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深選が何処からか拾ってきたロングイヤーとかいう……女の子だと思ったけど、なんでも本当は違うらしい、と話し込んでいるのを尻目に、私はさっきの……サン、という人の事を考えていた。 私に関わる話をしていたようだが、正直、自分の身の振り方を他人に預けるというのはゾッとする。 の、だけど……。 『おい、何処へ行く』 さすがに見逃さない、私はサンと言う人が去っていく方に足を進めていたのだから。 「逃げる訳じゃないし、あの人に付いて行く訳じゃないよ、文句があるなら付いてくれば!」 『待てと言ってるだろ』 待たない。 理由を説明すれば、何となく一笑に伏される気がして嫌だったし、これまで深選が口にしていた事に私は“迎合出来ない”。 それを証明しなければいけないし、私は、それがこの世界で『私が生きる』事だと思っていた。 理由も無く、人の為に動いたって良い。 私はそれを、曲げるつもりは無い。 ● ロングイヤーを見捨てた事は、紛れも無い事実だ。 その事に後悔をしているかと言えば、判らない。 仕方が無いというのは嘘では無いし、出来る範囲の事はしたとも、思う。 「……詭弁だな」 結局、偽善でしかないのだ。 自分が甘いと言われる事はよく理解しているし、最終的に、見捨てるという判断に自分は迎合した、言い訳は決して、出来ない。 この上海では、慈善事業に意味など無いと……そういう台詞が横行している事を思い出す。 受け入れがたいと思う、だが事実だとも思う。 何より、自分がそれを体現していると思えた、自分は結局、人間を切り捨てて生きているのだから――。 「ちょっと!」 「――?」 背後から接近する人物には気付いていた。 先ほど深選の所に居た娘だ、急いで追いかけてきたらしく息を切らしている。 「ちょっと……」 「何か?」 置いてきた物も無いのに、忘れ物を届けに来たという事もあるまい。 よくよく見れば、少し離れた場所で深選が様子まで伺っている……全く、何だというのだ。 「さっきの、嘘なの!」 「……は?」 義体は“目を丸くする”という事は無い。 それでも多分、今私は目を丸くしていた。 「なんだっけ、ロングイヤー……?、彼、生きてるの!」 「え、生き……て?」 「そう!」 様子を伺っていた深選が近づいてくる、まぁ、それはそうだろう。 真実……真実なのだろう、を暴露したこの娘を連れ戻しに来たのだ。 『なんのつもりだ!』 「だって、あんまりな言い草じゃない!」 「……」 「この人の顔を見れば判るでしょう、後悔してたのよ、この人!」 繰り返すも、今の私は目を丸くしてる筈だ。 何だ、これ。 つまり、彼女は、私を気遣って態々追いかけてきて……恐らく保護者なのだろう深選にとっては、どちらかといえば不利益な事を伝えに来たらしい。 「……」 『何か言いたい事でもあるのか』 「いえ……」 結局、そのまま深選は彼女を連れて帰って行った。 私はというと、彼に文句を言う事も無く、彼が連れた娘の無意味な……少なくとも、この上海では全く意味の無い優しさの事を考えていた。 「これが無意味なのか……?」 では、何故今私は、救われているのだ?。 「……この生き方は、そんなに駄目なのか?」 こんな生き方も、あって良いのでは無いのか?。 私は……そればかりを、考えていた。 [No.111] 2011/04/30(Sat) 23:11:00 |