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――――十年前―――― まだ幼い少女にとって、絶望はむしろ触り心地が良いくらいに甘美な誘いだった。 彼女が住んでいた村に吸血鬼がやって来たのはもう一週間以上も前の事だ、正確な時間経過を少女は思い出す事が出来ない、半分眠っているような、起きているような感覚。 夢見心地だが、決して安らかでも穏かでも無い、永遠に続くような悪夢、時間の経過がわからなくなるような悪夢、悪い夢の連続、持続、永続。 ――――夢見心地の悪夢だ。 村に訪れた吸血鬼は、それがさも当然の所業であるように少女の親しんだ村に住む人々を殺戮して、その血を啜り上げて行った。 小さな村だった、文明から遠ざかり、独自の生活形態を続けていた、時間に取り残されたような――――それでも、穏かな村であった。 だからこそ、吸血鬼の所業は中々外部に知れ渡る事が無く、いよいよ、少女を除いて村は全滅してしまったのだ――。 かくいう少女もまた、寝台に横になったままで、半死半生で身動きが取れないでいる。 少女は村に住んでいた魔術師の一族の娘だったのだ。 治癒魔術を得意として、生命の再生を研究していた父親の教育の元で、少女もまた魔術を学んでいた。 だからかは少女にも、もう誰にもわからない事だが、少女の血は少しだけ特別だったのだ。 治癒に特化した魔術回路を持って生まれ、魔術師として鍛錬を積む事に、魔術回路を活性化させる度に彼女の血は、彼女の血そのものが治癒を促す特性を帯びていたのだ。 その血を、吸血鬼は大層気に入った。 直接の吸血をせず、わざわざ薬を投与して、半死半生の仮死状態に少女を追い込み、彼女の血を毎日毎日、少しずつ抜いていったのだ。 この貴重な血が少しでも長く味わえるように、この治癒の血の恩恵を少しでも堪能する為に、吸血鬼は少女を殺さず、まるで家畜を扱うように“生きたまま保存した”のだ。 少女の地獄はそこから始まり、やがて終わった。 地獄を、認識できなくなったのだ。 [No.403] 2011/05/24(Tue) 22:53:57 |