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鐘楼を打ち鳴らしたような大音響が地下道を揺らした。 背の隔壁を歪ませながら、叩きつけられた沖田はずるりと床に崩れ落ちる。 「刃よ、戻れ」 所持者が柄を掲げ命じると、破片と化した刃たちはたちまち従い帰還し、元の剣へと戻っていく。 「ぐ――が、はっ……!」 溢れるように大量の血が、沖田の口から零れおちた。 胴に幾つも穿たれた創傷。見るだに重傷であったが、サーヴァントの頑強さは人間の比ではない。安心するわけにはいかなかった。 「ランサー、とどめを――」 命じようとした、刹那。 歪んだ隔壁が、悲鳴を上げながら僅かに開いた。 さながら迷宮に棲む怪物の顎のようなそこから、小瓶が2つ、3つ放りこまれる。 康一の背筋に悪寒が走った。 「毒だ! ランサー、こっちの隔壁をブチ破れ!」 「毒!?」 果たして、床に当たり砕け散った小瓶からは白煙と異臭が立ち込めだす。 ランサーは剣の刃を隔壁の隙間に無理やり捻じ込み、その怪力で以ってこじ開けにかかった。 それを見守る康一の遥か背後。隔壁の向こうから、どこかで聞いたような、低い男の声が響く。 「戻れ、セイバー」 虚空に走る、赤い輝き。 一瞬の後、沖田の姿は隔壁の前から消え去っていた。 (――……令呪か!) あの隔壁の向こうにマスターがいる。康一は眼をこらして隔壁の先の闇に視線を送ったが、いよいよ立ち込めた白煙がそれを阻んだ。 「主! 開きました、お早く!」 どうにか人一人が通れる隙間が開き、ランサーが康一を促す。 康一は……全く、らしくもなく激昂にかられて敵のマスターに襲いかかる算段を数瞬だけ脳内で組み立てたが――。 「マスター!」 ランサーの呼びかけで頭を冷やし、隔壁の隙間に身を滑らせた。 ● 地下道から転がり出た二人を迎えたのは、けたたましい踏切の音だった。 「敵のマスターは……!」 まだ遠くへは行っていまい。視線を巡らせると、呆気なく目的の――幾許か、予測していた姿を踏切の向こうに見つけ出した。 「て……めえ……ッ!」 聞き覚えのある声だと思った。 もしや、とは思った。 だが、実際に相対することで康一は脳髄が火にくべたように熱くなるのを自覚せずにはいられなかった。 現代の街中では多分に目立つ、黒の着流し。短く刈り込んだ髪に、巌のような表情。 見紛うはずもなかった。この身体の幾許かを作った、あの忌まわしき男。 「志摩――空涯……ッ!!」 唾棄するようにその名を呼んだ康一に、男――空涯は表情を一分も変えずに応じた。 「成程――よく練り上げたな。『あの女』に奪われた志摩の財、少々殺すのは惜しくなった」 空涯が踵を返す。 沖田は回収したのか姿が見えない。 (今なら奴を――!) ランサーを呼ぶ……いや、自分が仕掛けた方が速い。『糸』を振りかぶるが、煮えたぎった殺意は眼前を横切る列車によって遮られた。 車列の合間に見た。 振り向いた空涯が、薄く笑んだのを。 「ランサー!」 「――……いえ、ここからでは追えません、主」 刹那の間に、空涯の姿は消え失せていた。魔術か、あるいは沖田に運ばせたか。 「くそっ……!」 師にもらった拳をアスファルトに叩きつけると、あの憎い男からもらった血が滲み、流れた。 [No.331] 2011/05/23(Mon) 21:51:55 |