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アルは正直、三草に付いて来た事を少し後悔していた。 アル自身は戦闘用の義体では無いので、出来ないとは言わないが、実際の所戦闘に向いているかと言えばそうではない。 アルの義体は情報収集に優れており、その為に非常に多くの情報を周囲から拾う、たとえそれがどんなに胸糞悪くなるような惨状や、悪臭であってもだ。 「うっ……」 「どうした?、気分が悪いのは判るが……」 「いえ、大丈夫です」 言葉とは裏腹に、大丈夫なものか!、とアルは内心で愚痴る。 血の海、というものを見る機会は上海では幾らでもある。 特にアルのようなエージェントなら尚更、さすがに慣れたものだと自分自身でも思っていたのだが、とにかく、臭い。 「上に、誰か居るようですね」 「そうだな、どうする?」 「……私は仕事です、貴方こそ、気変わりの理由は何です?」 「まぁ、俺も……仕事さ」 「はぁ……」 アルは生返事を返したが、“仕事”という言葉には奇妙に共感を覚えた。 それはそうだ、好き好んでこんな臭くて汚い場所に居たい人間など居るまい、アルは少しだけ三草に同情したが、状況が状況だけに、笑うことは出来なかった。 床に散らばるのはどれもチンピラどもの無残な死体を眺めながら、アルは幾つか状況予測をしたが……やはり、切捨てられた、という線でしか考えられない。 だとしたら、此処には大した物は残っていないかもしれない、それはアルを落胆させる事だったし、何よりも上の階に居る何者かが敵なのか見方なのか……それが何よりも問題だったのだ。 「Mr.ガーデルネア、上に居る連中に心当たりはあるのですか?」 「あぁ……まぁ、知り合いでは無いんだけど、ちょっとな」 話ながら、三草は倒れ伏したドロイドに気付いた。 アルも当然気付いていたが、アルと三草の違いは、それを“気にするか”、“気にしないか”なのだろう、三草はドロイドを見て、「何でこいつは、外傷が無いのに倒れているんだ?」と疑問に思う、探偵だからだ。 しかしアルにとっては、ドロイドが倒れている事は重要だが、どのようにして倒れたかは関心外の事なのだ。 ……閑話休題。 ● 「Mr.ガーデルネア」 「あぁ、気付いてる、多分向こうさんもな」 上に向かう階段(エレベーターは当然死んでいた)を上りながら、アルのセンサーがまず下に下りてくる二人の人間を捉えた。 三草もそれに気付いている事はアルに軽い驚きを与えたが、それは鉄面皮の下に封じ込めておいた。 「次のフロアで鉢合わせします、逃げますか?」 「もう間にあわんだろ、そいつは」 カツ、と乾いた音を立てて入ったフロアの向こう、降りてきた二つの影が見えた。 男と女だ、……彼等がこの惨状を引き起こしたのだろうか? 「アンタ」「貴方は」 「「むっ」」」 「アンタ誰だ?」 「貴方こそ、何者です?」 繰り返すが、アルは老街を嫌っている、ストリートの事も嫌っている。 そんな彼がコウイチ・シマを知る理由は無かったし、何よりも隣に立つ女のローブ姿が彼の正体をあやふやで予測不能のものにしていた。 「……まさか、貴方は終焉の位階の……」 構成員なのか、と言いかけて、アルのセンサーが危機を知らせる。 ……危機というのは間違いだ、相手の怒気を感じ取って、警告を発しているのだ。 「……悪ぃ、だが、見誤らないでくれよ」 怒気の発生源は勿論、目前の彼であった。 「あいつ等と一緒にされるなんざ、冗談じゃねぇ」 [No.133] 2011/04/30(Sat) 23:32:19 |