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「イライザ・フランセス・霧積。で、こっちのコレがコウイチ=シマ。」 私は改めていつものようにそう名乗った。ついでに隣のも紹介しておく。 場所は元マフィアの根城、現教団のアジトを出てすぐ近くの喫茶店。 お世辞にも喫茶店などと洒落た名前が似合うほど整った店ではないが、今の私達には多少雑多なくらいの方が丁度いいだろうとも思った。 眼前には、出会った時から鉄面皮を崩さない男が一人。アル=シャーユィとか名乗ったか。 もう一人の、ここに連れてきた張本人である三草・ガーデルネアとか名乗ったコートの怪しい男は席を外している。 何故こんな所に連れてきたのかは不明だが、私とて考えなしについてきたわけではない。 眼前のこの男……アルは、私達を見た時にまず「教団の関係者か」と疑った。 つまり。この男はあの外から見ればただのボロ建築物であったあのマフィアの根城が、教団に関係のある場所だと知っていた事になる。そうでなければあの第一声はあり得ない。 要するに、他にも教団の情報を持っているのではないか。ならばそれを引き出してやろうと。そう思ってついてきたわけである。次の目的地の当てがない以上、何かしら情報がほしいところであるし。 ただ……今もってこの男の正体はよく判らない。名前を名乗ったのみでどこの手の者かは明かさず、また常にその表情を崩さない。……まあ身分に関しては私も名前――しかも偽名――しか名乗っていないし、コウイチに関してもそれ以上の事は言っていないのでお互い様であるが。 とはいえ、コウイチはストリートだけとはいえそこそこに名の知れたミュージシャンであるし、私もあちらこちらで色んな事をしているから知られている可能性は考えておいた方がいいだろう。 「それで、こんな所に連れてきて何の用」 顔には出さないように努めてはいるが、私ははっきり言ってこの男が苦手であった。一目見た時から、である。 私の嫌いな電脳の気配を纏い、私の嫌いな科学的な上海の匂いを纏い、それでもってこの老街で何をしているのか。 ただいずれにせよ、話はさっさと切り上げてしまいたかった。今のコウイチが交渉事に向いているとは思えないから、私から切り出すことにした。 「……教団のコト、知りたいんじゃないの?」 単刀直入にいく。腹の探り合いをするのも馬鹿らしいし、長話をしたいタイプでもなかった。 あんなところに居て、しかも教団関係者じゃなくて、私達を始末するのが目当てでもないとなれば、おのずと目的は限られてくる。 男は相変わらずの鉄面皮は崩さなかった。……が、効果はあったようだ。 「何か、御存知ですか」 私は横目でコウイチを見る。何か言うつもりはないようだ。好きにしろということか。 「……話してアゲル。けど、聞いた以上は何かリアクションしなさいよ」 〜〜〜 途中で戻ってきたコートの男も含めて、私が一通り語り終えた後の一座は奇妙な沈黙に包まれていた。 ここまで聞いても表情一つ崩さなかった鉄面皮の男。首をひねったり唸ったり時折外を窺ったりしているコートの男……途中で思ったのだが、この男は鉄面皮の男の仲間というわけではないのだろうか。二人で調子が合っている、という風には見えないからだ。 後は、もう何度も聴きたくないといった風なコウイチ。そして私。 相手が何を伏せているのかは知らないが、持ち逃げされたところでこちらに特に損はないと思ったから先にカードを切った。 ……あるいはこんな喫茶店でこんな話をすれば、教団関係者の一人や二人くらい引っ掛かるかもしれないという思惑もなかったわけではない。 ともあれ、言う事は言った。後は、相手の出方を待つだけである。 「さ、知ってる事は話したわよ。ちゃんと対価は貰えるんでしょうね?」 [No.139] 2011/04/30(Sat) 23:36:46 |