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花の鏡 其ノ二

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10年11月6日  セルリアンタワー定期能・第二部    (感想) / 兎谷
『俊寛』坂井音重・坂井音雅・関根祥丸・森常好・三宅近成・一噌仙幸・曽和正博・亀井実

ワキは落ち着いた様子で、アイに舟を出すように命じ、アイもしっかりと受ける。
ツレ2人はどっしりと寂しげな謡で良い雰囲気。
シテはゆったりと『一ノ松』に登場…黒頭姿で何となく若い気配…暗く謡い「なる身の」と侘しげな地謡で舞台へ。
シテ「早くもご覧じ」と康頼(音雅さん)の方に向くと、康頼は近づいて“桶”をのぞき、「これは水なり」と少し下がるのが、ほんの少しだけれど、もったいつける感じで気になった。
「飲むからに」と、どっしりの地謡で、シテは2人に酒をつぎ、以降静かな感じで、「今はいつしか」と左手で腰の扇を取って広げ、『角』へ出、「落つる木の葉の」と扇で受け、座って「流るるも」と右下を見つめる姿が美しい。
赦免状を読み終わると、「何とて」と康頼の方を向くのも、赦免状を受け取って、じっくりと見つめ、「さては筆者の」とワキの方を向くのも、静かだが、力がこもっていて、何とか自分を抑えている感じが良い。
シテ「こはいかに」と悲しげで、「この程は」と更に暗く、地謡もどっしりと、絶望感が漂う。
地謡「先に読みたる」で再び赦免状を広げて見つめ、「巻き返して」と少し上に上げるのに、ためらう感じがして、期待と不安が交錯している感じがとても出ていた。
ツレ「かくてあるべき」と2人は舟に向かうとシテは康頼の肩と袖を押さえて引きとめ、「うたてやな」とワキに恨めしそに言って、「向ひの地まで」と袖から手を放して差し出したのが、積極的で、必死な感じ。
常の様に、綱を切られて下がり、正面を向いて両手をつき、「せんかた波に」と悲しく、「ただ手を」と舟に向かって手を合わせ、「力およばず」とゆっくりと、右、左と手を下ろし、『角』に向かっての『両シオリ』は、なりふり構わず号泣する様。
「これはまことか」と腰を上げてから立ち、「頼もしくて」と『招き扇』の様に手を2回上げてから少し舟の方に寄り、地謡「待てよ」と3人が幕の方に向かうと、シテは前髪を掴んで見つめ、やるせない感じがよく出ていたが、『橋掛リ』が短いので、舟が遠ざかっていく感じは弱く、舟の作り物が無い方が想像力が働いたのではないかと思う。


他に仕舞『賀茂』藤波重孝・『班女舞アト』関根知孝、
狂言『二人大名』三宅右矩・高澤祐介・三宅右近、
一調『葛城』関根祥六・小寺佐七。

No.65 - 2010/11/22(Mon) 03:47:40
10年11月1日  特別公演(国立能楽堂)    (感想) / 兎谷
狂言『箕被』山本東次郎・茂山七五三
出演者変更。茂山千之丞→茂山七五三。(シテが東次郎さんになって、アドが茂山七五三さん。)

東次郎さんの夫は連歌の事しか頭にない…連歌の世界に酔っている雰囲気がとても良かった…でも妻の役で見たかった。


『姨捨』片山幽雪・宝生閑・宝生欣哉・則久英志・野村萬・藤田六郎兵衛・大倉源次郎・亀井広忠・観世元伯

静かな『呼掛ケ』で登場したシテは、ちょっと絶句も有ったが、自然な感じに次の句から続けて、不思議と違和感がない。
ワキもしっとりと綺麗な謡で良い雰囲気。
地謡「今とても」と抑えているが、しっかりとごっつい感じで、ちょっと違う気がしたが…最後に納得する事に(下まで読んで下さい)。
「姨捨山の夕暮れに」と舞台へ向かい、「薄霧も」と右を見る姿がとても美しい。
シテ「旅人は」と問う様子が女らしく、「さては都の」と少し強くて、待っていた感。
「まことは」とやや暗く、「住家と」と寂しげで、「姨捨の」と『ツメ』るのも物言いたげだが、優しい気配。
「それと言はんも」と抑えた地謡は包み込む様なまろやかさが有って、「闇を晴らさんと」とワキの方を向いたのが、とても色っぽい。

ワキ・ワキツレはとても風情がある『待謡』。
後シテ『一セイ』はしみじみとしつつ、心が動かされる感じがはっきりと伝わる。
静かなワキも優しく綺麗。
地謡「昔だに捨てられしほどの」と『脇正』に出、「月に見ゆるも」と左手で顔を隠す姿がとても可愛い。
常座に戻り、「思い草花に」と遠くを見ると懐かしそうで、住んでいた里を思い出している様。
『クリ』『サシ』『クセ』は抑えているが、はっきり目で、さらりと進み、「天冠の間に」と頭をさしたり、舞台を廻るのもゆったりと美しい。
シテ「迦陵頻伽の」と大人しいのに、力が有って、「無辺光とは名づけたり」と優しく説いている様で爽やかだが、「然れども」と常座に戻ってからは静かに空しい雰囲気になり、シテ「昔恋しき」ととても抑えて寂しそう。
舞台を小さ目に廻ると、存在感がくっきりして、生きていた頃に戻った感じがして、生前の生活が見える様な素朴な、普通の人という感じで舞い始め、扇を左に持つ姿が、子供を抱いている様に見えて、脇正で座り月を見ると昔を思い出し、そこからどんどん暗く悲しくなっていった気がした。
シテ「我が心」と抑え、「月に馴れ」と郷愁を含んでしみじみ。
「思い出でたる」と抑え目でもたっぷりの地謡で、「やる方も」と『橋掛リ』の方を向くと風が吹いていて、「身にしみじみと」と扇を体に引き寄せて縮こまる…凍えているみたい。
ワキを静かに見送ると、『角』の方を向いて、「ひとり」と静かに泣いているようで、「昔こそ」と静かな地謡で下がって座ると、その瞬間に、石になってしまった様に思えた。
彼女は姨捨山の石の一つになったんだなぁ…と思ったら、前半からしっかり過ぎると思っていた地謡がしっくりと感じられて、妙に納得してしまった。

今回の『姨捨』はあんまり月明かりが見えなくて、それよりもこの人の過去の普通の生活が見えて、不思議な魅力だった。

No.64 - 2010/11/14(Sun) 04:13:59
10年10月23日  鵜澤久の会(宝生能楽堂)    (感想) / 兎谷
『芭蕉・蕉鹿之語』鵜澤久・工藤和哉・野村万作・松田弘之・大倉源次郎・亀井忠雄

ワキは落ち着いた『真ノ名宣』。
静かに登場したシテは抑えて寂しげな『次第』。
「見ぬ色の」と少しだけ強めだが、ずっと抑えた感じ。「これはこのあたりに」と上品に答えるが、その前との変化がなくて会話という感じがしない。
しかし「何をか今は」と正面を向く姿は艶かしくて美しい。
「さらば内へ」とはっきり目に言って、『正中』に座って“桶”を置き、「あら有難や」と静かに自然。
地謡「灯を背けて」とさらりだが、暗い雰囲気で、「草木も」で『合掌』する姿も寂しそう。
「なかなに」と凛とした美しさは有るものの、やっぱり寂しそうな感じで、中入まで、地謡もどっしりだし、シテもゆったりとして、ちょっと重すぎ。。

アイの万作さんはゆったりと語る(…のは良いが何度か咽る様な、苦しそうな感じが…狂言では大丈夫だったけど、ちょっと心配。)

後シテ『一セイ』は抑えて、趣が有るが、「露の恵を」とワキの方を向いた意味が伝わってこないし、その後も少し弱すぎる感じ。。
『クセ』以降の謡いに合わせた型は、景色を見ている感じも有るし、「芭蕉葉の」と舞台をゆっくりと廻ると長い時の流れの様で綺麗だが、やっぱりちょっと暗いかも。
『序ノ舞』は初めの方は男っぽくて、やや固い感じだが、後半は明る目。
シテ「霜の経」とたっぷり目でも抑えていて、地謡も抑えた感じだったのだが、最後に向かって地謡にメリハリがつくと、シテも急にしっかりとした動きになって、1つ1つの型は綺麗だったのに不自然な感じがして残念。


他に舞囃子『養老・水波之伝』鵜澤光・栗林祐輔・大山容子・亀井洋佑・小寺佐七、
仕舞『景清』若松健史・『花筐狂』山本順之、
狂言『井杭』野村万之介・野村万作・野村裕基。


この日はロビーに本物の芭蕉の鉢植えが2つ。チケットと一緒に入っていた手紙に、「当日のロビーをお楽しみに」と書かれていたので、もしかしたら、とは思っていましたが。。

No.63 - 2010/11/06(Sat) 00:09:25
10年10月15日  定例公演(国立能楽堂)    (感想) / 兎谷
『恋重荷』??橋汎・中村昌功・福王茂十郎・野村万作・野口傳之輔・曽和正博・安福建雄・三島元太郎

シテは静かな登場。ワキとの会話も静かでワキの後をついて、"重荷”を見に行くのもゆっくりで、まだ話を信じていないかの様。
「げにげにこれは」と実際に"重荷”を見て、初めてやる気になるけれど、それは恋ゆえ、というよりも仰せならば!という忠誠心の様で控え目…荘司は立場を心得ていたのに、この話が持ちかけられたせいで、一目姿を見たいという欲が出たけれど、まだ自制心が働いている様に思えた。
地謡「重荷なりとも」と、とても重苦しい感じが、迷いの様でとても良い。
『物着アイライ』のうちに『肩トル』と「誰て踏み初めて」と心を決めた様にしっかり目で、舞台を廻る(イロエ)姿見た目は老人でも"男”の気配。
『大小前』から"重荷”をしっかりと見つめ、少し出て「この荷かな」と座り、「それ及び難きは」と抑えて迫力と悲しみが有って、「重くとも」とがっちりと不器用そうな謡も良い。
「しめじが腹立ちや」と力が入り、立って"重荷”を見つめると、寝らればこそ」と扇を捨てて、"重荷”に寄り、座って持ち上げようとするが、「持たれぬ」とすぐに手を放して、再び持とうともせずに右を向いたのが、絶望感が漂う。
地謡も「持てども」としっかりと、「持たれぬ」と抑えて、とてもはっきり変化したのも合っていた。「つらかね緒も」と立って常座の方に行き、「乱れ恋に」でクイっと向きを変えて前に出、少し体をひねる様に顔を"重荷”の方に向けて見つめると、地謡が「思い知らせ」と「申さん」の間をはっきりと区切って謡ったのがとても怖い。

報告を受けたツレは、見に行くのに少し抵抗感がある感じがして、それでもしっとりと後悔する様な謡が自然で美しい。

後シテは衣を被いて静かに登場、ゆっくりと衣を落として舞台に入ってもやっぱり控え目。
『立廻リ』の中で"重荷”を見つめると、迫力があるけれど、空しさの方が強い感じ。
「憂き寝のみ」と侘しいげで、『正中』に出て「持たるるものか」と右を向いたの様子が後悔している様で、「恨めしや」と言いつつまったく責める気が無い。
「さのみ重荷は」と杖を両手で持って持ち上げる仕草をし、「重荷といふも」とやっぱり空しい感じで、「重き苦しみ」とちょっと前に出るけれど、やっぱり言いたいことが言えない感じ。
恨みを言いに来たけれど、根っからの忠実な下人にはやっぱり無理だった。。という気がして、地味では有るけれど、責めない『恋重荷』としては、けっこう好き。


他に、狂言『才宝』野村万之介・石田幸雄・深田博治・高野和憲。

No.62 - 2010/11/03(Wed) 05:23:35
10年10月11日  橘香会(国立能楽堂)    (感想) / 兎谷
『合浦』梅若志長・森常好・三宅右矩・前田晃一・藤田貴寛・幸正昭・亀井広忠・徳田宗久

冒頭のワキとアイのやり取りが、やや固い感じで、シテもトボトボと登場したので、どうかなぁ…と思ったが、謡出したらとっても元気。全体にしっかりと、慣れないけれど元気で、勢いがあって、初シテらしくて好感が持てた。


仕舞『老松』梅若万佐志

初舞台ということだが、すごい小さかった…いったい幾つなのだろう?
扇を広げるのもやっとだし、まだ舌も回らないのに謡ってるのが超絶カワイイ!間違いなく今日の主役。


『野宮・合掌留』梅若万三郎・宝生閑・??澤祐介・一噌仙幸・大倉源次郎・亀井忠雄

シテは暗く重い気配…「何を忍ぶの」と右を見たり、「行き帰るこそ」と左を見るのもとっても寂しげ。
ワキの問いに「いかなるものぞ」と静かに上品に答え、「とくとく帰り給へとよ」で『ツメ』るのも静かなのが、かえって帰るのが当然と言わんばかりに見えた。
地謡「うらがれの」でシテはゆったり"鳥居”に寄り、「跡なつかしき」と座って“木の葉”を置いてから立ち、『正中』に下がって「めぐり来にけり」とワキの方を向いてから、“鳥居”を見つめるのが、寂しげなのと同時に、どうしても言いたい事が有る感じ。
床几にかけ、地謡『クリ』は抑え目でもはっきりで、静かな『サシ』、『クセ』ははっきり→抑え→はっきりと、メリハリが有る。
「名のりても」と寂しそうだが、プライドの高さが感じられ、「御息所は」とワキの方を向くのや、立ってから『中入』までが、地謡がはっきり過ぎたせいも有るが、シテも強い感じがして、万三郎さんにしては珍しく、やりすぎかも。。

後シテ『一セイ』は静かで、「物見車の」から少し強く、ワキ「車の前後に」でサッと『中正』の方を向いたり、「人々ながえに」と"鳥居”に少し寄って『角』を向き、手を重ねるところまではっきりで、その後下がる様子から悲しげに変化したのが、とてもわかりやすくて綺麗。
「晴し給へや」でワキに向かって手を合わせ、「昔を思ふ」と空しげで、上品で儚い『序ノ舞』が哀れ。
その後も静かに抑えた感じで「なつかしや」と下がって『シオリ』、『破ノ舞』へ…舞台を廻り『大小前』から『サシ』て“鳥居”に寄ると、柱を掴んで足を出す型をし、スッと下がって『合掌』。
「ここはもとより」とどっしりな地謡で立ち、少し下がって「伊勢の」でゆっくりと右に回ると穏やかな気配に変わり、そのまま『橋掛リ』へ入ってすぐに正面を向くと、明るく優しい美しさ。
「また車に」と乗る仕草をして、『二ノ松』へ行って振り向き、左袖を返すと、『正先』の方を向いて『火宅留』で終わった。

「鳥居に出で入る」という謡の部分(通常なら足を出す型をするところ)で、反対に進んでいくのだが、「伊勢の」から別次元に移動していて、『正先』の“鳥居”の方が消えた様な感じがしたので、その部分に違和感は無かったけれど、型が違いすぎてどこまでが小書で、どこからが工夫なのか分からなくて悩みました。。
『合掌留』は破之舞のトメに鳥居の前で下居して扇を置き、合掌する。「ここは元より」と左手で鳥居の中をサシて見、扇を取る。のだそうな。
『火宅留』は最後の謡を『火宅』でとめるというだけの違い。それ以外はすべて工夫だったということか。。


半能『石橋・大獅子』梅若万佐晴・古室知也・野口敦弘・藤田次郎・古賀裕己・大倉正之助・金春國和

ワキがちょっと大人しすぎる気が…。
シテはのっしりと台に上がったのは良かったが、ツレが出て、2人並ぶと、その差が少ない。
シテは割合と俊敏で、もっとどっしりでも良さそうだし、警戒するような獣らしい感覚が弱かった。
ツレは若い人らしく身軽さは有ったが、ちょこまかとした型の多さを綺麗にこなし過ぎて、大人びて見えてしまう気がした。


他に狂言『蟹山伏』三宅右近・三宅近成・金田弘明。
仕舞『東方朔』梅若久紀・梅若紀長、『田村クセ』遠藤修、『羽衣キリ』梅若泰志、『芦刈キリ』青木一郎、『国栖』中村裕、『竹生島』長谷川晴彦、『葛城キリ』加藤眞悟、『半蔀キリ』八田達弥、『安宅』伊藤嘉章。

No.61 - 2010/11/03(Wed) 05:19:13
10月10日  粟谷能の会(国立能楽堂)    (感想) / 兎谷
『野宮』粟谷能夫・森常好・野村万蔵・一噌隆之・大倉源次郎・亀井広忠

『次第』からどっしりと暗く、物静かな気配だったが、「いかなる者ぞ」とワキの方を向くとちょっと怒っているような、高貴な感じが良い。
「うらかれの」と抑えた地謡で、"鳥居”の前に座って"木の葉”を置いてすぐに立ち、少し下がって座り、手を合わせる姿も、「今も火焼屋の」と遠くを見る姿もさみしく、「思い内に」とトボトボと左に回る姿が空しげで綺麗。
床几にかけ、地謡『クリ』は抑え目だが、纏まりにかけ、『クセ』でやや良くなるものの、少々弱い。
シテは「さびしき道すがら」で『シオル』が、手を見ている様に見えてしまった。
「去りて久しき」と寂しい感じで、「影かすかなる」と"鳥居”を見る姿はとれも美しい。

後シテは「いかなる車と」と、ちょっと強い感じでワキの方を向くのが良く、「物見車の」と嫉妬するような気配も、「身は小車の」で愕然とした様子で一歩下がるのも、女らしい心の動きが伝わったが、「ばっと寄りて」からは型を追うのに目いっぱいな感じがして、思いが伝わらない。
「昔を思ふ」ととても寂しげで『序ノ舞』もそのままのイメージで綺麗。
しかし、「庭のたたずまひ」以降、地謡がはっきりとメリハリを付けていて、シテは地謡にのりすぎた感じがして女らしさに欠ける。
『破ノ舞』はさっと『角』に出、左に2回転しながら『大小前』に行き、(この間に『左右』等細かい型が入るが)さっと『正中』に出て座り扇閉じて『合掌』と静かなイメージで「伊勢の内外の」と前に出て"鳥居”を掴む型も陶然として(足を出さなかったけれど)、良い雰囲気を出していた。
“鳥居”の『作り物』が台輪に鳥居が乗っている形ではなく、観世や宝生の様な“H”形の台に乗ったものでした。


『白是界』粟谷明生・粟谷尚生・宝生閑・大日方寛・吉田祐一・野村万禄・一噌幸弘・曽和正博・柿原弘和・金春國和

前シテは、はっきり目の謡で、ツレを読んだり、舞台へ戻ってどっかりと座って語り出すのは、しっかりとして良い感じだが、立ち上がり「法のため」とどっしりとして、威厳を出そうとしているのは分かったが、いまいち迫力にかける。ちなみに『サシ』『クセ』抜きでした。

“車”の中から「あれに見えたる」と『橋掛リ』の方を見るワキがカッコイイ!

後シテは適度な重さを出しつつ、『一ノ松』へ出、「そもそもこれは」としっかりの謡は威厳が有る。
ゆったり目の地謡で舞台に入り、「不思議や雲の」での足使いはちょっとかわいいかも。。
『イロエ』で『二ノ松』に行き、ハッと欄干に足を掛け、見下ろしたり、舞台へ戻り、ワキにさっと寄ると、ワキの威厳たっぷりの祈り(数珠をもむ)で、膝をついたり、「その時御声の」でパッと顔を上げて"面”を『キル』などは分かりやすく丁寧。
その後ゆったりとして「地に落ち」と羽団扇を捨て、「八州の浪の」と『三ノ松』まで行って『一ノ松』まで戻り、『シテ柱』に寄って「今より」と数珠を舞台に投げるのは綺麗に決まっていた。
「言ふ声ばかり」と『三ノ松』まで行って振り返り、左袖を被いてそのまま下がって幕に入った。
全体に丁寧だけど迫力は弱い印象。(『面』が可愛かったし。。)
ただ、以前見た白是界は「まったり」の印象で、この小書はそんなものかと思っていたので、今回は比較的メリハリが有った気がした。

他に狂言『地蔵舞』野村萬・野村扇丞。

No.60 - 2010/10/30(Sat) 04:06:35
10年10月6日  定例公演(国立能楽堂)    (感想) / 兎谷
『班女』浅見真州・宝生欣哉・則久英志・野口能弘・茂山七五三・一噌仙幸・飯田清一・柿原祟志

とってもゆっくりのシテの登場に、アイの「何をウジウジして…」「そのもどかしい歩きようの」というセリフがピッタリで、シテの扇を取り上げて、「身が燃ゆるように腹が立つ」と身をくねらす様子に思わず笑ってしまうのだが、シテはそんな事はまったく見えていない様に、ゆっくりと扇を拾い、じっと見つめて『シオリ』、「げにやもとよりも」ととても悲しげに謡い出した…2人のギャップがすごく良い!

「悲しけれ」と再び『シオリ』、しっとりの地謡で『シオリ返し』て、ゆっくりと立ち、「そのまま」でまた『シオリ』とひたすら泣きっぱなしで中入するが、とにかく静かにゆっくりとした仕草で儚くて綺麗。

後シテは『一ノ松』で、しっかりの『一セイ』、ちょっと腹を立てているみたい。
「思ふ事を」で手を合わせ、常座に移動して座って再び手を合わせ、「謹上再拝」と強く切実なのも、ここまでの旅で祈り続けてきたのに出会えないから、今度こそ!という感じ。
はっきり目の『カケリ』も「あらうらめしの」と抑えてはいるが、もどかしげな気配も、積極的な女性という印象。
「うたてやな」とすぐに右を向いたのが拒絶している様で、「たまたま」と寂しそうなのも、「狂へと」とゆっくりと辛そうにワキツレの方を向くのも自然。
地謡『クリ』は抑え目で、シテ「夕べの」と寂しそうなのが、「せめて閨洩る」と更に弱々として、『シオル』姿が哀れ。
「さるにても」と『一ノ松』に向かい、「頼めて来ぬ夜は積もれども」と扇を抱いて右を見ると、とても女らしくて美しい。
舞は無表情で、舞えと言われたから舞ってやる、というのか、尋ねて来ない男に怒っているのか。。
「月をかくして」と寂しげだが、「必ずと」とうらめしそうで、やっぱり怒っている感じだが、「人にみする事あらじ」と扇を胸にしまって、右を向いて、見せないぞ!という姿がとっても可愛くて印象的。
最後に嬉しそうに立ち、常座に行って、『ハネ扇』して『正中』→戻って『トメ』という常の型が、気恥ずかしようななんとも女らしい気配で良かった。

他に狂言『伯養』 大藏彌太郎・茂山良暢・山口耕道。

No.59 - 2010/10/30(Sat) 03:48:08
10年10月2日  塩津哲生の會(国立能楽堂)    (感想) / 兎谷
『江口・平調返』塩津哲生・佐々木多門・大島輝久・宝生閑・則久英志・御厨誠吾・山本東次郎・一噌仙幸・横山晴明・柿原祟志

『夜討曽我』塩津圭介・狩野了一・狩野丹秀・塩津哲生・友枝雄人・井上真也・佐藤寛泰・渡辺康喜・山本則重・山本則孝・松田弘之・森澤勇司・亀井忠雄

他に舞囃子『融』友枝昭世・松田弘之・横山幸彦・柿原光博・観世元伯。
狂言『二千石』山本東次郎・山本則孝。

感想は後ほど。。

No.58 - 2010/10/30(Sat) 03:45:40
10年9月28日  関根祥六傘寿記念能(観世能楽堂)    (感想) / 兎谷
安宅『勧進帳・滝流之伝』観世清和・上田公威・清水義也・武田宗典・武田祥照・藤波重彦・津田和岳・岡庭祥大・武田文志・坂井音晴・観世喜顕・福王茂十郎・野村万蔵・吉住講・松田弘之・鵜澤洋太郎・亀井忠雄

『鷺』関根祥六・山階彌右衛門・宝生閑・野村萬・一噌仙幸・大倉源次郎・大倉栄太郎・小寺佐七

他に連吟『鶴亀』関根はな恵・依田明子・古橋美香・渡辺洋子・長宗敦子・峯村あい子・『鞍馬天狗』??梨万里・柴田孝昭・岡本九十九・斉藤剛・??梨良一・岡庭祥大。
舞囃子『高砂』関根祥丸・一噌庸二・観世新九郎・安福建雄・観世元伯。
一調『屋島』関根知孝・亀井実・『遊行柳』近藤乾之助・金春惣右衛門。
仕舞『竹生島』藤井完治・『田村クセ』林喜右衛門・『羽衣キリ』大西智久・『巻絹キリ』大江又三郎・『国栖』藤井徳三・『道明寺』梅若吉之丞・『箙』観世芳伸・『花筐狂』観世銕之丞・『邯鄲楽アト』大槻文蔵・『雨月中入前』梅若万三郎・『実盛キリ』片山幽雪・『芭蕉クセ』観世喜之・『山姥キリ』梅若玄祥・『土蜘蛛』観世清和・観世三郎太。
狂言『鐘の音』野村萬・野村扇丞。
独吟『鼓の瀧』藤波重和。


感想は後ほど。。

No.57 - 2010/10/30(Sat) 03:42:26
10年9月26日  秋の別会能第1日(宝生能楽堂)    (感想) / 兎谷
『張良』??橋章・朝倉俊樹・殿田謙吉・善竹富太郎・一噌隆之・亀井俊一・柿原弘和・助川治

『江口・合掌留』今井泰男・金井雄資・藤井雅之・森常好・大藏吉次郎・松田弘之・曽和正博・柿原祟志

『邯鄲』東川光夫・波吉敏信・工藤和哉・大藏教義・一噌幸弘・鵜澤洋太郎・飯島六之佐・金春國和

他に狂言『萩大名』善竹十郎・善竹大二郎・大藏千太郎。
仕舞『女郎花キリ』辰巳満次郎・『山姥キリ』渡邊荀之助・『融』田崎隆三・『八島』三川淳雄・『飛鳥川』近藤乾之助。

感想は後ほど。。

No.56 - 2010/10/30(Sat) 03:40:10
10年9月24日  代々木果迢会(代々木能舞台)    (感想) / 兎谷
『弱法師・盲目之舞』浅見真州・工藤和哉・野村万蔵・一噌仙幸・大倉源次郎・國川純

他に小謡『羽衣』浅見眞高。
狂言『富士松』野村萬。

感想は後ほど。。

No.55 - 2010/10/30(Sat) 03:38:27
10年9月23日  特別公演(国立能楽堂) / 兎谷
『菊慈童・遊舞之楽』観世喜之・高安勝久・椙元正樹・杉江元・竹市学・観世新九郎・大倉正之助・助川治

『鸚鵡小町』近藤乾之助・宝生閑・一噌仙幸・曽和正博・柿原祟志


他に狂言『舟船』山本則俊・山本東次郎

感想は後ほど。。

No.54 - 2010/10/30(Sat) 03:28:50
10年9月18日  川崎市定期能(川崎能楽堂)    (感想) / 兎谷
☆第1部

『通小町』香川靖嗣・狩野了一・大日方寛・藤田貴寛・古賀裕己・柿原弘和


他に狂言『蟹山伏』野村万蔵・野村扇丞・高部恭史


☆第2部

『籠太鼓』友枝昭世・宝生閑・野村扇丞・藤田貴寛・住駒充彦・柿原弘和

他に狂言『鐘の音』野村万蔵・吉住講


感想は後ほど。。

No.53 - 2010/10/30(Sat) 03:25:51
10年9月5日  観世会定期能(観世能楽堂)   (感想) / 兎谷
『呉服』観世清和・松木千俊・福王茂十郎・(ワキツレ2人)・山本東次郎・一噌隆之・観世新九郎・柿原弘和・助川治

出演者変更:遠藤博義→山本東次郎

『班女・笹之伝』武田宗和・福王和幸・山本則孝・藤田朝太郎・亀井俊一・安福光雄

『玄象・クツロギ』坂井音重・山階彌右衛門・藤波重彦・角幸二郎・工藤和哉・山本則重・藤田六郎兵衛・曽和正博・安福建雄・金春國和


『玄象・クツロギ』坂井音重・山階彌右衛門・藤波重彦・角幸二郎・工藤和哉・山本則重・藤田六郎兵衛・曽和正博・安福建雄・金春國和


他に狂言『伊文字』山本東次郎・山本則秀・山本則俊。
仕舞『通盛』関根知孝・『井筒』角寛次朗・『高野物狂』野村四郎・『車僧』大松洋一。
東次郎さんの『伊文字』は3回目ですが、いちばん大人しかったかも…『呉服』のアイの後だし仕方ないか。。仕舞『高野物狂』は地謡が途切れてしまう場面が…あんまり上演しない曲とはいえ残念。


能の感想は後ほど。。

No.52 - 2010/10/30(Sat) 03:23:44
10年9月1日  定例公演(国立能楽堂)    (感想) / 兎谷
『景清』友枝昭世・狩野了一・森常好・舘田善博・松田弘之・成田達志・亀井忠雄

『松門の謡』が静かで、不細工な感じがいかにも落魄の武士らしくてとても良い。
訪ねてきたワキツレに冷静に対応し、2人が下がると「言語道断」と驚きと共に懐かしむ気配が自然。
ワキに呼ばれて忌まわしげにチラッと見る様子や、「さて浦は」で立って“作り物”の右の柱を掴んで波の音を聞く姿も綺麗だったが、「己が名の」「腹立ちや」「山は松風」のところでビクッと急に向きを替えたのは、やりすぎな気がしたし、そもそも私は見ていてびっくりしてしまうので、この方法は好きになれない。。
再会シーンは静かで抑えていたが、優しさが感じられた。
シテは床几にかけて、落ち着いて語り出し、「いかにも九郎を」「駈け向ふ」など強め→抑えてと、強弱の波が有る『語』は良いところと、やりすぎな気がするところが有ったが、型ははっきりと綺麗。
しかし、最後に常座でツレの背中を押すところで、少し手を引いて"ため”たのが名残を惜しむ様で、とても良いと思ったのに、押すのが強すぎで(ツレがさっと進んだのもあるが)、その瞬間にがっかり。

他に狂言『附子』井上靖浩・佐藤友彦・佐藤融。

No.51 - 2010/10/30(Sat) 03:20:06
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