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記事No.15に関するスレッドです

10年5月14日  第9回鳩森薪能(鳩森神社能楽殿)    (感想) / 兎谷
狂言『蚊相撲』三宅右近・三宅右矩・三宅近成

近成さんの蚊の精は、どっしり構えて、「ぷ〜ん」と急に可愛くなるのが良い感じ。
右近さんの大名は、「人を8千人かかえよう」のあたりの剛毅な雰囲気がとても似合っていた。


『景清』櫻間右陣・阪本昴平・村瀬提・村瀬慧・松田弘之・住駒匡彦・國川純

通常の能舞台と違って、『揚幕』が正面を向いている。しかも高さがないので、『作り物』はナナメに倒さないと、出し入れ出来ない。。そんなところに薪能らしさを感じてしまう(苦笑)。
ワキツレはしっかり、子方(今日の人丸役は子方でした)は伸びやかに、綺麗な『次第』。ワキツレ『着きゼリフ』が硬いのは残念。シテはどっしりと抑えて、老人らしさの有る謡。「背くとならば(2回目)」で『引廻シ』が下り、ゆっくりと『シオル』姿も自然。シテ「秋きぬと」以降、静かで、億劫そうな返答は人を遠ざけたい感じで、「詳しきことをば」と追い返そうという意思がはっきり。
「不思議やな」と、驚きを含んだつぶやきも、「馴れぬ親子を」としみじみとした雰囲気も、地謡「名のらで過ぎし」で『シオル』姿も男らしさが有りつつも儚い。ワキツレはしっかりとワキを呼ぶと、登場したワキは幕の前で返答(『橋掛リ』がほとんど無いから)。。しかし、ワキもワキツレも棒読みみたいな会話。。
ワキ「言語道断」としっかりと落ち着いて話すが、ここも少し硬いかも。。ワキツレ・子方は『ワキ座』の方に座ると、ワキは『作り物』に寄って、「景清の渡り候か」と常の様に扇で2回叩くと、シテは「かしまし」と言いつつ左の方に顔を背けて、煩わしそう。
「千行の」としっとりで、「その上我が名は」と次第に力が入っていく感じが良く、「また腹立ちや」と膝を打つと、杖を持って立ち、『作り物』を出て、『正中』に座る。
落ち着いた感じに戻り、「いやさようの者は」と偽るとうしろめたさがのぞく。
子方「のう自らこそ」とシテに寄って座り、伸びやかに強い謡がとても上手く…子方の方が哀れさが増して更に効果的。
シテ「今までは」と仕方なく名のる様子で、「あらはるべしと」で子方の肩に手をかけるのが優しい。
地謡「あはれげに古は」と、どっしりと抑えて美しく、「その報に」と見えない目で見つめる様に子方の方向く姿が印象的。
子方は『ワキ座』に戻り、ワキの申し出にシテは静かに答え、“床几”にかける。
抑えたどっしりとした『語』で、「源氏の兵」と右の方を向く姿が凛々しいが、「案の打物」での『数拍子』や「冑のしころを」と掴むようしたり、「飛びかかり」と扇を前にして立ち、引くように下に座るのもあまり力強さや勢いを感じられなかった。
「昔忘れぬ」と抑えた地謡は綺麗。(ワキツレが幕の方に行ったら勘違いしたようで、幕が上がりかけた。。)
「命のつらさ」でシテと子方は立ち、シテは子方の背中に手を添えてゆっくりと送り出すようにする様子も優しく名残を惜しむようで、「聞き残す」と子方と2人で向き合って『シオリ』、子方は幕へ、シテはそのまま『中正』の方に向きを変えて静かに終わった。

始終老人らしい雰囲気で、しっとりと昔を語る…といえばそうかもしれないが、もう少し力強いところが有ったら良かったのに。。



ちなみにこの日は、初めに、実行委員長の挨拶、連吟『弓八幡』(地元の小学校の子供たち…女の子が多くて華やか)、区長の挨拶と、パパッと進行して手際が良くっていいなぁと思っていたら、右陣さんの解説が思いのほか長め。。
あらすじ、というか、けっこう詳し目にストーリーを話してました。。
ここの薪能は初めてだったのですが、開場10分前くらいまでガラガラだったのに、開場時間にそこそこの列が出来、結局、見たところ満席。途中わずかにパラパラと雨の気配。。しかしそれ以上降り出す事もなく無事終了。

No.15 - 2010/05/30(Sun) 02:38:36