日本離床研究会事務局
お疲れ様です。
2月26日東京講演「症例で学ぶ呼吸循環アセスメント60」にお越しいただきありがとうございます。
本日講師がご紹介したたくさんの症例から、多くの学びを得られたかと思います。
ところで、アメリカ国立訓練研究所の研究によって導き出された、ラーニングピラミッドはご存知でしょうか。
学習方法を学習定着率を元に試算したものです。
講義聴講を学習定着率5%、グループディスカッション50%、ティーチング90%と、より能動的、主体的な学習で教育効果が高いと言われています。
せっかくの学びのチャンス、皆さんの教育効果が最大限に高まることを、研究会関係者ともども切に願っております。
では早速症例です。
今回は設問が2つあります。
症例
80歳代 女性
心不全にて入院加療中
体重40kg
BP 84/55 mmHg HR 90 SpO2 98%(room air) KT 36.4℃
(血圧は以前より低めで推移している)
カテコラミン 塩酸ドブタミンDOBが2γ、塩酸ドパミンが3γ投与
尿量 900ml/day
胸部X-P:心拡大(CTR 60% 臥位)、胸水認める
設問1
この時の離床の判断として、
1、離床を開始する場合、段階的に離床を進めたいと思いますが、上記のデータから循環は安定していると考えられますか?
不安定だとした場合、離床は控えますか?離床を開始しないことでのリスクを考えられますか?
No.117 2017/02/26(Sun) 20:08:34
> Re: 2月26日東京講演「症例で学ぶ呼吸循環アセスメント60」ケーススタディ / 東京2期生です
設問1
・上記のデータから循環は安定していると考えられるか?
➡カテコラミン(DOA、DOB)を使用しているにもかかわらず血圧はSBP80台と低値であり、「血圧は以前よりも低めで推移している」ことから循環は不安定であると考えます。
・不安定だとした場合離床を控えるか?離床を開始しないことでのリスクは?
➡離床を開始しないことで二次的合併症のリスクが考えられます。年齢が80歳代と高齢であり、離床を行わずに臥位でいることで呼吸器(無気肺、下側肺障害、肺炎)や運動器(筋力低下、骨量低下)にも問題が出てくる可能性があるため、その日のバイタルやフィジカルアセスメントを確認しながら「可能な範囲」で段階的な離床を進める必要もあると考えます。
No.118 2017/02/27(Mon) 00:20:31
> 2月26日東京講演「症例で学ぶ呼吸循環アセスメント60」ケーススタディ / 日本離床研究会事務局
>東京2期生です
投稿ありがとうございます。
設問1
投薬、血圧より、複合的な評価から循環を不安定と考えられています。さらに臨床推論が深められるようアドバイスいたします。
この時の尿量、胸部X線はどうなっており、そこからどう解釈しますか。
様々な評価から全体のストーリーをつかむことは有益だと思いますので是非、考えてみてください。
また二次的合併症は総称して何というでしょうか。呼吸、運動器の弊害は把握されておりますので、それ以外に考慮できることはどんなことでしょうか。
ぜひとも皆さんで"学び"を深めていけたらと思います。
No.119 2017/02/27(Mon) 17:06:18
> Re: 2月26日東京講演「症例で学ぶ呼吸循環アセスメント60」ケーススタディ / 東京2期生
尿量に関して、1日で約1,000mlが理想であり、現在は900mlです。ドパミン3γを使用しており、電解質の異常が起きないようにゆっくり利尿を図りたいのではないかと考えています。現在の尿量としては悪くはないと考えました。
X線に関しては、CPアングルが鈍化している可能性があります。その為、その日の利尿が900mlであることから、もし利尿のコントロールがうまくいけていればCPアングルは鋭角に近づいてくると思います。鋭角へ向かっているのであれば段階的なベッドアップを進めても良いのかと考えます。
経過の中で、カテコラミン、DOBを使用し、循環動態も安定していないことが予測されるので、意識レベルはもちろんですが末梢の状態(手足の冷感・湿潤)の変化を確認、血圧が維持できるかを見る目的で橈骨動脈を触知しながら行います。
もし、開始時と比較して冷感・湿潤が出現してきた場合には離床は中止します。
デコンディショニングを防ぐためにチャレンジするも必要ではないかと感じました。
そして、次の日のバイタルや尿量、手足の冷感・湿潤、胸部Xの状態を確認し、経過を追うことも必要ではないかと思いました。
No.120 2017/02/27(Mon) 23:25:51
> 2月26日東京講演「症例で学ぶ呼吸循環アセスメント60」ケーススタディ / 日本離床研究会事務局
>東京二期生
そうですね。 尿量は、体重当たり時間(目安:40kg×24hour=960ml/日)でており、この症例ではおおむね排出できていると考えます。
また、電解質異常については、血液ガスデータ「0.6の法則」を用いて計算すると良いのでした。(今回の症例は血液ガスデータはありませんが、血液ガスデータについて詳細は完全マニュアルP100 をご参照ください。)
症例情報の胸部X線より、「胸水がたまっている」との情報がありました。肋骨横隔膜角(CPアングル)の鈍化、肺野が下方に凸の形をしていることが胸水のチェックポイントです。多量の胸水がある場合は圧迫性無気肺に注意が必要です。
このような状態で離床を見合わせては"デコンディショニング"を招く可能性が高いので、離床を進めていきます。離床することでワッサーマンの歯車を回し、全身状態の改善を図ることが必要です。
離床する際は、フィジカルアセスメントをForrester分類に照らし合わせ、サブセット?V,?Wである場合は離床を再検討するようにします。
また、翌日の評価も大切です。前日の運動負荷量が適切であったか評価します。心負荷による尿量の減少、浮腫、体重の増加に注意しましょう。
"デコンディショニング"については、多臓器に影響が及ぶことが問題となります。呼吸器、循環器、運動器以外にも、腸閉塞(イレウス)や褥瘡、起立性低血圧、低栄養、認知症の悪化等様々です。特に高齢者は予備能力が低く、診断以外に様々な合併症を併発している事が多くあります。そのため、早期より介入を開始し予防していくことが大切となります。
考え方の筋はしっかりしていますね。
是非、臨床判断する際にご活用いただき、他スタッフや患者さんご家族に、"今"行っているリハやケアの意義を"伝えられる"スタッフになると、、、
そして、そのことがご自身の"自信"につながっていただければと思います。
No.122 2017/02/28(Tue) 18:48:11
> ケーススタディ 設問2 / 日本離床研究会事務局
設問2を公開します。
設問1、設問2どちらに答えていただいてもかまいません。
(答える際は、文頭に設問1か2と明記下さい。)
設問2
その後、段階的に離床を開始してhead up 60°の時点で、
生あくび、顔面蒼白症状を呈したため、バイタル測定を行った。
BP 90/52 mmHg HR 95 SpO2 96%
血圧に大きな変動認めないが、起立性低血圧症状を疑い臥床状態に戻りました。
その時の対応として、
下肢挙上が必要でしょうか不要でしょうか?
意見交換できればと思います。
No.123 2017/02/28(Tue) 18:53:23
> Re: 2月26日東京講演「症例で学ぶ呼吸循環アセスメント60」ケーススタディ / 東京2期生です
設問2
下肢挙上は必要ではない
理由
現在起立性低血圧症状は出ているものの、血圧は90以上あり脳血流は保たれていると判断はできます。
生あくび、顔面蒼白症状があるということは、脳血流が一過性に低下して症状の出現があったとは思われます。
臥床状態に戻った後の症状の経過を観察し、脈拍の触知と血圧の変化、軽減しているかなどを観察していきます。
この方は心不全の方であるので、下肢の挙上によって静脈関流量が増加し、心負荷が増加し心不全の悪化や不整脈を招く恐れがあるので実施はしない方がいいと考えました。
下肢の挙上は緊急処置としては実施されることがありますが、あまり推奨はされていませんし、このケースの場合は適切ではないと考え、下肢挙上はしないと判断しました。
No.126 2017/03/02(Thu) 12:08:54
> ケーススタディ / 日本離床研究会事務局
>東京二期生です さん
投稿ありがとうございます。
初期対応について要点をしっかり押さえられています。
まずは血圧の変動を認めなくても、"生あくび""顔面蒼白"の症状を優先したケア・リハビリは大切になってきます。臥床に戻し、経過観察、再度フィジカルアセスメントを取りましょう。
また下肢の挙上に関して、
講義の内容を反映した答えがしっかりできています。
心不全の方に対しては、「心臓への負荷(前負荷)が挙がってしまうため、下肢挙上は必要ない」でしたね。
下肢挙上に対してはたくさんの意見が考えられるかと思います。
是非考察してみてください。
No.130 2017/03/06(Mon) 16:56:14
> ケーススタディ 模範回答 / 日本離床研究会事務局
ケーススタディ参加の皆様
お疲れ様でした。
今回のケーススタディの模範解答を公開いたします。
症例
80歳代 女性
心不全にて入院加療中
体重40kg
BP 84/55 mmHg HR 90 SpO2 98%(room air) KT 36.4℃
(血圧は以前より低めで推移している)
カテコラミン 塩酸ドブタミンDOBが2γ、塩酸ドパミンが3γ投与
尿量 900ml/day
胸部X-P:心拡大(CTR 60% 臥位)、胸水認める
設問1
この時の離床の判断として、
1、離床を開始する場合、段階的に離床を進めたいと思いますが、上記のデータから循環は安定していると考えられますか?
不安定だとした場合、離床は控えますか?離床を開始しないことでのリスクを考えられますか?
この症例は収縮期血圧90mmHgを切っているものの、以前より低めであり、カテコラミン投与下で循環は安定していると考えられる。尿量は体重あたり時間排出している。このような状況下で離床を控えていてはデコンディショニングを招く可能性が高い。また胸水に対してもワッサーマンの歯車を考慮しても離床によって歯車を回し、全身状態の改善を図るアプローチが優先度の高い考えだと思います。
設問2
その後、段階的に離床を開始してhead up 60°の時点で、
生あくび、顔面蒼白症状を呈したため、バイタル測定を行った。
BP 90/52 mmHg HR 95 SpO2 96%
血圧に大きな変動認めないが、起立性低血圧症状を疑い臥床状態に戻りました。
その時の対応として、
下肢挙上が必要でしょうか不要でしょうか?
意見交換できればと思います。
まず、血圧変動が認められなくても、症状を優先したケアは大切ですので、臥床に戻ることは正解だと思います。
下肢挙上については、
色々な意見があり、
・心不全の方には、心臓(前負荷)への負担があがってしまうため、下肢挙上は必要ない。
・肥満傾向の方の場合には、下肢挙上による腹部臓器の圧迫により呼吸状態を悪化させてしまう可能性があるので、下肢挙上は注意が必要。
・下肢挙上をしてもわずかにCO,CI,血圧が上昇するだけで一過性である。
・下肢挙上による静脈還流量は下大静脈に貯留され、心拍出量に影響を与えず血圧上昇にはあまり効果はない。
参考文献:
吉岡 哲 他:受動的な下肢挙上が下大静脈横断面積および一回拍出量に及ぼす影響.川崎医療福祉学会誌.Vol.19 No.2 :285-290.2010.
Halm MA et al:Trendelenburg position: "put to bed" or angled toward use in your unit? Am J Crit Care.No;21(6):449-452.2012
以上より、
下肢挙上による血圧上昇は効果があまり期待できず、心負荷や呼吸状態を悪化させる危険性もある。
安易に血圧低下から下肢挙上というケアも危険であり、アセスメントしながら行うことが良いと考えます。
次回の離床時の対策として
・弾力包帯による圧迫
・筋ポンプ運動・呼吸ポンプ運動の考慮
・脱水・輸液のアセスメント
上記の対応を取りながら、段階的に離床を進めたいと思います。
いかがでしたでしょうか?
また次回開催の際はご協力をお願いします。
No.132 2017/03/10(Fri) 15:36:22
> Re: 2月26日東京講演「症例で学ぶ呼吸循環アセスメント60」ケーススタディ / 東京2期生。
質問があります。
設問1の模範解答で「この症例は収縮期血圧90mmHgを切っているものの、以前より低めであり、カテコラミン投与下で循環は安定していると考えられる。」とありますが、この症例は「以前より低めである」ことが良い事なのでしょうか?カテコラミンを投与しているにも関わらず、血圧が以前よりも低くなっているのであれば、循環は不安定な印象を持ってしまい、離床を進めることに不安を感じてしまうのですが。
今後の臨床のためにもご指導頂けると幸いです。
No.133 2017/03/11(Sat) 22:16:18
> ケーススタディ追記 / 日本離床研究会事務局
追記)
症例の血圧につきまして
BP 84/55 mmHg HR 90
(血圧は以前より低めで推移している)
の文章ですが、"血圧は以前より「も」"低めであると誤認識しやすい表現としておりました。
正しくは"血圧は低いですが、大きな変化はなく、以前と同じように推移している"状態です。
誤解を与える表現につきまして、心よりお詫び申し上げます。
No.134 2017/03/14(Tue) 17:03:15