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ランサーの刃が、宗造の目の前に突き出された。 「ひ、ひっ……!?」 対峙するサーヴァントの瞳は、普段の彼女からは想像もつかないほど怜悧で、無機的。 さながら死刑執行人のように、女騎士は邪智暴虐の魔術師を糾弾した。 「――貴様か。 あの誇り高き英雄と、我が王を愚弄したのは」 ランサーは聖杯戦争のシステムはおろか、魔術さえロクに知らない。だが、黒化英霊を自在に操ったこと、彼の性格を鑑みればその事実に行きつくのは容易いことである。 ランサー……いや、この場は敢えてパーシヴァルと呼ぼう……は、目に見えて激怒していた。声音も表情も凍りつくほど冷たいが、その理性は宗造が一片でも反抗的な態度を見せれば即座に斬り捨てるであろうほどに危うい。 「あ――あ、あ……!」 がくがくと首肯する宗造に、無慈悲に切っ先がその間合いを詰める。 抵抗など思いもよるまい。この距離でなくても、戦闘機一機に匹敵するというサーヴァントを相手に生身の人間が出来ることなどありはしない。 「……主。この男、斬ります」 康一も勇治も、それを止める気にはならなかった。 この男は危険すぎる。魔術師としても。人としてならなおのこと、論外だ。 「――ダメですよ」 ランサーの凶行を差し止めたのは、意外なことにアサシンだった。 しかし手段は言葉でも腕を掴むでもなく。 「――ギッ!?」 宗造の全身を包む、呪術の炎によってである。 「ギアアアアアアアアアッ!?」 火達磨になった青年が、その外見に似合わぬしわがれた声で絶叫し、のたうつ。 それをうるさい、とばかりにアサシンが火力を上げると、宗造の姿も叫びも、業火の向こうに消えて、果てた。 「……アサシン」 「ダメですよ、ランサー。あなたのような人が、ああいう輩の血で汚れては」 アサシンはいつものように愛嬌のあるウィンクでランサーの驚きに応えた。 「――汚れ役は、私の仕事です」 だが、その纏う気配に一抹の寂寥を感じたのは、彼女の気のせいではあるまい。 勇治は、何も言わずにその頭を背後からくしゃり、と撫でた。ピンと立った耳が、それに甘えるように倒れる。 「そっちの女は、どうする?」 康一が倒れ伏したまま動かない『令呪の女』を示す。 見たところ外傷はないが、そもそもまともな精神状態ではないようだった。それが治るかどうかは、聊か難しいだろう。精神の修復は魔術でさえ容易ではないし、ランサーの宝具も精神そのものや生まれながらに弄られた部分は手が出せない。 「……こっちで引き取ろう。それぐらいはやらないとな」 結局、借りを返しに来てまた作ってしまった。その分だ、と勇治は言いたかったのだが、康一もランサーも思い当らないのか怪訝な顔をしているのに気づいて、苦笑する。 悪い連中では、無い。気を許してはいけない連中なだけだ。 「一度、こちらの拠点に戻ろう。近いからな。 その状態で七貴の工房に行く途中襲われたら事だろう?」 「――助かる」 言って、そこでようやく康一は肩にかかる鉛のような重さを自覚した。 酷い一日だった。幾つの死線を潜ったかもわからない。魔力はランサーどころかマスターさえ供給に滞るほど空っぽで、康一に至ってはまたも片腕を吹っ飛ばされた。 まぁ、得たものも少なくない。とりあえずは、生き残ったことを良しとしよう。 康一はランサーに振りかえった。すっかり容姿は変わってしまったが、緊張を解いたその表情は黒の騎士王などではなく、紛れもなく彼女である。 「帰ろうぜ、ランサー」 差し出した手を、パルジファルは微笑んで取った。 「はい……マスター」 [No.407] 2011/06/02(Thu) 20:23:31 |