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日が翳った。 レーザーブレードの白光を引いて、赤黒いAWがこちらに迫る。 「……切り抜け……いや、かわすっ!」 『了解!』 散弾砲を正面から叩き込み、スラスターを吹かしてバックジャンプ。外壁にホイールを食い込ませ、そのまま壁面ダッシュで敵機の側面に回りこむ。 観測する限り、散弾砲によるダメージは微少。やはり単分子ブレードによる白兵戦しかないだろうが、敢えてカケルが迎撃を避けたのは……。 「アレは正面からやりあっちゃダメだ」 光熱剣はエネルギーを常時消耗するという難点があるが、実体剣に比べて打ち合いにアドバンテージがある。熱量そのものであるため、刃なり盾なり、然るべき防御手段で受け止められないのだ。 それでも並の相手なら一合で両断するだけの腕を我がマスターは持っているが、それを避けたということはあのAW、少なくともランカー級の腕らしい。 いや、むしろ事件の顛末を考えれば……。 『マスター、あれが件の拉致されたランカーということはございませんこと?』 私の問いに、マスターは精査するように視線を鋭くするものの、ついぞ応えなかった。 壁面を蹴って、そのままAWに肉薄する。右手のレーザーブレードがなぎ払いをかけてくるが、これは掻い潜ってかわした。 Vの字を描くように切り上げた単分子ブレードは、しかし―― 「な――ぁっ!?」 突如、ホイールを唸らせ『バク転』を敢行したAWに回避された。 『メロンターン』! 「チッ……!」 バク転の勢いそのままに襲い来るレーザーブレードの一撃をかわし、再び窮鼠は距離を取る。 メロンターン。拉致されたJacksの得意技だ。締まらない名前は何でも古いアニメから取ったものらしいが、ネーミングはともかく初見で回避するのは極めて難しい格闘マニューバー。 やはりこのAW、拉致されたランカーが……。 「Jacksじゃない」 カケルはぽつりと言った。 『マスター?』 「Jacksなら、あの追撃を外したりはしない」 カケルは断言した。珍しく、その語調には怒りというか……攻撃性が含まれていたように、感じた。 「あいつの技だけ、盗んだんだ」 ホイールを収納し、脚部をバランスが取れるぎりぎりまで屈曲。腰を落として単分子ブレードを構える。 「Chu−B、次で決める。 操作はオールマニュアルで」 『はっ!?』 多脚歩行三次元戦闘兵器であるAWの操作は、PGのような動作とレースではなく機械式にする場合、どうしても多くの場合をオートメイションにせざるを得ない。 普段はマニュアル動作で如何に有用な動作パターンを開発するか、戦闘時は如何に限られた動作パターンから最適のものを選択するかがAW操作の肝と言えるわけだが……戦闘中にマニュアル操作など! 『自殺行為ですわ、マスター!』 何より、私の補助も全く不可能になる。 だがマスターは頑として受け付けなかった。 「黙ってて、Chu-B」 『マス……!?』 窮鼠が散弾砲を上方、外壁へ向けて撃った。それを合図に窮鼠が地を蹴り、敵AWも突進してくる。 レーザーブレードが閃いた。 命中すれば軽量AWの装甲など一瞬で溶断されてしまうだろう。 だが外壁の瓦礫が降り注ぐ中、マスターは臆さず突進した。否、厳密には機械にも不可能な精密な速度調整を行っていたのだが、このときの私は気づかなかった。 レーザーブレードの刃が目の前に迫る。 『マスター!』 「大丈夫」 マスターが応えると同時、一際巨大な瓦礫が落下しブレードを遮った。 『なっ……!』 驚き狼狽したのは私だけではないらしい。瓦礫を飛び越えた向こうで、立ち尽くしたAWが迫る単分子ブレードをぼんやりと見上げていた。 「GameOverだ!」 むき出しの脚部を地面と擦過させながら停止した窮鼠の背後で、四肢を失った敵AWの胴体がアスファルトの上に転がった。 [No.257] 2011/05/03(Tue) 21:15:15 |