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「今度は戦争でも始めるわけ、リターナー?」 バンに満載した物騒な金属塊を下ろしながら、フィクサーが笑う。 『イカれたカルトと少しモメてな。ちょいと殲滅してやろうと思う』 「A−Ha。 貴方とケンカなんて、なるほど折り紙つきのクレイジーね」 軽口を叩きながら、要求した分の武装を全て揃えて見せた。 新品のブルベアーとフラットフィールドにルシファーズハンマーの弾丸1ダース、閃光、焼夷、通常の各手榴弾。 「あと、クリッターとやりあうって聞いたからカササギのLN2グレネードを仕入れといたけど」 『気が利くな、それも頼む』 「グッド。1つサービスしとくわ」 聞いた話だと教祖はナノマシンのバケモノらしい。 まともなアンチナノマシンが効かないなら、LN2は次点だろう。程度はともかく、とりあえず効かない相手はいない。 「ただ、急ぎだったんで足はホンドのワゴンしか用意できなかったわ」 防弾処置もないファミリーカーだ。軍用ドローンを持ち出してくる連中にはどうにも不安だが、馬力と容量は及第点だし、日本車ならトラブる心配は少ない。 『あぁ、それで構わん』 「じゃあ、行くわ。次のビズまで壮健でね、深選」 フィクサーはウィンク一つを愛想で残して、愛用のトラックで去っていった。 さて。 振り向くと、そこにマイコがいた。 「終わったの?」 『あぁ、お嬢さんがたを呼んできてくれ……それと』 頷いて踵を返したマイコを、ふと気づいて呼び止める。 「なに?」 『もう来るなとは言わんが、身の安全は――』 「自分で確保しろ、でしょ」 鼻息荒く台詞を奪うマイコだが、俺は否定した。 『シロウトにそんな芸当は期待しない。 許可無く俺の傍を離れるなm、だ』 マイコはきょとん、と俺を見た。 「護ってくれるってこと?」 『それ以外に何がある』 俺はフィクサーの残していったワゴンの運転席に潜り込み、ネット端末を準備し始める。 ロングイヤーは診療所に居残ることになったが、さりとてこちらの状況がわからないといざ逃げ出すタイミングも解らず恐ろしいらしく、ネット上からバックアップすることになった。……それとて、危険が皆無というわけではないが。 「深選、私、この時代で生きてけるのかな?」 表情は見えないが、マイコの声は酷く弱弱しかった。 この時代に、彼女の寄る辺は無い。家がなく、身分がなく、家族がない。 ……そもそも。人間ですら、ないかもしれない。 だがだからなんだと言うのだ。 『入用なら家は探してやる。IDの偽造もお手の物だ。イエローエリアあたりまで行けば高校もある』 さすがに家族は用意できないし、友人は他所を当たってもらうしかないが。 そう言うと、マイコはくすりと笑った。 「ただし、対価は払ってもらう?」 『そういうことだ』 ● 特に揉めることもなく、運転は俺、助手席はガイノイドのミヤコ、後部座席にマイコとコユキという編成に相成った。 『ロングイヤー、ログインしたな?』 「既にばっちり」 『ベヘモスの名前を、俺たちが持っているらしく適当に流せ。詳細はクローズだ』 「合点でさ」 これで診療所の件のように教祖が直接出張ってきてくれれば話は楽なのだが。 「それと、旦那。企業軍が情報収集に動いてます」 『……そうか。リミットは遠くないな』 「どういうことです?」 助手席のミヤコが聞く。 年の割りにずいぶん理知的で、現状方針を練るに当たっては一番頼りになる。 『企業軍がベヘモスや教祖のことを把握すれば……連中はナノテクやバイオ汚染にはトラウマがあるからな。 最終判断を下す可能性もある』 「最終判断……?」 暴走したナノマシンは幾何級数的に増殖する。数時間で地球を埋め尽くす、などという妄想はさすがに現在は一笑に付されるが、都市一つが壊滅した例はなくもない。 ナノマシン兵器となれば、気化爆薬で区画どころか街ごと“洗浄”する可能性もあるだろう。 上海がナノマシンに沈むか、 街が軍に焼かれるか、 あるいは俺たちがくたばるか。 『それまでの、勝負だ』 [No.132] 2011/04/30(Sat) 23:31:12 |