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マリナの表情にはハッキリと苦悩の色があった。 その手に令呪を得てより、他の6人のマスターの願いを踏みにじってでも、自らの願いを叶えるという気概も傲慢さも、確かに覚悟した筈だった、それでもマリナは、苦悩せずにはいられない。 ――いや、苦悩を演じずにはいられない。 その苦悩は正真正銘の苦悩であると同時に、演技でもあった。 マリナは苦悩し、苦悩を演じ、そして視線をライダーに向ける。 「ライダー、貴方は良いの?、貴方だって、聖杯が必要なんじゃないの?」 「……いや」 あるいは、マリナは救いを求めたのかもしれなかった。 だが彼女の英霊は、その求めを理解してなお――。 「いや、私は聖杯そのものに興味は無い」 ライダーははっきりした口調で言い切った。 マリナの迷いは判っていた、それほど切実な願いを抱えている事も察していた、そしてライダーは、彼女が同じくらいに何かを見捨てる事の出来ない人間である事を理解していた。 だからこそ、自分の真実で答えるしかなかった。 今のマリナは、きっとどの道を選んでも何らかの後悔に向き合わざるを得ないだろう、ならば――せめて自らの心を裏切らない選択をしてほしいとライダーは願ったのだ。 だが、ライダーは知らなかったのだ。 「……そう」 マリナに切なる願いはある、だが――。 「不本意だけど、協力しない訳にもいかないでしょう、アンタとの同盟は有益だって事は証明されちゃったんだし、私だってこの街は気に入っているんだもの」 「――本当に、良いんだな?」 「良いわよ、二言は無いわ」 それは七貴マリナの願いでは無く、マリナ・エレノアールの願いだという事を、康一も、ライダーもまだ知らなかったのだ。 ● 善は急げという言葉もあるように、方針が決まったからには行動を躊躇する理由は無かった。 教会の月の元へと赴き、事情を説明し聖杯戦争に参加している全マスターに状況を説明する――。 協力的なマスターが居る事を期待した訳では無いが、幾許かの配慮だけは期待できた。 良識ある魔術師ならば、魔術の神秘が露呈する事は避けるべき事態である為、直接的協力は無いにしてもせめて傍観だけしてくれればという、せめてもの希望的な考えだ。 「――……」 「……マリナ、本当に良かったのか?」 本人が二言は無いと言ったにも関わらず――相変わらず感情が表情に出る彼女であったために、康一はわかりきった質問をもう一度する羽目になった。 マリナは無理やり顔に笑みを作ったが、それがどれだけ白々しいか本人は気付いていないらしい。 「言ったでしょ、二言は無いわ」 それに、聖杯を諦めた訳でもない、とマリナは続けた。 カラオケ店を出て、薄暗い路地を抜ける。 誰よりも早く反応したのは――やっぱり、表情の優れない彼女を気にしていた、彼女の英霊だった。 「――マリナ!!」 「えっ――」 薄暗く、人気の無い路地が災いした。 弾く事は到底間に合わず、赤い瞳の英霊に出来たのはその身を盾にする事だけだった。 ばつん、という貫く音だけがマリナの耳に響く。 「―――ライダー!?」 「――狙撃、されてるだと!?」 あらゆる獣を確実に仕留める矢が、赤い瞳の英霊の背を貫いていた。 [No.362] 2011/05/24(Tue) 22:04:00 |