尖閣諸島 日本領の決定的証拠 夕刊フジ2010.09.25
沖縄・尖閣諸島付近の日本領海で海上保安庁の巡視船に中国漁船が衝突した事件で、中国側による執拗かつ理不尽な挑発が続いている。国連総会の期間中の菅直人首相(63)と温家宝首相(68)との日中首脳会談も見送られた。こうした中、中国政府がかつて、尖閣諸島を「日本領」と認めていた歴史的文書が注目されている。恫喝と策謀で自国領土を拡張してきた歴史。「黒を白」と言い張る背景にも迫った。
「中国は、海底資源の宝庫とされる南シナ海の南沙諸島を次々と実効支配していった。まず、漁民に化けた軍人を送り込み、既成事実を積み重ね、最後は軍事的に制圧した。今回もそれに似ている。公務執行妨害で逮捕された中国人船長の正体も怪しい」 こう語るのは、世界約120カ国をまわり、海外ルポや湾岸戦争など国際事件を取材してきたフォトジャーナリストの山本皓一氏(●)。ここ20年近くは「国境の島々」も取材対象としており、2003年8月には、尖閣諸島・魚釣島に上陸した経験を持つ。 それにしても、事件発生以降、中国側の挑発はエスカレートするばかりだ。温首相は訪米中のニューヨークで「釣魚島(魚釣島の中国名)は中国の神聖な領土で、船長を拘束したことは完全な違法行為だ。日本が独断専行で(中国人船長への司法手続きを)進めるなら、中国は一層の行動をとる」などと、ヤクザまがいの言動を披露した。 こうした中、山本氏が沖縄県石垣市役所で探し出した歴史的文書が注目されている。中国政府(中華民国)が1920年(大正9年)、魚釣島や石垣島の島民らに送った「感謝状」である。 前年の19年冬、中国・福建省から船出した中国漁船「金台丸」が暴風雨に遭遇し、魚釣島に漂着座礁した。船長以下31人は魚釣島の島民に救助され、手厚い保護を受け、一度、石垣島に送られた後、約半月後に台湾経由で福建省に帰ることができた。 尖閣諸島は1895年、日本政府がどの国にも属していないことを確認して領有を宣言した。漂着事故発生当時、魚釣島では海産物の缶詰・加工やアホウドリなど海鳥の羽毛採取などで栄えていた。最盛期、同島には99戸、248人もの日本人が暮らしていた。 事故翌年の20年5月、中華民国駐長崎領事・馮冕から、海難救出に尽力した魚釣島や石垣島の島民ら7人に感謝状が届いた。山本氏が見つけたのはその一枚。そこには、「深く感服する」といった感謝の言葉とともに、海難発生場所としてこう記されている ≪日本帝国沖縄縣八重山郡尖閣列島≫ まさに、中国政府が尖閣諸島を日本領土と認識していた決定的証拠といえる。石垣市役所には他にも、当時、漂着事故に対応するため、沖縄県と内務省、外務省などが交わした公電なども存在しているという。 中国が尖閣諸島の領有を主張し始めたのは、それから約50年後の1971年。「天然ガスなど海底資源の存在に気付いたため」(外務省筋)といわれている。 山本氏は、尖閣をはじめ国境の島々の取材を続けてきた経験から、「中国は、この感謝状にも難癖をつけてくるだろう。そういう人々だ。彼らは尖閣諸島を自国の領土にする企みをあきらめていない」といい、こんなエピソードを披露した。 「中国は尖閣周辺海域に『尖閣は中国の領土』と文字を掘り込んだ石を何個も投げ入れている。数十年後、100年後に発見されたときに、『これこそ、尖閣が中国領土という歴史的証拠だ』と主張するためだろう。中国は今回、政府と軍、民間が一体となって攻勢を仕掛けている。日本が弱体化しているため『チャンスだ』と見たのだろう」 確かに、最近、日本の領土絡みで看過できない出来事が続いている。 ロシア連邦議会は今年7月、9月2日を「対日戦勝記念日」とする法案を可決した。日本は1945年8月15日、ポツダム宣言を受諾して降伏した。ところが、ソ連(ロシアの前身)は18日から千島列島侵攻を開始し、その後、南樺太や北方四島も占拠したのだ。日本降伏後の軍事行動は国際法上認められないが、ロシアは9月2日を対日戦勝記念日とすることで、北方領土占拠を正当化しようとしているとみられる。 また、韓国も現在、日本固有の領土であるにもかかわらず不法占拠している竹島のヘリポートを大規模改修している。改修後のヘリポートは、これまでの2・5倍となる重量25トンの軍用輸送ヘリコプターが離着陸でき、警察1個部隊(約40人)の緊急派遣が可能になるという。 山本氏は「中国だけでなく、ロシアや韓国までが同時期に攻勢を仕掛けてきているのは、日本の民主党政権が軽く見られている証拠。鳩山由紀夫前首相は『日本列島は日本人だけの所有物じゃない』と信じられない発言をした。外国人参政権も推進している。各国とも『日本はいま、何をやっても大丈夫だ』と思っているのだろう」といい、こう続けた。 「戦後60年間、政治家もマスコミも国民も、領土や国境、国防に無関心過ぎたツケが回ってきた。外交では『相手が引けば押す』のが常套手段。断固とした抗議・主張をしなければ、既成事実を作られ、どんどん入り込まれる。菅首相らが『お互い冷静に』などと言っている場合ではない。戦略を持って世界に毅然とアピールすべきだ」
【やまもと・こういち】1943年香川県生まれ。フォトジャーナリスト。日本大学芸術学部写真学科卒業。出版社勤務を経て、フリーに。東西ドイツ統一、ソ連崩壊、湾岸戦争など、国際事件をカバーする一方、アマゾンやパタゴニア、シベリアなどの極地取材も行う。「田中角栄全記録」(集英社)、「日本人が行けない『日本領土』」(小学館)、「国境の島が危ない!」(飛鳥新社)など著書多数。2004年講談社出版文化賞写真賞受賞。日本の国境の島すべてに上陸した唯一の写真家。
●尖閣諸島問題で受けたインタビューおよび写真提供 <テレビ> フジTV 「知りたがり」 フジTV「特ダネ」 フジTV「Mr,ニュース」 日本TV 「すっきり」 毎日TV 「知っとこ」 TBS 「Sunday Japon NHK インタビュー
<新聞雑誌掲載> 9/22 週刊FRIDAY グラビア4ページ 9/23 週刊ポスト コラム 9/25 夕刊フジ 尖閣諸島は「日本領土」の証拠発掘 9/28 日本の選択 booklet(単行本) 10/05 週刊現代 グラビア8ページ 10/05 夕刊フジ 渋谷大規模デモ 10/06 月刊ウィル グラビア15ページ 記事8ページ 10/08 SAPIO 写真掲載 10/12 POST. グラビア2ページ掲載。活版4ページ 10/13 10/13 夕刊フジ インタビュー
|
No.69 - 2010/10/15(Fri) 01:58:30
|