひょっとして私の言動の

せいじゃないかって。」



淳平の頭の中で、祝賀会の日から今までの綾との会話を回想するが、西野

のことを話した記憶がない。



淳平「誰から聞いたかは知らないけど、あれは、東城には関係ないよ。あ

の時はただ西野にしても東城にしても将来に向かって歩みだしてたのに

俺だけなにもしてなくてって言うか、出来なくて、ただ焦ってたんだ。

あの時まだ18だぜ何を焦ってたんだろうな。

だから、気にすんなって。」


綾「・・・・」



淳平「どうも誤解しているようだから話すけど、俺が西野にフられた理由。

聞きたくないかもしれないけど、聞いてくれるかなぁ?。」



綾「うん。」



淳平「あのバレンタインの日、西野が帰ってくるまでに一人前になるって

ことで、関係を白紙にするってことを確かに俺から言ったんだ。それを

西野は優しいから、空港で別れるまでは、恋人でいてくれるって言ってく

れたし、空港で分かれた時もまた会おうと言ってくれたから、てっきり俺

のことをずっと待っていてくれると勝手に思い込んでいた。」



淳平「それでこの前コンクールで賞を取ったのをいい機会に、高校を卒業

してから撮った作品とかを西野に送って、いつ帰ってくるかをさりげなく

手紙で尋ねたら、返信の小包がとどいて、その中の手紙に・・・・。」



綾「何が書いてあったの?」


淳平「手紙にはだいたい“まだ2・3年は日本に帰るつもりはない。確かに

あの日お互い連絡はしないと約束したけど本当に全く、無いのは酷すぎ

ない?前にも淳平君に、待つのは嫌いって言ってあったでしょ、それと私、

待たせるのはもっと嫌いみたい。だから、別れましょう。”とこんなよう

なことが書いてあってさ。」



綾「えっ、でも本人に会って聞いたわけじゃないでしょ?もしからしたら

こちらに来て欲しいってメッセージだったんじゃないの?」



      
淳平「さっき、俺、西野から小包って言ったよな。その小包の中身は俺が

プレゼントで送ったペンダトと指輪と修学旅行の時買ったお守りと・・・

中学の時の制服の第2ボタンが入ってて・・・それで俺は、完全に終わった

って確信した。」



綾「第2ボタンまで・・・・。それじゃぁ、やっぱり・・・。」



淳平「4年間西野のことは全然考えてなかった。まぁ空港で分かれて半年

位は思い出したりしたけど・・・。バイトをしながら、必死になって映画

の勉強をして、専門学校で、映画好きなヤツらと知り合って一緒に映画を

撮るようになって、それが楽しくてさ、夢中になってたんだ。」



綾「でも西野さんを理由に告白してきたコ達を断ったって言ってたよ

ね。」



淳平「断ったのは、本当。ただ、理由は、映画を撮るのが面白くて、恋愛

をするのが面倒だったんだ。ほら、高校時代、振り回されてただろ。それ

で、告白してきたコをあきらめさせるために、西野を利用して・・・。

西野の写真を見せて、今遠距離だけど、恋人がいるっていうとみんな簡単

にあきらめてくれたから、それでな。唯には店のコって言ったけど、実は

その自主映画のスタッフとか女優志望のコとかさ。さっきの沙織もその一

人だったけど・・・。」



綾「・・・」



淳平「コンクールで賞を取ってから、その時まで映画を撮ってた仲間が年

齢的に次々に就職しだして、なかなか一緒に撮れなくなったりして、寂し

くなっちゃってさ。あと目標だった夢への足がかりが出来ちゃって、ちょ

っと気が抜けたみたいなことがあってさ。

急に西野から祝ってもらいたい、褒めてもらいたいと思ってそれで、慌て

て、撮った作品とかを送ったんだ。俺って、最低なヤツだろう、4年以上

もずぅっと西野のことを考えてなくて、告白を断るのに利用をして、いざ

寂しくなったら、思い出したかのように西野って、そりゃぁ、バチもあた

るよな。こんな奴フられて当然だ。」



綾「・・・」

綾(私も真中君と一緒、私も小説の人気が上がってくるのが嬉しくて、

恋愛を避けていたんだし・・。恋人がいない寂しさから、真中くんを今も

求めてる・・・・。)



淳平「俺のフらてた話は、これでおしまい。迷惑だったかもしれないけど

誰にも言えなかったことが言えて、とてもすっきりとしたよ。」



綾「ううん、全然迷惑なんかじゃなかったよ。共感できるところもあった

しね。」



淳平「共感?」



綾「私も、小説を書くのに夢中になってて、恋愛とかを避けてたしね。」



淳平「そうか、そりゃぁ、俺より東城の方が断然にもてそうだしな。

さてと、そろそろ帰ろうかな。」



綾「えっ、もう?」



淳平「そろそろ昼飯の時間だし、良いタイミングだろ。」

淳平がソファーから立ち上がった。



綾「お昼なら、ピザとか宅配を注文するけど。私、まだ話したい

ことがあるし。」



淳平「そうか、でも昼飯はいいから、もう少し話そうか。」


淳平がソファーに腰掛ける。



綾「・・・。」




綾(言わないと、早く言わないと真中君帰っちゃうじゃ

ない・・・・・・・でもまだ勇気が・・・。

もう西野さんのことって、終わったって思っていいんだよね

真中くん


[No.1622] 2011/11/03(Thu) 23:15:00
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第14話 「告白」 (No.1622への返信 / 14階層) - スタンリー

第14話 「告白」

淳平はソファーに座って綾が話し始めるのを待っている。


淳平「・・・。」

淳平(話があるって言ってたのになんで黙ってるんだ?)



淳平の携帯電話からメールの着信音がする。

淳平「悪い。」

淳平が携帯電話を取り出してメールの内容を確認する。


唯から今日の夕方に会う詳しい指定場所と時間が書いてある。

淳平(6時30分に駅かぁ。・・・そうだ、あの事を東城に聞いて

みよう。)



淳平「ちょっと意見を聞きたいんだけど・・・。これ見てくれる?」

淳平が携帯電話にある女性の画像を綾に見せる。



綾「!!!」(さっき、唯ちゃんがメールで送ってきた画像じゃない!)



淳平「実は、今朝、唯から、俺に紹介したい子がいるってメールがあって

実は今日の6時半に駅で、その子と唯と3人で会うんだけどさぁ。

まぁ、画像を見る限り可愛いと思うんだけど、東城はどう思う?

最初はさぁ、唯には悪いけど会っても断ろうと思ったんだけどな。

いや、話してたら俺も西野のことは忘れて東城がいってたみたいに新し

い恋をしたい気分になってきてさ。やっぱり、いつまでも1人じゃ寂しい

からな。」


綾「・・・」

綾が体を微妙に震わせて、


綾「真中くん・・・酷いよ。さっき、私に他の女の子をデートを勧めたの

が、分からないって言ってたのに、また私に他の女の子と付き合ったほう

がいいって言わせたいの?酷すぎるよ。」


綾(わ、わ、私って、逆ギレしてる・・・それに暴言まで。)



淳平「えっ・・・・?」

淳平(酷いって、今俺って何かいけないことって言ったのか?

・・・でもとにかく謝ろう、そして早く帰ったほうがよさそう

気がする。)

淳平には綾の言葉の意味が理解できなかった。



淳平「何か久しぶりに二人きりで会って舞い上がっちゃって調子に

のり過ぎたみたいだな。やっぱ、帰るは。不快な気分にさせて

ごめんな、東城。」

淳平が再度立ち上がる。


綾が淳平に逆ギレしたのを後悔しながら。

綾「お願い、帰らないで、もうあと少しで、あと少しで言いたいことが言

えそうだから、だから、お願いもう少しだけ、帰らないで、そこにいて

お願いだから・・・。」綾が涙声で話す。


淳平(東城、泣いているのか?)


淳平「どうしたんだよ、俺たちまた後で電話でも話せるし、またいつでも

会えるんだから。」



綾「違うの、真中くんがこの部屋を出て行ったら、次会うときは今とは違

う真中くんになっているかもしれないから、

もしそうなっていたら、私、二人ではもう2度とこうして話すことができ

ないと思うから。」



淳平「・・・違う俺って、もう2度とって、さっぱり意味分かんない

よ。」



綾「ここを出た後、そのメールの子と真中くんが付き合う事になったら

私、もう2度と会わないってことなの。」


淳平「付き合ったらって・・・。」


綾「中学、高校時代と西野さんと付き合っている真中くん事を好きになっ

て、とてもつらい思いをしたから・・・。もうあんなつらくて寂しい思い

は絶対したくないから・・・。」



淳平「東城が新しい恋をするって・・・、だから俺は東城に・・・訳

を・・・。新しい恋の相手って・・・?」

淳平(新しい恋の相手って・・・まさか、この俺?それに2度と会わない

って、じゃぁ、あのノートの映画は・・・。)


淳平は軽いパニック状態になる。



綾「そう、新しい恋のお相手は、真中くん、貴方なの。」



淳平「・・・。」

淳平(直林賞受賞作家で、一流大学卒で、社長で、高3の受験の日に、

俺をあきらめて、これで前に進む事ができると言って振り向かずに俺の前

を去って行った東城が本当に?でも俺たち再会してからまだ1週間くらい

しか経ってないんじゃないか?それに俺なんかの何処が?)


淳平「俺たち、まだ再会して、たったの1週間だぜ。」



綾「好きになる気持ちに、時間なんて関係ない・・・。」



綾(私の、真中くんに対する想いを刻む時計はあの時止まったままだ

し・・・。)



淳平「大学時代に恋人がいなかったのは、正直驚いたけど、それだって執

筆活動や勉強が忙しかっただけだろうしその気になれば、俺なんかよりい

い恋人ができたはずだろう。

その、あの時もそうだったけど、俺、分からないんだ、東城が俺なんかの

一体どこがそんなにいいのかって。

俺が西野を求めたように、東城も恋愛を犠牲にして賞をとったあと、周り

をみたら、親しい人も恋人もいなくて、つい寂しくて、それで、再会した

俺のことが懐かしくなって、好きだなんて思っているだけじゃないの

か?」



綾「寂しかった・・・のはその通りかもしれない。再会して懐かしかった

のも、きっとそうかも。

でもね、あの雪の日の公園で振り返らないで別かれた時はああ言ったけど

ね、真中くんへの想いは、あれからも全然変わってないの。あと、大学時

代に知り合いになった男性は確かにいたんだけどね、でも中学3年の時の

屋上での出会い以上だと思える運命的な出会いは一度もなかった

の・・・。」



淳平「・・・」

淳平(あの時から、変わってない・・・。じゃぁ俺は?)



綾「あと、もう少しでいいから、私の話を聞いてくれる、もう少しで終わ

るから、ね、お願い。」



淳平「聞くよ。」

淳平がソファに腰掛ける。


綾「私たち、二人は、このまま、付き合わなくても、きっとお互いにうま

く生活していけると思うの。

私は真中くんなしで頑張って直林賞をもらって、仕事はこれからは、もっ

と忙しくなると思うし、真中くんはきっと、私の脚本がなくても将来一流

の映画監督になって良い映画を作っていけると思う・・・。」


淳平「東城はそうかもしれないけど、俺なんてまだ業界の人間しか知らな

い賞を取っただけだし、それにまだ今は無職なんだぜ。それなのに東城の

言う一流の映画監督なんて成れるかなんて分かんないって。」



綾「ううん、私、真中くんの映画を見て思ったの、私の脚本なしであんな

にいい作品が出来るのは寂しい、ううん、悔しいけど、絶対真中くんは私

なしで立派な映画監督になれるって。」



淳平「・・・・。」



綾「だから、もしここでまた別れて、この先何年か何十年かかるか分

からないけど、真中くんが立派な映画監督になれたときに私の小説で映画

を撮ってくれるかもしれない。

でも私は、それだけじゃ嫌なの。その、私は・・・真中くんが好きだか

ら・・・真中くんの近くで映画を今すぐにでも作りたいの。

ううん、ちがう、本当は、映画なんてどうでもいい、私は、今真中くんと

いたいの・・・。それで、今日のこの機会を逃したら、といってもこのタ

イミングで告白するのが良い事なのかは分からないけど、でも今しないと

必ず後悔すると思うから・・・。」



淳平「もう一度言うけど、今は無職でただのアルバイトだぜ、この先だっ

て映画監督になれるかなんかも分からないんだぜ。」



綾「もうそんなの、関係ない、私は真中くんがいいの。真中くんじゃない

とダメなの。」



淳平(こんな、駄々っ子みたいな東城って初めて見たな・・・っていうか

感情を外に出すタイプじゃなかったはずだけど・・・。)


淳平「お願いだから、少し考えさせてくれ。」



綾が無言で頷く。


[No.1623] 2011/11/05(Sat) 21:42:46
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第15話 「White Light」 (No.1623への返信 / 15階層) - スタンリー

第15話 「White Light」



綾が淳平の返事を待っている。

淳平がコップのお茶を飲もうと口に近づけた時、お茶がないのに気づく。


綾「お茶、入れ替えてくるね。」


淳平「ああ、ありがとう。」


淳平が綾にコップを手渡すと応接室から出て行く。


淳平がソファの背もたれにくつろぎながら頭の中で自問、自答している。

淳平(見た目は?

化粧のせいもあるけど、あの頃と比べて綺麗になってる。

いや、見た目とか容姿は関係ないんだ。

じゃぁ、俺にとって東城って・・・同じ夢を共有することができる友人い

や・・・“初恋の人!”卒業してからは、


東城といえば映画や小説のことしか頭になかったから忘れていたけど、そ

うだ、東城は俺の初恋の人だったんだ。


もし、中3の時、勘違いしないで西野じゃなく東城に告白していた

ら・・・、高3の時、もし東城の告白が西野より前だったら、もしあの雪

の日の公園で振り向いてくれてたら、俺はどちらを・・・。)




淳平の心に、東城と出会った中学3年から別れた高校3年までの間、綾

を好きだった想いが込み上げてくる。


淳平(じゃぁ、俺は東城が好きなのか?

高校時代は、西野に負けない位好きだった。分かれたのも嫌いという理由

じゃない、勘違いやタイミングといろいろ悪いことが重なった結果ああ

なったからであって・・・・・。

もし、仮に付き合うとことになったとして無職の俺なんかと超有名な売れ

っ子作家の東城とじゃぁ、価値観も相当違うだろうし、他人の目から見て

も釣り合いが取れてないんじゃないのか。それに俺にはつかさのこと

が・・・。)

淳平が高校一年生の冬につかさにフられた時のことを思い出す。


淳平(あの時と同じだ。つかさは俺と釣り合うとか考えてたんじゃなくて

・・・。何のとりえもない俺なんかのことを好きで、ただ一緒にいたいと

思ってていてくれたのに、それを釣り合うはずもないのに俺は背伸びして

無理して疲れて疎遠になって・・・同じ過ちをしちゃいけないだろう。

それに・・・・東城はここにいるけど、もうつかさは、ここにはいなんだぜ。

それに、あの頃、東城がいれば何でも出来るって思っていたじゃないか。

確か、一時期、同棲までしたいと思っていたこともあった・・・。それに

今でも一緒に映画を作りたいって言ってくれているんだぜ。

俺も新しい恋がしたいって、ついさっき自分で言てったじゃないか。

それなのに俺は何を迷ってるんだよ。

もう答えが出ているじゃないのか。俺も東城のことが・・・。)


綾が応接室のドアを開けてお茶の入ったコップをテーブルに置くと同時に

突然、淳平の携帯電話に着信がある。



その着信の相手が誰かを確認して、淳平がある決心をする。



淳平「ちょっと、悪い。」



淳平が携帯電話にでる。



綾(誰からなの?告白されて、考えている途中で普通電話になんか、でな

いんじゃない?

またフられるのかも。あっ、また涙が出てきちゃった。拭かないと。)



淳平「おう、淳平だけど。どうした、唯?・・・・・・・・・えっ、東城

にもメールを?・・・場所?」


淳平(そうか、それで東城が焦って、さっき告白を・・・。)



綾はうつむいて淳平と唯の会話(電話での会話のため淳平の話している部

分だけ)を涙を堪えながら聞いている。



綾(唯ちゃんからなの、あとメールって、じゃぁ、唯ちゃんの後輩と会う

話?真中君はどうするつもりなの?)


唯「さっきメールを送ったでしょ。返事が来ないから確認の電話だけ

ど。」


淳平「ごめん、俺、今日行けそうに無いわ。ドタキャンして悪いけど

後輩の子に謝っておいてくないかなぁ?」


綾(えっ、行かないの?)



唯「ドタキャンって・・・なんか急用でもできたの、じゃぁ次会える日っ

て・・・。」


淳平「次って?次は無いよ。俺、好きな子ができたから。それで今その子

と付き合うことにしたから。」



唯「うそっ!それってじゅんぺいに恋人が・・・ってこと?」


淳平「そう俺に新しい恋人が出来たってこと。」



綾(それって私のこと・・・。)



綾が淳平の顔を見る。



淳平が笑顔で綾の顔を見ている。


綾も笑顔になる・・・が今度はさっきと違う理由で涙があふれる。

唯「それってお店のコじゃないの。あんた昔ストーカーとかに付きまとわ

れて困って時のことを忘れたんじゃいよねぇ。」



淳平「違うよ、お店のコじゃないって。


唯「じゃぁ誰よ。」


淳平「誰かって?唯もよく知ってるコだけど・・・また今度教えるよ。」


唯「何よ・・・そんな言い方したら気になるじゃない。今すぐ教えなさい

よ。」


淳平「今すぐって。分かったよ、じゃぁ、そのコと代わるよ。今、目の前

にいるから。」



淳平「わりい、唯のやつ、どうしても誰か知りたいって、うるさいから

さ。」と小声で言って淳平の携帯を綾に手渡す。



綾「えっ、真中くん、あ、ちょっと。」

突然電話を渡されて慌てながら応対する。



綾「あの、もしもし」



唯「もしもし、あの、あなたがじゅんぺいの新しい恋人さんですか。

私はじゅんぺいの友達の唯って言いますけど。

じゅんぺいって最近女の子にフられて、寂しくなってて、ちょっとおかし

いですから・・・って、あれ貴女の声ってなんか聞き覚えがあるんですけ

ど、貴女は誰なんですか?」



綾「もしもし、唯ちゃん、私、東城ですけど。」



唯「えっ、東城さん!?あぁっ、じゅんぺいのやつ、東城さんを使って私

をからかってるなぁ。東城さんのことをじゅんぺいの恋人だなんて・・・。

ちょっと、聞いてよ、東城さん。今朝送ったメールの子を紹介するという

ことで待ち合わせの日時の確認をしようと思ってじゅんぺいに電話をした

ら、ドタキャンするって言うし、その理由が今、恋人が出来たからって

それもその恋人に代わるからって言ったから、誰かと思えば、それが東城

さんだなんて、ちょっと、ふざけてると思いませんか?東城さん、じゅん

ぺいと代わってよ、文句を言ってやるから。」



綾「ううん、唯ちゃん、真中くんは嘘を言ってないよ。私、今日から、真

中くんと付き合うことになったんだからね。」



唯「だからぁ、冗談はいいから・・・、それとも二人して私をからかって

るわけぇ?」と少し感情的になる。



綾「だから、私は真中くんと本当に恋人として・・・。」



綾(困ったなぁ、どうすれば信じてもらえるの?)と思いながら、前を見

ると淳平が笑いをこらえている。


綾(真中くんったら、私が困っているのを見て楽しんでるみたい。)



真中「俺から話すから。」といって手を伸ばす。



綾「あのぉ、唯ちゃん、真中くんに代わるね。」と言って携帯を手渡す。



淳平「唯、実は今日俺が東城の家に行って、俺の方から告ったんだ。」


綾(真中くん、私のことを気づかってくれて・・・優しいんだね。)



唯「本当に本当なの?東城さんが相手なら、文句がないけど・・・って言

うよりじゅんぺいには勿体無いくらいじゃない。」



淳平「詳しい話はまた後で、教えるから。ホント今日は悪いことをしてゴ

メンな。この埋め合わせは絶対するから。」



唯「じゅんぺいが幸せになれるならいいけど、でも埋め合わせはしっかり

してもらうからね。じゃぁ二人の、邪魔しちゃ悪いからきるね。東城さん

によろしくね。」



淳平「ああ、じゃあな。」と言って携帯を閉じた。


綾が淳平を見て。


綾「真中君、本当に私でいいの?」



淳平「東城こそ、本当に俺でいいのか?」



綾「・・・」無言で頷く。



淳平「じゃぁ、俺も・・・。」無言で頷く。



淳平「これで夕方に唯たちと会う約束も無くなった事だし、帰るのを止め

て、ゆっくり東城先生の小説でも読ましてもらおうかな。

あっ、そう言えば飯の時間だったな。

なぁ、ピザより東城の手作り料理とかの方がいいんだけど・・・。」



綾「ごめんなさい、料理とか余りしたこと無いから。それに今日は母

が外出してて、ピザの宅配か出前で済まそうと思ってたから・・・。」



淳平「えっ、東城って料理とかしないのか?俺、付き合うの、早まったか

なぁ。」



綾「子供の頃から今まで、ずぅっと家にいて母がみんなやってくれてたし

それに小説を書くのに忙しかったから・・・。」


綾(私って、なんで、料理の勉強をしなかったの。西野さんは洋菓子を美

味しく作るくらいだから、きっと料理とかも上手に決まってるわ。真中く

んだって私と付き合うのを後悔しているじゃない。)



淳平「冗談だよ、そんなに気にする事ないよ。ただ、東城の手料理を食べ

たかったのは本当だけど、そんなのやればすぐにできるだろうからさ。

ちょっと恋人気取りってヤツをやってみたかっただけだから気にすんなっ

て。」



綾「冗談だったの。・・・じゃぁ今日はピザでいい?」



淳平「ああ、東城の好きなのでいいから。あっ、俺辛いのダメだから、そ

れは止めてくれよ。」



綾「うん、私も苦手だからね。ピザ屋さんのメニューが、キッチンにある

から、ちょっと、注文してくるね。」と言って綾が応接間から出た。



一方、淳平と携帯電話で話した後、唯は自宅で淳平と綾のことについて考

えていた。


唯(じゅんぺいから東城さんに告ったて言ってたけど・・・もし、そうだ

としたら、今日の夕方、私の紹介した女の子に会うなんて言わないよね。

ミキちゃんを東城さんに振られた時の為の保険にして告白・・・って私の

知っているじゅんぺいはそんなことするはずないから・・・という事は東

城さんの方から・・・えっ、ひょっとして、東城さんの片思いの相手って

じゅんぺいのことだったの?そうだとしたら私って、東城さんに色々じゅ

んぺいのことを話したような気がする・・・。)と思っていたら、今朝

綾に送ったメールの返信がきた。


唯「あっ、東城さんからだ。」

唯「えーと、「唯ちゃん、メールをありがとう。このメールのおかげで、

真中君の彼女になることができました。

賢い唯ちゃんのことだから、もう分かっていると思うけど、私の片思いの

相手は真中くんでした。それと告白したのも彼からじゃなくて、私からな

の・・・。きっとその事も賢い唯ちゃんのことだから、気付いているよね。

真中くんって、嘘をつくのが下手だから。詳しい話はまた、3人で会った

ときにしましょう。


それまでは、彼の嘘に騙されているフリをしていてあげてね。じゃぁ、唯

ちゃん、またね。 東城」



唯(私って、あの二人の恋のキューピットってことじゃない?それで二人

が幸せになれたんだったら私も嬉しいし。


うん、東城さん、分かったよ、唯は大女優だから、うまく騙されておくか

ら心配しないでね・・・。片思いの恋が実ってよかったね、東城さ

ん・・・。おめでとう、じゅんぺい。)



唯(さぁ、今からミキちゃんに謝りの電話を入れるかぁ。)


唯が携帯電話で大学の後輩に電話をする。


唯「あ、もしもしミキちゃん、私、唯、実はさぁ。今日の約束キャンセル

になっちゃって、ホントごめんなさいね。

お勧めしておいて悪いんだけど、あんなヤツの事はもういいから、他に良

い男がいるから、また今度紹介するからね。」


[No.1624] 2011/11/13(Sun) 20:37:11
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第16話「あの日の果実」 (No.1624への返信 / 16階層) - スタンリー

16話「あの日の果実」


綾が唯にメールを送信後にピザを注文して、自室に戻り化粧を直して、書類を

持って応接室に入る。

淳平「だいぶ、時間がかかったみたいだけど、どうかしたの?」


綾「ほら、さっきちょっと泣いちゃったから、お部屋に行ってお化粧を直してたの。」


淳平「そうか・・・・」

淳平(大人になると女の子って大変だなぁ。)



綾「ところで、その小説はどう?」



淳平「とてもいい作品だと思うよ。」



綾「その他に今、連載中で雑誌に未掲載分のもあるけど、続きは読みたくない?」



淳平「えぇっ、本当にいいの?実は、今月号の続きが気になってて・・・・あっ!」




綾「あれ、真中くんって、私の小説が載ってる雑誌って買ったこと無いって言って

なかった?」


綾が笑って淳平の顔を見る。



淳平「いやぁ、あの。」



綾「どうかしたの?本内さん。」

笑いながら淳平に尋ねる。



淳平「えっ・・・・。」




綾「私、知ってるのよ。真中くんが毎月欠かさず私の小説が載っている

雑誌を買ってくれてるって事も、本内という偽名を使って私にファンレ

ターを送ってくれてた事もね。」



淳平「なんだ、バレてたのか。でもどうして分かっちゃったのかなぁ。」



綾「この前電話した時ね、真中くんのお母さんが私に、真中くんが毎月

私の雑誌を買ってるって教えてくれたの。

あと偽名は、コンクールのDVDと一緒に入っていた真中くんのメモの

筆跡と本内さんのファンレターの筆跡が全く一緒だったからなの。

それと昨日、真中くんの親友でもあり、唯ちゃんの彼氏の名前が本内さんっ

て分かったしね。」



淳平「名探偵東城って感じだな。推理小説家としてもやっていけそうだ。」



綾「そう?機会があれば、挑戦してみようかしら。」



綾「ところで、恋愛が面倒とか映画を撮るのに夢中になってて西野さんの

ことは4年も忘れていたとか言っていたのに、どうして偽名まで使って私

には手紙を書いてくれてたの?」



淳平「西野には俺の方から会わないって言っちゃった手前、手紙を送るわけ

にもいかなくてさ・・・。」



淳平「あの手紙は、その、恋愛とか好きとかじゃなくて純粋に東城を応援

してっていうか・・・・・・・東城とは、その、東城の小説で映画を作る

という夢があるから、仕事ぶりが気になってさ。一方通行でもいいから

関わりあっておきたかったんだ。それに、どんな形でもいいから役に立ち

たいとも思っていたし・・・。

ただあんな別れ方をしたから、俺の名前で書いたら、読んでくれないかも

しれないと思ってさ。それで偽名を・・・。」



綾「私、さっき真中くんなしで、賞をとったって言ったけど、真中くんの

おかげで、賞がとれたんだと思う。本当にあのファンレターのおかげで

頑張れたんだもん。」



淳平「俺も、東城のノートのおかげで、ここまで頑張れたようなもんだから、

お互い様かもな。」



綾「ううん、私は高校を卒業してから、真中くんには何もして上げられなかっ

たから。」



淳平「そんなことないって。東城が卒業後に書いた小説も、凄い励みになった

んだぜ。

東城も頑張っているんだから、俺も頑張らなきゃって感じでさぁ。だから、

一緒だって。」



綾「うん、お互い助け合って頑張れたんだね。」



インターホンの呼び出し音がする。



綾「ピザの宅配がきたみたいね、取りに行ってくるから。悪いけど、ダイニングの

方へ行っててくれる?」



淳平「分かった。じゃぁピザを食べながら、恋ネタの一切ない寂しかった学生時代

の話でもするか。」


綾「うふふ、そうね。すぐ行くから待っててね。」



二人で応接室を出た。
























ダイニングで昼食を終えた後、淳平は応接室に戻り、雑誌の未掲載分の小説を読んでいる。

綾は歯を磨いた後で、自室によりノートPCを持って応接室に入り淳平の正面でノートPC

を使い小説を執筆している。

午後4時に綾が2人分のコーヒーとショートケーキを持ってきてテーブルの上に置きまた

執筆している。

部屋の中は、さっきの告白のときの重い空気とは対照的にどこか暖かい雰囲気のなか、綾の

キーボードを打つ音と、置時計の針の音と、時々淳平が小説のページをめくる音だけする。

ただ綾がストーリーを考えている間、キーボードを打つ手を休めているので、綾の耳に秒針

の音だけが聞こえてくる。


綾は心地良い雰囲気のなか、好きな人と同じ時間と同じ空間を共有しながら、幸せな気分

に浸っている。



綾(この置時計の針の音を聞いていると、まるで、今まで止まっていた真中くんへの想いを刻

む時計の針が動きだしたみたいな感じがする。)



淳平が綾のキーボードを打つ音が長時間止まっているのに気付いた。

淳平「執筆は終わったのか?なんか、ぼぉっとしてるみたいだけど。」



綾「ううん、ちょっと、考え事をね。今、手を休めてた時にね、時計の秒針の音を聞い

てたら、何だか高校3年の冬に別れた時から止まってた、私と真中くんの時間を刻む

時計が動き出したみたいな感じがしてね。それで、ちょっと幸せな気分に浸っていたの。」



淳平「あの分かれた日に俺達二人の関係は止まっていたからな。そんな表現がパッと出て

くるなんてさ、さすが小説家だな。」



綾「そう?でも、この時計は私たちの夢への到達までの時間を刻むものでもあるし、別れ

へのカウントダウンを刻むものでもあるわね。」



淳平「別れへのカウントダウンか・・・確かに出会いがあれば、必ず別れがあるからな。

でも今日からつきあうことになったばかりなのに「別れ」って余り縁起のいい話じゃないな。」



綾「そうね。ちょっと、タイミング的にあまり良くない話だったわね。ごめんなさい。」

綾(私って、ちょっと褒められたからって、調子に乗って余計なことを・・・。)



淳平「別に、いいよ。それよりもっと俺たちのこれからの事について考えないか?」



綾「例えば?」



淳平「そうだなぁ・・。例えば、俺にこうして欲しいとか、ここは直して欲しいとか

私はこうしたいとか、二人でこうしたいとか、別に、何でもかまわないんだ。」



綾「告白する事で頭が一杯だったから、恋人になってからの事は全然考える余裕が

なかったの。だから真中くんから先に言ってみて。」



淳平「そうか。でも余り深く考えることもないんだけどな。ただ、俺も突然の告白だっ

たから・・・。

でも俺が言い出したことだから少し考えるよ。」



綾「うん、分かった。」



綾は、またキーボードを打鍵し始めた。




淳平は二人でこれからどうしたいかについて考えている。


淳平(東城に、直して欲しいとか、こうして欲しいとかは、さっき、告白される

前にフッた訳とカブるからもう特にないし・・・。)



淳平(映画とか小説の話は、この前の祝賀会でしたしなぁ。これから暇な時は一緒

に映画を見に行ったりデートをしたいっていうのも、あえて上げる必要もないだろし。)



淳平の考えは次第に本題からはなれ、少し不埒な妄想に変わっていった。



淳平(そりゃぁ、俺だって男だし、こんなきれいな恋人ができたんだから、あんな

ことやこんなことをしてみたいけど、さすがに付き合うことになった初日にそんな

話をしたら、おかしいよなぁ。でもキスくらいだったら・・・それも今って

・・・昼飯ってピザだったじゃん。東城は食後にハミガキをしたからいいけど・・・。

キスしたいからハミガキがしたいなんてことは絶対言えないし・・・。あっ、ガムなら

ポケットにあった・・・・といっても東城がキスをOKしてくれるとは限らないし・・・。

でも俺って、寝ている間に東城にキスされたことがあったっけ。だから拒まれる事はまず

ないと思うけど・・・でもムードって大切だよな・・・って、こんなこと考えてたら、ああ

なんか今すぐにでも東城と無茶苦茶キスがしたくなってきた。)



淳平が、ふとテーブルの上のケーキの上にある果物をみて・・・



淳平(「いちご・・・・・・・・・ぱんつ」)



淳平「そうだ。」



綾が少し驚いて。

綾「えっ、どうしたの急に大きな声をだして?」



淳平「あっ、ごめん、今からちょっと一緒に行きたい所があるんだけど、大丈夫か?」



綾「えっ、行きたい所って何処?」



淳平「一緒に行けば分かるって。今4時半位だし、今日は日曜日できっと誰もいないはず

だから。」

淳平が読んでいた小説をまとめて、テーブルの上に置き、立ち上がる。



綾「えっ、今から?いいけど・・・・。これって、さっきの話と関係があるの?」



淳平「いや、ちょっと従兄弟に頼まれてたことがあってちょっと手伝って欲しいんだ。」



綾(お手伝い?)



綾「じゃぁ、ちょっと着替えてくるから待ってて。」



淳平「別に格好なんていいから、すぐに行こうぜ。」




綾「そう?じゃあ、行くね。」と言って立ち上がる。
    ・
    ・
    ・
    ・
二人は家から外に出て歩いていた。(何故か、淳平だけはガムを噛んでいる。)



二人の歩いているその道は、綾が過去3年、晴れの日も、雨の日も、雪の日も歩いた道だった。


[No.1625] 2011/12/03(Sat) 20:35:07
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第17話 「Forgiveness」 (No.1625への返信 / 17階層) - スタンリー

第17話 「Forgiveness」



夕方、二人は誰もいない泉坂中学のグランドにいる。


淳平「従兄弟夫婦に、今度の休みに運動会があるっていうことで

子供たちの頑張っている姿をビデオで撮って欲しいって頼まれてさ。

もちろんバイト代が出るんだけどな。」


淳平が競争で学生達が走ってくる位置を想定しながら、撮影できる位置を

確認している。


淳平「この辺を走ってくるだろうから、う〜ん、ここかなぁ。」


綾(中学の運動会って親たちって観に来てたかなぁ。

あれから5年近くたってるから変わったのかも。)


淳平「親って大変だよなぁ。イベントがあるごとにこんなことを

やんないといけないからさぁ。聞いたら撮影の場所取りで朝4時起きらしい

ぜ。」


綾「可愛い子供のためなんだからしようがないんじゃないの。」


淳平「そうかなぁ。まぁ俺は映像を撮ることが好きだから苦じゃないけどさ。

撮ったあとで編集するのも、なんか楽しそうだしさ。」



綾「そうね。」



淳平「ここがよさそうだな。」


淳平が鉄棒のあたりに立ち指でファインダーの形を作りグランドのほうを

向いている。


淳平「こう走ってくるから、え〜っと、悪いけどグランド側を向いてここに

立っててもらっていいかなぁ。」


綾「ここで?」


淳平「そう、鉄棒の向こう側。」



綾が指定された場所に移動する。


淳平がグランドのほうへ歩きながら。

淳平「一度、走っている生徒目線でどうか確認したいからそこに立ってて

欲しいんだ。」




淳平が綾が立っているところから30mくらい離れた位置からトラックの線に

沿って綾に向かって走ってくる。



淳平が東城のいる所から5m位の地点で突然叫び、さらに加速する。



淳平「東城綾さぁ〜〜〜〜〜ん。好きだぁ〜〜〜〜〜っ。」と言ってジャンプして

鉄棒のバーを両手で掴む。


鉄棒にぶら下がった状態で綾に向かって淳平が叫ぶ。


淳平「高校時代は、すれ違ってばかりいたけど、自分に自身がなくて貴女の想い

に気付いてあげられなかったけど、すれ違いや勘違いもあったけど、あと卒業

後4年以上会えなかったけど・・・・。」


淳平がぶら下がった状態から腕に力を入れて上半身を鉄棒のバーの上に乗せて大声で。



淳平「貴女は・・・貴女は、俺にとって永遠に初恋の人です。俺の恋人になって下

さい。」


綾(えっ、嘘っ、私が真中くんの初恋の人?じゃぁ、私達って・・・・。)『トクン。』


綾に向かって叫んだ後、綾の前に着地する。

淳平「ハァ、ハァ、ハァ、さっき、先に告白されてるけど、本来ならずぅっと前に俺

から東城にするべきことだから。

ハア、ハア、それで返事は?」


淳平は息を切らしながら、綾の返事を待つ。



目に涙をため微妙に震えながら綾が応える。


綾「・・・ハイ、時々、意味不明な態度をとったりして、真中くんを悩ませたり、まだ

料理とか出来ないから、美味しい手料理を作って上げれないけど・・・・、こんな

不束で未熟者ですが、よろしくお願いします。」


淳平「東城。」


淳平が綾を抱きしめる。


綾「あっ、真中・・・くん。」『トクン、トクン、トクン。』


綾も淳平を抱きしめる。

淳平「これだよ。女ノコは感動で目に涙をためるんだ。」



綾「え?」


淳平「西野の時は、大爆笑されから。」


綾「じゃぁ、この後って二人はどうするの。」


淳平「しー。黙ってて。」


夕焼けをバックに誰もいないグランドで二人で互いに顔を見つめあう。

そして淳平が瞳を閉じてやや首を斜めに傾けながら、唇を綾の唇に近づけ

ようとする。



綾(えっ、ひょっとして、キス・・・?えっどうしたらいいの、あっ、とり

あえず目をとじないと・・・。)



綾も瞳を閉じる、そしてお互いの柔らかい唇が触れ合う。

お互いの唇に軽い圧力がかかる。



綾(あぁ神様、感謝します、真中くんとキスすることができて・・・・私は許

されたのですね。)

綾は高3の時、恋人のいる異性の唇を無断で奪ったことに対する罰から解放され

たと思い嬉しくなる。


綾の頬をうれし涙がつたっている。


それから二人はその場でお互い顔の角度を変えながら3度キスをし、離れる。


綾はキスの余韻に浸っていて、ぼぉーっとしている。



淳平「なぁ、そろそろ、帰ろうか。」



綾が顔を赤めながら・・・。


綾「・・・うん。」と頷く。


二人は手をつなぎ、夕焼けの母校を後にして、綾の家へ向かい歩き出した。


[No.1626] 2011/12/03(Sat) 21:19:08
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第18話 「Silent  Jealousy」 (No.1626への返信 / 18階層) - スタンリー

第18話 「Silent  Jealousy」


夕暮れの母校からの帰り道、綾が淳平に話しかけた。


綾「真中くん、あのね、さっき家で話してたことなんだけどね。」



淳平「ああ、二人のこれからの話のこと?」



綾「うん、あの真中くんにこうしもらいたいって事なんだけどね。

お願いがあるの。ただ、ちょっと話しにくいことなんだけどね。」



淳平「遠慮なんかしないで、なんでも言ってくれていいんだぜ。」



綾「じゃぁ、言うね。あのぉ、気を悪くしないでもらいたいんだ

けど、その、夜のアルバイトなんだけど、辞めるわけにはいかな

いかなって・・・。」



淳平「えっ、あの仕事かぁ。そりゃぁ、有名一流作家の彼氏が

キャバクラのボーイなんてみっともないからな。」



綾「ううん、みっともないとか、そんな理由じゃないの

ただ・・・・。」



淳平が少し感情的になりながら。

淳平「みっともなきゃ、他にどんな理由があるんだよ。」


綾「それは、ちょっと言い辛くて・・・・。」



淳平「東城って、仕事で人を判断するような人だとは、

思わなかったから正直言ってショックだな。」


綾も少し感情的になって。

綾「だから、さっきからそんな理由じゃないって、言ってる

じゃない。もういい、真中くんに私の気持ちなんて分かる

はずない。」


綾が怒って、つないでいた手を離して歩き出す。



淳平「怒ったのか?悪かったゴメン。」


淳平が少し早足で綾を追いかける。


綾「もう知らない。」

綾も少し膨れっ面になりながら早足で歩きだす。


淳平(東城にマジで怒られたのは高1の時、映研

に誘った時以来2回目だな。)


淳平が立ち止まって、ポツリと言う。


淳平「あの時と同じだな・・・。」



綾が立ち止まる。

綾「あの時・・・・って?」



淳平「俺が高1の時映研に誘った時のことだよ。結局、怒っ

ている理由が分からないまま、ただ謝ってさ・・・。

また今回も俺が悪いとは思うんだけど・・・・その、俺って

この歳になってもあの時みたいに、気持ちが分からなくてさ

全然成長してないみたいだな。」



綾「私の方こそ、・・・ごめんなさい。さっき、告白前に私の

ことが分からないって言ってくれてたのに、まだ同じ態度を

とっちゃって。」



綾「じゃぁ、あのアルバイトを止めて欲しい理由を話すね。

・・・笑わないで欲しいんだけどね。
真中くんが私の知らないお店のコ達と、緒にいるのがね嫌

だったの。それに、車で送るっていうのも・・・嫌なの。

もちろんお仕事だって事は分かってるんだけどね。

さっき付き合うことになったばかりで自分にまだ自信がない

から、ちょっぴり不安になっちゃってね、それでね。」



淳平「そうかぁ、それでかぁ。それを俺は勝手に勘違いをして

気まずい思いをさせて。ホント悪かった。」



綾「ううん、私が恥ずかしがってて、素直じゃなかったの

がいけないの。」



淳平「本当は、決まるまで誰にも言わないでおこうと思ってたこと

だけどさ。この前喫茶店にいた時、角倉さんから電話があったろう。

再来週の水曜日に、角倉さんのところの事務所の面接を受ける事に

なってるんだ。」



綾「就職するの?」



淳平「まだ、面接前だから、決まった訳じゃないけどな。でももし

決まれば夜のだけじゃなくてさ、バイトは全部辞めるつもりなんだ。

バイト先にはもう話してあるんだ。ただ角倉さんには、高3の時の映画

の件があるから、期待していると採ってくれないかもしれないから。」



綾「でも流石に今回は無いんじゃないの?」



淳平「東城は知らないかもしれないけど、今映画だけじゃなく映像

関係はこの不景気のあおりをモロに受けて、何処も厳しいらしい。

不景気になると、企業が宣伝・広告にお金を使わないようになる

らしくてスポンサー探しが難しいって角倉さんが言ってた。」



綾「そういえば、雑誌の担当の人が出版業界もスポンサー探しが難

しいって言ってたわ。どこの業界も大変なんだね。」


淳平「ああ。でも就職できるかどうかに係わらず係わらず夜の

バイトは止める」



綾「本当にいいの?」


淳平「いいって。収入は減るけど、その分夜、会えるからさ。」



綾「嬉しい。でも絶対就職できるよ。



淳平「それでさぁ、今思いついたんだけど、俺と一緒に面接用の

スーツを買いに行くのに付き合ってくれないかなぁ。

俺って成人式の時にスーツを作ったきりでさ、体が大きくなって

着れなくなっちゃってさ。

角倉さんの話がなくてもこれから面接の時に要ると思って本当は

唯の服を買う時一緒に買おうと思ってたんだけど、あの時思った

より、服が高くてさ、スーツを買うお金が足りなく無くなっちゃっ

たんだ。

それで月・火はバイトがあるから水曜日に買いに行きたいなって思っ

てるけど、どうかな?」



綾(一緒にショッピングに行こうってことだよね。)



綾「偶然水曜の午後に注文した服をデパートに取りにいくから

その時にスーツを買いに行くっていうのはどう?」



淳平「いいぜ、午後なら・・・じゃぁ2時に家へ車で迎えにいくよ。

それで買物のあとに、できたら夕飯を一緒にしたいんだけど。」



綾(これってデート?)

綾「うん、分かった。じゃぁ、2時に私の家でね。」


また二人は手をつなぎ歩き出した。

しばらく歩くと、綾の家が近づいてくる。



綾「この後何か予定ってあるの?」
+

淳平「別にないけど。東城は?」



綾「私もないから、家に来る?ただ、両親が家にいると思

うけど。」



淳平「お母さんたちって・・・そうかぁ。」



綾が淳平を気持ちを察して。


綾「私の家はすぐそこだから、ここでいいわ。

送ってくれてありがとう。

水曜日までに二人のこれからについて考えておくからね。」



淳平「えっ?ああ、それよりも今朝渡した俺の作品のことも

忘れないでくれよな。」



綾「すっかり忘れてた。」



淳平「今日の本来の目的はそれなんだからさ。でも無理は

しないでいいから、じゃぁ、またな。」



綾「うん、さようなら。後で電話するね。」



淳平「いつでもいいから。」


淳平は自分の家へ向かい歩き出した。



綾は淳平の後ろ姿を見送ると、幸せな気分で家に帰った。


[No.1627] 2012/01/15(Sun) 20:53:36
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第19話「幸福な時間」 (No.1627への返信 / 19階層) - スタンリー

第19話「幸福な時間」


綾が家に入ると両親は既に帰宅している。


綾「ただいま。」


綾の母「おかえりなさい、どこかへ行ってたの?」



綾「うん、高校時代の友達とちょっとね。」



綾の母「そう、ところで、応接室にカップとお皿がそのまま

になってるみたいだから、ちゃんと片付けておいてね。」



綾「すぐに片付けるね。」



綾の母「じゃぁ、後片付けが終わったら、夕食にしましょう。」



綾「うん。」



綾が応接間の後片付けをしている。

綾は幸せな気分に浸りながら、今日の出来事を思い出している。

綾(今日、ここで私たちは恋人になれたんだ・・・。

高校3年の冬、勉強疲れで寝ていた真中くんに勝手にキス

しちゃってとても苦しい想いをしていてたのに・・・さっき

キスしっちゃったんだ・・・それも真中くんの方から・・・。

片思いで罪悪感がのこるキスと両思いのキスではやっぱり違う。

あの時は実らない恋だと思ってあきらめてたけどまさか今日

実るなんて私って、今凄く幸せ・・・。)



綾は幸せな気分に浸りながら、これからのことを考えている。


綾(これからのことかぁ・・・・。とりあえず、お互いの呼び方を

替えたいな。

やっぱり「あや」って呼んでもらいたいけど、真中くんはどう思っ

ているいのかな。

それと真中くんはどう呼んでもらいたいんだろう。

私が「あや」ならやっぱり「じゅんぺい 」かな。

でも、まだ最初は照れて「じゅんぺいくん」とか「じゅんくん」かな。)



綾(もし彼が就職するんだったら、土曜・日曜日はきっとオフのはず

だよね。

出来るだけ執筆とか講演等の仕事は避けるようにしないと・・・。)



綾(そういえば、真中くんと付き合う事になったことを美鈴ちゃんに

伝えないと。

こうなれたのも彼女が祝賀会を開いて真中くんと再会できたおかげだし

西野さんと別れたのを教えてくれたおかげだから・・・。)



キッチンから内線が入り綾が受話器をとる。



綾の母「綾ちゃん。もう夕飯の準備が出来たけど、まだ、お片づけに

時間がかかりそう?」



綾「うん、あとちょっとで終わるから、先に食べてて。」




綾の母「分かったけど、冷めちゃうから早くきてね。」


綾が受話器を戻す。



綾が小説とノートPCを自室に運んだ後に、お盆にケーキのお皿と

カップを載せててキッチンへ行った。



綾の母「もう、遅いから、お父さん、食べ終わってお風呂に入っ

ちゃったじゃない。」



綾「ちょっと時間がかかっちゃって。」



綾の母「まぁ、いいわ、お料理が冷めちゃうといけないから早

く座って、食べてね。」



綾「うん、ところで、今日は何を買ってきたの?」



綾の母「お父さんのスーツを買いにいってたの。」



綾「そうなんだ、スーツを買いに・・・!ねぇ、お母さん、スーツ

を買ったんだったら何か、お店からディスカントのクーポンとか貰

わなかった?」



綾の母「別にもらわなかったけど・・・。ただお店からのダイレクト

メールには何かついてたみたいだけど・・・、どうして?」


綾「えっ・・・、えーっとね、私の友達の弟さんがね、デパートで就

職活動用のスーツを買いたいって言ってたからね、それでね。」



綾の母「そう、もし要るんだったら、寝室にあるはずだから後で

持ってきてあげるわね。」


綾「うん。」


















綾は食事後自室で美鈴に電話をかけている。



美鈴「もしもし」


綾「もしもし美鈴ちゃん。私、東城ですけど。」


美鈴「東城先輩、こんばんは。」


綾「こんばんは。美鈴ちゃんに伝えたい事があって

電話したんだけど、今って大丈夫?。」


美鈴「大丈夫ですけど、私に伝えたい事ですか?

ひょっとして、真中先輩のことですか?」



綾「うん、そうなの。」


美鈴「それで。その後どうしたんですか?」


綾「美鈴ちゃんがあの事を教えてくれたおかげで

真中くんの恋人になることが出来ました。」



美鈴「本当ですか・・・。

先輩、昔からの恋が実ったみたいですね。

おめでとうございます。」



綾「うん、ありがとう。」



美鈴「それで、どうやって真中先輩をゲットしたんですか?」



綾「まだ、真中くんがみんなにどう伝えるか分からないから

詳しいことは、言っちゃいけないかもしれないんだけどね・・・。

でも、美鈴ちゃんには話すけど、まだ誰にも言わないで欲しいの。」



美鈴「誰にも言いません。約束します。」



綾「真中くん本人から聞いた話だと、卒業後は色々な女のコから

告白されてたらしくて凄くもてたらしいの。」



美鈴「えっ、あの人がですか?この前会った時は、別人みたいに

格好良くなってたけど・・・。」



綾「幼馴染の唯ちゃんって覚えているか知らないけどね、彼女も

言ってたから、きっとそうだと思うの。

ただ、西野さんがいるから告白されても、全て断ってたみたい

なんだけどね。」



美鈴「唯ちゃんなら、私も覚えてますよ。あの頃の先輩からは

想像できないですけど、彼女もそう言うならね。」



綾「それでね、唯ちゃん、真中くんが、フリーになったから

振られた寂しさから真中くんが変な女のコとくっつかないかを

心配して、大学の後輩の女の子を紹介する事になったの。

それを私が今朝知ってね、もしかしたらそのコと付き合っちゃ

う事になるかもしれないと思って、慌てて私の方から告白したら

真中くんがOKしてくれたの。」



美鈴「先輩って変わりましたねぇ。

あの頃は自分の気持ちを外に出さないように、胸の内にしまって

たのに、こんなに積極的になれたのは、真中先輩のことをそれだけ

好きだったってことなんですか?」



綾「そうね、真中くんは私にとって運命の人だからね。それに真中

くんにも言われて分かったことたけど、私って自分の気持ちに素直

になれなくてね、それで大分損してたみたい。告白した後に分かっ

たことだけど、真中くんにとって、初恋の人だって言ってたから。」



美鈴「えっ、そうなんですか?でも、聞いた話だと、真中先輩って

西野先輩と中学3年から付き合ってったって・・・。」



綾「そう、そこが不思議なの。彼が中学校3年の時に西野さん

に告白したのを知っているから。

今度会った時にでも確認してみるわ。」



美鈴「そうですか。初恋の理由は先輩も知らないみたいですね。

でも、それが本当なら、二人は最初は両思いだったことになり

ますよね。」



綾「そうなるわねぇ。でも、その後の私の態度や行動が彼を迷わせ

たみたいで、美鈴ちゃんも知ってのとおり、学園祭前に西野さんを

選んだみたいなの。」



美鈴「そういえば、真中先輩って学園祭前に、東城先輩には他に好

きな男性がいて避けられているって言ってました。」



東城「避けてたのは事実だけど、それには訳があって・・・。」



美鈴「そうだったんですか・・・。でも、その時はつらい思いを

したみたいですけど、今は恋人になれたんですから、

いいじゃないですか。過去より今が大事ですからね。」



東城「うん、私もそう思う。」



美鈴「ところで先輩、さっきは絶対言わないって言いましたけど

真中先輩と付き合っていることだけは兄と北大路先輩に

だけは話してもいいですか?」



綾「どうしてなの?」



美鈴「実は以前話したと思いますけど、私から、北大路先輩には

真中先輩が西野先輩と分かれたことを絶対話さないですけど、もし

かしたら、私の兄が話しちゃうかもしれないんですよ。

そうしたら、東城先輩が付き合ってるのを知らずに北大路先輩が

真中先輩にアタックしちゃうかもしれないし・・・。

北大路先輩って真中先輩のことをまだ引きずっているらしくて

今も恋人がいないみたいだから。」



綾「北大路さんも、まだ真中くんのことを・・・。そうねぇ、

うん、じゃぁ、付き合うようになったのは教えても

構わないわよ。

でも私から告白したことは、まだ言わないで欲しいの。」


綾(もし北大路さんが真中くんに告白したら、悩んじゃうかもしれ

ないし、それと真中くんは、唯ちゃんに言ったみたいに告白したの

は自分とかいうかも知れないからね。)



美鈴「分かりました。告白のことは言いませんけど、早速兄と

北大路先輩には二人が付き合っていることを話しますね。」



綾「私のために気を使わせてわるいわね。」



美鈴「いいえ、尊敬する先輩の役に立てたたんですから

これくらいはいいですよ。」



綾「それじゃ、そろそろ失礼しようかしら。」


美鈴「そうですね、じゃぁ、先輩、真中先輩とお幸せに。」


綾「ありがとう、美鈴ちゃん、さようなら。」


二人が電話を切る。


綾(次は、真中くんに電話をしよう。もう、夕食は食べ終った

かなぁ。あと少し経ったら電話をしよう。)

綾は、幸せな気分で、時間が経つのを待っていた。


一方美鈴は・・・



美鈴(さっき、東城先輩にああは言ったけど、北大路先輩に真中先輩

のことはあきらめて下さいって言わなきゃならないなんて、また私っ

て、余計な事を言っちゃったかも・・・。

あぁ、北大路先輩にどうやって伝えたらいいんだろう。)

自室で、一人悩んでいた。


[No.1631] 2012/01/29(Sun) 20:40:44
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第20話 「北からの風」 (No.1631への返信 / 20階層) - スタンリー

第20話 「北からの風」



淳平が自宅で夕食後、車内のぬいぐるみを全て袋に詰めて、自室

にもってくる。


淳平がベッドに腰掛一息ついて。



淳平(ふぅー。結構な量があるなぁ。これどう処理しようか。

東城に渡す・・・っていうのはないよなぁ。

ただのいたずらと言っても、お店のコ達からの物だしな。

また唯にやるか。)


淳平が唯に携帯で電話する。



唯「もしもし、じゅんぺい、何か用?」


淳平「ぬいぐるみを、もらってくれないかな。」


唯「ぬいぐるみって、車内にあった、あれ?」



淳平「そう、あれだけど。」


唯「う〜ん、どうしようかなぁ。」


淳平「頼むよ。」



唯「分かった。今度持ってきて。」


淳平「助かるよ。」



唯「ところで、今そこに東城さんっているの?」



淳平「そこって、今俺の部屋に独りでいるけど。」



唯「一緒じゃないんだ。あんた、今晩なんか用事があったの?」



淳平「二人で外出して東城の家に戻った時、向こうの両親が

家に帰ってきてるって言ってたからさ、なんとなく行きに

くくてさ。」



唯「行きにくい・・・って、なんで?」



淳平「何でって・・・俺って、無職じゃん。」



唯「無職?あんた、東城さんに会いに行ったんでしょ。」



淳平「あん時は、今まで撮った作品を持っていくだけだった

から、恋人じゃなかったし・・・。」



唯「あれ?告白しに行ったんじゃなかったっけ?」



淳平「えっ・・・あぁ、そうだけど・・いや、作品を

見て、・・・話をしていて・・・それで・・ゴニョ・・

ゴニョ。」



唯「まぁ、いいわ。要するに、向こうの両親にあって

無職の自分を紹介されるかもしれないのが嫌だったん

だね。」


淳平がポツリと。


淳平「そのとおりです。」



唯「同級生とはいえ、あんなすごい賞をとった超有名作家さん

だもんね、しょうがないか。」



淳平「だろう。」


淳平の電話にキャッチホンが入る。


淳平「あっ、キャッチ入った・・・東城から」


唯「いいわ、じゃぁまた今度ね。」


淳平「ぬいぐるみ持ってくから、それと今日

悪かったな、ドタキャンして。」


唯「いいから、東城さん待ってるから早く出てあげて

バイバイ。」


唯が電話を切る。



綾が自室から携帯電話で淳平と話している。


綾「あっ、真中くん。」



淳平「どうかしたのか?」


綾「えーっとね、特に用事はないんだけどね・・・。

なんとなく、声が聞きたかったから・・・、迷惑だった?」



淳平「別に、そんなわけないよ。

俺たち付き合ってるんだから気にするなって。」



綾「ありがとう。ところで水曜日のスーツを買いに行く件だけ

どね、デパートのお店のディスカウントクーポンがあるから

一度行ってみたらどうかなって思ってね。」



淳平「へぇー、クーポンがあるんだ。でも、デパートでスーツ

って値段が高いんじゃないか?」



綾「そうね、ちょっと高いかも知れないわね。」



淳平「その辺の、紳士服量販店のスーツで問題ないから。」



綾「そう、何か私余計な事を言っちゃったみたいね。ごめんなさい。」



淳平「別に謝ることじゃないよ。・・・分かった、いくらくらいするか

分からないけど、デパートの紳士服売り場を覗いてみるか。」


綾「えっ、いいの?」



淳平「ああ、ただの冷やかしになっちゃうかも知れないけどな。」



綾「私、真中くんに、スーツを一着プレゼントしたい。」



淳平「プレゼント?別にいいよ、だって理由がないし・・・。」



綾「今まで私に送ってくれたファンレターのお礼っていうのはどう?」



淳平「そんなの気にするなよ。あんなもん別にお金なんか全くかかっ

てないんだから。」



綾「どうしても、お礼がしたいの・・・、ダメ?」



淳平「分かった、じゃぁ今回は、その好意に甘えることにするよ。」



綾「ありがとう、真中くん。」



淳平「おいおい、お礼を言うのは俺の方だって。ハハハ」



綾「本当ね、アハハ。」



綾「さっきね、美鈴ちゃんに電話する機会があったから私たち

今日から付き合ってるって言っちゃったんだけどね、迷惑だった?」



淳平「東城が気にしないんだったら、俺は別に構わないよ。

高校時代と違って、知り合いの異性と付き合うのは、もう恥

ずかしいことじゃないしな。」



綾「そうね。それでね、北・・・」と綾が話した時に、受話

器から淳平の母の声が聞こえる。


淳平の母「淳平、お友達がいらっしゃったみたいだから、ちょっと

玄関に来て。」


淳平「誰だろうなぁ、あっ本内かも。

もしかして唯から東城の事を聴いて、話を聞きに来たのかも。

ちょっと悪いけど、また後で電話するから。」



綾「うん、分かった。じゃぁ、電話を待ってるからね。」


二人が電話を切る。

綾(もっと、話がしたかったのに・・・でもまた後で電話をして

くれるって言ってたから・・・)


綾の電話に美鈴から着信がある。

綾(あれ、美鈴ちゃんから電話だ。)



綾「もしもし、美鈴ちゃん、どうしたの?」



美鈴「東城先輩、実はすぐに伝えたいことがあるのですが。」



綾「何、私に伝えたいことって?」



美鈴「実は、さっきの電話の件ですけどね、あの電話の後、

すぐにうちの兄に電話をしたら、偶然そちらに北大路先輩が

帰ってて会ったらしく兄貴の奴真中先輩と西野先輩が別れて

フリーになったって事を話したらしいんですよ。」



綾「えっ、北大路さんこっちにいるの?それって何時ごろの

話なの?」


美鈴「兄の話だと、ついさっき駅前のファミレスで別れたって

言ってたから・・。」


綾「それで北大路さん、真中くんの所に行ったの?」


美鈴「それは分かりません。

でも先輩の性格から考えておそらく、そうじゃないかと思うん

ですけど・・・。」



綾「そういえば、さっき真中くんの所に電話をした時、真中くん

のお母さんがお友達が来たって言ってたけど・・・その相手って

もしかして・・・。」



美鈴「えっ、さっきですか?じゃぁ、やっぱり行っちゃった

みたいですね。」



綾「そう・・・みたいね。」



美鈴「申し訳ないですけど、今から北大路先輩に電話をして

真中先輩は東城先輩と付き合ってるって私の口からは言えま

せんよね。」



綾「そうね。私どうしたらいいのかな。」



美鈴「ここは真中先輩を信じるしかないと思うんですけど・・・。」


綾「そうよね、真中くん、私のことを恋人として認めてくれたん

だもん、北大路さんに何を言われても、大丈夫よね。

だって、西野さんと付合ってた時、北大路さんに告白された時断ったっ

て言ってたし・・・。

私の時もきっと、そうしてくれると思うからね。」


美鈴「そうですよね。幾らなんでも、今日恋人同士になった日に

他の女のコに言い寄られて、なびくわけないですよね。

北大路先輩には可愛そうですけど、東城先輩は心配しなくてもいいと

思いますよ。」


綾「うん、真中くん、後で電話をくれるって言ってくれたから、彼を

信じて電話を待つことにするわね。」




美鈴「そうですね。じゃぁ、東城先輩また何かあったら、教えてくださいね。」



綾「うん、そうするね、じゃぁ、美鈴ちゃん、お電話ありがとうね。」



美鈴「いえ、じゃあ、失礼します。」


二人が電話を切る。


綾(私、真中くんのこと、信じてるから・・・・。)


[No.1633] 2012/02/19(Sun) 21:06:15
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第21話 「親友」 (No.1633への返信 / 21階層) - スタンリー

第21話 「親友」

淳平は綾との電話を終えた後、自宅の玄関へ来訪者

を迎えに行く。




?「よぉ、真中。」



淳平「その声は、やっぱ、お前かぁ。」







本内「お前に恋人ができたお祝いに、親友がはせ

参じたのに随分な態度だなぁ。」



淳平「お祝いに来たわりには、手ぶらじゃないか。

おおかた唯のところで、さっき電話してたのを聞いて

覗きにきたんだろう。」



本内「ばれたか。まぁ、そんじょそこらの女なら、電話でも

いいかって思ったけど、凄い有名人らしいからこりゃあ会っ

て聞くべきかと思ってさ。

それに運がよければその有名人の彼女に会えるかもって思ってな。」



淳平「さっき唯にも言ったけど、彼女はここにわいないぜ。

それに別にこれと言って話すことはないけど・・・。

まぁ、ここじゃ、なんだから、あがれよ。」



本内「お邪魔しまぁす。あっ、唯もドラマが見終わったら来る

って言ってたぞ。」



淳平「別に、来なくていいって。」



淳平と本内が淳平の部屋に入る。



淳平「それで、唯から何を聞いてるんだって?」


本内「ああ、今朝お前が、彼女の家に行って、告ったって

それで彼女がOKしてくれたから、付き合ってるって。」



淳平「うん、その通りだ。

さぁ、話は済んだんだから、帰ってくれるか。」



本内「おいおい、そんなに邪険にするなよ。

俺は今でも親友であり真中監督の忠実なキャメラマンのつもり

なんだからな。」



淳平「まぁ、帰ってくれって言うのは半分冗談だけど、半分マジなんだ。

実はお前が来た時、ちょうど彼女と電話中だったんだ。

それを邪魔されたから、ちょっとイラっときてな。それに、今、俺の電話

を待ってくれてると思うから、早く電話をしたいからさ。」



本内「それは、悪い事をしたな。

でも俺は別に気にしないから、電話をしてもらってもいいんだぜ。」



淳平「俺が気にするのっ!」



本内「まぁまぁ、そう興奮するなよ。彼女とは、いつでも話せるんだ

からさ。」


淳平「確かに、それはそうだけど。」



本内「ということで、唯が私のおかげで2人が付き合うことができ

たって自慢してたから、その訳を教えてくれよ。」



淳平「彼女の許可がないとそれを話すことは出来ないな。

どこでどうつながって、彼女の耳に入るか分からないからな・・・

って、まぁ唯経由しかないんだが・・・。」



本内「なんだよ、ケチ。」



淳平「ケチって・・・。あのなぁ、今は、付き合いだしたばっかりで

デリケートな時期だから、しばらくそぉっとしておいてくれよ。」



本内「分かったよ、その件は唯から教えてもらうから。」



淳平「なら初めっから唯に聞けよ、全く。」


本内「お前がフランスに行ってる彼女にフラれた時、てっきり

お嬢(荒木)か沙織と付合うもんだと思ってたんだぜ。」


淳平「お嬢(荒木)か沙織?なんでだよ。」


本内「二人ともお前に気があったみたいだったしさ。」



淳平「・・・・・。」


本内「なんだよ。急に黙り込んだりして。

もしかして、二人から告られて断ったんじゃないか。」



淳平「それは・・・ないけど・・・確かに二人とも

魅力的な異性ではあるけど・・・。」



本内「あるけど?」


淳平「お嬢の場合は、卒業して地元に就職したろう。

遠距離はちょっとな。」


本内「遠距離って言っても別に海外じゃないんだから

・・・まぁ、いいか。じゃぁ沙織は、あいつはこっち

で女優の仕事を探すって言ってたよな。」



淳平(誰にも話してないけど、半年前、沙織には告られ

て断ったんだよなぁ。)


淳平「沙織は・・・・・・・なんて言ったらいいのかなぁ

・・・。」



本内「沙織の話は、まぁ、いいや。そんじゃぁ、お店のコで

・・・えぇと誰だったかなぁ・・・あのストーカー騒ぎになり

そうだった・・・あのコ。」



淳平「香のことだろう。」



本内「そうそうあん時は、唯とお店の女番長みたいな咲さん

が間に入って、結局西野を理由に納得させたんだよな。」



淳平「そのコの話は、やめろって。今は何事もなかったように

お店で普通に接してるんだから。」



本内「ゴメン、ゴメン、じゃぁ彼女の話は、いいとしてさぁ。

就職の話だけど、これからどうするつもりだ?」



淳平「再来週の水曜に角倉さんの事務所で、就職の面接を

受けるつもりだけどっ・・・てこれは決まるまで内緒だった。」




本内「面接?今更、真中と面接なんてなぁ、お前あそこに入

り浸っていたから、スタッフだけじゃなく、事務所の全員と

知り合いみたいなもんだろう。」



淳平「あの頃は、お手伝いとして・・・っていうかバイトとして

接してたわけだから、一応ケジメということで面接をするんだ

と思うんだけど。

そのおかげで、スーツを一着作ることになったんだけどな。」



本内「一着も持ってなかったのか?」



淳平「成人式の時に時に作ったきりだから、小さくなっちゃ

ってさぁ。

それで、今週の水曜日に彼女とスーツを買いに行く約束をし

てるんだ。」



本内「それって、デートってことか?」



淳平「夕食の約束もしてるから、デートになるかな。」



本内「ふーん、ラブラブだなぁ。

俺の知ってる真中はそういうの一切興味なさそうだったから

ひょっとしたらこいつホモかもって思ってた時期があったな。」


淳平「ホモって・・・交際が面倒なだけで、俺は人一倍女のコ

の事が好きなんだけどな。

あれっ、そういえば学生時代に、ある女のコから告られた時男性

の人が好きで構わないから付き合ってくださいって言われたこと

があるけど・・・。それから学校関係のコに告白されなくなった

のはひょっとして、本内ぃ・・・。」


淳平が睨む。


本内「ハハハ、ゴメンゴメン、そんなに怖い顔をすんなよ。

でも、そのおかげで、告白を断る必要もなくなったからいいだろう。」


淳平「そりゃぁ、そうだけど・・・。

でもそいつらの間では俺は、ホモになっているじゃないか。

すぐにあれは誤解だったって、みんなに言っといてくれよ。

そうしないと次みんなに会うとき恥ずかしいからな。」



本内「分かった。」



突然、玄関からチャイムの音がする。



本内「唯がきたみたいだな。」

淳平「ドラマってまだ終わってないんじゃないか。


まぁ、いいや。ちょっと行ってくる。」




淳平が本内を自室に残して、部屋を出て

玄関へ向かう。



淳平が玄関の鍵を解除して、ドアを開ける。



そしてそこに立っていた唯とは違う女性を見て驚き一瞬、言葉を失う。















短い沈黙の後、淳平の口から出てきた言葉が・・・

「に、西野」だった。
  


[No.1634] 2012/02/26(Sun) 00:10:17
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第22話 「遅すぎたヒロイン」 (No.1634への返信 / 22階層) - スタンリー

第22話 「遅すぎたヒロイン」


一方、淳平と本内が淳平の部屋で話をしていた時、綾は自室で

1人淳平の電話を待っていた。



綾は、淳平への訪問者が西野であることを知らずに、北大路

さつきだと思っている。


綾の部屋に母から内線がはいる。


綾の母「綾ちゃん、お風呂空いたから、入ったらどう?」



綾「今、小説に集中しているから、後ではいるね。」


綾の母「そう、じゃぁあまり無理をしないで頑張ってね。」


綾「うん。」


綾が受話器を置く。


綾(今頃、北大路さんは、真中くんに会ってるんだろうな。

今の私たちの関係を知らないから、真中くんに告白してたり

して・・・・。)


綾が、高校時代に北大路さつきが人前で淳平に言った言葉を

思い出す。


綾(『さつき「真中くらい簡単に襲えちゃうから。」・・・』

真中くんって4年以上も恋人といなかったから、北大路さんが

大胆な行動に出たら、コロッと落ちちゃうかも・・・・。

ううん、そんなはずない、私は真中くんを信じてるから、絶対

そんなことは・・・ない・・・と思う。でも、やっぱり、私って

自分に自信がないから・・・ついつい悪い方に考えちゃうんだわ。)



綾(西野さんが真中くんと付き合ってたときって、同じように西野

さんも真中くんのことが心配だったのかなぁ。

あぁ、待つのがこんなにつらいなんて、思わなかった。

私は恋人なんだから、こちらから電話がかかってくるのを待つんじゃ

なくて、別にこちらから電話をしてもいいんじゃない。

でも、取り込んでて、電話にでなかったら・・・・。)



綾(高校時代みたいに、自分の気持ちを押し殺してただ待ってる

だけじゃダメじゃないの。

今日みたいに、私から思い切って告白したから、恋人になれた訳

だし・・・。

そうよ、恐れていてはダメ、私のほうから、動かないと・・・。)



隣の弟の部屋のドアが開いて閉まる音がする。


綾(あっ、正太郎、帰ってきたんだ。


そうだ、外はもう暗いし、車ならすぐだから・・・正太郎に送って

もらおう。)



綾が自室をでて、正太郎の部屋のドアをノックする。
「コン、コン」



綾がドアを開ける。


綾「正太郎、入るわよ。」



正太郎「なんだよ、姉ちゃん。」



綾「えーっとね、今から急用でお友達の家に行かなきゃなら

ないの。悪いけど車で送ってもらっていいかな。」



正太郎「えーっ、俺、今バイトが終わって、帰ってきたばかりで

疲れてんだから、勘弁してくれよぉ。」



綾「疲れてるところホント悪いんだけど、すぐそこだから・・・。」



正太郎「面倒くさいからヤダ。」



綾がムッとして・・・。


綾「じゃぁ、もういい。私が運転するから、正太郎の車のカギを

貸して。」



正太郎「えっ、姉ちゃんが免許は持ってるのは知ってっけど、運転

なんかできんのか?

確か、4年前、家の駐車場で親父の車を塀にぶつけてそれ以来・・・。」


綾「あれ以来一度も運転したこと無いけど・・・・、でも法律的には何

の問題もないし、確かに車を一部壊しちゃったけど記録的には無事故無

違反なんだから・・・。」



正太郎「法律的にはって・・・・あれから一度も運転したことないって

・・・。

そんな話を聞いたら貸せねーよ。

あぁー、もう分かったよ、送ってっから、早く準備しろよ。」



綾「ありがとう。すぐに、準備をするからね。」


綾が自室に戻り、ドレッサーの前で化粧をしている。

綾(早く行かないと、北大路さんに告白されて真中くん、悩ん

でたり困ったりしてるといけないから・・・。)


正太郎が綾の部屋に入り、綾に呼びかける。


正太郎「姉ちゃん、先に車に行って待ってっから、早くきてく

れよな。」


綾「うん、すぐ行くからね。」



正太郎「なんだ、化粧なんかして、友達って、ひょっとして

男なのか?」


綾「えっ、違うわよ。正太郎には関係ないでしょ。」



正太郎「まっ、どっちでもいいけど、早くしろよな。」



綾「分かったわよ。」

正太郎が玄関から外に出て、駐車場へ向かう。



その時、綾の家の門の近くでタクシーが止まり、女性が1人降りる。



正太郎「誰だ、こんな時間に・・・・、まぁ、俺には関係ないか。」



正太郎が自分の車に入り、綾の来るのを待っている。



綾が化粧を終え、玄関に行き、靴を履き、ドアノブに手を掛けたとき

インターホンのチャイムの音がする。


綾(こんな時間に誰なの?)と綾が思ったとき、既にドアを開

けていた。



そこに立っていたのは、今、淳平にあっているはずの北大路さつきが

立っている。



綾「北大路さん?

どうしてここに・・・。」

綾(真中くんに会ってるはずじゃなかったの?それとも、真中くん

に会った後にここへ来たの?)



さつき「こんばんは、東城さん。久しぶりだね。」



綾「こんばんは・・・・久しぶり。」



さつき「突然、来ちゃってごめんなさい。

ちょっと東城さんに確かめたい事があって

来たんだけどね。」


綾「確かめたいこと?」



さつき「そう、真中のことでね。

外村に今日聞いたんだけど、この前の祝賀会の時に、

真中が自分で西野さんと別れたって言ってたってこと

は知ってる?」



綾「うん・・・。」



さつき「そう、やっぱり知ってたんだ・・・。」



綾「あのぉ、北大路さん、玄関じゃなんだから

私の部屋で話さない?」



さつき「外にタクシーを待たせてあるから、それに

話もすぐに終わると思うしここでいいわ。。」



綾「そう・・・。」


さつき「じゃぁ、単刀直入に聞くけど、東城さんは

まだ真中のことが好きなの?」



綾「えっ・・・・。」

綾が先程、淳平と電話で話してたことを思い出す。


綾(『東城が気にしないんだったら、俺は別に構わないよ。

高校時代と違って、知り合いの異性と付き合うのは、もう

恥ずかしいことじゃないしな。』)


綾がさつきに自分と真中の関係のことを話す決心をする。



綾「北大路さん、真中くんと私のことで、北大路さん

に言わなければならないことがあります。」



さつき「真中と東城さんのこと?」


綾が軽く頷く。

綾「真中くんと私は今日、恋人同士になりました。」



さつき「今日って、東城さん、それ本当のことなの?」



綾「そう、本当のこと。」



さつき「東城さんが相手なら、私に勝ち目がないのはあの頃

から分かっているからね。

今でも真中のことを引きずってたけど、もうこれで

きっぱりあきらめがつく・・・。」



綾「ごめんなさい、北大路さん。」



さつき「いやねぇ、謝られたら、余計私がみじめになる

じゃない。別に同情なんかいらないから・・・。」



綾「同情だなんて・・・。言いにくいかもしれないけど、

もし私が真中くんのことを忘れてたら、どうするつもり

だったの?」



さつき「それはもちろん、すぐにタクシーに乗って真中の

所へ行って押し倒してでも、恋人になるつもりよ。」



綾「そう、でも、まさか、北大路さんが先に私の家に来ると

は思わなかったわ。」



さつき「さっきも言ったけど、東城さんがまだ、真中のことを

思っていたらさ、いくら私が押し倒して、自分の物にしても、

後からきっと、真中にフられると思ったの。

それに、私、思うの。

恋ってさ、必ずしも早い者勝ちじゃないって。」



綾「高校時代の北大路さんじゃ考えられないほど慎重ね。

あの頃だったら、真中くんに絶対直接会いに行ってると思うから

・・・。」



さつき「私も、大人になったっていうのかな。それとも、年を

とって単純に恋に臆病になっているだけかもね。」



綾「ごめんなさい、こんな所で、話し込んじゃって、やっぱり

部屋に上がってもらったほうがよさそうね。」



さつき「ううん、もう用が済んだから、帰るわね。

さっきも言ったけど外にタクシーを待たせてあるしね。

それに、東城さんのほうこそ、今外出するところだったみたい

なのに、悪かったわね。」



綾「外出?そう、そう、私って、外に出るんだった。」



さつき「そうね、それじゃ、東城さん、真中と幸せにね。」



綾「ありがとう。」



さつきが、ドアを閉めて待たせてあるタクシーに向かい

歩き出す。



さつきが、待っていたタクシーに乗り、運転手に自宅までの

道のりを伝えると、タクシーが発進する。


さつき(結局、私の恋は実らなかったけど、東城さんが相手なら

全然文句ないよ。

高校3年の学園祭の時は、二人して、真中にフられたけど、今回は

良かったね、東城さん・・・。

さぁ、これで真中のことは綺麗さっぱり忘れて、新しい恋でもしよ

うかな。

明日京都に帰ったら、美鈴を誘って一緒にヤケ酒でも飲もう。)




心では明るい事を考えながらも、さつきはタクシーの後部座席

で一人うつむき、微妙に肩を震わさせて静かに涙を流していた。


[No.1635] 2012/03/18(Sun) 23:06:28
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第23話 「西高東低?」 (No.1635への返信 / 23階層) - スタンリー

第23話 「西高東低?」



綾は、玄関で、さつきが淳平に会わなかったことを知り

ほっとしている。



綾(いけない、正太郎が駐車場で待ってるわ。もう用がすんだ

から、送ってもらわなくてもいいって言わないと。)


突然、綾の携帯に唯から着信がある。

綾(あれ、唯ちゃんからだ。)


綾「もしもし、唯ちゃん。」


唯「東城さん、今、淳平に大変なことがあったみたいなん

ですけど知っています?」


綾「大変って、真中くん、事故でもしたの?」


唯「ううん、そっちの大変じゃなくて、違うほうのなんで

すけど。」



綾「そう、じゃあ、安心したわ。」



唯「それが、今から言うことを聞いたら安心なんかできない

じゃないかなと思うんですけど・・・。

あっ、これって話さないほうがいいのかな。」



綾「そこまで、言うんだったら教えてもらった方が良さ

そうね。」


唯「じゃぁ、順番に話すね。」



唯「今日、私の彼氏がね、私からじゅんぺいが東城さん

と恋人同士になったのを聞いて、じゅんぺいの家に話し

を聞きに行ったの。」


綾「その時、真中くんと電話で話してたら、真中くんが

誰かが来って言ってたけど、本内さんだったんだね。」


唯「そう、私もその時見てたテレビドラマの番組が終わったら

行くつもりだったけど、ついさっき彼が、じゅんぺいの家から

私のアパートに戻って来たのよ。」


綾「何かあったの。」


唯「それがね、彼に戻ってきた理由を聞いてビックリしたんだ

けどね。

西野先輩がさっきじゅんぺいのマンションに来て・・・・。」


綾「!!!」


唯「それで、じゅんぺいが私の彼に、西野先輩と話しがある

からって、マンションから帰されて・・・。」



綾「・・・・・・。」


唯「ちょっと、東城さん、私の話って聞いてますか?」


綾「う、うん、聞いてるよ。それで、今二人はどこにいるの?」


唯「じゅんぺいのマンションらしいけど・・・、ひょっとしたら

二人で外出してるかも。」



綾「それで、二人は・・・その・・どんな話をしてたって?」



唯「それが、彼氏帰るとき、玄関で西野先輩とすれ違っただ

けだから、二人の会話までは、分からないの。」



綾「そうなの。」



唯「もし気になるんだったら、私が今からじゅんぺいの所に

行って聞いて来ましょうか?」



綾「えっ、ううん、それはやめた方がいいんじゃない。

ほら、受験の日みたいに感情的になって真中くんに変な事を

言うちゃうかもしれないからね。」



唯「そうですね。あの後じゅんぺいとは気まずかったです

からね。」


綾「それに、これは真中くんと私の問題だから、私がどうする

か考えないとね。」



唯「分かりました。でも何かあったら、連絡くださいね。

私も、じゅんぺいに何かあったら連絡しますから。」



綾「うん、ありがとう。」



唯「それじゃぁ、失礼します。」



二人が電話を切る・・・と同時に綾にさつきが淳平の所に行った

と思った時とは比べられない不安感に襲われる。


綾(北大路さんの次は、西野さんだなんて・・・・。)


綾の脳裏に、高校卒業後味わった西野に対する劣等感が蘇ってくる。


綾(『どうして私じゃダメなの?どうして西野さんなの?・・・

西野さんは陽気な性格だし、男子からも人気があるし恋愛にも積極的

だし、容姿もそこらのアイドルよりも綺麗だし、私が彼女に勝る点

といえば、小説を書く事くらいしかないじゃない。』)



綾(真中くんの前ではいつも綺麗でいたいから、お化粧をまめにして

たけど、きっと西野さんに比べたらまだ私なんて・・・。

今日は、早く告白しなきゃと思って積極的になれたけど、私の性格は

どちらかと言うとあの時のままだし・・・。

やっぱり私が西野さんに勝てることといったら、小説しかない・・・。)


綾(それにさっき北大路さんが言ってたけど、恋愛って必ずしも早い者

勝ちじゃないと思うから、今は私が、恋人でもすぐに真中くんの気持ち

が西野さんに行っちゃうかも知れないから・・・。

私ってまた、フラれるのかな。さっきは真中くんからの電話が待ち遠し

かったけど、今はその電話が来るのが怖い・・・。)


綾の目に涙がにじむ。


玄関のドアが突然開く。


正太郎「姉ちゃん、おっせぇよ。ずぅっと待ってるのに・・・って

姉ちゃん泣いてるのか?」


綾「ううん、泣いてなんかないよ。」


正太郎「さっき、どっかの女が訪ねてたみたいだけど、ひょっと

して何か言われたのか?」



綾「あの女の人は、関係ないの。」


正太郎「もしかして、高校時代みたいに、彼氏がいる男の事が好き

になって、それで、その彼女が乗り込んできたんじゃないだろうな。」



綾「そんな訳ないじゃない。彼、別かれたって言ってたし・・・。」

綾(いけない、私ったら、弟に今付き合っている人がいることをしゃ

べっちゃった。それに含みを持たせた言い方で・・・。)


正太郎「姉ちゃんはウブだから、そいつに騙されてるんだって。

誰だよ、その男は、おれが今からそいつの家に行ってぶん殴っ

てやるから。」



綾「ちょっと説明が悪かったせいもあるけど、彼はそんな

ことが出来る人じゃないから。

それにもう一回言うけどさっき訪ねてきた彼女は私の高校時代の

映研部のお友達だから、本当に関係ないの。」



正太郎「そうか、そういえば昔見たことあるな・・・。

俺もちょっと熱くなっちゃったから・・・。

で、今から、どうするんだ?」


綾(逃げてちゃダメよね。もしフられるんだったら

電話じゃなくて、直接本人に聞きたいから・・・って

私って振られることを前提にしてるし・・・。

ダメ、例え西野さんに勝る点が小説しかなくても、私は

真中くんを信じる。もう、これしかない。)



綾が淳平のマンションに行く決心をする。



綾「うん、待たせて悪かったわね。」




二人が玄関を出て、駐車場に停めてある正太郎の車に乗る。



綾(私、真中くんのことを信じてるから・・・・。


[No.1636] 2012/03/21(Wed) 21:12:24
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第24話 「愛しき人」 (No.1636への返信 / 24階層) - スタンリー

第24話 「愛しき人」


本内が帰らせた後、淳平とつかさは、重苦しい雰囲気の中、淳平の

部屋にいる。


淳平がつかさに話しかける。

淳平「いつ、日本に帰ってきてたんだ?」



つかさ「昨日なの。そして今日、高校時代のお友達の結婚式に行ってたの。

でも、今週の土曜日にまたすぐにフランスへ帰るんだけどね。」



淳平「そうか、短期滞在なんだな・・・・。」



つかさ「そう・・・。」













少しの間会話が途切れた後、つかさが話しかける。






つかさ「淳平君、しばらく見ないうちにたくましくなったね。」




淳平「ああ、この前、高校時代の映研部の仲間達と東城の祝賀

会で久しぶりにみんなに会ったら同じようなこと言われたな。

日雇いのバイトで稼いでたから。

そういう、西野だって高校の時より、すごく綺麗になってる。」



つかさ(淳平君、もう私のことつかさって呼んでくれないんだね。

いけない、気持ちが表情に出ちゃいそう・・・。

笑わないと・・・。)


つかさが笑顔で・・・。


つかさ「そう、お世辞でもうれしいよ。」



淳平「お世辞なんかじゃなくって、マジだって。」

淳平(マジで西野の顔で見た男はみんな、恋に落ちるくらい美人じゃん。

でも・・・西野の笑顔って、なんか無理して作ってるみたいな・・・。)




つかさ「じゃぁ、そういうことにしとくね。アハハ・・・・・。」

つかさが力なく笑う。












淳平「・・・・」











つかさ「・・・」












再度、二人の会話が途切れる。











つかさが思い立ったように話しかける。





つかさ「私、淳平君に謝らないといけないことがあるの。」




淳平「俺に、謝らないといけないこと?」



つかさ「数ヶ月前に送った返信の手紙のことだけど・・・。」



淳平「手紙?あぁ、あの手紙ね。もう、いいよ。俺、西野の

気持ちが分かったから・・・。

4年以上も一通のメールも出さずに放っておいた俺が悪いん

だしな。」



つかさ「違うの、あの手紙を書いてた時は、なんていったら

いいのかなぁ。

精神的に疲れててね。うーん、どういえば良いんだろう・・・。」



淳平「だから、もういいって。俺はあの時西野にフラれたんだし

それに・・・それはもう終わった話なんだから。」



つかさ「淳平くんにとっては、もう終わった話なんだね・・・。」



淳平「ああ、でも、本当に悪いのは俺の方なんだし、それに

もう立ち直ってるんだからさ。

そんなに心配するなって。」



つかさ「ううん、淳平君は全然悪くないよ。

あの時私たちの関係は白紙に戻してたんだし・・・・。

手紙には分かれようって書いたけど、私たちって付き合ってる

ことになっていなかったはずだから・・・。

それに空港で分かれた日に手紙も連絡もしないとか、淳平くんの

ことも忘れるようにするって言ったのは私の方からだし。

淳平君はそれを守っただけなんだから。」



淳平「・・・・。」




つかさ「手紙がきた時は、たまたま、お友達の家に行った帰りでね

仲良くしていてるのを見てたらね、どうして私は今一人ぼっちなのかな

ってとても寂しくなっちゃってね。」



淳平「誰だって、寂しくなるときくらいはあるさ。

俺が西野に手紙を、送ったのだって寂しさからだったからさ。」



つかさ「ううん、寂しさからだけじゃないの、淳平君の送ってくれた

DVDとか手紙とかノートを見てたらね、とても羨ましかったの。

予定では4年で留学は終わるはずだったんだけどね。

思いどおりにいかなくて、立派なパティシエになるにはまだ時間が

かかりそうな自分と映画のコンクールで賞を取って順風満帆な淳平君と

を比べて、私ってこの4年間何をやってきたんだろうって思っちゃって

それでね。」





淳平「時には思い通りに行かないこともあるだろう、それが人生って

いうもんだろうからさ。

そもそも映画と洋菓子作りを比べるのに無理があるんじゃないのか。」





つかさ「冷静に考えると、そうね。でもあの時は、洋菓子作りにも精

神的に余裕がなくて、それで賞をとって幸せそうな淳平君に、ついあ

んな行動をとってちゃったの・・・。」


淳平「賞って言ったって、そんな有名な賞じゃないんだぜ。」


つかさ「私に謙遜なんかしないでいいよ。

手紙を貰った時ネットで調べて応募総数のことを知ってるんだから。

あんな多くの人が出品して、そのトップを取ったの凄いことよ。」



淳平「賞のことなんかでどうでもいいんだ。

あの時中学の制服の第2ボタンまで送り返すのは、ひどくないか?」



つかさ「あれは、たまたま淳平くんから貰ったプレゼント全部を、私に

とっての宝箱みたいなものにしまってあったの。

あの時感情的になってその箱ごと送っちゃっただけなの・・・。

それに、淳平くんから、私を引き止める手紙がくるのかも、ううん

もしかしたらフランスに会いに来てくれるかも知れないって期待してた

んだけどね。」



淳平「そんな、・・・勝手過ぎるよ。」



つかさ「そう、私の勝手な希望だったんだね。それでね、淳平くんから

何も返事がこなくて・・・。

この数ヶ月間、凄く後悔したの。」


淳平(西野の話の内容から、どうも俺とよりを戻したいみたってことかな。)


つかさの話しているのを聞きながら淳平は綾とつかさのことを黙って考

えている。


淳平(俺には今東城がいる。

でも、さっき、東城に告られて受け入れた時は、西野がここにいない

ことが前提だったよな。

でも、今、西野はここにいる。

かといって、今日恋人になったばかりなのに今更、東城に分かれてくれ

なんていえる訳ないし。

だいたい、東城は何も悪い事をした訳でもないし・・・・・。





でも、俺はまだ西野のことが・・・・。)



淳平の頭に、高校時代に時折見せたつかさの悲しそうな顔が浮かんでは

消えていた。


[No.1637] 2012/04/14(Sat) 20:33:04
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第25話 「悲しい決断」」 (No.1637への返信 / 25階層) - スタンリー

第25話 「悲しい決断」



綾が正太郎が運転中の車の助手席に座って考えている。



綾(西野さん、真中君のことをフッておいて今更何をしに来たの?

帰国したからお土産を届けに来ただけって・・・・てことじゃないよね。

やっぱり、また恋人同士に戻りたいって言いにきたのかな。

もし、もしもそうだったら、真中君は・・・西野さんと・・・。)


綾が高校三年生のときの文化祭に終った後で部室の扉越しで告白をして

淳平にフられた時の事を思い出しつぶやく。


綾「またフられるのかなぁ。」


正太郎「姉ちゃん、今なんか言った?」


綾「えっ、うぅん、ちょっとした独り言だよ。」



正太郎「あっ、そう。ならいいけどさ。

そろそろ、目的地付近だけどさ、どこで降ろしゃいい?」



綾「じゃぁ、そこの角でいいわ。」





淳平のマンションの前で正太郎が停車して、綾が降車する。



綾「15分位ここで待ってて、それまで待ってて戻らなか

ったらそのまま家に帰っていいいからね。」


正太郎「分かった15分だな。」



綾が淳平のマンションの建物に入っていく。


綾が淳平のマンションのドアの前で、立ち止まる。



綾(勢いでここまで来ちゃったけど、私にこのインターホンを

押す勇気があるの・・・。

もし、真中君と西野さんの関係が元に戻ったら・・・・。

ううん、違う真中君は・・・、真中君は今日私と付き合うって

言ってくれたもん。

私が今の彼女なんだもん。





でも、西野さんは誰もが羨むくらい綺麗で、可愛くて、明るくて

それに性格も良くて・・・・・私なんか・・・・・・・。)


綾がドアの前でインターホンを押すのを躊躇っている時、つかさ

の話を聞きながら淳平はつかさと綾のどちらを選択するのか考え

ていた。


淳平が申し訳なさそうに話しているつかさを見て・・・。


淳平(もし、ここで、西野をフれば、またあの悲しくて寂しそうな顔

を見なきゃならないのか・・・。

今西野のことを抱きしめてスキだって言えたら、この寂しそうな顔を

笑顔に変えることができだろうけど・・・。

西野とよりを戻せば、東城を2度フル事になるし、そうすればまた東城

が涙を・・・。)



淳平の頭に高校時代、文化祭の日の部室の扉ごしにで綾が淳平に告白

したときの事が思い浮かび鬱な気分になる。





淳平(西野はまたすぐフランスに帰っちゃうし、またしばらく帰れそう

にないみたいだけど、でも東城はすぐそばにいる・・・。

遠くにいく人の悲しい顔と近くにいる人の涙か・・・・。)



淳平(高校時代は、西野と付き合うって決めてたから悲しそうな顔を見

るのが嫌で、東城をあきらめたけど・・・。

近くにいる分だけ今は西野の悲しい顔を見ることよりも、東城の悲しい

顔を見るのがつらいし、今日付き合うって言っておいて今更なんて・・。)



淳平(西野が寂しい想いをしている時や悲しい顔をしている時、今の俺

なんかじゃ西野のそばにいてやれない・・・。

それなら、向こうで新しい彼氏を作った方が西野にとって幸せなんじゃ

ないのか。

かと言って西野の悲しそうな顔は見たくない、じゃぁ俺は一体どうすれば

いいんだ・・・。


        ・

        ・

        ・

        ・

        ・


そうだ、俺が西野に嫌われれば、少なくとも西野の悲しそうな顔を見なく

済むんじゃないのか。

そう、俺が悪者に成って嫌われれば・・・。)



つかさ「・・・・それでね、もし淳平くんさえ良かったらね、この前

送ったものを全部返して、それともう一度私・・・」



淳平「西野。」

淳平が突然つかさの話を遮る。



つかさ「どうしたの、突然大きな声を出したりして。」



淳平「俺さぁ、実を言うと今東城と付き合ってるんだ

4年前から。」




つかさ「東城さんと淳平くんが?嘘。

だって、あの手紙には、淳平くんの携帯の番号とか、いつ帰ってくるの

とか、何処で会おうかとか書いてあったじゃない。」




淳平「あん時、二股かけようと思ってたんだよ。

だって二人とも凄く魅力的なんだからさ。」




つかさ「そんな、淳平くんは、そんなこと出来る人じゃないもん。」



淳平「そりゃぁ時が経てば、人は変わるからさ。

俺も西野と一緒でさぁ、独りで寂しかったからな。

それに俺と東城が付き合ってる証拠にほら。」


淳平がつかさに携帯の着信履歴を見せる。



つかさ「・・・。」



淳平「今朝から夕方まで東城の家に行ってたんだぜ。

それについさっき俺の友達が来る前までだって電話で話してたしな。

さっきは電話の途中だったんで俺からかけなおすことになっている

から・・・。

さっきいた友達が帰ったら、また今晩会うつもりだったんだぜ。」


淳平(やぱい、目頭が熱くなってきやがった。

ここで涙を見せたらダメだ。

俺は映画監督になるんだから、この程度の演技が出来なくてどうする。

ここは耐えないと・・・・。)



淳平が、目に涙がにじんでるのを隠す為に、つかさから顔を逸らす。




つかさ「そうなんだ、淳平くん東城さんと付き合ってたんだ・・・。

私は、てっきり淳平くんが私のことをずぅっと好きでいてくれてると

信じてたのに・・・酷い。」





淳平「さっき、時が経てば人は変わるって言ったろう。

それに俺はこんなヤツなんだからさっさと忘れて、フランスで

いい男でも見つけて幸せになれよ。」



つかさ「言われなくても、そうするわ。」



淳平「・・・。」


つかさは怒って、玄関に向かう。



一応、淳平も玄関までついて行く。



つかさが靴をはいて、玄関のドアを開けるとインターホンを

押すのを躊躇している綾が立っていた。


[No.1639] 2012/05/19(Sat) 23:10:33
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第26話 「優しい嘘」 (No.1639への返信 / 26階層) - スタンリー

第26話 「優しい嘘」


つかさが淳平のマンションの玄関から綾の姿を見て。


西野「東城さん!?」



綾「西野さん!?」

二人が驚く。


淳平(うわぁ、東城が来てたのかぁ。

どうすればいいんだ。

だけどここは、やっぱりさっきの話で通すしかないな。)


淳平「なんだぁ、電話がまちきれなくてこっちに来ちゃった

のか、綾。」



綾(えっ、綾って・・・何か意味がありそうね、じゃぁ私も・・・。)

綾「ごめんなさい、淳平。

お邪魔だったかな?」



つかさ(綾・・・淳平って・・・・やっぱり二人って付き合ってたの?

もう嫌、ここには居たくない。)



淳平「いや、西野は今帰るみたいだから。」



西野「今すぐ帰るから、東城さん、淳平くんとお幸せにね。それじゃぁ。」



綾「えっ、うん・・・さようなら・・・。」



西野が、綾の横を通って、淳平のマンションを出ていく。



怒って出て行った、つかさを見送る淳平の目は、涙があふれている。






つかさが淳平のマンションの近くに止まっていた正太郎の車の横を通る。



正太郎(あれっ、今、出てきたコって、前にどこかで見たことがあるような。

一体誰だったかなぁ?)


正太郎の携帯に綾から着信がある。


正太郎「もしもし、姉ちゃん?」


綾「待っててもらって悪いけど、先に帰ってて。

私は、お友達に車で送ってもらうことになったから。」



正太郎「ああ、分かった。」


二人が電話を切る。

正太郎が車を自宅に向け走らせる。




つかさが家への帰り道の途中で、淳平の所に行こうとしていた

唯に出会う。



唯「西野先輩ですよね。こんばんは、お久しぶりです。」



つかさ「唯ちゃん、こんばんは、久しぶりね。」



唯「大丈夫ですか、先輩。

じゅんぺいと何かあったんですか?」



つかさ「さっき淳平くんのマンションに訪ねたらね

今東城さんと付き合ってるって言われてね。」



唯「じゅんぺい、先輩に正直に話したんですね。

今日、じゅんぺいったらね、東城さんに告白されて・・・

じゃなかった、告白して、それで恋人になったんですよね。」



つかさ「今日?」


唯 「はい、1週間前の祝賀会で4年ぶりくらいに会ったって、

それで今日恋人・・・。

あっ、じゅんぺいって先輩に何て言ってたんですか?」



つかさ「4年前から付き合ってるって言ってたけど・・・

あれは嘘だったの?」



唯「あちゃぁー、私って余計なことを言っちゃったみたい。」



つかさ「唯ちゃん、淳平くんのこと、もっと詳しく話してくれる?」



唯「えーっと、そのぅ・・・言いづらいなぁ。」



つかさ「お願い、絶対、唯ちゃんから、聞いたなんて言わないから。

ねっ、お願い。」


つかさが涙目になって唯に頼む。



唯「分かりました。」



唯が、この4年間淳平がつかさと付き合っていることを理由に

他のコからの告白を断っていたことや、つかさからの返信の手紙を

読んで、淳平が泣いたことをつかさに話す。



つかさ(今、冷静に考えると、淳平くんの言ってた事っておかしいわ。

もし、私と東城さんと二股をかけるんだったら、別に東城さんと付き

合ってることを私に話す必要ってないじゃない。

嘘でも、淳平くんが私のことを好きだって言ってくれてれば二人同時

に付き合うことが出来たわけだし・・・。

私、淳平くんのところに行かないと。そして、淳平くんと・・・。)


つかさが淳平のマンションに戻ろうとする。



唯「西野先輩、今から何処へ行くつもりですか?」



つかさ「淳平くんのところよ。」



唯「今、じゅんぺいには東城さんがいるのを、知ってますよね。」



つかさ「知ってるけど・・・。私、土曜日にまたフランスへ帰る

つもりだから、今戻ってって話さないと当分会えないから・・・

だから行かせて、お願い、唯ちゃん」




唯「先輩は勝手すぎます。

くわしい理由は知らないけど、先輩は2度もフってるんですよ。

知らないかもしれないけど、二人が高校1年の時フられた夜の

自宅への帰り道、じゅんぺいは泣きながら歩いてたんだから。

この前フラれたときだって・・・。

それと、淳平がさっきどんな気持ちで、先輩に嘘をついたのか

考えてあげてください。」



つかさ(そうだ、私って2回も淳平くんのことをフってるんだ

・・・。

じゅんぺいくん・・・私に嫌われようとして、こんな嘘を・・・。)


つかさ「これって、淳平くんのやさしさなの?」



唯「じゅんぺいは、不器用だから、あまりいい方法じゃなかった

かもしれないですけどね。

ただ、それを私が台無しにしちゃったみたいですけど・・・・。」



つかさの目から涙がこぼれる。



つかさ「ううん、唯ちゃんは、悪くない。

私って、さっき淳平くんにフラれたんだね。」



唯「ちがいます。

先輩が、じゅんぺいをフッて、じゅんぺいが東城さんと付き合った

ただそれだけ。

だから、フラれたわけじゃないと思います。」



つかさ(唯ちゃん、優しいんだね。)



つかさ「家に帰るね。」



唯「私一緒に先輩の家まで、行きましょうか?」



つかさ「ううん、一人で大丈夫だから。おやすみなさい、唯ちゃん。」



唯「おやすみなさい、先輩・・・。」




つかさは、一人さびしく家に向かい歩きだした。


[No.1640] 2012/05/20(Sun) 20:48:06
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第27話 「嵐のあとに・・・」 (No.1640への返信 / 27階層) - スタンリー

第27話 「嵐のあとに・・・」



綾と淳平はつかさが出て行った後、淳平の部屋にいる。


淳平「東城が俺の家に来るのは久しぶりだな。」


綾「そうね、家庭教師みたいなことをしてた時以来ね・・・・。」

綾(あの時、居間で真中くんに無断でキスをしたんだ・・・・。)






淳平は、綾が黙って何かを思い出しているのを察して・・・。

淳平「ごめん、なんか嫌なことを思い出させたみたいだな。」


綾「ううん、別になんでもないから。でも、真中くんのお部屋に

来るのは久しぶりだから、懐かしい気がするわ。」

綾が、淳平の部屋を見渡す。



淳平「撮影の機材と賞状が増えたくらいで、あの頃と基本的に

何も変わってないはずだけど。」


綾「あの作品の他にも賞をもらってたんだね。

あっ、エアコンがある。」


淳平「ああ、エアコンね、さすがに夏は暑くてさ、扇風機だけじゃ

厳しいからな。」



綾「そうね、前に来たときって、とても暑い日だったね。」



淳平「そうだったな。」



綾「・・・。」



淳平「・・・。」

二人の会話が途切れる。






淳平が話かける。


淳平「そういえば、何か用だった?

電話を待ってくれてると思ったけど・・・。」



綾「えーっとね・・・・。」


淳平「付き合ってるわけだから、いつ来ても悪かぁない

けどな。」



綾「そうよね。」


綾「・・・。」



淳平「・・・。」

二人の会話が再度、途切れる。






淳平「誤解して欲しくないから、話すけど。

西野は友達の結婚式の後でここによっただけだから。」


綾「うん・・・。」



淳平(いまいち、信用してないみたいだけど・・・。

さっき涙こそ見せなかったけど、きっと涙目くらいになって

たから。)



淳平「さっき、西野と何があったか話すよ。」



綾「別に、いいわ。」



淳平「いいや、俺は知っておいて欲しいんだ。」



綾「・・・。」


淳平「西野は友達の結婚式出席の為に昨帰国して

今日、その結婚式の後に、ここにきてこの前の手紙

のことを謝りにきたんだ。」



淳平「手紙のことを気にしててさ、それで、俺がもうあの失恋から

立ち直ったから気にするなみたいなって言って、その後に東城とつき

合ってるって・・・。」



淳平「そうしたら、西野が怒って帰るって言って、一緒に玄関に

行ったら東城がドアを開けて、後は知っての通りなんだけどな。」



綾「つきあってるのだって、西野さんと別れたあとなのに

どうして怒るの?」



淳平「つきあってるっていうのはさぁ、言いにくいんだけど

・・・今日からじゃなくて・・・4年前からって嘘をついた

から。」



綾「さっきドアが開いたとき真中くんが私のことを綾って呼ぶから

何かあったと思ったけど、そうだったんだ。」



淳平「西野の悲しい顔を見るのがつらかったから嘘をついたんだけど

・・・東城をだしに使て悪い事をしちゃったな。」



綾「ううん、別に私のことはいいんだけどね。ただ、西野さんがね。」



淳平「・・・。」



綾「ごめんなさい。」



淳平「別に怒ってないから、特に謝るなって。」



綾「違うの、実は、私、さっき、真中くんの所に西野さんが来ている

のを知ってたの。」



淳平「だっ、誰に聞いたんだ?」



綾「それは、私の口からは言えないけど・・・。」




淳平「あの時ここに西野が来てたのを知ってたのは本内だけだから

唯から教えてもらったと思うけど。」



綾「分かっちゃったみたいね。

でもお願いだから唯ちゃんを怒らないでね。」



淳平「怒らないから。

それにもし怒ったとしても逆ギレされるのがオチだし。」



綾「そうね。

それで西野さんが来てたのを知ってね、彼女と私とを比べたら

断然綺麗で性格もいいし、絶対にお料理だって上手に出来ると

思うから、もしかして真中くんって西野さんとよりをもどしちゃ

うのかなって思うと、家でじっと電話を待つことができなくなっ

ちゃって、ここに来ちゃったの。

でも、大変な時に来ちゃったみたいで、本当に、ごめんなさい。」



淳平「俺って全然信用がないんだなぁ。

確かに高校時代の優柔不断な俺を知ってるから仕方がないかも

しれないな。」



綾「4年以上も分かれていたって言っても、お互い好きあっていた

わけだしそう関単に、割り切れるわけじゃないと思うから・・・。

それに、真中くんは、嫌われようとして、あえてあんな嘘をついた

わけだしとてもつらかったと思うから仕方ないよ。」



淳平(東城って何て優しいんだろう。)

淳平「今の恋人を前にして言う事じゃないけど、東城が言うように

すぐには
忘れる事はできないと思う・・・・だけど西野のことを忘れるよう

努力するから。」



綾「ううん、無理はしないでいいからゆっくりでいいのよ。

私も真中くんにフラれても、ずぅっと忘れられなかったわけだしね。」



淳平「そうか・・・、今朝東城の家で、あの時フッたことは謝らないっ

ていったけどそれを聞いちゃうと謝ったほうが良さそうだな。

本当にゴメン。」



綾「ううん、そんなつもりで言ったんじゃなくて・・・、あの、なんて

言えばいいのかな、好きになった人の事を忘れるのは難しいって事を言

いたかっただけなんだけど・・・。」



淳平「東城の言いたい事は分かったから、いいよ。

これで西野も俺なんかに会いに来たりはなしたりすることも無いだろう

しな・・・。

じゃぁ、この話は、おしまいにして、もっと明るい話をしようぜ。」



綾「そうね、私たち今日から付き合うことになったんだから、本当

ならもっと明るい話をしたいわね。」


綾(でも、真中くんさびしそう・・・・。)



淳平「そうだな、ところで、今日言ってた話だけど、何か思い浮かん

だこととかある?」



綾’「それって、水曜日で良かったんじゃなかったの?」



淳平「そうだけど、なんとなくさ。」



綾「そうね。実は1つあるの。」



淳平「それって何?」



綾「お互いの呼び方なんだけどね。東城とか真中くんじゃなく

てもっと恋人らしい呼び方ってあるのかなって思って。」



淳平「呼び方かぁ。東城は、俺のことをどう呼びたいんだ?」



綾「真中くんから言ってみて、その呼び方を参考にして決め

たいから。」



淳平が少し考えている。



淳平「そうだな、あっちの国の映画とか見てて、昔ッから

いいなって思ってたのがあるんだ。」



綾「海外の呼び方なの?」



淳平が真顔で・・・。

淳平「じゃぁ、俺は東城の事をハニーって呼ぶから、それに

あわせて、俺の事をダーリンって呼んでくれ。」


綾(嘘、冗談よね。)

綾「本気なの?」



淳平「ああ、本気だけど・・・嫌か?」



綾「嫌じゃないけど、ちょっと恥ずかしいかも・・・。」



淳平「慣れれば、平気だって。じゃぁ、早速練習してみよう。」


綾「えっ、今言うの?」


綾の質問を無視して、淳平が話しかける。

淳平「水曜日は2時に向かえにいくから、遅れないように準備

しておいてくれよ、ハニー。」



綾が顔を赤らめてうつむきながら、ためらいながら小声で・・・・。

綾「分かったわ、・・・・ダーリン。」


綾(二人しかいないのに、凄く恥ずかしい。これって人前でも

言わなきゃならないの?)



淳平「・・プーッ、・・・・ハハハハハ。」

淳平が笑いをこらえていたが、我慢しきれなくなって笑い出す。



綾「えっ、真中くん、これって冗談だったの?」



淳平「俺、普通の日本人だぜ。そんなこと言いいたい訳ないじゃん。」



綾の顔が恥ずかしさで更に赤くなる。

綾「もぉー、さっき本気だって言ってたから、呼んだのに。」



淳平「ゴメン、ゴメン、あまりにも場が重苦しかったから、それで少し

明るくしようと思って言ってみたけど、まさか本当に言うとは・・・。」



綾「真剣に呼び方を考えてたのに。」



淳平「じゃぁ、東城はどう呼んで欲しいんだ?」



綾が淳平に背をむけながら・・・。

綾「もう、知らない。」



淳平「だから謝っているじゃないか。機嫌を直してくれよ。

東城の呼んで欲しい呼び方で呼ぶからさぁ。」



綾(本当は『あや』って呼んでもらいたいけど、教えてあげない。)


綾が淳平に背を向けたまま話す。

綾「私は、怒ってるの。」



淳平が後ろから両腕を綾の首の周りに優しく腕を回して抱きつきながら

顔を綾の左耳の横に近づけて優しくささやく。



淳平「好きだよ、綾。」



綾「えっ・・・!?」

綾が、突然の予期せぬ言葉に驚き言葉を失う。



数秒の沈黙の後、淳平が綾から離れる。

綾が顔を赤らめ、振り返り、嬉しそうな顔をしながら・・・。

綾「そ、そんな甘い言葉でささやかれても騙されないんだからね。」



淳平「本当に悪かった。でもこれで分かったけど、東城は、『あや』

って呼んで欲しいんだな。

じゃぁ、俺のことも『じゅんぺい』でいいから。

ただ、東城が他の呼び方で呼びたいんなら別だけど・・・。」



綾が機嫌を直して。

綾「ううん、『じゅんぺい』でいい。」



淳平「じゃぁお互い名前で呼ぶことにしような。」



綾「そうね。」



淳平「ところで今日、弟さんにここまで送ってもらったみたいだけど

車は運転しないのか?」



綾「一応運転はできるんだけどね。家族がさせてくれないの。」



淳平「家族が?どうして?」



綾「私って、4年前にお父さんの車を駐車場に入れるときにね

家の塀ぶつけて車の一部を壊しちゃったことがあって、それ以

来運転させてくれないの。」



淳平「せっかく、免許があるのにもったいないなぁ。

えーと、今日は日曜で今9時だし、近くのスーパーは閉店してるな。」


綾「スーパーがどうしたの?」


淳平「スーパーの駐車場なら、運転の練習ができると思ってさ。

今から行ってみようぜ。」



綾「今からなの?」




淳平「そう、今から。」


淳平が車のキーを机の上から取り、二人で部屋を出た。


[No.1642] 2013/01/06(Sun) 21:14:47
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第28話 「Love Drive」 (No.1642への返信 / 28階層) - スタンリー

第28話「Love Drive」


淳平と綾は近所のスーパーの駐車場に停車している。


淳平「じゃぁ、俺は助手席にいるから、運転して。」


綾「うん。」

二人が席を替わる。


綾「運転する前に1ついい?」


淳平「何?」


綾「あの時あったぬいぐるみはどうしたの?」


淳平「夕方、家に帰ったときに、みんな車から降ろしといたから。

でも、車内が寂しくなっちゃたな。」


綾「私は、うれしいけど。でも、大丈夫なの?」


淳平「あのバイトは、もう止めるからいいんだ。

それに、綾がなにか自分のものを置きたいかもしれないからな。

そうだ、綾にこれをあげるよ。」


淳平が、ポケットから、車のリモコンドアロック付きのスペアーキー

を渡す。



綾「これって、車のカギじゃなないの?

どうして?」



淳平が照れながら・・・。


淳平「俺の車の指定席チケットみたいなもんかな・・・。

本当は、別の何か良いものを渡したいけど、今日付き

合ったばっかりで何も渡せるものがないからさ。」



綾「ううん、とてもうれしいよ。

私達、本当に付き合ってるって証拠みたいだからね。

本当言うとね、今日家に帰って眠るのが怖かったの。」



淳平「怖い?」



綾「明日の朝、起きたらね、今日のことが全部夢じゃないかと思ってね。

だから、この車のカギを私のベッドの近くに置いておけば、起きても夢

じゃないって思えるから・・・。

これで安心して眠ることができると思う。」



淳平「そうか。

それなら良かったけど・・・・・じゃあ、おしゃべりはこれ位にして

そろそろ運転の練習を始めようか。」



スーパーの駐車場で運転の練習を50分ほどする。



淳平「そろそろ、やめて家に帰ろうか?」



綾「そうね。

で、どうだった私の運転?」



淳平「最初はどうかって思ったけど、だんだん良くなってきた。

運転なんて慣れればどうってことないんだからさ。

あと、ちょっと練習すれば完璧だと思うよ。

だから、また一緒に練習しような。」



綾「うん、一緒に運転してるとね、なんとなくだけど運転が

すぐ上達するような気がするの。」



淳平「じゃぁ、ここから綾の家まで、自分で運転してみるか?」



綾「えっ、それはちょっと・・・・。」



淳平「冗談だよ。

席を替わろうか。」



綾「うん。」



二人が席を替わる。


淳平「送った後、家の前じゃできないから。」

淳平から綾に車内でキスをする。



二人がキスを終え、綾がその余韻に浸っている。


淳平「そろそろ行こうか?」



綾が顔を赤らめて・・・。

綾「うん・・・・。」




二人を乗せた車がスーパーの駐車場から車道に出る。







車内で。


綾「今日は、疲れたわね。」


淳平「いろいろあったからな。」


綾「そうね。」


淳平「これで、あとさつきが来てたら、もう俺の頭の中は滅茶苦茶

になってたよ。」



綾「北大路さん、夕方、私の家に来てたの・・・。」



淳平「なんで家に?」



綾「外村君から、西野さんと別れた話を聞いたらしくて、それで淳平

に告白する前に私に淳平のことをどう思っているのか聞きに来たの。」



淳平「さつきが俺じゃなくて綾のところに聞きに?

それでさつきに何て?」


綾「私、淳平と付き合ってるって言っちゃったの。

そしたらね、北大路さんが淳平のことをあきらめるって言ってくれたの。

あと、今日はこちらの実家に泊まって、あす京都に帰るって。」



淳平「さつきが・・・・あきらめるって・・・。」



綾「どうしたの?」



淳平「いや、この前会えなかったからさ、久しぶりにさつきと話してみた

いって思ってさ。

でも、やっぱ今日は無理だな。心に余裕がないからさ。」



淳平(西野とさつきがおれの前を去って行ったってことだよな。

彼女を選ぶってこういう事なんだな・・・・。)



綾「そうね、私も・・・・。」

綾(真中くん、何かさびしそうね。)



綾「ところでね、真中くん・・・じゃなかった淳平、平日だったら

いつ電話してもいいのかな?」



淳平「基本的にいつでもいいけど・・・でもバイト中は故意に電話にでない

時があるからなぁ。

今月の月・火は、朝から5時位までおそらく工事現場に出てるし、午後8時

から居酒屋でバイトで夜12時位かな。

水曜は午前中だけ現場でバイトだし。

木曜は現場は休みだけど午後8時位から居酒屋でバイトで夜12時だな。

金曜と土曜は、クラブだけでで午後6時から深夜まで働いてるけど・・・

といってもさぁ、角倉さんのトコで就職が決まったら、みんな辞めちゃう

からな。」



綾「3つもお仕事を掛け持ちしてたんだね。」



淳平「これに角倉さんからの依頼が加わるから合計4つってところかな。」



綾「できるだけお仕事の邪魔にならないように電話するからね。」



淳平「分かった。

で、そっちは?」



綾「私は、基本的にいつでもOKだからね。

もし駄目な時は、そう言うからね。」



淳平「ああ、分かった。常識の範囲内で電話をするから。」



綾「楽しみにしてるね。」



淳平の車が綾の家の前で停車する。



綾が、助手席のドアをあける。

綾「送ってくれてありがとう。おやすみなさい。」


綾が車を降りる。



淳平「ああ、おやすみ。」


淳平が挨拶をすると車を発進させる。


綾が淳平を見送ったあと、玄関から自宅に静かに入った。


[No.1643] 2013/01/12(Sat) 19:06:45
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第29話 「夢のグランド」 (No.1643への返信 / 29階層) - スタンリー

第29話 「夢のグランド」

綾が玄関から自室に行く途中の廊下で弟に会う。



正太郎「姉ちゃん、さっき男と会ってたろう?」



綾「そうだけど・・・・。」



正太郎「姉ちゃんから帰っていいって電話をもらう前に、マンション

から女が出てきたけど、あれって高校時代好きだった男の彼女だよな。

もしかして姉ちゃんが言ってた彼氏ってあの男ことなのか?」



綾「そうよ。」



正太郎「あれから4年以上も経ってるのに、ずぅっとあいつのことが好き

だったんだな。

前の彼女ってあの時と比べてまたすごく綺麗になってたけど、なんで男の

マンションから出てきて、ひょっとして、あそこで前の彼女との修羅場に

なってたんじゃないのか?」



綾「違うわよ、彼の家に行ったら、たまたま彼女が帰るところだっただ

けだし、彼本当に別れたって。」



正太郎「もし、そうだとしても、前の彼女があの時そこにいたわけだから

よりを戻しに来てたんじゃないのか?

あんな美人が本気であいつにアタックをかけたら、姉ちゃんまたフラれる

かもしれないから、あまりそいつに期待をしないほうがいいぜ。」



綾「もう、いいでしょ。

正太郎には関係ないんだから。

私は、お風呂に入って寝るからね。」

綾(せっかくいい気分で帰ってきたのに台無しじゃない。

もう正太郎とは当分口をきかないんだからね。)



綾は怒って自室に戻り着替えを取りに行き風呂場へ向かう。


綾が衣服を脱ぎ、浴室入り、体を洗い湯船に入る。


綾(今日一日でいろいろあったけど、私って真中くんの恋人になれたんだ。

でも西野さんって真中くんの嘘を本当に信じてるのかな。

もし、嘘だと分かったら、またよりを戻そうとするかもしれない・・・。

本当に正太郎のせいで、なんか不安になってきちゃったじゃない。

もう、はやく寝てこのことを忘れよう。)


綾が浴室をでて、体をふき、パジャマに着替えて髪を乾かし、自室に戻る。


綾がベッドのサイドテーブルに淳平から貰ったスペアキーを置いた後で

部屋の照明を消す。

綾がベッドのサイドテーブルに淳平から貰ったスペアキーを置き

ベッドの上で横になる。


綾が布団に入り今日の応接間での出来事を思いだす。


綾(真中君と恋人になれたんだ。

高校三年生のときの文化祭の時フられて、彼の大学受験の時に

あんな過ちをして彼をあきらめたけど・・・よかった、今日告白

して。)


綾が部屋の明かりを消す。

綾が今日の中学校でのグランドでの出来事を思い出す。

綾(中学三年生の時、西野さんへの告白を見た時は

恥ずかしいって思ったけど、私に対してしてもらえる

ととても嬉しかった。

これからも一生忘れない思い出になると思う。)

綾が小さなあくびをしてサイドテーブルに置いた車の

スペアキーを見て。

綾(おやすみ・・・・真中君、じゃなくて淳平。)


綾が眠りに入る。







綾の夢の中

小学校の運動会で綾がグランドの外周の外にビニールシート

に座っている。


隣に綾の子供の頃に似た眼鏡をした幼稚園児位の女の子が座って

おり、その後ろに綾の母と父が座っている。

その女の子が向こう側のトラックに徒競走の出走準備で並んで

いる淳平を小さくしたような男の子を指差して綾に話かける。


女の子「ねぇ、見てお母さん、お兄ちゃん次だよ。」

綾「そうね。あれっ、お父さんは?」


女の子がトラックのコーナー付近でビデオカメラを構えている

親達を指差して。

女の子「お父さんなら、ずぅっとあそこにいるよ。」


そのコーナー付近にいる親達の集団の中に、業務用に使うような

ビデオカメラに頑丈な三脚をつけて構えている淳平を見つける。


学校の先生「位置について。  ヨーイ。」

ピストルの音が鳴ると同時に淳平を小さくした男の子を含め

8人くらいの小学生が一斉に走り出す。




女の子「お兄ちゃん頑張れ。」


綾「頑張れぇ。・・・・あっ!」




トラックの最初のコーナーを回り、綾たちの座っている付近で

1位で走ってきた淳平を小さくしたような男の子が転び後の7人に

に次々に抜かれる。


膝を擦り剥き少しよろめきながら立ち上がるが他の走者はゴールする。

片足を少し引きずるように走り出すと周りから拍手の音が聞こえて

くる。


少しして、淳平を小さくしたような男の子がゴールすると更に大きな

拍手が聞こえてくる。

女の子「せっかく途中までは一番だったのにねぇ。」


綾の母「『転ぶ』ていうのは遺伝するのかしらねぇ。」


綾「それって私からって事?

もう、一生懸命やったんだから褒めてあげてね。」

綾の両親が笑っている。


少しして淳平が満足げに綾の座っている所にくる。


淳平「傑作が撮れた予感がする。

早く編集しないとな。

帰ったら一緒にやろうぜ。」


綾が呆れ顔で。


綾「まだダンスとか他の種目もあるんだから。」

淳平が笑いながらビデオカメラをビニールシートの上に置いて

女の子を抱きかかえて座る。



夢が終わる。






綾が目を覚ます。


綾(なに今の?

もしかして夢?

じゃぁ、昨日の事も・・・・?)


綾がベッドのサイドテーブルに視線を移して置いてある車の

貰ったスペアキーを見て安心する。





綾(よかったぁ。あれは夢じゃなくて。)


綾(グランドでの告白のインパクトが強すぎたからあんな夢を

見たのかなぁ。でもさっきの夢の中で、真中君が旦那さんで

男の子が小学生くらい、女の子が幼稚園くらいだったなぁ。

もしこの夢の話を真中君にしたらどんな顔をするのかなぁ。

夢の中での真中君って親バカだったなぁ。

でもこんな話をしたら付き合いだして間もないのに結婚を

迫ってるみたいだから・・・。いつか話せるときがきたら

それとなく話してみよう。)




綾が部屋で着替えて、ダイニングへ向かう。


綾「おはよう。」

綾の母「おはよう。朝食の準備ができてるからね。」


綾「うん、ありがとう。ねぇお母さん、お料理のことを教えて欲しいけど、いい?」


綾の母「いいけど・・・。でも、急にどうして・・・。

もしかして、彼でも出来た?」


綾「・・・うん。

それでね、やっぱりお料理とかできないとダメじゃないかなぁって思ってね。」



綾の母「そうなの。それで、どんな人なの?」



綾「中学校の時からの同級生なの。」


綾の母「そう、今何をしている人なの?」


綾「今はアルバイトなんだけどね、近々面接を受けて映像関係の

会社に就職予定なの。」


綾の母「綾ちゃんが好きになった人なら、きっといい人でしょうね。」



綾「それでね、まだお父さんにはまだ内緒にしておいて欲しいの。」



綾の母「それは構わないけど、お父さんに心配をかけるようなこと

だけはしないでね。」



綾「するわけないじゃない。」



綾が朝食を終え自室に戻り執筆を始める。


綾(これから、真中くんと平日に会うのなら夜になりそうだから

できるだけ執筆は午前中にしないとね。)






綾が執筆を始めてから2時間程してから玄関からチャイムの音がし

綾の母がドアホンで対応する。



綾の部屋の内線の呼び出しがなり、綾が受話器を取る。



綾の母「綾ちゃん、お友達がおみえになってるから

ちょっと玄関にいってもらっていい。」



綾「だれなの?」



綾の母「高校時代のお友達できれいな女の人みたいよ。」



綾「今すぐ、行くから。」

綾が受話器を置き、玄関に向かう。



綾(誰だろう・・・。)



綾がドアを開け、立っている人を見て驚く。





綾「西野さん」


玄関の前には、西野が立っていた・・・。


[No.1645] 2014/08/03(Sun) 21:01:31
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