パソコンの前にばかり座っていたので、音楽モードに切り替えようと近所の寺に行った。 私は落ち葉の匂いが好きだ。暮れ行く寺に江戸時代からある大きな墓がモノリスみたいに あちこちボンヤリうかびあがる。でも古いお墓は既に寺の雑木林と同化しているので 生々しくない。暗さに目が慣れると、日没後の微かな明るさも....かなり明るい。 左の方からヒイラギの花の良い香がした。
5時。寺の鐘が鳴る。 鐘の音は長いスパンで半音フラット(♭)してはまたもとの音に戻ることを繰り返した。 日没。境内にも電気がついてしまう。なかなか本当の暗やみを体験できない。 ....とはいえ誰かさんが供えた線香の火が赤々と浮かび上がる闇。 電気の無い時代は、人と物の怪の交代する微妙な時間と感じたであろうな。 寺を後にすると小坊主さんが山門の大きな扉をギギー、バタン・・・と閉じた。 境内に魔界が入り込まない様にするのだな。 寺の入り口の花屋さんも店じまいして自転車で帰宅して行った。かつて、 外洋の船の仕事をした友人のピアニストが、甲板の上で「本当の暗やみ」を体験した... ...と言っていたのを思い出した。星や月が凄く明るいんだろうな。
一方、帰りの商店街はギラギラ電気。 日本の山野草の苗を売っている花屋を発見したので、 大文字草とホトトギス(植物名)を買ってみた。もう花は終わらんとしているが、 来年また花を咲かせるという。 帰宅して水をやったら、 なるほど日本の湿り気が似合う植物だった。茶道の花みたいで趣がある。 すっかり冬になったな、と思った。
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No.33 - 2004/11/14(Sun) 18:05:58
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