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老街。 いわゆるスラム。 スラムというだけで忌避する人間も多いが、住めば都とはよく言ったもの。 寧ろ私は、これくらい雑然としていた方が性に合う。 露店が不規則に建ち並ぶ一角を抜け、マフィアが闊歩する地区を跨ぎ、亜人が屯する街路を通り抜ける。 普段の移動には魔術を使うが、ここでだけはそんな無粋な真似はしない。 一歩一歩地面を踏みしめ、この街を実感する。それが礼儀だ。 そうしているうちにやがて目的地にたどり着く。 今の上海では、精々この老街でしか見かけられないが、何の変哲もない、一世代前のアパートメント。 もう少し頑張れば意味のない文化遺産にでもなれるかもしれない。そんな建物の一室の我が家。 〜〜〜 すっかり埃塗れになってしまったローブを脱ぎ捨て、シャワーを浴びた私は身を投げ出すようにしてベッドに倒れこむ。。 寝床と書物には拘っているだけあって、いつ寝てもこのベッドの寝心地は最高である。 まだ一日も終わっていないというのに今日は疲れた。いや、余計な体力を使わされた、というのが正しいだろうか。 魔術師にとって体力は資本である。電脳関係と違って、機械がなんとかしてくれるわけではないのである。 中には例外もいるが、少なくとも私は魔術の行使に体力を消耗する。それを軽減する為の符であったり杖であったりローブであったりの媒介物であり、たゆまぬ努力による練度の向上である。 今日は符の持ち合わせも少なかった。戦闘するつもりなど全くなかったし、逃げれば良いと思っていたから。 「それをあんな事までしちゃってさあ……」 結局倒すところまで手伝ってしまった。 それで手に入った情報がそこまで役に立つとは思えないものであったのだから骨折り損である。 「お人よし」 誰にともなく呟く。 代償が無ければ結局あの二人を適当に言い包めて売り飛ばせばよかったわけで。 それをしなかったのは同じ女として同情したのか、少女の頑張りに感化されたのか……いずれにせよらしくない。 「……」 それに加えて父様の話である。 消耗した体力であの部屋で長話をするのは正直かなり辛かった。 私はとことん、電脳、という奴がダメなのだと思う。何故だかは判らないが生理的に受け付けられない。だからこうしてこんな所に住んでいる。 「電魎と教団、ねえ」 あの二人から聞いた話は、父様のおかげで聞いた時よりも具体的な形は持った。 しかしだからといって私に何かしら関係のある話になったわけでもなかった。 私が直接何かをする必要性も感じないし、しなくてもそれぞれ対処する人間がいるだろう。あの二人組には教えておいてあげた方がいいかもしれないが、どこに居るのかも判らないし、敢えて探し出してまで教えてやる義理はない。 「……寝よう」 そう思い枕に顔を埋めてみるも色々な考えが頭をめぐって寝付けない。 仕方なしに上体を起こし窓の外を見る。まだ老街をぶらつくには早い時間かもしれないが、する事もないので出かけることにした。 代えのローブを纏い、追加の符を懐に突っ込み、準備はできたかと思い鏡を見れば髪があらぬ方向にはねていた。 そういえばシャワーを浴びたのだったと思いだし、生れつきの不自然なほどに白い髪を真直ぐに整えると家を出る。 「さて……」 少し時間は早いがバーに行くか、ミュージシャンに喧嘩を吹っ掛けに行くか、露店でも巡るか…… 寝れなかったためにやや不機嫌な足取りで私は家を後にした。 [No.115] 2011/04/30(Sat) 23:13:33 |