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all 作品投稿所:誰かの笑顔のための物語 - 舞花・T・ドラッヘン@スタッフ - 2008/06/04(Wed) 15:01:29 [No.8]
投稿を締め切ります - 舞花・T・ドラッヘン@スタッフ - 2008/06/21(Sat) 05:04:22 [No.108]
今、傍にいない君へ - 那限逢真・三影@天領 - 2008/06/20(Fri) 23:23:46 [No.98]
6月のアイスクリーム - 戯言屋@フィーブル藩国 - 2008/06/20(Fri) 19:04:10 [No.87]
勇敢なる騎士と姫君 - 久遠寺 那由他@ナニワアームズ商藩国 - 2008/06/20(Fri) 13:20:59 [No.85]
黒耳猫のお花見 - 久遠寺 那由他@ナニワアームズ商藩国 - 2008/06/20(Fri) 13:09:01 [No.83]
イヌは怖いです - 藻女 - 2008/06/20(Fri) 11:20:44 [No.79]
人の良い男の話 - 南天@後ほねっこ男爵領(代理投稿) - 2008/06/20(Fri) 02:28:49 [No.78]
力の在り処 - 椚木閑羽@越前藩国 - 2008/06/19(Thu) 22:35:43 [No.73]
けものになった王子さま - みぽりん@神聖巫連盟 - 2008/06/17(Tue) 23:16:36 [No.67]
登録ミスお詫びいたします - 舞花・T・ドラッヘン@スタッフ - 2008/06/20(Fri) 12:25:50 [No.81]
訂正ありがとうございました - みぽりん@神聖巫連盟 - 2008/06/20(Fri) 22:21:41 [No.95]
あるがままの貴方 - 不離参@海法よけ藩国 わかば - 2008/06/16(Mon) 18:37:28 [No.61]
明日 - 不離参@海法よけ藩国 わかば - 2008/06/16(Mon) 16:58:14 [No.60]
人間 - 不離参@海法よけ藩国 わかば - 2008/06/16(Mon) 16:20:51 [No.59]
- 不離参@海法よけ藩国 わかば - 2008/06/16(Mon) 14:46:14 [No.58]
気がつけば「よけ祭り」 - 青にして紺碧@海法よけ藩国 - 2008/06/15(Sun) 12:34:49 [No.52]
疑惑(2) 暗躍篇 - 薊@リワマヒ国 - 2008/06/15(Sun) 11:42:53 [No.51]
審議中です - 舞花・T・ドラッヘン@スタッフ - 2008/06/15(Sun) 14:48:57 [No.54]
作品を受領いたしました - 舞花・T・ドラッヘン@スタッフ - 2008/06/17(Tue) 16:47:58 [No.65]
疑惑(1) 立ち込める暗雲篇 - 薊@リワマヒ国 - 2008/06/15(Sun) 11:39:16 [No.50]
審議中です - 舞花・T・ドラッヘン@スタッフ - 2008/06/15(Sun) 14:48:02 [No.53]
作品を受領いたしました - 舞花・T・ドラッヘン@スタッフ - 2008/06/17(Tue) 16:47:02 [No.64]
『心の声』 - 鈴藤 瑞樹@詩歌藩国 - 2008/06/14(Sat) 23:32:46 [No.49]
貴方はどなた? - 不離参@海法よけ藩国 わかば - 2008/06/14(Sat) 14:37:57 [No.48]
名前の無い海の物語(修正1) - むつき・萩野・ドラケン@レンジャー連邦 - 2008/06/10(Tue) 16:30:14 [No.26]
文字数の再チェックをお願いいたします - 舞花・T・ドラッヘン@スタッフ - 2008/06/10(Tue) 23:20:00 [No.34]
あなたにメリークリスマス - 志水高末@たけきの藩国 - 2008/06/10(Tue) 03:45:54 [No.25]


力の在り処 (No.8 への返信) - 椚木閑羽@越前藩国

○32-00645-01:椚木閑羽:越前藩国
○「力の在り処」
○テキスト文字数 1754文字

作業に追われて食堂へ行くタイミングをすっかり逃してしまい、腹の虫をブドウ糖でごまかしながら黒埼は仕事を続けていた。

不意に、山積の書類の間から顔を出したのは一輪挿しの花瓶。
そこには白いカーネーションがひとつ、ひそやかにたたずんでいた。

誰が活けたのだろうと首をかしげているところへ、刀岐乃が食事を差し入れに来た。
盆を受け取って刀岐乃に一輪挿しのことを訊ねると、
「閑羽ちゃんですよ」
という答えが返ってきた。

無理やり作業に区切りをつけて、花を眺めつつ食事に取り掛かる。
仕事に没頭したら、なかなか食事に手をつけない自分の性格を配慮してか、さめても美味しく食べられるものが選ばれていた。だが、やはりまだ湯気の立っているうちは、一味違う。

次の食事は、手を休めて食堂に行こう。

黒埼は食事を終えて箸を置くと、盆の端にのっていた小皿の中のブドウ糖を、ざらざらと口の中に放り込んだ。

/////

少し早めに作業の区切りがついたが、ここで「もう少し」とやってしまうと、結局また食堂に行きそびれるのが目に見えていたので、空いた食器の乗った盆を持って、執務室を出た。

食卓の上にも花が飾ってあった。
時期なのか、そこに飾られているのもカーネーション多く、自分の執務室に飾られていた白いもののほかにも、ピンクやオレンジといった明るい色の花、青や紫の変わった色の花が混在していた。

流しの洗い桶に水を張り、食器に軽く水を当ててから沈める。油落ちをよくするために、新しく水を張ったら、洗剤を2〜3滴落としておくことも忘れない。

食器を全部水につけてしまい、お茶でももらおうかと、戸棚に目をやると、2枚の張り紙が目に入った。
一方は食事当番表。
日付けと、その日の食事当番を請け負う藩士の名前のほかに、「じゃがいも使い切ってください」という書き込みがあれば、「ポテトサラダにします」と返答が書き込まれていたり、「藩王様の釣ってきたかにがたくさんあります」という書き込みに「かにたま!」「甲羅酒!」と、希望らしきものが書き込まれていたりと、ある意味伝言板のような役割も果たしているようだ。

もう一方は「摂政さまのごはんの注意」と書いてあり、その中身は、「冷めても食べられるおかずにする」「食べるのに時間がかかるものはダメ」「栄養のバランスを考えて、カロリーは抑え目に」「ごはんをもって行くときはお仕事の邪魔をしないこと」などの文面が並んでいた。

文字の主はおそらく刀岐乃だろう。
一番下にご丁寧で赤文字で、「ブドウ糖を忘れないこと!」と書き込んだのは、夜薙だろうか。
「結局ブドウ糖かい!」
思わず張り紙にツッコミを入れる黒埼だった。

/////

藩国のどこそこで何があっただの、藩国民のだれそれが結婚するだのと、他愛のない雑談を楽しむ。
部下の藩士たちの話を通して、国民の生活ぶりや、国内のちょっとした事件を知る。
何か問題が見つかれば、互いに意見を出し合い、誰かのために出来る何かを考える仲間たち。当然その中には自分も藩王も含まれる。

食事が済むと、それぞれが自分の仕事へと戻っていったが、黒埼だけは食事当番に
「少し待っていてください」
と、引き止められた。

30分もしないうちに、夜食になるよう具材を工夫したパンケーキが焼きあがり、それを渡される。熱湯が満たされた小さいポットと、粉末状のドリンクと、黒埼専用のマグカップ、ブドウ糖の乗った小皿もあわせて。

執務室に戻った黒埼は、椅子にかけてなんとなく窓の外を眺めた。

次々に舞い込む仕事、対処しても対処しても発生する文殊の不具合、罰金に次ぐ罰金で潤わない財政…。

それでも頑張れる自分の力の在り処が何処なのか、解ったような気がした。

/////

数日後、カーネーションの花言葉が「あらゆる試練に耐えた誠実」であると知った黒埼が
「試練が付きまとうのはデフォルトかーい!」
と叫んだことは、公式記録には残っていない。

/////

越前の民の幸せは、こんな摂政の苦労にに支えられているのかもしれない。
そして越前の民の笑顔は、そんな摂政をはじめとする藩士たちのの力の源であり、彼らが抱えた仕事の向こうに見る、最高の報酬なのだ。


[No.73] 2008/06/19(Thu) 22:35:43

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