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討伐を宣言し、向き直った先に見えるはやはり変わらぬ少女の表情。 ランサーの瞳が、アイスブルーの瞳を睨み返す。 ランサーがすり足で前進を試みる。地面が軋むような踏みこみ。 だが、ランサーの剣と「抑止力の少女」の腕は、へし合ったまま、空間に縫い止めたように動かない。 「抑止力の少女」も、すり足で前進する。ランサーとの接点は微動だにせぬまま、肘が曲がり、腰と肩に『溜め』が作られる。 「いかん!」 康一が糸を張るが間に合わない。 「■■■■■ーーーーーっ!!」 「!!」 少女が吠えた。 振りきられた拳が、ランサーの剣を体ごと吹き飛ばした。 「ランサー!」 「心配ご無用!」 ランサーは身を翻し、足から着地する。 派手に見えるが、実際は『持ち上げられただけ』だ。ほんの数メートルの跳ね飛ばしなど、英霊に傷さえつけはしない。 「■■■■■ーーー!!」 着地を見逃さず突進する「抑止力の少女」。ランサーは臆さずに刃を突き出し迎撃する。 ズム。 少女の拳が届く前に、ランサーの剣が少女の胸に喰い込んだ。 だが、必殺の剣を刺し込んだはずのランサーが渋い顔をする。 ――――重い……! 貫けない。 少女自身も構わずずんずんと進むが、刺さらない。押し込まれる。 少女が滅法に拳を振り回す。 当たるような間合いではないが、それでも風圧が痛いほど。 「■■■■■ーーっ!!」 少女がようやく、『つっかえ棒』を見出した。 掴まれるより早くランサーが剣を抜く。 障害の排除を感じ取り、少女は音より早く順突きを打ちこんだ。 ● 「」と繋がる術を探しあぐねる一方で、康一はうっすらと少女の正体を感じ始めていた。 いや、「正体」は抑止力に違いない。 問題は、抑止力の「器」たるアレ。どこともなくいきなり現れたものではないのは明白。「抑止力」はそういう顕現を好まない。「その場にあるもの」の姿を借りて、「抑止」を実行する。 ならば。 『アレ』は、バーサーカーだ。 言葉にならぬ音声を叫び、頑健な肉体に物を言わせ攻め立てる。それ以外の事は一切考えぬ。それが、クラス・バーサーカー。 怪力を誇るランサーと力比べをして互角以上という事実も、それを裏付ける。 橋口圭司という男が確かバーサーカーのマスターだったはずだが……。 彼はここまで知っていたのだろうか? マスター橋口圭司は今ここには居ない。彼の真意を知るすべもない。 ただ、確かなのは、彼のバーサーカーが抑止力の加護を受け、めでたく『首輪の切れた猛獣と成り果てた』ということ。 躊躇をするな。過去を想うな。 それが必要なら、するべきだ。 「」と繋がり、『アレ』を鎮圧するのだ。 自分に言い聞かせながら、糸と意図を、空間と心に張り巡らせる。 ● 「■■■■■ーー!!」 上段蹴りを剣戟で返すランサー。 骨まで届くほど喰い込んだはずの刃は、しかしそのまま吹き飛ばされる。 技術でも攻防でもランサーが勝っている。だが、少女はまるで意に介さない。 隙だらけだが隙がない。 優勢だが追い詰められている。 実際は、こちらの方がダメージを与え続けているのだから、地道に打ちこみ続ければ、いつかは倒れる相手のはずだ。 しかし剛力で鳴らしたパルジファルは、そういう忍耐の戦いには不慣れであった。 「くっ!」 強烈な衝撃波を孕んだ拳が、空間とともにランサーの精神力を削り取っていく。 ――――それでも、康一に負担をかけるわけにはいかない。 「」への到達など、康一は望んでいない。させてはいけない。 わたしが『コレ』を止めなければいけないのだ! 思い切り振り抜いた剣が、遂に少女の拳を弾き飛ばした。 しかし、少女の目に揺らぎはなく。 浮いた拳に力を込め、膨れ上がった上腕は落雷の如く地に落ちた。 少女は、大地を割った。 [No.441] 2011/06/02(Thu) 20:51:20 |