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花の鏡 其ノ二

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11年6月11日  普及公演(国立能楽堂)  (感想) / 兎谷
『熊坂・長床几・青野ヶ原道行』金剛永謹・高安勝久・深田博治・寺井久八郎・曽和正博・佃良勝・桜井均

ワキは静かに『一ノ松』まで出、どっしりと『名ノリ』「粟津の森も」で舞台の方にゆっくりと進んで、リアルに道行の感じを出す演出だが、(小書:青野ヶ原道行)特に面白さはなく、五番能でもやるなら変化がつくが、単独での上演ではあまり意味がない気がした。
しかし、小書がついたことで、ワキはいつもよりやる気になったのか、良い雰囲気だったので、結果的には正解。

地謡『クセ』がさらり目なのに、若干かったるそうに聞こえたのは残念だが、シテはゆったりと威厳が有って、永謹さんのまま、と言う気もしないではないが、役柄がよく似合っている。
『出端』で登場したシテは『一ノ松』でどっかりと謡い出し、型も綺麗だが、型に移行する繋がりというか、直前の部分の動きがちょっと煩い。
シテ「さても三条の」で、床几にかけると、地謡「そのまま見えず形も失せて」まで座りっぱなしで、長刀を使う(小書:長床几)のは大変そうだが、はっきりとした型の金剛流だからこそ、座っていてもわかり易く、十分楽しめた。


他に狂言『子盗人』石田幸雄・高野和憲・野村万作。

No.132 - 2011/09/17(Sat) 04:34:06
11年6月6日  能楽研鑽会(国立能楽堂)  (感想) / 兎谷
『箙』高橋憲正・矢野昌平・村瀬提・村瀬慧・村井一之・小野寺竜一・大村華由・亀井洋佑

シテの抑えた『次第』がとても美しく期待したが、その後『中入』までずーと暗いまま。
正直『箙』とは思えず。
一部分は、高橋さんらしいなびく様な謡い方をしていたが、…それを抑えているのか、たまたまか…謡いにくそうにかっちりと謡っている様に感じたのは気のせいだろうか…。
後は、型の少ない宝生で、なぜ忙しそうに見えるのか不思議なくらい、バタバタしていたが、若者らしい颯爽とした部分も有ったし、無難にこなそういうのではなく、懸命に演じていたので、これからに期待。


他に、狂言『蝸牛』内藤進・岡聡史・村井一之。
舞囃子『鶴亀』坂口貴信・栗林祐輔・飯冨孔明・大倉慶乃助・林雄一郎、『安宅』本田布由樹・栗林祐輔・田邉恭資・大倉慶乃助、『半蔀』山階彌右衛門・杉信太朗・大山容子・柿原孝則、『春日龍神』浅見重好・小野寺竜一・岡本はる奈・柿原弘和・大川典良。

No.131 - 2011/09/17(Sat) 04:31:41
11年5月19日  梅若研能会(観世能楽堂)  (感想) / 兎谷
『富士太鼓』梅若紀長・梅若志長・宝生欣哉・善竹大二郎・藤田次郎・観世新九郎・大倉三忠

前シテは登場から暗く、不安げな雰囲気、それでもアイとは、穏やかに女らしくさりげないのも良い。
事実を知ってワキの方に『ツメ』ると迫力が有るが、子方と一緒に『シオル』悲しげな様子や、形見の装束を見つめるいとおしげな姿が美しい。
しかし、『物着』後は、恨みを晴らそう、ということなのは分かるが、はっきりとやり過ぎている気がした。
最後の「暇申して」と“鳥兜”と“舞衣”を脱ぐ姿がとても色っぽくて綺麗だった。


『大會』八田達弥・梅若久紀・梅若昌功・大藏吉次郎・大藏教義・宮本昇・榎本元・小野寺竜一・鵜澤洋太郎・原岡一之・吉谷潔

イスの『作り物』の形がいつもと違うので、手作りだな、と気が付いたが、終演後ブログを拝見したら、羽団扇も手作りだそうで…ぜんぜん気が付かなかった…上手すぎる。。

前シテはどっかりと力が有る者、という感じで、天狗の風格十分、かといって重くなる事はなく、メリハリをつけてさらりと中入。
後シテはゆったりと貫禄のある登場。“面”を2つかけているので仕方がないが、声がややこもりぎみに聞こえたのは惜しい。
ゆったりと進行して、ワキが礼拝すると、そこから急に、慌てた感じに変化するのは、わかりやすく、やたらと可愛い!(前シテの貫禄から言って、ちょっと小物っぽすぎる気もしたが、可愛いのもそれはそれで良い。)
『物着』はとても素早く、余裕が有ったが、ツレが登場すると、立って、被いていた衣をパッと脱ぎ捨てるはずが、引っかかってしまったのにはびっくり。(後見がすばやく取り去り、問題なく進行したのはさすがだった。)
最後はさらりと、大きな型が続いて楽しめた。

ブログにも書かれていたが、大成版と万三郎家の装束附が違うとのことで、梅若の謡本を見てみたら、それもちょっと違っていたので、違うところだけ書き出すと、
大成版:袷狩衣大水衣重ネル、掛絡、羽団扇。
万三郎家:袷狩衣、上ニ大水衣ヲ重ネルモ、掛絡ナシニモ、羽団扇。
梅若本:袷狩衣、上ニ大水衣着ルニモ、掛絡、魔王団扇(羽団扇ニモ)。
魔王団扇より羽団扇の方がどう考えても天狗らしいですね。


他に仕舞『嵐山』遠田修、『俊成忠度キリ』伊藤嘉章、『江口キリ』加藤眞悟『龍虎』梅若泰志・長谷川晴彦。狂言『清水』善竹十郎・善竹富太郎。

No.120 - 2011/09/13(Tue) 03:57:23

Re: 11年5月19日  梅若研能会(観世能楽堂)  (感想) / 神宮の者
謡本の違いで、装束附が違いが勉強になりました。
No.123 - 2011/09/13(Tue) 23:00:09

神宮の者さま / 兎谷
コメントありがとうございます。
…見所の者さま、ですよね。回数は減っても、今でも十分見てらっしゃるじゃないですか。
今まで通り、見所の者と名のられれば良いのに。。

No.129 - 2011/09/17(Sat) 04:22:25
11年6月3日  日経能楽鑑賞会(国立能楽堂)  (感想) / 兎谷
『天鼓』友枝昭世・宝生閑・野村扇丞・一噌仙幸・成田達志・柿原祟志・金春國和

今日は小書なしだが『サシ』〜『上歌』なし。
静かで寂しげでも浅見さんの様な沈みこむ暗さではなく、どこかあきらめてしまったような、ドライな雰囲気。
抑えてたっぷり目の地謡『クリ』で大小前に座ると、シテ『サシ』も静かで空しげ。
立って“羯鼓”を見つめる姿が美しく、“一畳台”に上がって座り、しっかりと1つ打つと、“撥”を落として『正先』へ行き、前をまっすぐに見つめると、その視線の先にいる皇帝や、きらびやかな室内の様子が見える。
後シテはしっかりの『一セイ』、シテ「嬉やさては」で楽しげに『正中』に進み、打つ様子も舞う様子も明るく爽やかで、ややしっかり目の地謡でもさらりと楽しめた。


他に狂言『蝸牛』野村萬・野村太一郎・野村万蔵。

No.128 - 2011/09/17(Sat) 04:16:30
11年6月2日  日経能楽鑑賞会(国立能楽堂)  (感想) / 兎谷
『天鼓・弄鼓之舞』浅見真州・宝生欣哉・石田幸雄・一噌庸二・大倉源次郎・亀井忠雄・観世元伯

『作り物』の鼓が常の物ではなく、大きい。
これを見た時には知らなかったので、なんで大きくするのだろうと不思議だったし、鼓というより太鼓に見えて、好きではなかった。
その後調べたら、古い“羯鼓台”の作り方だと判明、ひとつ昔の謡本『富士太鼓』に載っていた。(写真)

小書がついているが、省略なしでむしろ重めの前場。
子供を失った親の悲しい絶望的な気配で、ひたすら暗く暗く演じられる(だからと言って長くは感じなかった)。
後は一転して可愛い天鼓だったら最高だと期待したが、『作り物』が大きいからかもしれないが、さらりとしていても力強く感じられ、青年天鼓といった様子。
綺麗だったが、やっぱり天鼓は可愛い方が良いな、と思ってしまう。


他に狂言『蝸牛』野村万作・石田幸雄・深田博治。

No.126 - 2011/09/17(Sat) 04:12:25

この日の羯鼓台はこんな感じ。 / 兎谷
ちょっとアレンジバージョンでした。
No.127 - 2011/09/17(Sat) 04:13:26
11年5月29日  巨福能(建長寺龍王殿)  (感想) / 兎谷
『葵上・梓之出』橋岡久太郎・松原章・安田登・高橋正光・藤田貴寛・森貴史・高野彰・徳田宗久

久太郎さんは仕舞でしか拝見した事がなく、能は初めて。
仕舞では感じなかったのだが、手足の角度や細かい仕草が驚くほど久馬さんに似ている気がする。
親子だし師匠だし、当然なのだが、似せようというのではなくて、無意識に似てしまう自然さなのが良い印象…もっとも私は久馬さんもそんなに見てはいないが…。
立ち振る舞いがぎこちないて揺らぎまくるし、身分のある女という雰囲気ではないのだが、ギャルっぽい感じがかえってリアルな女の露骨な嫉妬心の様で、面白い。
地謡が4人だったが、かえってまとまりが有って聞きやすかった。

No.125 - 2011/09/17(Sat) 04:05:02
11年5月28日  潤星会(国立能楽堂)  (感想) / 兎谷
『花月』山田夏樹・工藤和哉・大藏千太郎・栗林祐輔・鳥山直也・大倉栄太郎

シテは謡は安定せず、上手いとは言えないが、さらにまったりとした地謡に負けず、さらりとした型なのがとても良い。
それでいて、しっかりとした足拍子や、大きな型が金剛流らしく、好感がもてたし、何より、"羯鼓”を打つ様子に構えるところがなく、楽しかった。


『船弁慶・白波之伝』山田純夫・町田遼・宝生閑・大日方寛・野口琢弘・大藏教義・松田弘之・幸信吾・高野彰・徳田宗久

最初、暗い雰囲気のシテは、寂しさよりも老けたような印象。
しかし、舞い始めると、女らしく儚げで、『二段オロシ』で子方を見つめ、『シオ』る姿も美しい。
舞い終わって“烏帽子”を取り、「涙に」と『両シオリ』すると、つっぷして泣き崩れている様に見え、丁寧なアイにささえられて、『中入』という流れにふさわしい。

ワキ「あら不思議や海上に」と、緊張感が有って、期待が高まるが、シテは登場していきなり絶句。。
「思ひもよらぬ」とあたりを見て、下がって幕に一旦消えるのもたどたどしい。
早笛で再び登場してからは、地謡はさらり、シテはしっかりな謡で、大きく派手な型が続き、面白い。
最後は『橋掛リ』を左に2回、回りながら幕の方に移動し、後ろ向きに下がって消えると、ゆったりと幕が下りたのは余韻が有って良かった。


他に狂言『口真似』大藏吉次郎・榎本元・宮本昇

No.124 - 2011/09/17(Sat) 03:59:30
11年5月27日  代々木果迢会(代々木能舞台)  (感想) / 兎谷
『歌占』浅見真州・武田友志・武田章志・一噌隆之・大倉源次郎・亀井忠雄

浅見さんは最初から優しさのある普通の人、という感じがして、特別な経験の持ち主という感じがあまりしない。しかし、それに違和感はなく、最後までこの“普通の人”という気配がとても効果的に利いていた。
訪れた子供がわが子だと知ると、とたんに父親の気配に変わって嬉しそう。
『歌占』というと、どうしても、地獄のさまを語り舞う、その部分に注目してしまうが、その部分は比較的冷静で、使命として語っている感じで、舞っていても、やはりそれは過去の経験を一歩引いて見せている気がした。
語り終えて親子で帰っていく様子がとても良い雰囲気で、『歌占』も親子再会の物語だったと、今更感じさせられた良い舞台。


他に狂言『呂蓮』野村万作・深田博治・高野和憲
(小謡・浅見真高→ナシ。)

No.122 - 2011/09/13(Tue) 04:07:39
11年5月21日  東京金剛会(国立能能楽堂)  (感想) / 兎谷
『羽衣』見越文夫・安田登・野見山光政・高橋正之・槻宅聡・住駒匡彦・柿原光博・小寺佐七

とても遠くから響くような『呼掛ケ』は良かったが、登場すると、寂しげなのは分かるが、ちょっと大人し過ぎて高貴な雰囲気は弱い。
シテ「あら嬉しや」から明るく変化したのは良いが、天女というより普通の人のような感じ。。
“面”がやや『クモリ』ぎみだったせいか、暗く見えてしまったのと、足拍子や、前に出る直前に身構える様な、不自然な感じがしたのがしたのも、残念。


『弱法師』宇??通成・宝生閑・山本則俊・中谷明・古賀裕己・安福建雄

シテ『一セイ』は静かで、「や、花の香の」と気づいたり、香りをしみじみ感じている雰囲気も良く、大人っぽく落ち着いた雰囲気。
地謡『クリ』で『正中』に座ると、しっかりとした気配だし、シテ「万代に」と静かに抑えた謡いも良いが、続く地謡はまったりとして(ちょっと怪しかった?)残念。
地謡「須磨明石、紀の海までも」で『橋掛リ』の方を向き、「見えたり」と『ツメ』た後姿に味わいが有ってとても印象的。
しかしその後はさらり目で、地謡「貴賎の人に」と『角』の方に出て、足拍子を1つ踏んで「まろび」と両手を頭をかかえる様に上げて、下がる型も、綺麗だけれど形式的な感じがしてしまい残念。
「あらぬ方へ」とさらりとした地謡で向こうを向いたり、引き止められて、「何をかつつむ」とワキと二人でやや上の方を見て鐘の音を聞いているなどは辺りの景色が見えるようで美しかった。


他に仕舞『西王母キリ』榎本健、『田村クセ』見越英明、「雲雀山クセ』元吉正巳、『箙』工藤寛、『海人キリ』豊嶋訓三。
狂言『秀句傘』山本東次郎・山本則孝・山本則重。
附祝言は『金札』。

11時半〜研修能『鵜飼』田村修も有って、いつもなら見るのだが、ちょっと体調不良のためパス。…見終わる頃には元気になっていたので、やっぱり見れば良かった、と後悔。。

No.121 - 2011/09/13(Tue) 04:01:23
11年5月14日  普及公演(国立能楽堂)  (感想) / 兎谷
『東岸居士・橋立』山本順之・飯冨雅介・大藏教義・藤田次郎・幸正昭・守家由訓

『小書:橋立』は通常にはない『サシ』『上歌』を入れて、東岸居士がなぜ勧進をしているのかを明かす。
全体に僧としての威厳や厳粛さがあったが、暗い印象で、まじめな僧に見えてしまう。
"羯鼓”や舞などの全てが説法では有るが、あえて俗にいて、説法でない手段で仏の道を示すのなら、やっぱりどこか破天荒さが欲しいと思う。
小書が付いた事で、ストーリーに奥行きが増すし、『自然居士』との対比になるのでは?と思うが、それならなおのこと、もっと明るく自信たっぷりに舞って欲しい気がした。


他に狂言『船渡聟』大藏千太郎・大藏吉次郎・大藏基誠・大藏彌太郎。

No.119 - 2011/09/09(Fri) 04:58:22
11年5月11日  定例公演(国立能楽堂)  (感想) / 兎谷
『杜若・袖神楽・素囃子』金春安明・??井松男・一噌庸二・幸清次郎・安福建雄・金春國和

勝手なイメージで、安明さんに『杜若』は似合いそう、と期待。
しかし、小書がついたせいか、重めで全体にまったりしてしまう。
舞は見せ付けるようにゆったりで、さらりした『イロエ』が有るから流れは良いし、綺麗なのだが、ややしっかり過ぎる気がする。
(『小書:袖神楽』で、『序ノ舞』の前に少し『神楽』の笛が入り、『小書:素囃子』で『序ノ舞』を普通に三段舞った後に続いてシテ「昔男の名を留めし」の後『イロエ』が入って『橋掛リ』に行って戻った。ちなみに『クリ』『サシ』『クセ』も省略。理屈抜きに舞で見せようという小書なのだろうか…)
その後ははっきりとした型が厳粛に感じられて、菩薩を強調する小書だと思うが、それにしてもちょっと杜若のイメージからは強すぎる感じがした。


他に狂言『禁野』??澤祐介・三宅右矩。

No.118 - 2011/09/09(Fri) 04:56:37
11年5月8日  月並能(宝生能楽堂)  (感想) / 兎谷
『八島』東川光夫・大友順・殿田謙吉・大藏千太郎・成田寛人・幸信吾・大倉正之助

ず地謡が微妙。前半はしっかり目だと揃わないし、揃っている部分はまったりとして何だか眠そう。
後半は変化が少なく盛り上がらない。
シテ前場は『語』が良く、後も床几にかける姿が勇ましく、思い出す様子も自然だが、動くとちょっと大人しく、足拍子も不自然な感じがして、最後の方は迫力があんまり出なかったのが残念。


『千手』金井雄資・辰巳満次郎・安田登・松田弘之・大倉源次郎・亀井広忠

シテは静かでも、しっかりと芯のある女という感じが良い。
地謡「妻戸をきりりと」で扇で開ける仕草がとても綺麗で、戸が本当に開いたかのように感じられ印象的。
ツレもしっかりでも相手をいたわる様な気遣いが有って、とても良い雰囲気だが、ワキはやや芝居くさい部分が有ったのが惜しい。
静かな舞いも、その後の景色を見る様子も大人しいけれど、思いが伝わる。
最後にシテを見送るツレのひっそりと静かな悲しさも良かった。


『鵜飼』宝生和英・??井松男・大藏基誠・一噌隆之・住駒匡彦・内田輝幸・大江照夫

ワキが重めだと思ったら、シテも暗い『一セイ』。
空しげな雰囲気は良いが、ちょっと丁寧過ぎる感じ。
『正中』に座り、松明をそのまま置くのがそっけないが(観世流だと炎を抑える様にするが、宝生流ではこれが普通なのだろから仕方ない)、シテ「そもそもこの」としっかりと語り出し、メリハリをつけてはっきりなのは良い。
しかし、立ち上がってからははっきりなのが不自然で、「影の暗くなるは」と下をるところから、再び良くなったので惜しい。
後は地謡がしっかりなのに勢いがないし、シテもさっと登場して、『橋掛リ』でのどっかりとした謡は良かったのに、舞台に進むと、メリハリは有るのだが、だからこそ型を1コ1コこなしている様に見えてしまい、役柄が見えてこなかったのが残念。


他に狂言『蝸牛』大藏彌太郎・善竹十郎・大藏吉次郎。

No.117 - 2011/09/09(Fri) 04:54:40
11年5月5日 加藤眞悟 明之会(国立能楽堂)  (感想) / 兎谷
『経正』加藤愼一朗・村瀬提・栗林祐輔・幸泰平・大倉慶乃助

実際にもまだ若いし、役柄も若いはずだが(経正の没年は若くはないけれど、能では若い『面』をかけるし、若い設定なのだと思う)、型がとても大人っぽく、むしろどっしりとして、なんとなくアンバラス。
しっかりとまじめ、という事なのだろうが、もっと思い切って若々しく演じて欲しかった。


『道成寺・赤頭』加藤眞悟・殿田謙吉・大日方寛・野口能弘・山本東次郎・山本泰太郎・松田弘之・幸信吾・安福光雄・徳田宗久

シテの『一セイ』は、寂しげでしっとりと美しく、これはすごい名演になるのでは、と期待。
しかし『物着』してからは地味目で、『乱拍子』は小鼓に気迫が感じれない…その直前までの大鼓が気合十分だったんので、余計に弱く感じてしまった。
『急ノ舞』はシテの動きがぎこちなく、カクカクと追い立てられる感じだし、『鐘入』もしっかり飛んではいたけれど、なぜか迫力がない。
アイ:東次郎さんが引き締めるものの、後シテもちょっと大人しい…ねっとりと向きを変えるのは雰囲気があるのに、ワキに向かっていくと、急に弱くなってしまうのは、いくら祈られて負けるにしても、物足りない感じがしてしまい。残念。


他に独吟『文之段』梅若万佐晴。仕舞『西行桜クセ』梅若万三郎。
狂言『茶壷』山本則俊・山本則孝・山本則秀。
附祝言は『猩々』。

No.116 - 2011/08/20(Sat) 03:27:43
11年5月1日  観世会定期能(観世能楽堂)  (感想) / 兎谷
『絵馬』観世清和・林宗一郎・木原康之・清水義也・殿田謙吉・野村太一郎・一噌隆之・曽和正博・柿原弘和・助川治

前シテの謡はゆったりと雰囲気があるが、ちょっと寂しげにも聞こえる部分も。
型はさらりと綺麗。天細女命(木原さん)は明るくてまずまずだが、手力雄命(清水さん)は力強いものの、ちょっと雑に見えてしまう部分があったのが惜しい。後シテは男っぽさが強めで、真面目な、いかにも清和さんらしい端正さ。


『蝉丸・替之形』関根祥六・岡久広・工藤和哉・野村万蔵・内潟慶三・鵜澤洋太郎・亀井実

笛座前に置かれた『作り物』の中のツレは、寂しげな雰囲気がとても良い。人によってはハデに見えてしまう、黒い水衣が上品に決まっていた。
シテは暗く寂しげに登場して、振り返り「いかにあれなる」と自然な苛立ちも、『カケリ』の焦燥感と悲しさの混じった雰囲気も、とてもリアルな女心のように感じる。
ツレの扇を琵琶に見立てて弾く姿が美しく、シテ「世の中の」と抑えてたっぷりとした謡も綺麗で、以降2人とも静かだが、次第に互いの存在に気がつく様子が自然。
『クセ』はどっしりと抑えた地謡が美しく、静止した二人の時は止まっている様に見え、…だからこの再会はほんの一時の出来事だったと感じた。
再び琵琶を弾き、聞いているしっとりと懐かしげな2人の様子も、地謡もとても綺麗で、上品で悲しい別れもとても良かった。


『阿漕』観世銕之丞・宝生閑・(ワキツレ2人)・山下浩一郎・寺井久八郎・亀井俊一・佃良勝・観世元伯

せっかく静かな佇まいなので、暗い雰囲気は良いのに、いつも通りと言うか、いつも以上に重厚な謡いは、猟師には似合わない。
棹を使って見せるのも力が入りやり過ぎな感じ。
しかし、「こはそも」で下がって棹を落とし、「声の」と頭をかかえる様子が真に迫っていた。
後シテは暗い謡で、ちょっと姿も細く見えて良い雰囲気。
苦しげな様子も周りを見る姿も綺麗で良かったが、最後は、地謡に合わせ過ぎているような気がして、残念。


他に狂言『茶壷』野村萬・野村扇丞・野村万蔵。
仕舞『淡路』高橋弘、『駒之段』角寛次朗、『藤キリ』関根知孝、『殺生石』藤波重彦。

No.115 - 2011/08/20(Sat) 03:25:23
11年4月27日  慶応日吉能(慶応大学日吉キャンパス)  (感想) / 兎谷
蝋燭能『羽衣・彩色之伝』坂井音重・森常好・藤田次郎・鵜澤洋太郎・柿原光博・大江照夫

写真のような特設舞台、『橋掛リ』の方が高く、『地謡座』の方が低い場所に有って、舞台は傾斜しないように作って有るが、客席は傾斜しているので、ちょっと見づらい。
更にこの日は風が強くバタバタとうるさい。
蝋燭能とは言っても、まだ明るい時間なので、逆光になってしまうのも一考の余地あり。
それでも無料とあって、満席だったが、新入生歓迎イベントの割りには学生の姿は少なく、OB・OGと一般客ばかりなのが勿体ない。


『切戸』がないので、地謡、囃子方の順に『橋掛リ』から登場。
小書が『和合之舞』なので、『作り物』はなく、欄干に衣をかけてあったが、見づらいので『作り物』が有った方が良いように思う(作り物自体が邪魔になるという説も有るけれど)。
前半のシテは寂しげで、暗くかなり大人しい印象。
そんなに困るのなら衣を返してあげたくなっちゃう、儚さだが、ちょっと大人しすぎて『問答』の説得力がないのが惜しい。
『物着』して「おとめは衣を」と重めな謡がやっぱり暗く見え、どっしりの地謡に合わせた型もゆったりと厳粛な感じ。
舞も前半は上品に静かで、後半(破ノ舞の部分)に入ると爽やかさが加わり、次第に明るく得意げに舞う姿が美しい。
『キリ』はふんわりと明るく綺麗だが、広がりがあんまり感じられなかったのは、(見えにくかったからかも知れないが)、ちょっと残念。

No.114 - 2011/06/26(Sun) 23:50:20
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