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なんだかんだで、事件の始末には一ヶ月ぐらいかかった。 といっても俺が手伝ったのは街に放たれた電魎の始末ぐらいのものだが。今日届いたバベルからのメールには企業人らしい懇切丁寧な謝辞と、その気があればO.M.E.(オラトリオミュージックエンタテインメント。バベル系列の音楽会社だ)はいつでもメジャーデビューの用意がある、というメッセージ。 「余計なお世話、って言うのは失礼かもしれんがな」 『その気』が起きるのは当分先だ。煩いマネージャーに見つかる前に、コートの奥に仕舞い込む。 「Co−1ぃ、そろそろ出番よン」 「あいよ」 ケースを担いで立ち上がる。 『BlockHeads』でのギグも久々だ。 「ところで、またあの魔女ッコが来てたんだけど」 訝しげというよりは、怪しげな様子でマネージャーは問う。 「あぁ、今日は呼んどいたからな」 いつも向こうから勝手に押しかけてくるアイツが、今日はミュージシャン自らの招待客だという。確かに訝ろうというものだ。 その上に。 「どうやって『ドレスコード』守らせたのよォ。今までどれだけ文句言っても聞かなかったのに。 それともなぁに、女の装いに口出せるぐらいの仲になっちゃったわけ?」 俺は笑った。 そうか、アイツちゃんと着てきたか。 「なぁに、ツケっぱなしじゃアイツもケツの座りが悪いだろうと思ってよ」 ● ステージに飛び出せば、小汚い身体をレザーやラバーで包み込んだ、愛すべき俺のファンが待っている。 ついでに、着慣れないジャケットに崩したジーンズ、チェーンをじゃらじゃらとぶら下げたイライザも、だ。 俺のコーディネイトだがなかなか溶け込んでるように思う。本人は酷く不本意そうだが、知ったこっちゃあない。 「待たせたな、しみったれた稼ぎを俺のギグに突っ込む愛すべきバカヤロウども! ここは俺たちの街だ!お前らが主役だ!企業もポリも気にするな、存分にノってけ!」 この街の支配者は企業だ。ヤツらの都合一つで、人一人なんてIDごとこの街から消え去る。 ストリートの支配者は暴力だ。きっと、目の前の連中の誰かも、明日にはストリートの染みになるのだろう。 だが、そんなルールに俺は納得しねえ。誰かの都合で死んではやらねえし、くたばった連中を忘れもしねえ。 いつか、俺の歌を聞いた誰かから、企業に一泡吹かせる大物が出れば。あるいは、圧倒的な暴力に、せめてワンパン返したら。 そうすりゃあ。アストラルの果てに消えた、あの憐れな連中も、ちったぁ気が晴れるってもんだ。そうだろう? 「行くぜ、 #1『...and Rock you!』」 [No.166] 2011/04/30(Sat) 23:59:48 |