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● 「……良く生きてたね。」 「お前が提案した作戦ではないか。」 対アーチャー戦の詳細を語られ、橋口凜土は改めて敵の強さにため息を吐いた。 キャスターは三つ目のコンビニおにぎりに齧り付こうと言うところ。 「お前本当に好きだねそれ。」 「んぐ。 うむ。大好きだ。 まずはこのパリッパリの、海苔と言う奴が素晴らしい。海藻を天日で干すとここまで趣のある歯ごたえと味わいになるとは、生前はついぞ思ったことはないぞ。 それだけではない。形もまた完璧だ。 特筆すべきは、海の幸で大地の恵みを包み、手のべたつきを抑えつつ味を増すという完成度の高さだ。 贅を凝らすだけでは決して辿りつけぬ、清貧であればこそ見いだせた究極の三角形。」 「わかったわかった。」 「いつか、炊きたての米とやらのおにぎりを食してみたいものよ。」 アーチャーと戦ってからと言うもの、憑き物が落ちたような晴れ晴れとした様子のキャスター。 やる気があるのはいいことだけれど。 「……どうするかな。これ。」 橋口圭司が所有していた三尖刀が、フローリングの床に無造作に転がっている。 ● ゆらり ゆらり。 この赤い苦痛の中で、わたくしは生まれ。 この黒い病魔の中に、わたくしは死ぬ。 わたくしの名前は。 宋江。 義に戦い義に死んだ英傑。 自分で発した言葉を反芻する。 ――――わたくしのこの、少女の姿は。 ――――この立ち居振る舞いは。 ――――マスター橋口圭司にとって、逃れ得ぬ宿命のようなもの。――――それさえ守られれば、 ――――何のクラスでどの英霊の魂でマスターの前に現れようが ――――関係ないのです。 わたくしは、ケイジに魔を与えた悪魔の滴。 大魔から零れた一滴の悪意。 世を滅ぼす悪意よ。 「ただいま♪」 ● 色々と考えた末、凜土は協会の物を呼び出し、三尖刀を預けた。 「誰にとっても要らないもの」 とは、彼の談。 仙術道術に明るくない凜土では使いようがなく、しかも持っているだけで狙われる理由が増える。他のマスターに渡すのはもってのほか。 安全に手放すには、この方法が最適と判断したのだった。 「……形見は、持っておくべきだと思うがな。」 「冗談じゃない。 役立たずの思い出をどうして後生大事にしなくちゃいけないんだい。」 キャスターの言葉に凜土は不愉快そうに応えた。 「歴史的価値があるなら、それをきちんと保存してくれるところに預けなくちゃ。 遺物は遺物。 役目を終えたからこそ価値が生まれるんだ。」 「よく言う。」 キャスターが凜土の懐の『死者の書』を一瞥する。 「これはまだ『使える』。 使えるうちは、『無価値』だ。」 価値は、無駄の中にのみ存在する。即ち、無駄を無駄と見ない、過去を過去としない、未来を未来と夢見ない、人の作りだす幻想の中にある。 「ゴミをどうしようと、僕の勝手だ。」 「その暴言、二度は許さんぞマスター。」 [No.431] 2011/06/02(Thu) 20:41:05 |