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「なんとかってのはどういう事だ」 予想していたとはいえ、目眩がする思いだった。 この人形は自分の立場が判っているのだろうか。 「なんとかっていったらなんとかですよ。そのー、あれです。捕まえちゃったりとか?」 「無意味に語尾を上げると、ただでさえバカっぽいのが余計バカに見えるからやめた方が良いぞ」 「ひどい!バカっていう方がバカなんですよ!」 「知るかそんな事。大体なんで急にそんなこと言い出したんだ」 元々、公安局とはいえ対犯罪用に作られた一日草が、妙な正義感を発揮したとて不思議な話ではない。 それでも、何故急に興味を示し始めたのか。事件ならもう大分前から起こっているはずなのに。 「……何か、見たのか?」 「……関係あるのか判りませんけど……」 ◆◆◆ 「……本当か?」 「私が故障していなければ間違いありません。あの子から出ていた輻射線の量は純粋な人形とも、人間とも違うものでした。中途半端に人っぽいというか……その、禁忌人形に近いような……」 一日草は、特殊な武装は装備されていないものの、いくらか人形ならではの装置が仕組まれている。 その一つが生物等から発せられる輻射線などを視覚化する事が出来るものだが、そもそもが実用化中の装置であり、洗練されていないが為にそれを組み込む為に本来あるべき機能がオミットされていたりもする。この場合は、平常時の色彩情報を可能な限り削っており、普段彼女の眼に見えているのはグレースケールの世界だというわけである。 「お前が正常かどうかはこの後調べて判断するとして、だ……」 ジャックの犯行や被害者の状況、及び先の警官から伝え聞いた事などを考えると、ジャック本人もしくは近しいところに人形師やそれに類する者が関わっている可能性は高い事は判る。 そこから、被害者から奪い取った人体の一部を人形のパーツとして利用するような可能性は考え得る話ではあるが…… 「……その人形がジャックと関係ある確証はないだろう」 「それは……そうですけど」 「じゃあこの話は終わりだ。一応正常かどうかは見てやるからそこに立て」 ◆◆◆ 「寒いぞ」 「季節が季節ですからねえ」 結局ミリアはその夜、一日草が気になる人形を見かけたという4番街に来ていた。 明らかに気にしている様子だった一日草をまた解放すれば、一人で何かしでかそうとしそうなのは自明であったし、 それを放っておく事も出来なかった。 一日草が目立って公安に捕まろうがどうなろうが、ミリア自身には何の影響も無い話であったが、関わった以上は面倒をみなければならないという気がしていた。公安に戻る事が、一日草にとって良い結果とはならないだろうと感じていた事もあった。 それに、ジャックについても少し気になる点もあった。 ただの猟奇殺人ならなんの関係も無いし興味もなかったが、それが人形に関わるとなると別だ。 禁忌人形の制作は御法度であるし、別段作ってみたいともミリア自身は思ってはいない。 ただ、それを作りそうな人物、あるいは作ったと噂される人物であれば心当たりはなくも無い。 一人は警官にも言ったように清水知己である。 そしてその時にはすっかり忘れていたが、まだ国の機関に勤めていた頃にその手の事にやけに熱心だった奴が居たような記憶がある。個人的に話をした事もあったはずだ。 いつの間にか姿を見なくなったが、今もあの時の執念を捨てていなければ研究を続けている可能性は、ある。 あいつは…… 「ミリアさん、どうしたんですか?」 「……いや、少し考え事をしていた。行こうか」 ともかくまずは事実を確認する事だ。 自分の身の振り方を考えるのは、それからでいい。 そう決めて一日草の後を追った。 夜闇に佇む4番街の雑然とした街並みは、まるで先の見通しが立たない現在の状況そのもののように見えた。 [No.28] 2011/04/24(Sun) 22:46:25 |