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やはり老街の空気は臭い。 アルはポーカーフェイスを崩さずに、心の中で毒づいた。 彼はこの老街を嫌っていた、この街の臭いも嫌いだし、人間の事も嫌っていると言って良い。 上海総合企業ビル……バベルの威光も、この老街までは中々届かないのが実情だ。 アルは思う、彼の主であるArの意思がこの街……いや、上海の全てに行き届き、Arに人々が管理されるようになれば、この街の環境も改善される筈。 少なくとも、アルはそう信じている。 アルが老街に訪れた目的は教団……“終焉の位階”の調査だ。 アルは情報の収拾・伝達を目的としたエージェントだ、教団の名は何度も耳にしている。 それでもなお調査が必要なくらい、この街の闇は深い。 終焉の位階は貧民層を中心に広がっているらしく、また、貧民層はバベルが福祉活動を行っているにも関わらず、こうしたテロ組織に走る。 アルはこの闇の深さの原因をそういった貧民層に住む人間の“浅ましさ”だと考えていた。 だから、アルはこの老街が嫌いなのだ。 嫌いな街の空気を吸い、嫌いな街の土を踏みしめながら、アルは見渡した風景の中に知った顔を見つけた。 三草・ガーデルネア、アームズストリートを中心に活動している探偵だ。 彼の姿を見つけたアルは、迷わずに彼に近づいた。 「Mr.ガーデルネアですね?」 「お前は……」 ● 二人は直接の面識は無かったが、違いに情報を取り扱う身として、お互いの顔と名前くらいは知っていた。 「終焉の位階か、聞いた事くらいはあるが……」 「彼等の足がかり一つでも良いのです」 「そうだな……心当たりは、無くも無いが……」 話をする為に、取り合えず入った喫茶店で頼んだ珈琲は案の定不味かった。 二人とも一口飲んだきり、二口と啜ろうとしない珈琲が静かに湯気を立てる。 アルは三草の情報収集能力を高く評価していた、実際、彼がこの老街を訪れているのは探し人である“イライザ・フランセス”がこの老街をうろついているという情報を掴んだからだ。 同じように、三草としてもアル……ひいてはバベルの情報網を活用すれば、探し人を探すのがぐっと楽になるという確信はあった。 だが彼はプロの探偵だ、依頼内容をそう易々と企業のエージェントに漏らす事は出来ない。 「どうしたもんかなぁ」 「……?」 「いや、俺も仕事の事を考えていたのさ」 「なるほど、……貴方の情報、提供して下さるならば、此方も相応の謝礼はしますが」 三草は不味い珈琲をあえて飲んだ、やはり不味い。 アルの出方は予想通りだ、そして確実な方法だ。 「まぁ、良いだろ」 「助かります」 この時二人は、まさか三草の探し人が、そのアジトに居るとは夢にも思っていなかった。 [No.122] 2011/04/30(Sat) 23:22:30 |