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腹部に柔らかな重みを感じ、カオル・ミヤタカはまどろみから目覚めた。 「……ミッコさん?」 ぼんやりと開けた目が見たのは、馬乗りになってこちらを見つめる女性。 その目は非難の色を帯び、口は堅く結ばれている。 「あのぅ、僕さっき寝たばっかりなんだけど……」 時計を見ると、寝入ってからまだ1時間も経っていない。 深夜営業の店で客同士の衝突があり、それの仲裁をしているうちに夜が明けてしまったのだ。ふらふらと根城にしているメイド喫茶の自室に戻り、安眠を貪ろうとしたらこれだ。 「………」 ミッコさんはますます不機嫌そうな顔つきになり、カオルの身体をゆさゆさと揺する。 ミッコさんはカオルの店の名物三姉妹メイドの三女で無口でクールな物腰で人気だ。メイド喫茶のメイドとしてどうかとは思うが、多くのファンが居ることも事実だ。 長女のイチコさんは柔らかな物腰で家事全般から店の運営まで完璧にこなす、まさに本物のメイドと言った風情。 次女のニコさんは元気が有り余ってる感じで、生身で戦闘用サイボーグと渡り合えるほどの格闘術のエキスパート。 ちなみにミッコさんは情報処理の達人で、この三姉妹が現れてからアキハバラのメイドの勢力が格段に大きくなったとかならなかったとか。 「……約束」 「約束……? あっ! 買い物に付き合うって言ったの今日だっけ!」 慌てて身体を起こすと、ミッコさんの顔が触れそうなほど接近する。 やっと思い出したか、という表情をしてミッコさんがカオルの身体から降りる。 「5分待つ……」 こつん、と額と額を軽く当てて、さっさとミッコさんは部屋を出て行った。 「しまったなぁ……。でも女の人との約束は守らないと」 急いで身支度を整える。 ミッコさんたちの過去を、カオルは知らない。少なくともただのメイドではなかったのだろう。人には言えない人生を送っていたのかもしれない。 しかしそんなことは今の生活と、目の前のデートにはなんら関係の無いことだった。 カオルは髪型をセットし、ミッコさんが待つ部屋の外へと扉を開けた。 ミッコさんはなんでも『手造り』のものを好む。それは実態の無いものを常に扱う反動なのか、はたまた単純に個人の嗜好なのか。 とにかく、完全ハンドメイドをうたったファンシーショップで特大のテディベアを僕にねだったミッコさんは、ようやく機嫌を直してくれたようだった。 「でも、こんなに大きいの部屋に飾れるの? ミッコさんの部屋、そろそろぬいぐるみで溢れそうなんじゃ……」 テディベアを前に抱くと前が見にくくて仕方が無い。四苦八苦しながら往来を歩いていると、ミッコさんがぽつりと返事をする。 「……置けなくなったら、カオルの部屋に置くから、いい」 「あのぅ……僕の意見は……」 「却下」 「しくしく……」 そんな会話をしていると、不意に何かとぶつかった。 「うわっ、ごっごめんなさい!」 言ってから、人とぶつかったにしては妙に固い感触だと思った。テディベアがクッションになったおかげで怪我も何も無かったのだが。 「痛いわね。いったいどこを見ているの」 「すみません、不注意で……って、あれ?」 テディベアをいったん降ろし、前を見て見ても、そこには何もなかった。ただ道が広がっているだけだ。 「まったく。この私にぶつかるとは本当に不注意もいいところだわ」 何も無い空間から声がする。思わずミッコさんを見るが、その表情からすると彼女にも聞こえるらしい。空耳ではないようだ。 「……光学迷彩」 ぽつりとミッコさんが呟く。するとややあって、何も無い空間から鮮やかに少女型のアンドロイドとおぼしき姿が浮かび上がる。 「私としたことが、ベルフェクトゥスから逃げたときのままだったわ。まぁこんなこともあるわよね。」 少女はしばらくカオルの顔を物色するように眺めていたが、やがてびしっと指を刺し、 「決めたわ。貴方、この私フィリア・レーギス・グレズ・フトゥールムを特別に道案内してくれてもよくてよ」 [No.263] 2011/05/03(Tue) 21:19:55 |