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――真紅の夢を観る―― ――真紅の、深紅の、赤い―― ――血塗れの夢を観ている―― 『これは――――』 これは、自分の知っている景色では無いと彼は察した。 見知らぬ村……そう大きな規模でもなければ、日本でも無い。 彼の夢――意識に急に飛び込んできた見知らぬ景色は血に塗れていた。 『――――これは』 これは、誰の夢なのかと彼は考える。 己で無ければ、まず考えられるのは聖杯戦争における自らのパートナーの夢であるという可能性があった。 だが違う、ハッキリと違う。 “彼女”が過ごした時代に、自動車なんてモノは存在しない。 これは比較的近代の記憶、風景にある物品から判別して、おそらくは10年から少し昔程度の――――。 『とくれば、一人しか居ないか』 この夢の主は、マリナなのだろうと――――彼女の夢を垣間見ている康一は理解した。 おそらくは、彼女の過去の夢。 それを覗き見るような事は彼自身の感性で言えばどうかとも思ったが、この小村がこれほど血と死体に満ちている訳を康一は突き止めなければいけなかった。 つい先程話したライダーの顔が浮かぶ、彼の苦悩はおそらく、この過去を知りえたから来るものなのだ。 夢は夢であるゆえに抽象的であり、康一はその夢を第三者の視点から眺めていた。 見知らぬ小さな子供の首を失った亡骸が転がっている、少し先にはその頭部を抱えて絶命している母親らしき女性の遺体。 『――――』 村の入り口にはありえない形に曲げられた……おそらくは抵抗を試みたのだろう、斧を手にした老人の死体があった、一際大きな家の前には、悪趣味な事に一家の首が並んでいた。 『――――これは、過去だ』 過去に捕らわれてはいけない、過失に囚われてはいけない、まして、それが他人のモノであるならば――。 康一は、努めて、努めて、その死体の一つ一つを目にしながら――おそらくはこの夢の主たる彼女が居る小屋の扉へと手を掛けて……。 “G線上のアリア”の口笛が聞こえた。 ぞぶり、と背筋に氷柱を差し込まれたような寒気が走る。 このメロディ、この旋律、聞きなれたモノであるというのに、この口笛から特に異質に感じる軽薄さに――――何処か、覚えがある。 頭の中の何処かで、小屋の扉を開けてはいけないと警鐘が鳴る。 ダメだ!。 開けてはいけない!。 見てはいけない!。 ■■■が居る――――!!。 『だ、まれ』 康一は扉に掛けた手に、夢であるというのに――――力を込めた。 『これは、過去だ、それも他人の――――』 なれば自分がそれに囚われる由縁は無いと、康一は小屋の扉を開け放った。 [No.416] 2011/06/02(Thu) 20:29:43 |