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こちらを厄介な敵と認識したのか、ガラクタも改めてこちらに向き直るような動作をする。 もっとも、どこが顔かなど判りはしないので、もしかしたら後ろ向きだったのかもしれないが。 「さあ、どこからでも来るといいわ」 手を無造作にローブのポケットに突っ込み、その姿勢のまま相手の動きを待つ。 このガラクタの攻撃力は侮れない。実際に、地面を穿ち人一人を軽々とふき飛ばすだけのパワーは持っているし、遠距離攻撃の手段も備えている。完全に生身な私が直撃を食らえば良くて血だまり、まあおそらくは原型がなんだったのかよくわからないものになるだろう。 「こないならこっちから行くよ?」 先に符を張った廃品は二つ。一つは先程盾にして完全に粉々になってしまった。 残る一つの位置を確認しつつ一歩前に出る。 それに呼応するかのように、ガラクタが腕を振り上げる。 構わずに更に前へ進み出れば、間合いに入ったと同時にその腕が勢いよく振り下ろされる。 「所詮はパワーだけの物体ね」 振り下ろされた腕に潰される前にすぐ横に"跳んで"回避。腕は派手に地面を穿つだけに終わる。 私自身の筋力的な身体能力は大したことはない。正直その辺の同年代の子と比べても劣っている自信がある。 しかし私にはこの魔術がある。物理的でただの力任せの攻撃など、如何様にでも対処できる。 オマケにこの智慧の欠片さえも見出せないガラクタのようなモノの攻撃の直撃を受けるなど…… 「あり得ない」 地面を穿った腕に手をつきながら呟く。 一瞬でもこれを魔術的なものかもしれぬと思った自身の判断もありえない。今時魔術的な"人造人間"(ゴーレム)でももっとマシなものを作れる。 私の余裕に怒ったのだろうか、ガラクタはそのまま力任せに……それしかできないのだろうが、振り下ろした腕をそのままこちらに向かって薙ぐように振るう。 それを後方に"跳んで"回避。仕込みは終った。経費は最小限に、時間は最大限に稼ぐならばこれが一番だと判断する。 「もうちょっとマシな組成をしてもらうように、ご主人サマに言っときなさい」 指を鳴らす。同時に先に符を張った廃品が急速に勢いをつけてガラクタの腕に直撃する。 直撃した廃品と共に、腕を構成する部品が一部弾け飛ぶ。 次の瞬間、ギギ――と組み合わせた金属部品を引き剥がすかのような音が響いたかと思えば、ガラクタの腕があらぬ方向に引っ張られ、そのまま離れようとするかのような動きを見せる。 「相性、って知ってる?」 電脳の世界ではどうだか知らないが、魔術の世界では未だ相性での有利不利は間違いなく存在する。 魔術と一口に言っても系統は様々である。そして一個人でそれら全てを身につけるなど到底不可能でもある。 だから、誰しも得意分野、というものができてくる。 火が得意な者、心を読める者、私であれば物体の移動に関する術……どこぞのストリートミュージシャンはあれは幻術だったか。 いずれにせよ、物体を自在に動かせる私には、サイボーグ以上にガラクタを寄せ集めただけのような構造の敵などただのバラバラにしやすい塊でしかない。 「まあ、相性を見切って逃げなかった時点で悪いのはアナタ」 そう。相性が悪ければどうしようもない。だから私は、いざという時の為に逃げる術を磨いてきた。 今日だって逃げるつもりだ。ちらと白い少女の方に目をやれば、未だ立ち直っていなさそうであるし、コレを倒してやる義理もない。 3分経つまであと少し。メキメキと不快な音を立てる腕を見ながら私は逃げるルートとその先の事を考え始めていた。 [No.104] 2011/04/30(Sat) 22:56:24 |