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私たちは入り口で血の海を乗り越えた先で電魎であるところの愛玩用風戦闘用ドロイドの手荒い歓迎を退けた後、只管に上を目指して建物を上っていた。古くからの伝統でボスというのは大概が最上階にいるもので、それならば屋上に"跳んで"上から行った方が早い気もしたが、まあ途中に何があるかわからないので1フロアずつ踏破していく事にした。 「そんで、どーよ?」 「どうよ、って言われてもな」 何体目になるか判らないドロイドもどきを始末した矢先の私に問いかけに、そう言ってコウイチは腕を組む。 電魎自体の原理はもう判っている。マテリアルのベース――この場合は霊体部分が損なわれても動ける機械が使いやすいのだろうか。単に上海には機械の廃品が多いだけかもしれない――それに、アストラル的な霊体か何かを取り憑かせて動かしている。 二人組から話を聞いた時点である程度は察していたが、実際に撃破してみたことで確信は得た。コウイチを連れてきたのも間違ってはいなかったわけだ。物質的な部分はともかく、霊的な部分は私の"専門外"である。 そういうのは"魔術"ではないと私は思っている。同じ括りにされる事が多いけれど。コウイチだって私だって、門外漢から見れば同じ"魔術師"であるように。 「何か新しく判った事とか無いの?」 私は"専門家"にそう尋ねる。はっきり言って私は霊的な感性は殆ど無い。 だからコウイチのようなシャーマンの技術は原理として理解はしていても実践はできない。正直歯痒くはあるが、仕方ないとも思う。その分、私は自身の才覚と、ひいては魔術というモノ自体を誇りに思っているつもりだ。 「とりあえず……使われてる霊体は怨霊の類、みてぇだな」 「オンリョウ?……っていうとあの怨みはらさでおくべきか、ってアレ?」 私の言葉にコウイチが怪訝な顔をする。……間違った事は言っていないはずだが。 そう言われてみれば、あの二人組も成仏だとか何とか言っていた。霊体が関わっているところは聞いたが、もう少し突っ込んで聞いておくんだったと今更思う。まああの時は関わるつもりもなかったのだから仕方がない、ということにしておく。 「……まあ、恨みつらみを残して死んじまった奴のなれの果て、だな」 「それであんなに攻撃的、なのかな」 「そうかもしれねぇし、或いは別の手段で制御してるのかもな」 「でも、そうだとすると怨霊を作らないといけないわよね……」 と、そう言ってからはたと気付いて周りを見回す。 入り口からここまで、人気は全くなかったが、人だったモノだけはたくさんあった。 誰が何人死のうが私は知った事ではないが、流石にこれだけの死骸を一度に見るのは辟易する。こんなところに好き好んでくるのはネクロマンサーくらいだろう。 「もしかしてコイツら……」 「さあな。まあその辺りは実際に聞いてみれば判るんじゃねえか」 言ってコウイチは通路の先を示す。 その先には、明らかに異様な雰囲気を発する一枚の扉。 階層的には最上階に近い。そろそろボスの部屋か。それとも何もない、ただの錯覚か。 「……行くわよ」 言って私はここにきて先に踏み出す。 いい加減に決着をつけて、血だまりの中から抜け出したかったからだが。 ……あるいは私は珍しく怒っていたのかもしれない。 殺すための道具を作るために人を殺す所作に。その無意味さに。 人を殺し殺す道具を作りそれに殺された人がまた道具になり……そんな循環に、何の意味がある。 街や組織や人が滅びるのは仕方がないと思う。しかしそれは、意味のある滅びであってほしいと思う。 狂人集団の酔狂で滅びるなどあってはならないのだ。 ……また理屈をこねるなと言われるだろうか。ただ、それが私だ。私は理性的で合理的な"魔術師"なのだ。怒りにも理由が必要だ。 「手間はかけたくないから。一気にいく」 言って私は符を地に向かって放つ。 次の瞬間、周囲の死骸やドロイドの残骸や物置などあらゆる物体がドアに向けて殺到し、突き破る。 鬼が出るか蛇が出るか――後は、踏み込むだけだ。 [No.127] 2011/04/30(Sat) 23:26:27 |