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「もういいだろう、腹一杯だ、たくさんだ!コイツら、心底イカれてんだよ!」 明らかに怒っていた。 私が、ではない。眼前で喚く、感情で生きる呪い師が、である。 その動きが、呼気が、鼓動が、全てが怒りを表していた。 電魎についての詳細は既に聞いた。 なるほどコウイチが怒るのも無理はないとも思えた。その怒りは理解できるし、共感もできなくはない。 この部屋に踏み込む前までは、私も一種の怒りに燃えてはいたのだ。 それは義憤だとか正義感だとかそういうものとは程遠い私なりの怒りではあったが。 それが、話を聞いているうちに冷めてきた。 コウイチがコンソールを弄ってあれこれしている間、私は部屋の遺体を調べたりしていた。 少なくともマテリアル的な部分は私の専門である。検死程度、遺体の形さえあれば何の事はない。 だから、私はコウイチが敢えて語らなかったであろうこの部屋で行われていた事も察しはつく。寧ろそんな気遣いをされた事は不愉快ではある。私を誰だと思っているのか。 教団の教義は知っていた。よくある終末論だと思っていた。 そういう教義がどんな時代も一定以上受け入れられるのも納得だったし、教団の拡大も自然だと感じていた。それは、歴史の繰り返しだから。 (――馬鹿じゃないの) だからこそ、電魎の目的を聞いた時にはそう思うしかなかった。 人の肉体を捨て、あるべき姿へ。そういう題目を掲げて次のステップへと進化を目指して挙句の果てに失敗した狂人など、歴史を紐解けば掃いて捨てるほどいる。 何故かどんな時代にも、"人"が"人"であり続けるのは停滞であるなどという馬鹿げた勘違いを犯した挙句に進化したがる連中がいるのだ。教団も、結局その一種だったというわけか。 「落ち着いて、コウイチ」 尚も喚いている呪い師を落ち着かせようと試みるも、無駄なようである……端から期待はしていないが。 コウイチは、教団を許さないだろう。 それは彼が、怒っているから。許せないと感じたから。それだけだ。きっと深い理由はない。 私は、違う。 こんな馬鹿げた集団の時代錯誤な馬鹿げた狂気に巻き込まれて生まれ育った街が滅ぼされる道理など無いと。そう感じただけだ。 馬鹿には己の馬鹿さ加減を思い知らせてやる役が必要である。ならば私がその役を務めてやろうと、そう思っただけだ。 こんなにも気分が悪くなる思いを二度とさせられないように、分子の一つまで切り離してやろうと、そう決めただけである。 「止めるなよ、魔術師<メイジ>」 コウイチが言う。私は首を振った。 その時の私は、きっと自分で思ってるよりも冷めた目をしていたのだろうと思う。 馬鹿相手に感情的になるなんて馬鹿である。落ち着いて、物事の道理を教え諭してやらねばならないのだ。 だから―― 「止めないよ、呪い師<シャーマン> そんな狂気を、生かしておく道理はないから」 そう。狂気は消え去るのが"道理"なんだ。 [No.135] 2011/04/30(Sat) 23:33:48 |