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「お酒もう一樽お願いします。」 「お願いしますじゃない、バカ!」 「わたくしはバーサーカーであってバカではございません。」 「バカだバカ、お前は!」 キャスターを退けた祝勝と、集めた同士の懇親会をやろう、としたところまでは、橋口も間違ってはいなかったはずなのだ。 対キャスター戦では、火を扱うキャスターに対し橋口の三尖刀が十二分に防御を為したし、『名斬りの剣(王者を切り裂く勇者の剣)』の効果も上々で、キャスターの行動自体をかなり阻害出来、被害は施設を破壊される程度で済んでいる。 逃げられさえしなければ、仕留め切ることもできただろう。 上々の戦果である。上々の戦果ではあるのだが。 「梁山泊全部呼ぶとはどういう了見なのか。」 「ほのひほんしゅというおはけがおいひかったほへへひふふはほうと。」 頬を左右に延ばされながら日本酒のおいしさを仲間に知らせたいからと弁明するバーサーカー。 「醸造酒で無色透明というのが素晴らしいと思ったのです……。 」 頬をさすりながら申し訳なさそうにするバーサーカーに、橋口はため息をついた。 「俺が仙人食しか口にしている理由を知ってるか?」 「仙人になるためではないのですか?」 「食費を抑えるためだ!」 「貧しいのですか?」 「お前を召喚するためだーーー!!」 肩を押さえてがくがく揺らす。 「あ、あ、ダメ、ダメダメです揺らしては。」 夫婦漫才だと百七星たちがはやし立てる。 無論だが、夫婦な訳もない。 「オゲエエエエエ……。」 「うわああああああ!!」 酔った妻の扱いも知らぬようでは、夫とは言えまい。 ―――― 「じゃ、行ってくるから。」 「はい。」 酒宴の続くモールを背に、パジェロがエンジンを振るわせる。 「留守は頼む。」 「大丈夫です、九天玄女の加護がございますから。」 「それは心強いな。」 そう言って窓を閉めかけた橋口に、バーサーカーは、あっ、と声をかけた。 「どうした。」 「あの方々の召喚に魔力を使ってしまいました。 九天玄女を呼べないかもしれません。」 「しょうがねえな。」 橋口が運転席のドアを開けると、バーサーカーが駆けよる。 背の低い彼女を橋口の大きな腕が抱え上げ、桃色の唇に粘膜をあてがった。 「……じゃ。」 「はい。」 アルコールで火照ったバーサーカーの顔が、微かに赤みを増すのを見た。 バタン、と強めに閉じられたドアに、 「行ってらっしゃいませ。」 バーサーカーは深く抱拳礼をし、見送った。 ―――― 湖底市市街地に向かうパジェロの中で、橋口はキャスターのマスターに思いをはせていた。 あれは従兄だ。 橋口凜吾の弟。次男坊ということで、自由な性格をしていた。家族ぐるみで会う時もいつも外出していて、顔もほとんど見たことは無い。 珍しく顔を合わせた時は、珍しい海外土産を見せてくれたっけ。 大学時代には学業そっちのけで海外を放浪したとも。 「……どこかで、出会ったのかな。」 自分のように。 自分の異能を、異常を、才覚を目覚めさせてくれる、何者かに。 自分とそう歳は変わらない。 定職につかずにやっていくには余りにも厳しい年齢の筈だが、まあ、元気で良かった。 ……兄の敵討ち、だとしても。 聖杯戦争に参加できるほどの魔術師なのだ、独自の情報網なりなんなりはあるだろう。 そうでなくても凜吾の弟。兄についての噂は嫌でも耳に入る。 俺の戦術に気がついたとしても、一向に不思議ではない。 そうでなくても、敵であることに変わりは無いのだけれど。 どこに、と言うわけでもなく、偵察のためのドライブであった。 バーサーカー――――宋江――――には、「機を見るに敏」という特殊な能力がある。 『まるで描かれた物語のように』、己を主人公に天命が巡る。だから一人で留守を任せた。 九天玄女の加護がある限り、『彼女が死ぬほどの事態は』『彼女の天運を覆す魔力が及ばない限り』まず起こらない。(そして彼女の天運を超える魔力を持つ相手には、そもそもの勝ち目が無い。) 逆に言えば、自分が彼女と共にいる限り、苦手な敵と『出逢う』機会は減る。 だから自分が彼女の元を離れた。 『不運に見舞われる』ために。 (「えーと、キャスター、アーチャー、ランサー、セイバー、アサシン……ライダーな。」) カーステレオをかけながら、状況を解析する。 (「キャスターは確定……残り五騎。まえの玉のおっさんが一騎……あのネーチャンはキャスター以外の何かだな。 後は……うーん、情報が足りない。」) 志摩空涯がイレギュラーなサーヴァントを扱っているなど、とても考えには及ばない。 それほどまでに、彼には情報が不足していた。 その『出会いの無さ』は、バーサーカーがもたらした『幸運』のおかげでもあるのだが。 (「つまりは、残りの五騎とは悉く相性が悪い、と……。」) 結局、英霊は自分と凜土の二騎しか確定できておらず、残りはどこで何をしているのかもわからない。それでは戦いにならない。交渉の余地すらない。 「!!」 遠く聞こえた銃声が、彼の思考を一気に現実に引き戻した。 「いるのかよ!」 この街中で平気で銃をぶっぱなすチンピラが! 焦燥とは裏腹に、緩やかにハンドルを切る。 [No.366] 2011/05/24(Tue) 22:07:00 |