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湖底市。 魔術師の町。 運命づけられた、魔術の町。 樋口圭司は愛車のパジェロに水をかけているところだった。 だが、車に向けられた棒状のそれには、ホースはついていない。 「主(マスター)。」 ん、と樋口はベランダを見る。 灰色髪の少女がうらみがましく男を睨んでいた。 「神器をそんなふうに扱うものではありません。」 「他に役に立たねえんだもの。」 彼が手にしているのは、一見ただの棒。 だがその先端からは水が無尽蔵にあふれ出ている。 三尖刀。それがこの棒の正体だ。 治水神にして武神、顕聖二郎真君の得物である。 その神器の先端からは、槍の穂の代わりに水が溢れ今パジェロを洗っている。三つ又に分かれいい感じに横に広がった放水は効率よく車の埃を落として行く。 「……勿体なや。」 少女のため息を効かぬふり。 樋口は構わず、今度はタイヤの溝に丹念に水を当てていた。 「後を追ってくると、思うか?」 樋口は唐突に聞いた。 「可能か不可能か、というのであれば、不可能でしょう。」 少女は戸惑いもせず応える。 「しかし、長期的に見れば、いずれ必ず見(まみ)える。」 「その心は。」 「これが聖杯戦争であるからです。」 少女の目が強みを増した。 「そりゃ、いつかは逢うかもな。」 「……。 現場は隠蔽しました。 しかし、隠蔽の痕跡は残っている。 誰かが不当な暴力を働いた、と言う事実だけは、伝わってしまいます。 そして、それを探る者は必ず現れる。」 「……。」 樋口は軽くため息をつき、三尖刀からの放水を止めた。 「追及する者がある限り、露見しない物はありません。」 「なるほど。」 樋口は苦笑した。 これでも元は、追及する側の立場だったのだから。今は、事件を起こす側に向いている。理由があるとはいえ、それは極私的なもので、官憲をやっていた頃の正当な働きとは比べるべくもない。 「『バーサーカー』、それは、何時だと思う?」 『バーサーカー』と呼ばれ、少女は初めて、少し笑った。 「何時だかは天が決めます。 しかし、天が決めた時を、わたくしは絶対に外しません。」 天魁星 宋江は、そういう星回りの存在なのだ。 [No.329] 2011/05/23(Mon) 21:50:49 |